田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

ストーカー/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-08-31 07:01:24 | Weblog
2

電子音が鳴っていた。
翔子は携帯を開いた。
表示窓には非通知着信という文字がならんでいた。
翔子はいつもだったら、でない。
友だちからの着信でないとでないことにしている。
なにか胸騒ぎがしていた。

「センパイ、たすけて!! ストーカーに狙われている」
「誰なの? 一年A組の友近菜々美です。
書道部でご一緒してます。
センパイが得体のしれない魔性のものと校門前で戦ったの、みました」
「そう、あれがみえたの」
「こわい、友だちがひとりいなくなった」
「駅前の交番に逃げこめないの」
「やってみます」
「すぐいくから」
 
菜々美は歩道に面した校門をわいわいおしゃべりをしながらでた。
いつもの時間、それぞれの電車や都バスにのるまでの楽しいひと時。
ほかのクラスの気の合った友だちと話し合える時間。
はなしに熱が入りチョッとたちどまった。
菜々美は背後に視線を感じた。

「ね、だれかにみられていない」
「やだよ。こわいこといわないで」
おなじ書道部のカレンが応えた。中国人だ。
「そうね、ゴメン」
歩きだしてすぐ員数がひとりたりないのに気づいた。
カレンの後ろにいたはずの信子がいない。
宇都宮から2時間かけて通学している子だ。
「ヤッパおかしいよ。いままでここにいたのよ」
全員が青くなった。



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集結/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-08-30 03:11:38 | Weblog
第四章 集結

1

「GG……元気ないよね」
「ミイマの元彼VS GG。
なにかぼくは男だからGのこころの動揺がわかるシ。
Gはミイマを愛しているからな。
50年も……ずっと一緒だった。
片時も離れたことがなかった。
それがここにきて、ふたりの間に、みぞが出来た。
どうなるのだろうな。
あの性格だから、娘さんや息子さんたちにはなにも知らせてないだろうな」
「わたしだってなにか胸がキュン。
どうなるの、あのふたり……」
「おれだったら、翔子の元彼があらわれても、翔子を離さない」
「わたしが幾つだと思っているの。花の高校二年生よ!!」
「ごめん、失言だった」
「初恋なんだからね。
そしてもうこれでオワリ。
ずっとミイマとGGのように一緒にいたいもの……」
「でも、信じられない。
千年も前の元彼なんで初めて聞いた。
吸血鬼というのは、ほんとに死なないんだ。
おれたちにない属性があり。
その属性の中には未知のものがたくさんあるようで怖いな」
「あのひとたち――吸血鬼が、もとは堕天使。
神の庭園の園丁だったというのは本当のことかも。
そして悪魔でもある。
ミイマのようにマインドバンパイアと、
血を啜る街の捕食系……の凶悪なバンパイア。
二系列にわけられるのよ」
「おれたちが関わってきた、
敵の正体がはっきりした。
かれらも日本古来の鬼。捕食系のバンパイア。人狼と集結してきている」
「いよいよ聖戦ね」 


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GGの恋仇/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-08-28 03:08:28 | Weblog
26

「おれたち――人間はたかだか一緒にいられるのは、半世紀。
長生きしても70年。
だから50年で金婚式なんていって祝う。
悲しいではないか。
愛し合うものにとってはあまりにも短い。
……短すぎる。
だが……ミイマは不死の種族。
死なない。
もしも、肉体に損傷をうけても、
それを脱ぎ捨てることができる。
新たな肉体に長年の記憶の蓄積をもちこむことができる。
あまりに現実を生きるのに辛ければ、棺の中で冬眠だってできる。
そんな種族のミイマを、
わたしは……わたしは独り占めにしておく権利はない」
「GG。
不死の種族だの。
権利はないだの。
GG――らしくない」
「もっと長く、永遠の愛を誓いあえる彼に、
ミイマを戻してあげるほうが、
ミイマのためになるようなきがして。
これから千年でも、
万年でも生きられる彼に……」
「なにハナミズキしょうとしているの。
愛には……長いとか短いなんてことはないの。
愛しているのよGG。
あなたは余計な心配はいらないの。
ソンナ心配するひまがあったら。
……さあ、「BB刀エクササイズ」で稼ぎましょう」
「そうだよ。
GG。わたしもきょうか手伝うから。
元気出して」
「だが……ショックだったな。
この歳になって恋仇があらわれるとは……」

