田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

悪意の放射/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-09-29 21:48:59 | Weblog
6

道場の壁掛け電話にでたミイマの声があらたまっている。
「はい。さきほどはゆっくりご挨拶もできずごめんなさい。
えっ!? おみえになっていませんけど」

GGは爆弾の件を六本木署にとどけたので、まだ現場検証のために帰宅していない。
おどろいたことに、最初から本署の刑事がきた。
そうした連絡をミイマにして来たばかりだ。
お偉方が出席していたからだろう。

ミイマの顔色が青白くかわった。
そばにいた、翔子、玲加、百子の三人は、
歌舞伎町の大殺戮を特番を組んで報道しているテレビを止めた。

「小山田副総理の夫人からの電話なのよ。
お嬢さんの日名子さんが帰宅していないらしいの。
うちの道場に入門手続きに寄る、
といったきり……連絡がとれいというの」

「爆弾騒ぎはフエントだったかも……。
犯人の真の狙いは日名子さんの誘拐にあつたかも」
と翔子。
「彼女はわたしの上級生なの」
と翔子はつづけた。
ミイマはいま凶悪な気配にこの道場がとりかこまれているのを感じだ。
いや、この道場と特定するのはまずい。
わたしたちが悪意の放射をあびているのだ。
なにか凶悪な獣がごそっと動きだしたのだ。


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見えない敵/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-09-28 11:00:21 | Weblog
5

神代会長とGGは異変に気づいた。
ミイマはバラの鉢を抱えて部屋を出た。
ふたりはそれを視野の隅でとらえた。
なにか在った。ミイマはなにか気づいたのだ。
GGはミイマのあとを追いたい。
必死でこらえた。
心臓が破裂しそうなほど苦しかった。
この瞬間にもミイマを追いかけたい衝動に耐えた。
あきらめてはいけない。がばれ!! ミイマ!!! 
惨事は止めなければ。でも、ミイマにもしものことがあつたら。
ミイマの背にエールを送った。
行動を共にできないで、ゴメン。

爆弾か毒薬を噴霧するような危険な装置が隠されていた。
そう推察するのが妥当だろう。
「廊下のほうにもバラが飾ってありますので、どうぞご鑑賞ください」
神代が静かに告げた。
GGが部屋から廊下へと落ちついて、会場のひとびとを誘導する。
「へんね。バラなんか飾ってないわ」
「バラの小道があるけると思ったのに」
「ロマンチックなこというわね。そうよね。廊下の両側にバラを飾ってあれば、バラの小道。イイ趣向だと感心したのに」
廊下に出たひとたちがブーイング。
「おくれて、すみません」
玲加がうまい具合にエレベーターから現われた。
バラの鉢を両手でかかえている。そのあとから、ミイマ。

ビルの外で重苦しい音がした。
それは不吉な音。
大惨事をまねいたかもしれない音。

でもその音に気づいたのはミイマと玲加だけだった。

「みなさん、遅れてすみません」
玲加が詫びている。
GGとなにごとかうちあわせていたミイマが素早く玲加のところにもどってくる。
玲加があとからエレベーターから降りてきた少女たちに指示している。
バラの鉢が廊下の両サイドに並べられていく。
「わあ。バラのプロムナードよ」
百子も純白のアイスバーグの鉢をかかえて現われた。
その背後から百子と同じような黒のスーツの少女たちが、ソフィーズ・ローズ、セント・セシリヤとかずかずのバラをかかえて――廊下に整然とならべだした。
会場の扉が閉められた。
神代、ミイマ、GGが室内を隈なく点検する。
飾り立てたバラの周辺には、まだ強烈な悪意がのこっていた。
ミイマを不安にさせていたのは、これだった。
ミイマの不安は錯覚ではなかったのだ。
ミイマに不安を感じさせた元凶が、ここにあった。
邪悪な残留思念がまだ漂っていた。
もしここで爆発していたら、と思うとGGはゾッと悪寒に襲われた。
小規模な爆発だったらしいが、それでもこの部屋は大混乱となった。
かれらにとってここが受難の地となったはずだ。
特攻のようなミイマの判断がみんなを救ったのだ。
「よく、あの鉢をとっさの場合にわかったな」
「あら、お父さん簡単よ。鹿沼バラ園――わたしの庭からの出品がアレ一鉢ということはありませんからね。それにウチには、まだシャリファ・アスマは咲いていないのよ」

