蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

借金取りの王子

2010年11月06日 | 本の感想
借金取りの王子(垣根涼介 新潮社)

経営不振などの理由により、社員に自主退職を促したい会社で、その面接を請け負うコンサルタント会社の面接者を語り手として、クビを告げられる側の人々を描いた短編集。

不良社員を穏便に退職に導くのが面接の主目的だが、面接は対象部門の全員に行う必要があるため、会社がクビにしたくない、残ってほしいと思っている人が出て行かないように配慮しなければならず、その当たりがむしろコンサルとしての苦労があるところのようだ。

表題作が一番面白い。
サラ金のイケメン店長は、見かけによらない純情派で、かつて自分を教育してくれた女性店長にほれて・・・という話。
今となっては衰退産業だが、かつてサラ金の強さの原因は、本部の脅迫的な数字のツメとその反面の高収入であった、というのが本書で描かれる風景。
こうした体育会的というかマル暴的(並べたら怒られそう)な手法は、世に「成長産業」「成長企業」と呼ばれるものに多かれ少なかれ共通する特長だろう。
ある程度成長が進んだ段階で、そうした弱肉強食、儲けるためならなんでもあり、という世界から抜け出して、コンプライアンスとうまく調和するよう軟着陸できるかが、世間に認知されるか否かの別れ道だと思うが、なかなか難しくて、ここで高転びして転落していく会社の方が圧倒的に多いように思う。
コメント
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