田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

金縛り/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2010-12-31 20:30:03 | Weblog
10

見られている。
コウモリに。
窓越しに。

それが美香には見えている。
コウモリの目が赤く光っている。
だがベッドだ。美香は――。
寝ている。
眠っている。これって金縛り。それとも予知夢?

迎え討たなければ。
となりのべッドの香世を起こさなければ。
でも声が出ない。
起き上がれない。布団が重い。お母さん。お父さん。誰か来て!!
起き上がれない。上から押さえつけられている。誰に? 姿は見えない。
起き上がれない。いま襲われたら助からない。誰か助けて。
もがいてもだめ。
声もでていないようだ。
グッショリと冷や汗をかいている。

「オネエ。オネエ。美香。夢だよん」

香世に起こされた。

「ああ、よかった。起こしてくれてありがとう。怖い夢だった」

夢のなかで恐怖を感じた。
目覚めてからも震えが止まらない。

「窓からコウモリがこちらを窺っていたの」
「こんなふうに」

香世の顔がコウモリの顔になった。
ジイッと赤い兇暴な目で美香をにらんでいる。

「やだぁ。香世からかわないで。へんなところで能力つかわないでよ」

いや、香世ではないらしい。
こころが読めない。
なんにもない。
からっぽ。
不気味なこころのもちぬしだ。
こんな人間がいるわけがない。
ただあるのはわたしにたいる憎しみ。
わたしを憎悪している。
危害をくわえようとしている。
コウモリだ。吸血鬼だ。どうしょう。
バリッと窓ガラスがわれた。
コウモリの群れが部屋いっぱいに侵入してきた。
部屋の中が真っ暗になる。
コウモリに喰いつかれた。
腕も脚も。
痛い。
ワタシの体が子ウモリのおなかに収まっていく。

「オネエ。オネエ」
「香世なの。香世なの。たすけてぇ」

絶叫した。
頬をばんとなぐられた。

「オネエ。わかる。夢をみていたのよ」

こんどこそ覚めた。
怖い夢から覚めた。
はじめて吸血鬼を斬った。
恐怖の粒子がまだ体にのこっていたのだ。 

「怖い夢みるところは、かわいい普通の女の子ね」

香世がお姉さんにみたい。笑っている。


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解毒剤があった!!/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2010-12-31 09:40:28 | Weblog

9

見られて。
いる。
吸血鬼に。
ハジメはふつうの男。
フリーター風。
ソレが!!
上半身の服がハジケタ。
鰐のようなゴツゴツシタ肌におおわれている。
armorのようだ。
双眸が金色に光っている。
牙が伸びた。
角が生えた。
と、いうようなことは、ない。
ぜんぜんない。
まったくない。
目くらましだ。
Vには美香がテレパスだということをしられていない。
『これでどうだ。おれの目を見ただけですくんで動けなくなる。これでとうだ』
確かに、目には異様な光がある。
でもそれがどうしたというの。
美香は青く光り指剣の先を、すきをみてVの喉元につきいれた。
紫外線。
紫外線。
という念波を逆にVにおくりこんだ。
ギャヤ!! という絶叫。
Vは太陽光線に焼かれたようにブスブスくすぶりだした。
周囲にいたVの群れは、ギョッとして青く溶けていくなかまに向けた。
かれらには、なにが起きたのかわからない。
わたしの指剣と念波攻撃。
Vは強烈な紫外線の放射を浴びたとおもったのだ。

「すごい効果!!  なにしたの」

百子が近寄ってきた。
倒れていた仲間を抱き起す。

「兆子。しっかりして」

ワタシの妹なの。
と、いおうとして、ためらっている百子。
戦いの場に感傷的私情はもちこみたかない。
そうかんがえている。リッパだわ。
「治療法があるの。このアンデイが――white vampireが知っている。すぐ病院にいきましょう」

