田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

魔闘学園  麻屋与志夫

2008-09-30 13:31:57 | Weblog
玉藻が黄金のフレァのなかで甲高く叫んだ。

「むだだ、何人集まってきても、わたしを倒すことはできない」

生け贄とした娘、メグミの身体にまだなじまない。
小娘の姿になったり、ろうたけた貴婦人のすがたになったりする。

しかし、そのまわりの黄金色のフレァは巨大な狐の動きをみせている。
尾がなんぼんもにわかれている。
しかし九尾とはかぎらない。
あまりの動きのはやさのために残映が残こる。
むすうの尾の動きにみえるのだ。

鹿未来の剣が残像の中心部をなぐ。
玉藻はとびすさる。
たかくとぶ。

鹿未来も玉藻と合体するように。
たかくジャンプする。

麻屋が錫杖を玉藻になげつける。

杖は弓矢のようにとぶ。

玉藻をつらぬく。

だが、なんの変化もおきない。

「これは幻だ。幻をあいてに、わたしたちは、戦っている」
すばやく鹿未来も理解した。

生け贄台には少女の肉体が星空をみあげるように仰臥していた。
「メグミなの。メグミ。メグミ」
Gガールズが驚きの声をあげる。
メグミと玉藻はまだ完全に合体したわけではなかった。
まだメグミは死んでいない。
メグミは失神していた。
こころを玉藻にのっとられていた。
あやっられていた。
台に固定されたメクミはもぬけのからだった。
空蝉。
メグミの身体のイメージだけが、玉藻の魂魄と一体化していたのだ。
いまならまだメグミを助けることができるかもしれない。
助けることができる。   
できる。はずだ。
Gガールズのみんなは、そう信じたい。

16

生け贄台を麻屋は押した。
満身の力をこめた。
ふんばった両足の筋肉がもりあがった。
両腕の筋肉が鋼鉄の束のようになって、きしんだ。
「なにをなさっているのですか」




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冬支度/堀こたつ

2008-09-29 18:03:39 | Weblog
9月29日 月曜日

●ホリ炬燵をかける季節になった。なにか今年は寒さが来るのが早いようだ。カミサンが掃除機をびゅんびゅん唸らせて年初来の埃をすいとっている。

●「埃ってどうしてこうもたまるのかな。マネーが溜まればいいのにな」

●甲斐甲斐しく働くカミサンにのほほんと声をかける。

●あなたって、こういう時はなんの役にも立たないのね。とはやさしい彼女はいわない。家事にかんするかぎり、わたしはなんの手伝いもしたことがない。娘たちはみな母親の味方だから、わたしにたいする評価はすこぶるわるい。

●去年はあまり卓上が乱雑としているので、ついに退去命令をくだされた。いちばん奥の部屋に蟄居させられた。

●ことしはそんなことが起きないようにこれでも卓上は整理したつもりだ。アスパラの箱をテープではりあわせて本立てを作った。

       

●これだとお金は1銭もかからない。これからもアスパラは飲み続けていくだろう。天井高く紙製の本棚を築き上げていくぞ。とはりきっている。

●そのうち、コタツの向こう側を通る小柄なカミサンがみられなくなりはしないか。それだけが心配なバカ亭主であります。

●「恋空」読んでいる。

●家から見える千手山公園の観覧車が、恋空のロケで使われた。わが「アサヤ塾」の女子生徒が夢中で読んでいるのを借りた。なかなか面白い。

●前からカミサンにラブロマンスを書いたらと、勧められていた。

●吸血鬼大好き人間のわたしには、ロマンスなど書けるものかと思ってきた。

●でも恋空をよんでいると、いいなぁ、こんな話も書けたらいいな、と心変わりした。

●とりあえず、「魔法iらんど」の「麻屋のブログ」でそれらしいものを書きだした。もちろん、そのまえからやはり同じ「魔法iらんど」で書いている「coelacanth3億8千年の孤独」そのまま書きつづけている。どうぞそちらも訪問してください。

●この「魔闘学園」がおわったら、どうしょう。吸血鬼の話は一休みして恋愛小説にしょうかな、などと迷っています。

●「愛は不滅よ」とカミサンが申しています!!