エクササイズのジムは満席御礼。
GGのアシスタントに美女が2人も参加したのだから。
それはあたりまえのことだ。
そこになんと小栗旬似の、純まで加わったのだから……。

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ミイマの元彼&GG/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-08-27 05:58:22 | Weblog
25

携帯がなった。
幻覚から再び覚めたような感覚。
通知着信。
GG。

「はい、わたし」
「よかった。
すぐそばまできている。
だれもいないのに、
目の前に誰かいるようにはなしているから」

「ミイマ!! しっかりして?!」
翔子とGGが心配そうに、わたしをみている。
わたしどうかしている。
あまり長く生きすぎているので、時系列に沿って過去を思い出すことができない。
想い出の中の信行は後に西行と呼ばれるようになる男とよくわたしのところに遊びに来た。でも、あれは平安時代の末期のはずだ??? 
わたしは奈良時代のことだといまこの平成の時代に思っている。
まあ、いいわよね。
長く生きているのだから少しぐらいの時代の錯誤は鹿沼に残してきた歴女の玲加チャンでも許してくれるだろう。
「だいじょうぶか。ミイマ」
「ふふふふ。美魔。いまの彼はやさしそうだな」
「みえる。おれにも、見える。これは……」
「GG。奈良時代の元彼よ」
「ゲッ。ミイマ、ほんとなの」
 翔子にも目前の男が見えたらしい。




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ミイマの元彼/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-08-26 09:50:26 | Weblog
24

「痛いではないか。
おれのほうからはまだしかけてない。
玉藻さまを救えなかった恨みか!!
それならおれは関係ない。
おまえが、犬飼の連中の幻術にかかったのだ。
あの犬どもの始祖は……、
慈覚大師をあの中国の吸血鬼の城――纐纈城から救いだした大きな犬だ。
いかにおまえが九尾族のマインドバンパイアでも敵う相手ではなかった。
そんなことも忘れてしまったのか」――拙作「奥様はバンパイア」をご参照ください。
 
男はむろんヒスイの仮面などつけてはいなかった。
それどころか、酒焼けした赤ら顔でもない。
ノッペリした公家面、
たれかげんの、長い眉毛。赤いくちびる。
「信行」
「そうだ。藤原信行だ」
「あの西行とよく京の街を遊び歩いていた、優男」
「そして、美魔、おまえの元彼だ」
元彼などという、
今風な言葉をつかわれているうちに、
記憶がよみがえってきた。
悲しい別れの涙まで。思いだした。
「おれは、あれからずっと眠りつづけた。
奈良の遷都1300祭で呼び覚まされた。
美魔とこの東の都であうとは……。
どうだ、いまからでも、やり直さないか」
ミイマはこたえられなかった。


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ヒスイの仮面/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-08-25 04:31:24 | Weblog
23