こんどのタクシーはまっていてくれた。
もっとも香世のバリャーのなかでのこの怪事だ。
時間の経過はほとんど感じられなかったろう。

「兆子。チョウコ。しっかりして」

「日本で開発してくれた人口血液のおかげでぼくらはWVとして生きていける。そしてその血液をつかって、BVの毒素を解毒する技術を開発したのです」

「ありがたいわ。ひょっとして刺された傷にもきくかしら」

百子は翔子の彼氏、純のことを案じていた。

「たぶん……」

とアンデイが応えた。

「翔子さんて、村上翔子。池袋女子学園の?」
「美香、もしかして……テレパス」

美香はしかたなくうなづいた。

「そう、そういう能力のひとがいるとは思っていたけど。あなたたち姉妹は超能力者。頼のもしい味方だわ。よろしく」
「こちらこそ。都市伝説のクノイチ48のみなさんに会えてうれしいわ」

その夜。姉妹の六階にある部屋。
窓の外におおきなコウモリがへばりついた。



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斬るほうが痛いシ/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2010-12-30 00:45:29 | Weblog
8
これは……この感触は……。
指で触れている。
指で斬った。
Vの皮膚を裂き、肉を斬り、骨を断つ手ごたえ。

なんてオゾマシイ感触なのだろう。
吐き気をもよおす。

Vを斬ったのははじめてだ。
竹刀の打ち込みとはちがう。
想像もつかない嫌悪。

「イヤダ」

コンナの、いやだな。
悪寒がこみあげてくる。
背中がはじめての悪寒に、ふるえている。
正義のためだ。
人の世の正義のための剣を学べ。
そう教育されてきた。
これは正義のため。
でも絶対的正義などあるの?
体のふるえがとまらない。

「オネエ。あそこの路地にVを追いこもうよ。狭い場所なら……美香は無敵よ!!」

香世は姉の戦意がにぶっているのは広場恐怖症のためだと心配している。
美香は妹の心配りがうれしかった。
道場でのたちあいなら負け知らず。
広い体育館での大会となると動きがギクシャクとしてしまう。
姉妹で敵と戦うのは初めてだ。

斬るほうが、斬られるより、心が痛む。
たとえVでもこうむぞうさに斬り捨てていいものか。

「敵に情けはむようです。美香」

アンデイが母と、美香のかたわらに立っていた。
つい先ほど、平和の森公園で刃を向けた相手だ。
美香の太刀筋のとまどいがよくわかるのだろう。
ひとりでもおおくのVをこちらにひきつけたい。
百子たちは疲労している。
かなり長いこと忘年会帰りの女子をたすけようと戦っていたらしい。
わたしたちは、ここに招かれた。
クノイチ48と合流するのが定めだった。
姉妹は背中あわせ。
両側からVに襲われている。
アンデイがコートから人口血液のパックをとりだしグイのみした。

「マミー。戦いますか」 
「アメリカのwhite vampireか?」

Vの中から声がした。

「そうよ。ニューオリンズの生まれよ」

シャリーの凛とした声が合図となった。
Vの群れが四方からおそってきた。
その群れの中からクノイチガールズがよろけでた。

「くやしい。噛まれた。殺して」

香世にすがった。

「オネエ。たすけてあげて」
「black vampireにかまれても必ず発病しません」

ガールズの顔に希望がさした。

「このBVすぐたおします。そこですこしまってください」

それからのアンデイ親子の動き敏速なこと。
姉妹の目にもとまらない。
さきほどの平和の森での戦いはほんきではなかった。
すさまじい殺戮の現場に美香&香世は啞然とした。
吸血鬼。
オソルベシ。     


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クノイチ48+美香&香世/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2010-12-29 07:13:49 | Weblog
7

またイヤナ夢を見るのは嫌だ。
電車にのればあのここちよい揺れに誘惑される。
眠りこむにきまっている。
タクシーにした。
池之端の家への帰路で、さらに怖い体験をすることになろうとは……。

走りだしたタクシー。
フロントになにか物体が衝突した。
鉤爪がついている。

「だれだ、京イモをなげるヤツは」
「これが。京イモ?」

正月が近い。
スーパーなどでも売っている。
ヤツガシラを細長くしたようなイモ。
でも似ている。
茶褐色。短い毛が生えている感じ。
でも鬼の腕だ。
青い血がフロントにへばりついている。
でも、速い。
眼の前の物体はみるまに溶けた。