●「血吸血鬼は滅びても、愛は滅びないわ」

●そういうことでしょうね。ご高説かしこまってうけたまわっておきます。

●アスパラの本立ては、のちほどカミサンが写真に撮って載せてくれます。今夜は疲れているようだから無理かもしれません。



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魔闘学園  麻屋与志夫

2008-09-29 02:11:40 | Weblog
14
あれは狐火。 
狐の嫁入り。
死んだおばあちゃんがよくいっていた。 

石裂山の山腹をちいさな火が数珠にようにならんでもえている。
ああいう光りが並ぶのは山のお狐さまがお嫁にいくときなのだ。

シズカはおばあちゃんのことばを思い出した。

上久我に住むシズカから携帯が入った。
シズカはサッソク、アサヤ塾の連絡ネットに、
「バイクの集団が夜陰に乗じてめったに車などはいらない山道に消えていった」
と報告した。

「このさきは道がないの」
タカコのバックシートからシズカが飛び降りた。
ブナやくぬぎやニレの木の奥にただならぬ気配がする。
シズカもこの奥までははいったことがない。
月が白みかけている。
「三津夫」
車からとびだしたケイコが森の奥にむかってすごい脚力ではしりこんでいった。
輸血の効果があった。
すっかり元気をとりもどしている。
たくましい野生の生命力だ。  
犬のようにみえた。

15

頭がふらつく。
突進してくる吸血鬼の爪がしだいに三津夫のからだに深く突き刺さってくる。
避けられない。
このとき闇の底の下ばえをかきわけ、犬がとびこんできた。
「三津夫、ぶじだったのね」
「心配するな。これきしのあいて……」
「そうでもないみたいよ」
 三津夫にからだをこすりつけ。ケイコ――犬飼一族の長老の娘が変身したままの姿でいう。
「三津夫といっしょに戦えてシアワセ。ネネワカル。感じる? わたしと三津夫は遠いむかし、やはりこうして妖狐の部族と戦った」
「なにいちゃついてやがる」
あらたな黒装束の悪鬼がケイコのまえにすすみでた。
ケイコがすばやくうしろにまわりこむ。
悪鬼の首にかみつく。
ケイコの犬歯でかみくだかれた首筋から緑の血がどろりとしたたる。
腐った臭いがした。
「番長」
「三津夫」
「おにいちゃん」
いっせいに喚声がわきあがった。
ほの暗い樹の影をぬってスケットが到来した。
二荒タカコ率いるサンタマリアのGガールズ。
副番、番場の率いる鹿陵Gボーイズ。
「番長、三津夫さん。おくれてスゥマセン」
異口同音に硬派の声がほの暗い森にこだまする。

麻屋は玉藻と真剣をもって対峙する鹿未来のところにかけよった。
「そのかまえは、蘇ったときいている皐道場のお嬢ですね。総本家、草久の麻生から別れた、あなたのところとおなじ分家、麻屋です」

「これでわたしに敵対するものが勢揃いした。覚悟してかかっておいで」



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小さな秋の旅/ロカール線烏山「竜門の滝」

2008-09-28 13:26:01 | Weblog
9月28日 日曜日
●宇都宮から宝積寺。乗り換えてローカル線は烏山線。わたしたちの世代だと知っている「蛇姫様」という映画で有名な場所だ。原作は川口松太郎。

       

       

●ローカル線での日帰り、小さな旅にでた。
●ワンマンカーで、運転手席の後ろに運賃箱がある。二輌編成だ。下りるときはこの運賃箱に無人駅から乗った場合はお金を入れる。

       

●「下野花岡」というこころよい響きとロマンチックなイメージを膨らませてくれる駅名があった。澄み渡った秋空のはるか北の彼方は福島県。智恵子のほんとうの空が広がる安達太良山はあの方角だろうかなどと想った。

       

●小塙トンネル(?)をくぐると「滝」駅だった。プラットホームから直、道路にでられてしまうのがおもしろかった。

       