廊下には純と翔子も駆けつけてきた。
百子が委細を翔子に伝える。
翔子が初対面の玲加と百子に歌舞伎町の惨事を話す。
「チョヤバ」
三人の少女たちが同時に小声で叫んで首をすくめた。
 
だが、三人の最強の少女たちが「Maxヤバイ」と大声で叫ぶ事件がおきたのは、大森にあるGGの『BB刀エクササイズ』道場にもどってからだった。

    アイスバーグ

        

        

    ブラックティ

        

    クリスチャン・ディオール

        



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バラ爆弾?/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-09-27 12:40:53 | Weblog
4

六本木『ローズビル』は麻布十番に隣接している。
そのビルの最上階が会場となっている。
大日本バラ展のオープニングとして催された会だ。
バラ愛好家が参集した。盛況だ。
各界の著名な人たちの夫人が出席している。
神代バラ園の園長、ミイマの尊父が挨拶をおわったところだ。
「ミイマが、どうした? なにか気にかかることでも……」
「セキュリティは万全のはずなのに……不安なのよ」
会場の中央には鉢植えの見事なバラが飾ってある。
神代バラ園からはもちろん、鹿沼のミイマのバラ園からも出品されている。
「なにも不穏な気配はない。おれにはわからないな」
GGがミイマを慰めるようにいった。
「でも……なにかチクチクするの。だれかに見られているのかしら。それも悪意の視線で……」
「会場をひとまわりしてくるね。それに……皆様にご挨拶もあるし……」
どうしてこうも不安なのだ。
不安をとおりこして恐怖すら感じる。
毬栗をたたきつけられるようだ。
パーテイを享受しなければ、バラを栽培するものが、年に一度みんな――ロゼリアンのひとたちと楽しめる宵なのに。
わたしどうかしている。
年甲斐もなくあわてている。
子羊のようにおびえている。
すれちがう、顔見知りの人たちに笑顔で挨拶する。
スピーチもおわり、講壇にそそがれていた全員の視線が飾られたバラにむかっていた。
「今年は猛暑だったから、秋バラをこんなにみごとに咲かせるのは、たいへんなご苦労だったでしょうね」
富裕層のひとたちが、なんのへだたりもなく、バラの話題に花を咲かせている。

翔子からきいた、新宿は歌舞伎町の通り魔、殺傷事件、自傷者の事件が気になっている。大殺戮に発展しているのをミイマはまだしらない。
マナモードにしておいた携帯がふるえた。
「ごめん。ミイマ。連休なので、交通が大渋滞で出品ままにあわなかった。いますぐいくね」
なんということだ。
鹿沼の玲加からだった。
鹿沼のバラ園を任せてある玲加からだった。
だったらいまわたしの目前の、会場に飾られている鹿沼からのバラは!!!
ミイマはバラ鉢を抱えるとひと、ひと目を忍んで会場をぬけた。

遅れて受付来ていた来客が「それはわたしが」と叫ぶとミイマから鉢を受け継いだ。
百子だった。



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吸血鬼のテロ?/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-09-26 06:24:06 | Weblog
3
純は翔子をかばった。
倒れているひとを取り囲んだ人ゴミをわけて、風が吹き寄せる。
黒い風だった。その少し前から、純は気づいていた。
ひとびと周りに漂っていた。黒い夜霧? 
うごめいていた霧が集まった。
霧のほうでも純に気づいたようだ。
そして真っ向勝負をしかけてきた。
虫に襲われたようにフチッとした痛みがある。
いや礫をたたきつけられたような痛みになる。
礫には恐怖が付いている。
礫には血の臭いがしていた。ヤジウマの目前に倒れている。
血を流して倒れているひとの血だろう。
「吸血鬼でないのかもしれない……」
血の臭いはするが……吸血鬼の気配はない。
その言葉を翔子がきいた。すばやく反応した。
携帯を手にしている。