フロントのさきで吸血鬼が背中に弓矢を受けている。
腕と同じだ。ドロッとした青いかたまりとなった。
煙となってきえた。
あとにはなにものこらない。
だがみよ。
青い煙の晴れた向こう!!!
女の子が襲われている。
赤い霧。
苦痛に歪む女の顔。顔。顔。
忘年会帰りにでも襲われたのか。

それを助けようと戦っている少女たちがいる。
美香&香世はタクシーからとびだした。
路上では、Vが人間を狩っている。

それを少女たちが止めようとしている。
戦慄の光景がくりひろげられていた。
見過ごす姉妹ではなかった。
剣士の誇りに賭けても阻止する。

「ミカタするわよ!!」

Vとたたかっている少女に声をかけた。

浮船は香世に渡した。

「オネエは――」

美香は指剣をかまえた。

「ありがとう」
少女がこたえた。
青いカエリ血をあびている。凄惨なようすだ。

5人のVに取囲まれている。

「スケツトするわ!!」
「わたしはクノイチ48のリーダー。百子」
「わたしは……」
「それは幻の指剣。ヤギュウリュウ。但馬美香さんね」

襲い来るVを片手で斬り捨てた。百子にニコッと笑った。

「伝説の剣をみせていただくシ」

レヂェント。
都市伝説はほんとうだったのだ。
伝説のクノイチは実在した。
人が吸血鬼に襲われるとき。
どこからともなく。現われる。
救いのクノイチ。
そのリーダー。百子。

「いっしょに戦えて、ウレシイ。シ」

あまりに鮮明なイメージ。
百子の背後から襲ったV。
美香が挨拶しながら、斬った。
斬り捨てたV。
牙をムイテ。
鉤爪を突きだし。
百子を襲った。
Vがヒヒッと笑いながら溶けていく。 

鮮明すぎる。

「やだぁ!!」

香世がつぶやく。
そして香世もVにむかっていく。
Vだけてはない。
Vに憑依されている人間がいる。
Vの指令で身近な女の子にナイフできりつけている。

「香世。憑依されてるものは、斬らないで」
「わかつてるって」

その者たちには、きこえている。

「殺せ! 殺せ!! 殺せ!!!」

という悪意の声が。
Vの声。
耳もとの声に従って無差別に人を刺している。
山手線の中でみた夢。
また現実のものとなった。      




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赤い霧の中の顔/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2010-12-28 07:16:40 | Weblog
6

もともと倫子からきいた言葉だ。
ジャズでgroovyとは『イイ気分になれるイカシタ演奏』くらいの意味だ。
美香はfan。フアンくらいの意味としてとらえている。

たしかに美香はこわいものに魅かれる。
バンパイァの話は大好きだ。
怖いものが好きだ。
恐怖を感じるのが好きだ。
剣道だって死と紙一重のところで生きていることがわかる。
だから必死で練習する。
だって真剣だったら、もう死んでいる。
竹刀だから生きているが。なんて師範にいわれるともうメロメロだ。
体から血をふいて倒れる。
そうイメージする。

それだけでもう十分に怖い。
体に刃が突き刺さってくる。
その感触は? そうイメージする。さらに怖い。
痛み、血がながれる。その喪失感。怖い。

『啓示』だって同じようなものだと美香は思っている。
怖いものみたさで、怖い夢をみるのだ。
超能力なんて、大袈裟なものではない。
レム睡眠時によく夢をみる。
それを夢による知らせ。
予知能力なんて思いこんでいる。
こんどだってそうだ。

「羽田の国際線到着ロビーにいけ。そこにバンパイアがやってくる」

バンパイァがやってくる。
それだけだ。
そのvampireを迎え討てとはいっていない。
だから、ロックバンドをたぶん装って入国してきたVのヤッラのことではない。
アンデイ。――の、ことを夢枕でつげられたかも。