●このところ、「魔法iらんど」のbooksのほうで「coelacanth三億八千万年の孤独」というタイトルで恋愛小説も書きだした。「麻屋ブログ」も載せている。恋空で人気を博しているサイトだ。こちらは何せ年配なので心配だ。訪問者はおそらくぴちぴちギャルばかりなのだろう。
●そんなわけで「50年後の恋空」みたいな小説を書きたいものだと構想を練っている。恋愛は成就したあと、長い日常がまっている。わたしたちはいまだにトキメイテいる。まだ恋愛の旬、ずっとずっと楽しい。ずっとずっと一緒にいる。そのことを書いてみたいのだ。
●いま「恋空」読んでいる。テレビドラマを見ていても純愛もの、涙を誘うドラマが流行なのかと思う。吸血鬼作家としては一番書きにくいテーマだが挑戦していきたい。
●歩道に、栗のイガが落ちていた。イガの向こうで川音が高鳴り、滝が見えた。というのは誇張した表現だ。飛瀑の音が聞こえてきた。

       
      
●夏の間、雨が多かったためか、竜門の滝は水量もおおく、ドウドウと音高く流れおちていた。その高さ20m。幅65m。みごとな風貌をみせていた。

       

       

       

       

       

       



●しぶきを顔に受けてカミサンがシャッターをきっている。その真剣な横顔がいい。
「虹がかかっている」滝の音に負けまいとカミサンに呼びかける。カメラを虹の方に向けることで応えてくれた。

       

●突然滝の上空で汽笛が鳴った。烏山線が通っているのだった。
●「竜門ふるさと民芸館」では案内の男の方が親切に色々な話をしてくれた。冷たい麦茶のサービス。すごくおいしかつたです。ごちそうさまでした。二階の展望台からの滝、カミサンは感激して何枚もカメラにおさめた。
●ロマンチックになれる隠れ里にあるような竜門の滝。若い人のデートスポットとしてもお勧めのローカル線の小さな秋の旅でした。
●写真は今夜あたりカミサンが載せてくれる予定です。

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魔闘学園  麻屋与志夫

2008-09-28 09:29:42 | Weblog
玉藻と鹿未来がいいあらそっている。
Dの配下のいまや黒装束となった吸血鬼集団が包囲網をじわじわとせばめてきた。
彼らは黒と白のリバーシブルの衣装を着ていたのだ。
それでこそ、新鹿沼前で彼らがふいに消えた謎がとけた。
あのとき妖狐たちは白い衣装に裏返して雑踏にまぎれたのだ。
三津夫はかれらの動きを油断なく目でおいながら玉藻と鹿未来の話しにききいっていた。
いろいろなことが起き過ぎる。
妖孤という代紋を背にした黒装束のコイツらと駅であってから。
彼は異界を見てきた。
いまさら、なにを見ても、なにが起きてもおどろかない。
じぶんの肉体にも変調は現れている。
この包囲網をやぶれるのか。
相手の強さはわかっている。
パンチや脚の蹴りの破壊力はさほどない。
牙がこわい。鈎爪で引き裂かれる傷は深い。
このふたつの攻撃は、どんなことがあっても避けたい。 
鹿未来は戦えうるのか。
このオバサンは自分のことくらい守れるのか。     
かんがえていると。
鹿未来がどこにかくしもっていたのか‼
剣をぬいた。
きりこんだ。
三津夫は知らないが、鹿沼は稲葉鍛冶の鍛えた技ものだ。
夫さえ泣きながら切った鹿未来だ。(吸血鬼浜辺少女、参照)
吸血鬼をにくむきもちは強い。
死可沼流の始祖の娘の剣さばきだ。
いま起きていることが、三津夫にはどうしても現実とは思えなかった。
ためらって、かんがえていると敵が襲ってきた。
鉤爪をむきだしにしてシュというようなかけごえをかけてかれの胸をないだ。
三津夫はぎりぎりでかわしその腕を逆にとる。
ひねった。
黒装束が回転しながら着地した。
「敵も、パワーアップしてるようだな」
避けたつもりだった。
三津夫の胸筋が浅くではあるが、きりさかれていた。
痛みはなかった。
アドレナリンが分泌されているからだ。
三津夫の右足のまわしげりが敵の悪鬼にヒットした。
ヒットしているのだが黒い悪鬼には重量というものがないみたいだ。
ボールでもキックしたようにとびさっていく。
ダメージは受けていないようだ。
すぐにぶきみな雄叫びをあげてはねかえってくる。
御殿山での闘いの再現だ。
これでジレた。
深追いして失敗したのだ。
人間どうしの戦いとちがう。
技がつうじないあいてだ。
相手は人外魔境にすむ悪鬼……。
吸血鬼。
妖狐の一族だ。
胸の血が止まらない。
「むりしないで。すきみてにげて」
ささやくように、三津夫に戦いぶりをよこめで見守っていた鹿未来がいう。
彼女も全身に敵の青白い血をあびている。
ただひとつの救いは悪鬼には悪鬼なりの闘いかたがあるらしい。
ひとりしか向かってこない。
あとのものたちは鹿未来と三津夫を遠巻きにしている。
妖狐の棟梁、ボス。
玉藻の後にひかえている。      
「そんなことできるか」
「赤い血をながすものには、失血死があるのよ」
たしかに三津夫の筋肉は人間離れした状態を維持している。
だが、気力が萎えていく。
体が安定しない。ふらつく。
限界か。心臓が喉元につきあがる。


