田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

義弟との六十三年ぶりの酒盛り。 麻屋与志夫

2015-07-30 13:29:11 | ブログ
7月30日 木曜日
63ぶりの酒盛り。

●「酒の飲めるTという男がいっしよなんだ。こんど皆で飲もう」
そう誘ってくれたのはHだった。
高校を卒業して下沢の小学校に勤務していた。
「Kもいるし、みんな同期の桜だ。たのしいぞ」
「ああ、飲もう。飲もう」
わたしは、小学校の校庭で月を見上げながら快諾していた。
いまだったら、すぐにでも、ケイタイで連絡がとれる。
とうじは、すぐには連絡がとれなかった。
とれたところで、車がない。
自転車で集まるには、おたがいに離れたところに住んでいた。
そのままになってしまった。

●翌春、TはS大学の英文科に合格して、鹿沼を去った。
それから航空自衛隊。
縁あって妹が嫁いだ。
お互いに、ノンベエだということは、認あっていた。
でも酒を飲みかわす機会はついに訪れなかった。
かれは基地のある街を転々と移動していた。
Tが晩年20ほど患ってしまったこともある。

●わたしは、彼の遺影の前で精進落としの冷や酒を飲んだ。
やっと、ふたりでゆっくりと、酒がのめるな。
冥福を祈りながら、今宵は二人分飲んで、酔わせてもらうよ。

●ひとの運命とははかないものだ。
そして、なにが起きるかわからない。
おたがいの、運命の流れが合流したり、離れたり、
三途の河にながれこむまでの過ぎ去った、
その時その時のエピソードの数々を肴にしてわたしは酔っていた。



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義弟の死。 麻屋与志夫

2015-07-27 05:26:32 | ブログ
7月27日 月曜日

●酷暑。
こんどは、わたしの妹の亭主が亡くなった。
同じ年なので、さびしくなる。
友だちもなんにんか、かぶっていたので、
大学が英文科でキャサリン・マンスフィールドが卒論だったので、
――話しあうのがたのしかった。
ふたりとも酒好きだ。
でも、いっしょに酒を飲む機会はなかった。
――20年ほどわずらっていたので、
「酒を飲もう」とは誘えなかった。

●早世した文学の朋もいる。
このところ、葬式つづきだったので、
過ぎ去った日々の中で交流のあったかれらとの言葉のやりとりを思い出している。
黄泉の国からわたしに声援をおくってくれている。
おれたちのぶんまで、がんばって、生き抜き作家として大成してよ。
とはげましてくれている。

●ひとはだれかの支えで、
励ましの言葉で、
生きる張り合いが生まれる。
わたしを、はげましてくれていた義理の兄弟がこれでふたりも死んでしまった。
わが身辺に、隙間風がふく。
さびしくなった。


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おわかれだけが人生か? 麻屋与志夫

2015-07-21 06:46:14 | ブログ
7月21日 火曜日

●――カミサンがねています。
まだ朝の5時です。
まくらもとの、ソファには彼女の愛猫リリが、
カミサンとおなじようなポーズでスヤスヤムニャムニャ。

●4人いる、弟のいちばん下。
10歳もはなれた弟の発病、
入院、
手術、
ICUでの面会、
個室に戻ってひと安心したのに、
死。

●ICUで面会した。呼吸器をつけていた。話はできなかった。
それでも、上掛けのシーツのうえに、人差指で「ありがとう」とかいた。
あれが、Hからうけとったlast messageとなった。
いつも、まわりのひとに感謝のことばを吐露していた。
心根のやさしい弟だった。

●とうとつに訪れた死の通知。

●悲しみと心労で、
疲れはて、
このところ顔がひきつっていたのに……。

●そっと、障子をあけて、のぞきこむと――。

●あどけない少女のような顔で、ねています。

●弟と遊んだ、幼いころの夢でもみているのでしょう。

●わたしは、そっと障子をしめました。





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クラッシュジーンズがおもしろかった。かわいい。 麻屋与志夫

2015-07-09 10:25:45 | ブログ
7月9日 木曜日
●朝から曇り空。
雨はいまのところ降っていない。
テレビでいまの若もののファッションについて特集していた。
クラッシュジーンズがおもしろかった。
清潔な服装。
つぎはぎのないものを着たい。
それが常識。
でもそれを文字どうり、ヤブルという感覚がおもしろい。
わたしたちは、あまりにも常識にとらわれすぎている。

●「アサヤ塾」という進学塾を故郷鹿沼で主宰してから、半世紀になる。
生徒たちに「鹿沼の常識は東京の非常識。東京の常識は鹿沼の非常識なのだよ」くりかえしいってきた。
おそらく生徒たちに、いやがられていることだろう。

●某日。カンセキの園芸品売り場。
カミサンとバラの花をみていた。
老婆が近寄って来た。
「バラなんかきらいだ。トゲがあるからキライダ」

●VIVAのペット売り場。
売れ残って大きくなり過ぎたアメリカンショートヘアを見ながら。
「殺処分にならないといいな」隣の女性が――。
「人間はそんな残酷なことはしません」目くじら立てて怒りだした。
なぐりかかりそうな形相だった。
毎日、全国で何匹のあわれな猫や犬が殺処分されていることでしょうか。
たしかに、そんなことはあってはいけないことです。
でもソノ現実を認識したうえで、解決策を模索したいものですよね。

●横断歩道。
両側から来る車が孫娘と三人でまっているのだが、いつになっても止まらない。
おどろく、孫に、田舎町では車優先なのだよと教えた。
とうきょうだったら、両側とも気持ちいいほど一斉に止まってくれる。

●不用意に田舎町ということばをつかうと怒りだします。
ゴメンナサイ。

●先日も、小説をもっと読んでもらえるといいな。
読書クラブでも結成しょうかと、図書館の前ではなしをしていた。
とおりすがりの女性が「小説よむのなんか、きらいだ」とすてゼリフをのこして歩みさった。
これらのことが、頻繁に起きる。
これ常識。
信じられますか。
みしらぬひとにふいに悪態をつく、通り魔みたいで、わたしはこわいコトだと思いますが、いかがなものですか?

●弊衣破帽。
わたしたち昭和一ケタ生まれのものには、馴染み深いファッションだった。
だいいち、ファッションなんてことばはなかった。
魔よけ。
女性を近づけると勉強のさまたげになる。
女性のかた、ごめんなさい。
バンドに醤油をつけて変色してイヤなにおいのする手ぬぐいを、できるだけ長く下げる。
ホウバの高下駄をはく。
帽子は、買うとすぐに、軽石でこする。
カミソリで切って穴をあける。
黒の靴墨を塗る。
こんな、常識破りの姿で街をのしあるいたものです。

●穴あきジーンズをはく。
なにかあの時代の感覚が生きているようでたのしくなりました。

●こちらは、82歳のGG。
じぶんだけの、自分たちの世代の常識を若ものおしつけないように気配りが必要だ。

●GGの常識は若ものには非常識ととられるだろうから。




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