携帯が微動した。
いままさにミイマを呼びだそうとしていた。
「それはFかもしれない。あのひとはそれくらいのことはできる。あのひとは世の人への憎しみだけで生きながらえているの」
ミイマは元彼の藤原信行をFと呼んでいる。
「それより、その自殺未遂の男や、ナイフを隠し持っているものたち――ひとを襲うわよ」
ミイマは恐ろしいことを伝えてきた。
 翔子は百目鬼刑事にミイマからの警告を伝えた。
「わたしたちミイマによばれているから。いくね」
その間にも、群衆がばただたたおれだした。
絶叫。
悲鳴。
恐怖の叫び声。
歌舞伎町の夜は大殺戮。
恐怖の夜となった。
「ミイマがこちらの様子をしっていて、わたしたちを呼んでいる」
「緊急事態なんだ」
ふたりはふたたびタクシーのなか。
純はさきほどの悪意の風を思い起こしていた。
こんどは万葉集を引用して愛をササヤクどころではない。
でも、翔子の手をしっかりとにぎっていた。
翔子も固まっていた。
「なにがあるの……」
「今夜はミイマのお父さんが会長をつとめている、
『大日本バラ愛好会』の会合がある夜だった」
「そうよ、忘れていた。暇だったらおいでっていわれていた」
「各界の著名人の奥様がたが参集するはずだ。
六本木のローズビルのホールでは入りきれないかもね。
……なんてミイマ、わらっていた」
「運転手さん、もっと、トバシテ」
「緊急なのよ。とばして!。トバシテ!!!」 




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魔王の登場? /さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-09-25 07:06:23 | Weblog
2

純が瞬時に翔子の前にでた。
ふたりを砂嵐のような空気の流れがおしつつむ。
砂の粒には悲嘆、苦悩、失望がへばりついている。
ざらついた紙やすりで頬をこすられたような攻撃が襲ってきた。
強烈なむきだしの『悪意』をふくんだ気の流れのなかにとらわれてしまった。
わたしより正面からまともにこの凶悪な風圧をくらった純は
……と見る。
肩でおおきく息を吸っている。上半身が揺らいでいる。
だが、ぶじだ。
後ろから純を支える。
純の体がこきざみに震えている。

「マイナスの念波だ。のみこまれるな、翔子」
「わたしは大丈夫よ。やっとふたりだけの時がきたのにね」

遮蔽の壁となって翔子を守ってくれた。
翔子は後ろから純に抱きついた。
純が悪意の風圧に耐えきれずずっと後ずさりした。

「自傷行為です。犯人はこの気の流れです。ナイフを所持しているものが、このマイナス思考の嵐に耐えきれず、じぶんを傷つけている。そうとしか思えません」
「そんなバカな。SF小説じゃあるまいし。念の力でそんなことができるのか」
「はっきりとは――断言できませんか」
「サイコパワー、なんて在ること、それだっておれには信じられない」 

群衆のなかで悲鳴が起きた。吸血鬼の姿はない。
吸血鬼のいるアトモスフィアは感じる。
ひとびとは、目に見えない殺戮者に怯えている。
おたがいに、顔を見合わせている。
隣にいるものが信じられない。
隣にいるものに疑惑の視線を集中する。

純の顔がゆがんでいる。翔子がはじめて見る純の苦しそうな顔。
ふたりだけになれてうれしいね。
と万葉の歌を口ずさんで翔子に伝えていたのに。
苦しそうな、悲しそうな顔。