でもちょっと複雑。
香世も今回は同じお告げをうけている。

もしかして、やはり能力? フォースなの?  だと……うれしい。
――また『啓示』があった。
上野でおりる山手線を乗り越して池袋まできていた。
夢は真っ赤な血……? だった。
夢には色はないという。
ほんとかな。
色があった。
女の子が喉を食いちぎられていた。
となりにアンデイがすわっているからバンパイアの夢をみたのだ。

「オネエ。よく眠っていたから起こさなかった。また夢みたでしょう」

アンデイの隣で香世が体を少しこちらにずらして話しかけてきた。
香世にはわたしの夢の内容がわかっているのだ。

「アンデイは赤ワインの飲める店ならどこでもいいって」

夕食の話をしているのだ。
そうだ。
この親子と食事をしてみたい。
でも真っ赤な霧のような、その中で女の子が吸血鬼の生贄になっている夢。

気になるな。




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剣をぬきはなつ/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2010-12-27 09:58:42 | Weblog

5

「せっかく抜いたのだから、立ち合って!!」

美香がとんでもないことをいう。
オネエ、なにいっているか、わかっているの。
敵はこのひとではなかったのよ。
香世。わかっている。
でも……病院の警備職員の血をすっているかも。
オネエ。それはないと思うよ。
だって、アンデイは人口血液しか飲まないといいきってるシ。
ふたりは声にならない声ではなしあっている。
テレパシーだ。
それにわたし、広場恐怖症(あごらふおびあ)を克服したいのよ。
美香は行動に出た。
中段に構えた「浮船」が下から逆袈裟がけに斬り上げた。
アンデイがコートの裾を大きなコウモリのようにはためかせた。
5メートルも後ろに跳びのいた。
美香は現代の剣士だ。
道場でしか戦った経験がない。
広い場所が怖い。
体がすくむ。
これでは実戦にはむかない。
それを克服する。
美香としてはそう決意しての一太刀だった。
ともかく修行だ。
つらくても命がけで学んでいくしかない。

まだ日も高いのに、公園の樹木が深い影をつくった。
影はその場にいる者をひとしく薄闇に沈めた。
アンデイが鉤爪で流れていく浮船の峰を叩き上げた。
中指と人差し指だけがひと際長く伸びている。
美香の指剣を真似たのだろう。
アンデイも学習している。
美香の指剣がきにいったのだろう。
ふたりは斬り結んでは離れた。
離れては剣を交えた。
樹木は轟々と吠えだ。

「やめてぇ!!」

香世が声に出した。
絶叫した。
アンデイと美香の剣のすさまじさに香世は総毛立っていた。
このままつづければ、どちらかが傷つく。

「オネエ。美香はバンパイア・グルービーじゃなかったの」

はたとアンデイの動きがとまった。

「groovy? 美香? きみが?」

アンデイのママが叫ぶ。

「やめて美香。わたしシャリーよ。ミチコ、倫子のともだちよ」




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そう叫びつづけながら、手紙をさしだす。
美香の従姉のピアニスト柳生倫子からの紹介状だった。                    
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敵はロックスターだ/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2010-12-26 15:08:01 | Weblog
 4

「オネエ、タクシーが消えてる!!」

駐車場にならぶ車の中に、タクシーは一台もなかった。

「動いている。平和の森公園のほうに移動している」

美香がアンデイのコートに忍ばせた。
GPS機能を香世が携帯で確認している。

「誘われているのよ、オネエ。いくことないわ。もどってクリスマスケーキでも食べよう」
「早く食べちゃアないとね」

おもわずあいづちをうった。
そういうことではない、でしょう。
声にださないでいった。

「羽田の国際線到着ロビーにいけ。そこにバンパイアがやってくる」

確かに啓示はうけた。
だが、それだけだった。
べつに戦えとか、消去しなさいとか命令されたわけではない。
ことのなりいきで、戦った。

「まちわびたぞ」
太いイチョウの木の陰からアンデイが現われた。

「わたしも、まっていた。なぜ、息子のアンデイに刀を向けるの」

スレンダーな金髪美人だ。
ケツ顎のタラコ唇、ではなかった。
ラバースーツで偽装していたのか?

