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或る大阪近鉄バファローズファンの
偏愛と放浪の記録

「キャッチャーという人生」(著:赤坂 英一)

2010-10-22 23:21:49 | 【書物】1点集中型
 これもけっこう待ちました(笑)。
 帯曰く「野村と古田の陰に隠れた6人の名捕手たち」。著者が読売中心に追っている方というイメージがあったので、軸が村田真一なのは予想通りです(ちなみに以前、同氏が川相昌弘を追った「バントの神様」を読もうかなと思ったことがあるんだけど結局読んでない)。

 ただ、山倉以降阿部以前(いや山倉も入るかなぁ)は、読売の捕手は弱点と言われ続けていて、風当たりも強かったのではないかと思いますが、その中で生きてきたチュウさんの姿と、もう1本の軸として山中潔の物語がある感じ。2人の選手には、捕手としての生き方、考え方がどこか通底しているように見えました。
 ともすればキャラクター面と、バッターとしての別の意味での面白さ(笑)がクローズアップされがちな達ちゃんも、いろんな辛酸を嘗めながら成長してきたんだなぁと、当たり前のことなんだけど再確認しました。と言っても、下積み時代(と言っていいのかな)の達ちゃんのことはほとんど知らなかったわけですが。でも、男性社会の同僚同士の争いって、けっこうえげつないときがあるよね、実際。

 みんな個性的ではあるけど、「持って生まれたもの」という意味で、谷繁が強烈な異彩を放っているのが面白かったです。実は「ひらがなしか書けない」(@ササ願)のは本当なんじゃないのか? と思うくらいに。(笑)
 まあそれは冗談(冗談か?)として、真面目な話、よく考えたらいまどき高卒1年目からシーズンの半分以上出場している捕手なんていない。20年前だってそうそういなかったはず。現に、野村克也でさえ「3年目からやった」わけだし。捕手というポジションを、「センスだけ」で「それなりに」やれてたというのは、空恐ろしい話ではあります。
 そんな選手が危機感を覚え、「考えること」を知り、「ひとつ上」を目指したときに出来上がったのが、いまや現役では比肩する者のない存在。怖いですね。マジで(笑)←じゃあなんで笑うの

 そして、里崎のこれでもかという我田引水っぷり(いい意味で)も異彩ではあります。スーパーポジティブ。ふだん見ている里崎らしさはこういうところから来るんだなと、改めて納得した次第です。
 でも里も決してプロになったときからそうだったわけではなくて、当時、自分の能力値と置かれた位置を見極めた上で、基礎から練り直すことを怠らなかった。そしてその積み重ねが徐々にプレイに現れてきたことを自覚することで、自信になった。そうして初めて、もともと里が持っていた性格がリードにもバッティングにも活きて来たんじゃないかと思います。さらに、その手引きが山中潔によるものであるというところがまた、この本の心憎いところ。(笑)

 まだセCSが終わっていないので今言うのもなんなんだけど(笑)、そんな谷繁と里崎がシリーズで対峙することを考えたら、かーなーり面白そうな感じがするでしょ。
 それと興味深かったのは、捕手としての「ゾーン」が生じる条件として優勝争いをすることが必要である、という点。達ちゃんの「チームが弱くてもキャッチャーだけよくなるということはあり得ん」というのが正鵠を射ていて、ゾーンに入るにはそれだけ状況が高いレベルになければいけないわけで、そうなると試合を常に高いレベルでコントロールすることこそが必要条件になる。「なるほどな」という感じでしたね。

 というわけで、期待通りに面白く読ませていただきました。文庫におりたら(笑)多分買います。


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