蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

アニマルキングダム

2012年12月09日 | 映画の感想
アニマルキングダム

母を薬物中毒で亡くした主人公は、祖母の家に引き取られる。
祖母の家族は薬物密売やその他の非合法ビジネスに手を染めていて、祖母は彼らに君臨する女王的存在となっていた。
しかし、一家は警察に目をつけられていて、次第に追い詰められていく。警察は主人公を証人として裁判に出廷させようとして保護するが・・・という話。

祖母に率いられた一族が、殺人をはじめとした様々な犯罪を重ねていくあたりは、偶然の符合とはいえ、どうしても尼崎の事件を連想してしまう。
主人公は犯罪現場にいても特に衝撃を受けた様子もなく、警察に保護されても自分の周囲に対する無関心な態度は変わらず、終始何を考えているのかわからない。
なので、結局は魔女的な手腕を持つ祖母の思いのままに動かされてしまう。このあたりも、例の事件もこんな感じだったのかなあ、などと思わせた。

そんな主人公も、叔父が主人公の恋人を殺してしまったことを知って初めて自発的な行動に出る。そこで映画は終わってしまうので、「結局テーマはなんだったの」と言いたくなる結末だった。

そのラストも含めて、全体に多くを語らず、見る方に想像の余地を多く残すような構成で、特にうまいなあ、と思えたのは、検察側の証人だったはずの主人公が裁判では被告(自分の一族)側寄りの証言をしたことを、裁判の場面を全く登場させず、裁判後の護送警官の言動(主人公に(弾が入っていない)銃をつきつける)だけで説明した場面。
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なんらかの事情

2012年12月09日 | 本の感想
なんらかの事情(岸本佐知子 筑摩書房)

「気になる部分」「ねにもつタイプ」が抜群に面白かったので、この本も(私にしては珍しく)書店で見かけてすぐ買ってすぐ読んだ。
前述の2作に比べると、幻想短編小説風のものが増えて、笑いを狙ったのが減った気がするのが残念だが、まあ、払ったお金分くらいは十分にもとが取れるくらい楽しめた。

「運」→傘運はないが、ビニール傘運はありあまるほどある。
「物言う物」→物言わぬ臓器が物言うとき。
「上映」→走馬灯の準備
「愛先生」→ロボ先生、何先生、ラブ先生
「海ほたる」→カーナビが「海です」「海です」「海です」。これってホントにこうなるの?
「やぼう」→「め」は「ぬ」のことをどう思ってるの?

「瓶記」→一番出来がいいとは思えないが、私には一番ツボに来た。
(以下、引用)「どうせまた溜まるのだからと意を決して捨てることに決め、テーブルの上に並べてみた。こうしてみるとかなりの数だ。太ったの痩せたの、大きいの小さいの、のっぽなのちびっちゃいの、着飾ったのそっけないの。たくさん空き瓶を並べ、その前で腰に手を当てて仁王立ちになっているうちに、バルコニーから群衆を見下ろしているような気分になってきた。
「愚民どもめ」と言ってみる。ちょっと愉快だ。
「愚民どもめ」「愚民どもめ」
何度も言っているうちにすっかり楽しくなり、瓶を捨てるのを忘れる。
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