エッセイをどこかで勧められて、でも翻訳者さんだと知って先にそっちを読んでみようかなと。短編集だし、読んだことない作家がほとんどだったし、タイトルがよかったし(表題作があるわけではなく、あくまで全体の雰囲気を示すタイトルだけど)。
巻頭作「ヘベはジャリを殺す」というタイトルもいきなりならば、まぶたを縫い合わせるという行為もまたいきなりである。それだけであっというまに何かがずれた世界に放り込まれる。タイトルで「殺す」と言っておきながら、2人の間の空気は何かのんびりしてすら感じられる。何かがなされようとしているのだけはわかるけど、どこにたどり着こうとしているのかはわからず、具体的な進展はない。
少しホラーのような雰囲気もある「あざ」「父、まばたきもせず」「ささやき」あたりは、それを知ってしまうと自分もふと後ろを振り返らずにいられなくなる。もしかしたらある話なのかも、と、ないと思いつつも頭の片隅で考えてしまう。言ってみれば「世にも奇妙な物語」のもっと底知れぬものといったところだろうか。それに近いところで「オリエンテーション」の世界も面白い。どこにでもありそうな新入社員へのオリエンテーションのようなのに、そこで示される働く人々の像を聞いていると、少しずつ感覚がずれていく。「潜水夫」「やあ! やってるかい!」は、人の心の密かな暗部と、誰しもが何かのきっかけで弾け出させてしまうかもしれない衝動をさらけ出すように見える。
明確なオチやタネ明かしを求めてはいけない。現実と幻想あるいは妄想の間の亜空間。実際には入り込めないけれど一歩間違うとそこに落ち込んでしまうのではないか、と思わされるそれぞれの世界。一言で言えば「シュール」が近いのかなと思うけど、この「居心地の悪さ」はそんな一言で言い表しきれないな、とも思う。
巻頭作「ヘベはジャリを殺す」というタイトルもいきなりならば、まぶたを縫い合わせるという行為もまたいきなりである。それだけであっというまに何かがずれた世界に放り込まれる。タイトルで「殺す」と言っておきながら、2人の間の空気は何かのんびりしてすら感じられる。何かがなされようとしているのだけはわかるけど、どこにたどり着こうとしているのかはわからず、具体的な進展はない。
少しホラーのような雰囲気もある「あざ」「父、まばたきもせず」「ささやき」あたりは、それを知ってしまうと自分もふと後ろを振り返らずにいられなくなる。もしかしたらある話なのかも、と、ないと思いつつも頭の片隅で考えてしまう。言ってみれば「世にも奇妙な物語」のもっと底知れぬものといったところだろうか。それに近いところで「オリエンテーション」の世界も面白い。どこにでもありそうな新入社員へのオリエンテーションのようなのに、そこで示される働く人々の像を聞いていると、少しずつ感覚がずれていく。「潜水夫」「やあ! やってるかい!」は、人の心の密かな暗部と、誰しもが何かのきっかけで弾け出させてしまうかもしれない衝動をさらけ出すように見える。
明確なオチやタネ明かしを求めてはいけない。現実と幻想あるいは妄想の間の亜空間。実際には入り込めないけれど一歩間違うとそこに落ち込んでしまうのではないか、と思わされるそれぞれの世界。一言で言えば「シュール」が近いのかなと思うけど、この「居心地の悪さ」はそんな一言で言い表しきれないな、とも思う。