蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

ジャージの二人

2009年02月22日 | 本の感想
ジャージの二人(長嶋有 集英社)

最近、GReeeeNの「愛唄」が(いまさらながら)とても気にいって何度も聞いている。この歌は、頼りなげな男の子が惚れぬいた女の子への(ある意味一方的な)愛情をうたったものだと思う。
昔の流行歌は、女の子から男の子への熱い想いを表現したものが多くて、男の子の方から盲目的な愛を捧げるというパターンは見かけなかったが、「愛唄」をはじめとして最近は後者のような歌も多い。女の子が強くなったということか。

本書の主人公の妻は、浮気をしているが、そのことを主人公に全く隠そうとしない。
主人公は深く傷ついているが、妻と別れようという気は全然なくて、ひたすら妻の浮気がうまくいかなくなることを祈っている。
祈るだけで具体的行動には出ず、逃避のために、三度目の妻ともうまくいっていない父といっしょに山奥のぼろい別荘に避暑にでかけて、そこで何をするでもなくダラダラすごす。

人生の諸問題と正面から向き合ってその解決策をさぐる、という筋では小説にならず、宗教書とか実用書になってしまうので、小説のほとんどは、諸問題からどう身をかわすのか、かわしたけどもちろん解決はしなくて主人公はさらに困ったことになる、という筋が多い。
それはそうなんだけど、本書のように、あからさまに逃げる、顔をそむけるだけの話だと、さすがに読んでいて「それでいいのか、おまえ」と言いたくなるのだった。私も年をくって説教オヤジになったということだ。
コメント
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