柳生家から先祖が譲り受けた名刀「浮船」の小太刀を美香はかまえた。
「美香。まちなさい。話しあってからでも戦える」
とアンデイの母。
「なんのための……ご来日ですか」
と香世がいう。
「ぼくは、東都大学の留学生。日米の比較文学論を卒論に選んでの来日です」

いがいな返事が戻ってきた。
香世の携帯がなっている。

「オネエ!!! 吸血鬼の集団が浜松町に現われた。羽田から到着した」

香世の仲間からの緊急連絡だった。

「アイツラだ。ぼくといしょに来日したロックスターたちだ」
                                    



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吸血鬼に恋をしたの?/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2010-12-25 14:04:49 | Weblog
3

美香は震えがとまらない。
頭から吸血鬼の姿を追いだすパワーはない。
アイツ美形だった。
ブラピにどこか似ていた。
『インタビュー・ウイズ・ヴァンパイア』を見て感動していたからかしら。
美香は倒れこむ。
香世が必死で美香を支える。
長身の姉を小柄な香世が支えて『人』の字になる。

「どうしました」

空港のセキュリティが駆けつける。
周りに人だかりができた。

「OK。ドンマイドンマイ」

香世がオカシナ英語で応えている。
美香は思っていた。
父の蔵書にあった。
田村隆一訳の『夜明けのヴァンパイア』。
あれで吸血鬼の存在をしった。
バンパイァにあこがれてしまった。
あれから5年。
やっと会えたのに。
はじめから命のやりとりをしなければならなかった。
運命の皮肉。
悲しいことだ。
だからこんなに消耗してしまった。
ああ、もういや。
じぶんの心にそぐわないことしている。
つかれるのだ。
こわいのだ。
からだの震えが止まらないのだ。

「まえにスタートした車、わかりますか」

タクシーにのった。
香世が運転手にきいている。
美香は心配顔で見送っているセキュリティのおじさんに手を振って挨拶した。
ごめんなさい。
ご迷惑かけました。
何人かがまだこちらをみている。
好奇心から……?
ねね。
わたしが戦ったのは吸血鬼だったの。
これから追いかけるのもその吸血鬼。
と、いったらあのひとたち、どんな顔をするだろうか。

「ほんとですか!!」

香世が頓狂な声。
なに、どうしたのと眼でたずねる。

「やだぁ。おねえちゃん。ボーっとしてないで。アイツの車がO森の赤十字病院の駐車場にとまったのがわかったの。この運転手さんの会社の車だったの。すぐ調べてくれたの。ラッキー」
 
赤十字病院のリノリウムの廊下を滑るようにやってくる。
カメレオンのような擬態だ。
だって、白衣。
それだけだって、病院に溶け込んでいる。
隠蔽的カモフラージだ。
普通だれがみたってドクターだ。
ハンサムすぎるけど。
普通ではない、姉妹にはバレバレだ。
でも、ここで戦いを再開するわけにはいかない。
ここは人の命を救うところだ。
人の命を危うくするような争いはさけたい。
柱のかげに姉妹はかくれた。

ナースステイションで看護師がひそひそばなしをしている。
能力者である姉妹にはきこえてしまう。
血液がぬすまれた。
警護職員がたおれていた。
血液がぬすまれた。

「オネエ、あまり元気ない。アンデイに恋をした? 吸血鬼の小説いっぱい読んでるものね。美香オネエは、バンパイァのファンだものね」 

アンデイの顔が、たしかに脳裏からきえない。
香世のいう通りかもしれない。
バンパイァに一目ぼれ???           