「敵はかなりの大物だ」
「いままでの吸血鬼とはけた違いみたい」
「吸血鬼でないのかもしれない」
「……??……」


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翔子と純の愛/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-09-24 00:59:09 | Weblog
第五章 翔子と純の愛

1

 村上家のなごやかな夕食。純もいる。
 Gに翔子が言った。
「鹿沼のGGがかわいそうなの。すごく悩んでいるみたい」
「ぼくにもそう見えるな」
「ミイマの元彼が現われたのよ」
「それも、奈良の都から召喚されたみたい」
「あらそれはたいへん」
 母がさしておどろいていない調子で言う。
「ミイマすごく難解なこと言っていた」
「ぼくにもそう思えた」
「だって近未来には吸血鬼も人と同じになる」
「そう言っていた……医学の力をかりて、iPS細胞でそれが可能になる」
「あのヒトたちにはむりよ。理解できないわ」
「ぼくらの側だっておなじようなものだ。
吸血鬼の存在は小説や映画の世界だけのものだと信じられている」
「吸血鬼と仲良くやっていければいいのにね。
共に生きていければいいのに」
 Gはだまってテレビを見ながら箸を動かしていた。
 好きな厚焼き卵焼きをほおばっている。
 Gの表情がきびしくなった。
 リモコンで音声を高くする。
 四人が一斉にテレビにくぎづけになった。固まった。
 テレビでは、
また歌舞伎町にナイフによる殺傷事件が起きたことを伝えていた。
女子アナは興奮して早口に報道していた。

「天の川水陰草(みづかげくさ)の秋風になびくを見れば時は来にけり」
「どういうこと」
 翔子はやっと拾ったタクシーのなかで純にきいた。
 純はタクシーの窓から夜空の月を探していた。
「だいたいの意味はわかるけど。万葉集専攻の純の解説をききたいわ」
 翔子はふたりだけで肩を並べて後部座席にすわっているので、
ロマンチックな気分になっていた。やっとふたりだけになった。
 でもわたしたちはこれから戦いの場にのぞむのだ。
 あまりロマンチックではない。
 まあいいか。
 いまこうして純のそばにいられるだけでも幸せだ。
 純が翔子に肩をだいた。
「なにかこんどは強敵みたいな予感がする」

 路上にはバタバタと血を流した若者が倒れていた。
 それなのに、これほど多くの者が血を流しているのに殺戮者の姿がない。
 犯人が特定できないでいるみたいだ。
「翔子、純きてくれたのか」
 百目鬼刑事が近寄ってきた。
「なにか見えるか?」
 群衆の中でまた悲鳴が起きた。
 群衆が割れた。
 こちらにむかって殺意が吹き寄せてくる。
「翔子!! 吸血鬼だ」



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くされ彼岸が三日ある/麻屋与志夫

2010-09-23 09:40:47 | Weblog
9月23日 木曜日

●暑さ寒さも彼岸まで。
という言葉は人口に膾炙している。
だれもがいう言葉だよね。
だが「腐れ彼岸が三日ある」という言葉はあまりしられていない。
毎年彼岸の季節になるとわたしはこの言葉を口にする。
カミサンとの会話がはずむ。
だが、わたし自身、この言葉の意味を曲解していたようだ。
マチガッテ覚えてしまっていたようなので情けなくなる。
わたしは彼岸のころには、雨の日が三日くらいはつづくものだ。
それでクサレ彼岸が三日ある。
……と思いこんでいたのにどうやらこの三日ということ自体記憶違いらしい。
お盆が三日なのに、彼岸は七日ある。
農繁期で忙しいのに七日も彼岸が続く。
それで腐れ彼岸が七日ある。
という説がインターネットを調べたらでていた。
そのた諸説紛々。
まあどうでもいいか。
ということになった。

●でも、心をいれかえていますこしインターネットで検索をつづけた。
春の彼岸のころを菜種梅雨とむすびつけ、雨が多いという解説があった。
秋は秋雨前線で彼岸の時候には雨が多い……ということも載っていた。

