田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

鰐のエサはイヤよ/超能力シスターズ美香&香世  麻屋与志夫

2010-12-24 06:43:12 | Weblog
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「light saber か」
アンデイは怯えている。
「ライトセーバー。ジェダイノの騎士の剣よね。でもチョッとちがうのよ」
説明してもわからないだろう。
ジェダイは日本語の『時代』からきている。
日本文化や映画大好きのジョージ・ルーカスらしい。
オチャメないずらだ。
まだまだスターウォーズには日本語がかくされている。
思いだしてはいられない。
いまは、指先に念を集中しないと。
ほら青い刀身がゆらいでいる。
バンパイァの額に青筋があらわれている。

「アンデイ!! あなたのすきな紫外線よ」

美香は男をにらむ。
一歩前に出る。
男は二歩下がる。
美香の指剣。
青いフレアが安定する。濃くなる。

「なんのための……ご来日ですか」

妹の香世も怖れていない。
なにげなくきく。念をこらしている。
舞台のふたりが人目にふれないように。
バリアをはって、神妙に舞台の隅に黒子のようにひかえている。  

「どうしてアン・ライスの世界からぬけだしたようなバンパイァのあなたが、日本に来たのよ」

とさらに香世はといつめる。
男は応えない。
応えられないでいる。
追いつめられた。
舞台の隅でしゃがみこむ。
黒いコートを広げた。
そしてコートがふわりとポシャル。
男は消えていた。

「タクシー乗り場のほうへ逃げた!!」

香世が走りだす。
美香は舞台の隅のコートをかかえた。
香世を追う。その先にいるであろうVを追う。

ピュと口笛がなっている。
Vか。
ちがう。
タラコ唇。
親指と人差し指でU。
それを分厚い唇にくわえ口笛をならしていた。
フトッチョの白人女。
Vの連れだった。
Vを呼び、タクシーを呼んだ女の口笛に救われた。

「忘れものよ」

黒のコートがコウモリの黒い羽根のように飛ぶ。
いままさに。タクシーに乗ろうとしている男の背中に迫る。
男は後ろ手でコートをつかむ。

「ブシノナサケヨ!!」
「コート、返すことないのに。オネエ」
「追跡装置はりつけておいたわ」
「ヤルゥ」

香世がパチンと指を鳴らした。
美香はその場にへたりこんだ。

吸血鬼とのはじめての出会いだ。
怖気がいまになって美香を襲った。
吸血鬼に吸われる前から、美香の顔からはすっかり血の気がひいていた。
真っ青だ。

「オネエ、ダイジョウブ」
「ダメみたい。お腹すいた」

能力の臨時放射過多。

「はい、アーンして」

香世が美香のくちにチョコレートをなげいれた。

「指剣を使うのになれなければね。
敵を倒す前にこちらがヘバッテたら戦にならないわ」

反省する美香。
男の美貌の影にとんでもない怪物が潜んでいた。
アリゲーターの獰猛な牙。
ザラツク鰐の肌。
残虐な目。
喉を噛みきられなかったのは構えた指剣のお陰だ。
血を吸われずに済んだのは指剣が青く光っていたからだ。
悪意の波動にエネルギーは吸い取られた。
あのままにらみあっていたら、こちらが倒れていた。
体がいまになって震えてきた。    


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