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魔闘学園   麻屋与志夫

2008-09-27 19:07:20 | Weblog
御殿山での救出が遅れれば。
あそこに捕まっているのはケイコだった。
おれはなんてジコチュウな人間だ。
じぶんの彼女のことばかり考えている。
ケイコの無事ばかり気にしている。
銀色に輝く月光りが雲間からさしていた。
夜空からおちてきた光りが収斂して、一条の白銀色の光柱となった。
月の雫をあつめスポットライトのように輝くそ円筒場の光りのなかを。
みよ、人型をしたものがゆっくりと降りて来る。
「玉藻のスピリッよ」
玉藻の精霊である人型が生贄のメグミに重なる。
みるまに、白く輝く裸身があらわれた。
「実体化したわ。もうだれにも、とめられない」
玉藻がふたりのほうふりかえった。
巨大な黄金の狐が空に吼えた。
白い布で囲われた空間に、裸身の玉藻と妖孤が交互にオウバーラップする。      
「逃げましょう。わたしたちだけでは闘えない」
「あの少女のかたきをうつ」
「だめ。力だけで倒せるあいてじゃないの」 
鹿未来が三津夫の手をひいてはしりだした。
ふりかえると、玉藻が狐の姿をしたままおいかけてくる。
黄金色のフレァがあたりにただよい。
その周辺に白衣を黒服に裏返したものたちが伴走している。
「おいつかれるわ。もっとはやくはしれないの」
100めえとる12秒をきることもある三津夫だ。
全速力で走っている。
樹木の小枝をはじきながら必死ではしっている。
その彼が、鹿未来にはついていけない。
妖狐とロゴを背に刺しゅうした特攻服の。
ものたちは人外のものか。
重力などの作用の外に生きるものなのか。
滑るようなスピードで追いすがってくる。

13

「玉藻。わたしをだましたのね。あなたを追討する側に参加しなかった大谷の一族であるわたしたちを、たぶらかしたわね」
「わたしが……あのまま広大な宇宙空間をただよっているとでも思ったの……甘いのよ。いくらわたしが中国から渡ってきた外来種の吸血鬼でも、源流をたどれば同じ宇宙種よ。あのとき、どうして援けてくれなかったの。あなたたちが、味方についてくれさえしたら、わたしは千年ものながい眠りにつくことはなかった。安部泰成に封印されることはなかった。戦乱の世に中立なんてことはありえないの。敵か味方。殺すか、殺される側になるか。共に戦ってこそ味方なの。いいこと共に戦ってくれないのでは、敵方についたも同じなのよ」
「なにをするき」
「きまっているでしょう。この下野の地、この鹿沼を混沌に落とし……、滅ぼしてやる」
「玉藻さん、やはり……あなたは可哀そうな人よ。人をうらんでは、とくにわたしたちは人をうらんではいけないのよ」
「洞窟のなかで千年、じめじめと生きてきた意気地無しの大谷のものがなにほざく」