●ということになれば「腐れ彼岸が三日ある」でもかまわないような気がしてきた。
彼岸には三日も雨がふりつづくことがある。
それでいいや。
いい加減な男でごめんなさい。

●さて、今朝から雨。
わたしの説を助けてくれるようにしとしとと雨が降っている。
オミナエシ(女郎花)が咲いていた。
やっと訪れた秋の風にしとやかに揺らいでいた。
田代歯科の帰りにタケシ川の土手で見た。
カミサンの好きな彼岸花はもう咲きだしただろうか。
カミサンと野歩きに行こう。
真っ赤な彼岸花を探しに行こう。

●のんきなことを、いっている場合ではない。
「さすらいの塾講師」を二日も休んでいるではないか。
くされ遅筆が三日ある。
といわれないようにがんばらなくては。……ね。



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千年目の恋/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-09-20 10:02:04 | Weblog
13

ミイマの体はいま宵闇色にそまっていた。
なにを想っているのだろうか。
「わたしには愛する子どももいる。
孫までいるの。
わたしたちには、ひとと結ばれる可能性があったの……。
それに気がついてから……長いこと待った。
わたしの属性を怖がらず受け入れてくれる男性があらわれるまで。
わたしに心を読まれても、
心を操作されてもまったく気にしない、
良人となるべき男性とめぐりあうまでに……千年が過ぎた。
でも待った甲斐はあった。
孫までいるのよ。
あなたたちにも、その可能性は十分にある。
そう、あなたたちだって変われる。
他種との混淆が成りたつ時代にもなっているのよ。
わたしたちだけではなく
――iPS 細胞の研究がさらにすすめば、
人類の改造までできちゃうはずよ。
残るは意識の問題なの。
あなたたちは、
直接人体から血を吸わないと生きていけないなんて思いこまないで」

テツもトオルもキョトンとしている。
翔子は吸血鬼が呆然とするさまをはじめて見た。
全然さまになっていない。
吸血鬼はやはり牙をむいて、
鉤爪もあらわにひとに襲いかかってこそ、
吸血鬼なのだ。
ミイマは必死で説得しているけど効果はない。
難しすぎるわよ。
仲良くしましょう。
くらいの交渉がいいのに。
だって、ほらミイマあぶない。テツがミイマを襲った。
「いいわよ。
わたしの喉笛を噛みちぎったら。
どうなるか、わかってるんでしょうね」
テツがたたらを踏んだ。
おっとっと……いうふうに踏みとどまった。
「テツ。引こう」
「トオル!! おれは逃げるのはいやだ」
と悔しがるテツの腕をつかんでトオルが霊園にむかって後退する。
「どうしてわからないの」
ミイマが悲しそうにバラの鞭をだらりと下げる。
鞭の先がこきざみにふるえていた。
「いつの日かわかりあえるときがくるから」
GGがミイマをなぐさめている。
いい関係だわ、おたがいが信頼しあっている伴侶をもててしあわせね。
と翔子は心のなかでつぶやいた。
ミイマはれ千年に一人のGGにめぐり会えた。
わたしには、いま純がいる。
翔子はあらためて純を見た。
バチッと鬼切丸をさやに納めたところだった。
「助っ人にかけつけて、ありがとう」
「なぁに、翔子。それいうなら純にいったら」
ミイマが笑っている。



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ああ、美神ミューズよ/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-09-20 03:00:09 | Weblog
9月20日 月曜日

●ああ、美神ミューズよ。
あなたに見放されてから、暗黒の道を歩きつづけています。
元はと言えば、わたしが悪いのです。
「もの言わぬ神の意志」――を伝えるような高踏的な文学に憧れました。
才能もないのにバカですよね。
わたしが悪いのです。
それから、『ヌーヴォーロマン』の秋波に惑わされ、
同人誌『現代』を主宰するなどのあなたへの冒涜をくりかえしました。
小説を書いて暮らしていきたいとねがっているのに、
誰にも読んでもらえないような、
読者を拒絶するような小説を同人誌に発表しつづけました。
慙愧の至りです。
反省サルの姿勢。

