蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

戦後経済史

2016年02月14日 | 本の感想
戦後経済史(野口悠紀雄 東洋経済)

「「超」集中法」の感想で、「野口さんの著書で、ですます調は珍しい」と書いたのですが、本書もですます調でした。ポリシーが変わったのでしょうか?

著者が言う「1940年体制史観」(戦争遂行のために整備された社会・経済の主要制度が戦後も生き残っていて、それが日本経済の方向性を決めた)に則って戦後経済史を開設した作品。著者の個人的体験と社会的なできごとが交互に綴られています。

(個人的な意見ですが)野口さんの著書では、本論ももちろんためになるのですが、それ以上にコラム形式の余談部分がより面白いことが多いです。(2回ほど著者の講演を聞いたことがあるのですが、やっぱり横道にそれた部分の方が面白かったです)

著者の作品の愛読者としては、「1940年体制史観」についてはやや聞き飽きた感があるせいもあり、本書でも経済史を語っている部分より個人的体験の部分の方が面白かったです。(もっとも、こちらも空襲の話とか田中角栄蔵相の話とか、すでに知っているエピソードも多かったのですが)

相当に頭がよさそうな著者が「宇宙人的に頭がいいと驚いた人」が二人(大蔵次官だった竹内道雄さん、イエール大学のハーバート・スカーフ教授)もいた、というのが印象に残りました。

いっそ、完全な自伝をだしてもらえないかな、とも思うのです。バレエ、旅行、映画、読書、IT遍歴などもふんだんに盛り込んだものをお願いできないでしょうか。全部ぶっこみが難しければ「「超」バレエ鑑賞法」「「超」映画鑑賞法」「「超」読書法」なんてどうでしょう。
あるいは日経の「私の履歴書」もいいなあ。ご本人のインタビューやエッセイが日経に登場することも多いのでそろそろ登場してもおかしくないと思います。
コメント
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