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魔闘学園 麻屋与志夫

2008-09-26 04:39:15 | Weblog
11

 加蘇地区のトモコから連絡。
 バイクの集団が久我にむかっていったそうよ。
 ケイコが元気をだして、みんなに報告する。

 久我のミホからよ。車もはいらないような山道でバイクの音きいたひとがいる。
 久我は加蘇地区の最深部にある。

「きまりだ。やっら、石裂山にむかった」
「どうして、センセイ、石裂山だっていいきれるのですか」
「番場そのことはあとだ」
 武の乗ってきたクルマにケイコと麻屋だけが同乗した。
 あとのサンタマリヤのGガールズはバイクだ。
 番場も仲間のバイクのリヤーシートだ。

12

「おみごと」
 部屋のすみに光りがさした。
 それは、屋根をつきぬけて。
 いや宇宙の彼方から円錐形の白い光りにつつまれておちてきた。
 仄かな光りのなかに女性がいた。
 光りにつつまれていて、衣服をきているのかどうかもわからない。
 すごくきれいなひとだ。
「あなたは、とうしてつかまっているの」
「あんたこそ、だれなんだよ」
「これは、しつれい。わたしはカミーラ」
「ジャパニズじゃないんすか」
「鹿沼の未来。鹿未来とかくの」
「この縄といてくれよ」
「とっくに、とけているわよ」
 筋肉に力がみなぎった。
 あの瞬間にとけたのだ。
 そうか。あのとてつもない能力が回復したのだ。
 あたえられた力をまだ自在にあやつることができないでいる。
 鹿未来は三津夫とならんで窓べによる。
「生贄にささげるのね。わたしはだまされていた。遠い、外宇宙にとぶとおもったのに、玉藻はまだこの鹿沼の地にこだわっていたのね、でも鹿沼のどのへんかしら」
「おれ、気がついたんだけどさ、こんな辺鄙な山のなかだと、これは石裂の山奥だよ。福島の原子力発電所からの送電線が前日光高原の横根山から石裂山へとおっている」
「尾裂山、そうだわ。九尾の狐の本体はここに封印されているのよ。わたしたちが殺生石でたたかったのは、あのひとのスピリット、霊魂だったのよ」
 鹿未来の説明でぼんやりとわかってきた。
 三津夫はいまじぶんの周りでおきていることがわかった。
 吸血鬼の姫、玉藻の前が再臨しようとしているのだ。
 阿陪泰成の呪法で地中深く封印されていた玉藻の前。
 その伝説の地がこの久我は石裂山であった。
 千年にわたる永い眠りから肉体をよみがえらせようとしているのだ。
 それで生贄の儀式をしようとしている訳がわかった。
 ともかく、ここからでなければ。
 三津夫は裏口のドアのノブに手をあてた。
 べろんと肉がやけただれた。
 夢のなかで感じていたアレだ。
 さらなる、乾きにおそわれる。
「心霊バリァがはりめぐらされているのよ」
 退いて、という動作とともにカミラは腕をうえにかまえた。
 気を溜めているのだ。
 両腕をそろえたまま胸のまえで組むと気合いがほどばしった。
 ドアがふきとんで、闇がなだれこんできた。
 小屋の裏は深い森につらなっていた。
 白い障壁ははりめぐらされていない。
「あの少女を……たすけなければ」
「おそい。おそいのよ、あの娘(こ)はもう人としては生きていない……」
 ひんやりとした夜の底をはしった。
 むせかえるような緑の匂いがする。
 岩の上にふたりははらばいになった。
 はるかしたに生贄台がみえる。 




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麻と鹿

2008-09-25 17:54:26 | Weblog
麻と鹿
9月25日 木曜日
●麻生太郎氏が総理になった。めずらしいキャラの総理の誕生だ。これからの活躍を期待する。ただ失言癖があるらしい。マスコミの批判の的にされないように慎重に頑張ってもらいたい。