●これではいけない。
こんなことでは自滅する。
と気づきました。
そしてカムバックまで5年と期限をきってブログで小説を書きだしました。
コメントもポツリポツリ。
……その日の訪問者と、閲覧者に喜んだり悲しんだり。
手探りで書きつづけています。
そして、昨日インポイントが70入りました。
これは、わたしにとっては事件です。
ホラー怪奇小説のジャンルで名実ともに一位に躍進しました。
うれしいです。
ポイントをプチュンしてくださったみなさんありがとう。
ほんとうにうれしかったです。

●発表の場がブログなので自己規制を厳しくしています。
わたしの小説の読者のなかには小学生もいます。
昨日、
書けなかったのは『血を吸うのをやめたら』は、
もっとスプラッターしたかったのです。
血が飛び散るようなことを濃密に書きたかったのです。
猟奇的な描写を濃厚にしていきたいのです。
でも、それはブログという公の
――だれでも読めるブログだからこそゆるされることではありません。
友成純一ばりの描写はだめですよね。

●ああミューズ、詩の美神よ。
雑誌に小説が再び書けるチャンスをあたえてください。
それにはこの場で、ブログ小説を書きつづけなければならないのですよね。
そして美の神ミューズがほほ笑んだように感じているのは、
うれしくてこのような私事を書き連ねているということは、
あなたこそ美神ミューズなのだとわかりました。
これからも悩みながらも『さすらいの塾講師』を書きつづけます。
よろしくご愛読のほどおねがいします。

●ああ美の女神ミューズよ、
北関東の北の果て、
舟形盆地の小さな町のボロ家で、
深夜に起きだしてパソコンに向かっている、
哀れな忘れられた作家に憐れみを。




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血を吸うのを止めたら/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-09-18 09:51:54 | Weblog
12

「なんてことするのよ。
街で女子学生を拉致するなんて最低よ!!!
『道草』で飲むだけにすればいいものを……」
翔子も鬼切丸を振りかぶって上段から斬りつけた。
「人工血液の赤ワインなんかガブガブ飲めるかちゅうの」
テツが翔子の鬼切丸を横に体を開いて避ける。
肩に百子の手裏剣が突き刺さっているのに。
なんという生命力だ。
「おれたちのシンパの赤いアミュレットをしてるのに、
どうして襲ってくる?」
「首をひねってもわからないぞ。トオル」
テツがあたまの鈍そうな仲間に呼びかける。

「わたしは、あなたたちの共鳴者なんかではない。
わたし自身が、マインドバンパイァなの。
吸血鬼なのよ」

「げぇ」

テツとトオルが同時に絶叫した。

「あんたの血をすうとおれたちは消滅するのかよ」
翔子たちは攻撃を一時中止する。
「人工の血液がまずくても、
それで満足して、
ひとと共存の道を選んだらどうなの。
メタボからの体質改善をはかれるのよ。
ひとの血を吸わなくても生きられるのよ。
直接飲むことは止めてほしいの」
「なにぬかす。
白い襟首に熱い息をふきかけ……
怖がってふるえるのを見るのは快感だ。
歯を突きだして噛みつく。
おののき、
ふるえる、
ノドの動きを見ながら血を吸う快楽をやめろというのか。
ひとの恐怖はわれらが逸楽なのだ」
「世界は転調の兆しをみせているのがわからないの」

いまミイマはなにを吸血鬼に訴えようとしているのだろうか。
翔子たちもはじめてきく言葉だった。

「だから……あんたらは口唇愛にこだわりすぎている。
唇の満足とひとの恐怖を糧としているのよ。
ひとは、いま長い間の習慣だったタバコを止めようとしているの。
あんたたちだって、変わることができるはずよ」



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