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鰐のエサはイヤよ/超能力シスターズ美香&香世  麻屋与志夫

2010-12-24 06:43:12 | Weblog
2

「light saber か」
アンデイは怯えている。
「ライトセーバー。ジェダイノの騎士の剣よね。でもチョッとちがうのよ」
説明してもわからないだろう。
ジェダイは日本語の『時代』からきている。
日本文化や映画大好きのジョージ・ルーカスらしい。
オチャメないずらだ。
まだまだスターウォーズには日本語がかくされている。
思いだしてはいられない。
いまは、指先に念を集中しないと。
ほら青い刀身がゆらいでいる。
バンパイァの額に青筋があらわれている。

「アンデイ!! あなたのすきな紫外線よ」

美香は男をにらむ。
一歩前に出る。
男は二歩下がる。
美香の指剣。
青いフレアが安定する。濃くなる。

「なんのための……ご来日ですか」

妹の香世も怖れていない。
なにげなくきく。念をこらしている。
舞台のふたりが人目にふれないように。
バリアをはって、神妙に舞台の隅に黒子のようにひかえている。  

「どうしてアン・ライスの世界からぬけだしたようなバンパイァのあなたが、日本に来たのよ」

とさらに香世はといつめる。
男は応えない。
応えられないでいる。
追いつめられた。
舞台の隅でしゃがみこむ。
黒いコートを広げた。
そしてコートがふわりとポシャル。
男は消えていた。

「タクシー乗り場のほうへ逃げた!!」

香世が走りだす。
美香は舞台の隅のコートをかかえた。
香世を追う。その先にいるであろうVを追う。

ピュと口笛がなっている。
Vか。
ちがう。
タラコ唇。
親指と人差し指でU。
それを分厚い唇にくわえ口笛をならしていた。
フトッチョの白人女。
Vの連れだった。
Vを呼び、タクシーを呼んだ女の口笛に救われた。

「忘れものよ」

黒のコートがコウモリの黒い羽根のように飛ぶ。
いままさに。タクシーに乗ろうとしている男の背中に迫る。
男は後ろ手でコートをつかむ。

「ブシノナサケヨ!!」
「コート、返すことないのに。オネエ」
「追跡装置はりつけておいたわ」
「ヤルゥ」

香世がパチンと指を鳴らした。
美香はその場にへたりこんだ。

吸血鬼とのはじめての出会いだ。
怖気がいまになって美香を襲った。
吸血鬼に吸われる前から、美香の顔からはすっかり血の気がひいていた。
真っ青だ。

「オネエ、ダイジョウブ」
「ダメみたい。お腹すいた」

能力の臨時放射過多。

「はい、アーンして」

香世が美香のくちにチョコレートをなげいれた。

「指剣を使うのになれなければね。
敵を倒す前にこちらがヘバッテたら戦にならないわ」

反省する美香。
男の美貌の影にとんでもない怪物が潜んでいた。
アリゲーターの獰猛な牙。
ザラツク鰐の肌。
残虐な目。
喉を噛みきられなかったのは構えた指剣のお陰だ。
血を吸われずに済んだのは指剣が青く光っていたからだ。
悪意の波動にエネルギーは吸い取られた。
あのままにらみあっていたら、こちらが倒れていた。
体がいまになって震えてきた。    


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新連載 「嵐だよ!! オネエ」/超能力シスターズ美香&香世  麻屋与志夫

2010-12-23 07:15:55 | Weblog
超能力シスターズ美香&香世「さすらいの塾講師第二部」    

1                          

「わぁ!! 嵐のJETだぁ」
「香世。そんなことで羽田に来たんじゃないシ」
姉の美香が妹をたしなめる。
ジーンズがよく似合う。170はある美少女だ。

「オネエチャン。だって、嵐だょ」
香世ははやくも携帯をかまえている。
こちらは小柄だ。
滑走路をゆっくりと嵐のジェット機が移動している。





美香もあわてて買ったばかりのパナソニックのデジカメをとりだした。
わあっと一斉に歓声が上がった。
機体の嵐の絵に気づいた女子が手すりに群がってきた。
いっせいに、携帯やカメラをかまえている。
一眼レフのオッチャンなどはじきとばされている。
すごすごと女のこの背中をながめベンチに退いた。
だれもそれには気づいていない。
すこしでも有利な場所を選ぼうとあせっている。
羽田第二空港ビルの展望台だ。
ほとんどが観光客だ。
おすなおすなの大盛況。
手すりにもたれていた。
発着する飛行機を眺めていた。
姉妹も、はじきとばされそうだ。
嵐の人気オソルベシ。
スサマジイ。
スゴイ。
人気バクハツだ。