●オタク。オタクと呼ばれて、バカにされてどれくらい経つだろうか。元祖オタッキーの、いまだにカムバックできないブログ作家としては、漫画文化にも造詣の深い総理が、文化芸術、教育に、なにか新風を吹きこんでくれる。とまあ、期待しているわけだ。

●中国の三鹿食品のメラミン混入、毒入り粉ミルクが話題なにっている。汚染米、毒入り餃子と、もううんざりだ。こと人の生命にかかわることなので、うんざりだ、などと軽々しくかたずけるわけにはいかない。

●「麻」の文字。「鹿」の文字。

●どちらもわしに関係がある。これらの文字を新聞、テレビ、パソコンのネットでみるたびにどきりとする。

●わたしの名前は、麻屋与志夫。

●わたしの住む町は、鹿沼市。

●麻と鹿の文字が当分の間は、マスコミを賑わすだろう。

●原稿が売れないかな。それで麻屋の文字をテレビ、新聞、パソコンで見たい。

●鹿沼はもうじき秋祭り。来訪者がわんさわんさこないかな。うれしい悲鳴の鹿沼。そんな話題で、鹿の文字を見たい。



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魔闘学園  麻屋与志夫

2008-09-25 06:29:31 | Weblog
「携帯で連絡だ。
「アサヤ塾」の連絡網を使え。
バイクの集団を見なかったか? ききまくれ」
連絡を受けてサンタマリヤのGガールズと。
三津夫の身を心配して鹿陵高ボイズが集まってきた。
番場がバンバン携帯をかけまくる。
長いあいだつづいている「アサヤ塾」だ。
卒業生までいれれば、鹿沼のいたるところにいる。
携帯でつながっている。
電脳空間に。
総番の危機‼
所在不明‼
が。
ニュースとなって。
とびかう。
鹿沼の街を携帯の電波がネットとなってとびかった。
ネットの目は時間とともにひろがった。
ネットの目はひろがりながら。
さらにこまかくなった。
バイク一台のがすまえと。
ネットによる街のスキャンがつづいた。

10

鉄塔が風になっていた。
獣のうめき声。
のように聞こえる。 

悲鳴。
 
隣の山小屋からだ。

隣の山小屋から少女がつれだされた。
ケイコかと。
ぎょっとした。

妹のタカコくらいの体つきだ。
三津夫は知らなかったが。
メグミだった。

病室から消えた。
タカコのGガールズのメンバーだ。     

三津夫はさらに力んだ。        
筋肉の束に命令をだした。       

たちきれ。
こんなロープのいましめ。

はじきとばせ。 

力がみなぎる。
胸筋がもりあがる。

上腕二頭筋がきりきりとひきしまる。
いままでのじぶんではない。

とてつもない力が。
筋肉の束に集まる。

とてつもない躍動感が‼
頂点にたっした。
ロープがはぜとんだ。

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魔闘学園  麻屋与志夫

2008-09-24 06:39:44 | Weblog


武が御殿山に駆けつけた時には。
闘いはすんでいた。

「三津夫がいない。
番場そのへんをさがせ。
傷ついて倒れているのかもしれない」
めずらしく、麻屋が大声で叫んでいた。
焦っていた。

「三津夫さん、三津夫さん」
公園のおくで声がする。
ケイコの声だ。
武も。
アサヤ塾のコンパであった。
ことのある少女だった。
ふっくらとした娘なので、声にもふくらみがある。

ケイコは無事だった。
武はあんどした。
「さあ、みんなのところにもどろう」
「刑事さん。いない。彼がいない。三津夫が捕まった」
「おちつけ。どうなっている?  はじめから話して」

三津夫がいないとは?
どうしたことだ。

「黒い特攻服の男こたちにつれていかれた。
あいつら、山陰げにバイクをかくしていたの。
ふいに沸いてでた。
なんにんかの男たちに拿捕されたの。
あいつら。
スタンガン使ったの。
それで。
三津夫は動けなくなった。
倒れた。
ひきずられていった。
わたし間に合わなかった。
どうしょう」      

ケイコは地面に鼻をおしつける。

犬が遺臭を追いかけるときの動作だ。

       

       

       

      
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