蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

世紀の空売り

2013年12月18日 | 本の感想
世紀の空売り(マイケル・ルイス 文春文庫)

アメリカのサブプライムローンとそれを元に組成された債券は膨大な量にのぼり、オリジナルの住宅ローンが粗悪化していることを“発見”した、大手投資銀行の傘下のファンドマネージャー、(アメリカから見た)外資銀行のトップセールス、そして乏しい資金をかき集めて設立された草の根?ファンドを運用する神経医たちは、債券の債務不履行時にその元利金を保証する保険(CDS)を買うことなどにより、大規模なショートポジションを形成し、やがて訪れるベアーやリーマンの破綻とともに大儲けする・・・という2000年代中盤から後半の金融界を描いたノンフィクション(だよね?)。

著者の作品は「ライアーズポーカー」と「マネーボール」しか読んだことがないが、ノンフィクション(だよね?)なのに、登場する人物の描き方が辛辣(それは敵方のみならず主人公側の描写でも同じで、本書でも空売り側に回った人達も相当にクセのある、傍にいたら耐え難いような人格として描かれている)そのもので、本書に登場させられた?人は皆「オレはこんなじゃない」と感じているのではないかと、心配になるほどである。
恐らく、アメリカのような社会では、このような描写をすれば相応の訴訟リスクを抱えるはずで、それも覚悟の前で挑戦する姿勢が長年にわたってベストセラーを輩出できる原因になっているのだろうか。

また、本書でも「ライアーズポーカー」でも、投資銀行や金融界全体への批判の調子は非常に激しい。特に役職員の高給に対する攻撃が多く、このあたりも読者の共感を呼ぶのかもしれない。
コメント
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