「香世とれたぁ?」
但馬美香。青田女子学園高等部二年生17歳。
香世。中等部二年生14歳。
仲の良い姉妹だ。

「香世。何枚とった」
「オネエチャン。デジカメだからいいなぁ。わたしよくとれてないみたい」

妹は携帯の画面を眺めていた。
どんとひとにつきあたった。
壁に突き当たったみたいだ。
フトッチョの女。
ケツ顎。
タラコ唇。
「sorry」英語がみみにとびこんできた。
香世の携帯がはねとばされた。
「not at all」
と返事をかえしながら、香世はさっと手をのばした。
あわや、床でクラッシュと見えた携帯をキャッチした。
携帯の落下が一瞬とまったようにみえた。

姉はあわてて、ふりかえった。
外人女はすでに人ゴミに消えていた。
あのレディでもないらしい。
なにもわかっていない。
ただまたまた、夢をみたのだ。
香世もみた。
ふたりで同じ夢をみたのだ。
オカルト漫画好きの妹が「これは啓示だよ。オネエチャン」というので剣道部の朝の練習をさぼった。
なにかが起こりそうな期待感がたまらない。
日常のルーティーンがホコロビソウナ気配。
ワクワクしながら羽田まで出張ってきた。
おかげで、嵐の飛行機のピクチャがとれた。







出国エリアのある江戸前横丁。
「あれかな? どうおもう。香世」

下の到着ロビーからこの四階に上ってきたらしい外人。
豊かな金髪をオールバックになでつけている。
青白く輝く肌。
赤い唇。
襟もとはタートルネックの黒。
長身だ。
同じ黒のロングコート。 

美香が妹の顔をのぞきこむ。
香世の黒い瞳がきらきら光っている。

「うわぁ。イケメンダァ」
「そういうことではナイデショウ」

香世は姉がめをつけた白人の青年にカメラを向けている。

青年は親指を突きだしてぐいと下にむけた。
ギルティ。
のサインだ。

「なによ。アイツ。バカにされた」

ブワッと姉妹のロングへアが風圧にナビイタ。

「アイツよ。まちがいない」

ふたりの顔色がかわった。
同じ言葉がとびだした。 

男は江戸小路に去っていく。

「追いかけるよ、香世」 
「わざわざおでむかえか」

金髪のハンサムなのに、しわがれた老人の声。
それも日本語。
それも背後からきこえてきた。

「後にまわるなんて汚いよ」
「I think so too」
と香世も不服そうな顔で同意する。

ふいをつかれた。
おもしろくない。

美香には妹の不満がピンときた。
こんなやつ、ためらわずにつぶせばいい。
それが正解なのだ。
啓示は朝の目覚めかけた眠りのなかにやってきた。

「羽田の国際線到着ロビーにいけ。そこにバンパイアがやってくる」

啓示はふいにやってくる。
わからない。
とつぜんの啓示。
どこから来るのか。
わからない。

二階の到着ロビーまでいくことはなかった。
むこうから標的がやってきた。
それにしても、戦意が鈍りそうなイケメンだぁ!!

ザワッと男は江戸舞台の中央にとんだ。
長いコートがコウモリの羽根のようにはためいた。
「ヤバ。ひとめにつき過ぎる」

「舞台の周囲にバリアをはるから。オネエチャン。思いきり戦って」

「名前をきいておこう」

「但馬美香」

「タジマ? 柳生流か?」

「よくしっているわね」

「日本のサムライムービーのフアンだからな。おれは、ニューオーリンズから来た由緒正しいバアンパイア、アンデイだ」

さっとXメン、モドキの長い鉤爪が突きだされた。

美香が跳びのく。
指剣をかまえる。 

「おれをバカにしているのか」

指のさきが青白く光り出した。
ウッとアンデイの顔色がかわる。       


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