男は胸にヒスイの勾玉をさげている。
かなり大ぶりなモノだ。
深緑色で半透明な宝石は男にとってパワーストンなのだろう。
男が話すたびに胸元で揺れている。
どこかで会っている。
まちがいない。
デジャブ―なんかではない。
確かに会ったことがある男。
おなじ、夜の種族。
胸元のヒスイの揺れに集中しているうちに頭がくらくらしてきた。
いけない。
眠りにさそいこまれる。
男の勾玉が平べったく伸びる。
平面となり男の顔に仮面となってはりついた。
ヒスイの面をかぶった鬼――吸血鬼。
ヒスイが黄金のように溶けて、仮面になることなどない。
これは、幻覚を見させられているの。
ヒスイの面の男が一歩ふみだした。
「ミイマ。あぶない」
翔子の声がひびいてくる。
「ミイマ。敵は右横。献血車のノウズのほうよ」
目の前に見える男は、幻なのだ。
やはり幻をみていたのだ。
翔子の指示に従って、バラの鞭で右横を薙ぐ。
ゲェっと苦鳴が鞭の先で起きた。
なにかをたたいた手ごたえがあった。
「ミイマ。すごい。気配をたよりに斬ったのに、敵の顔にヒットしたよ」
ヒスイの勾玉の男が悔しそうに翔子をにらんでいる。
あの勾玉の揺れを見ている間に、瞬間催眠にかかってしまったのだ。
しばらく平和だった。
戦いの勘がにぶっていた。
わたしが、心理を操作されるなんて。お恥ずかしい。
でも、敵はまちがいなく、わたしたちが、マインドバンパイアがいることを認識した。
これからは厳しい戦いになるだろう。
「コイツはどうしてミイマ健康体なの」
「それはな、オジョウチャンおれが血を飲まなかったからさ。いまどきの若いもんは、仲間の血に臭いもわからない、クズだ」
「わたしは同族の者とは戦いたくないの」
男の頬にバラの鞭でたたかれた擦過傷ができている。


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ハナミズキ通り/新垣結衣  麻屋与志夫

2010-08-23 17:41:08 | Weblog
8月23日 月曜日
ハナミズキ通り。
わたしの故郷、鹿沼に「ハナミズキ通り」という名称の通りがある。
ヨークベニマルやマツキヨのある、
むかしの帝国繊維跡の通りからはじまり消防署のほうまでつづいている。
全長約一キロはあるはずだ。
春には薄紅色の花を咲かせる。
なかなかみごとなものだ。
市民だけで楽しんでいたのではもったいないような気がする。
これからますますこのハナミズキの街路樹は樹齢をかさね、
みごとな通りとなっていくことだろう。
だれか知恵者がハナミズキ祭りでも企画したらいかがなものでしょうか。

さすらいの塾講師にもハナミズキのことを書いてしまった。
これは新垣結衣の「ハナミズキ」がテレビで話題になっていたからだ。
ガッキーの「恋空」にはこの鹿沼の千手山公園のかの有名な観覧車のシーンがある。
雪の風景も美しかった。
あれなめたら塩だったよ。
などという会話がいまでもときおりきかれる。
なにも話題のない静かな田舎町に伝説として語り継がれていくだろう。
新垣結衣の可憐な姿。
そして「フレフレ少女」では御殿山公園のグランドが映画にでている。
二重にロケ地として選んでくれたロケハンの係りのかたに感謝。
鹿沼は東京からは近い。
街中を黒川のような清流が貫流しているところはほかにはないのではないかな。
これからもぜひロケ地として選んでください。 

私事です。
わたしとカミサンは。
いまから半世紀もまえによく千手山公園や御殿山公園でデートしました。
昔むかしのことだ。
いまだに街をかならずふたりで歩いている。
わたしはおおきなリックを背負い。すごくめだつ。
 
そして賞味期限切れの男ですが、
生涯現役をめざして「アサヤ塾」の主宰として、
英語と国語の教師をつとめている。
その経験がさすらいの塾講師の随所にあらわれている。
裏ネタですがね。
そしてもう一つ。
裏ネタ。
カミサンの旧姓は大垣です。
それでガキさんと弟たちは呼ばれていました。
それで新垣結衣の映画がわたしは好きなのかもしれません。
カミサンのあどけない顔が、
彼女に似ているといっては、
いいすぎですよね。ゴメンナサイ。




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ハナミズキ/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-08-23 16:39:50 | Weblog
22

暑いのに黒服の男。
いまどきあまり見かけない酒焼けした赤ら顔。
いやそれはとんでもない誤解だ。
あれは血の飲み過ぎね。
男がにやにやしながらさらに近寄ってくる。

「同族の血の臭いに疎い奴らだ。
みずから墓穴をほったようなものだ」
どこかで会った記憶がある。
遠い未来のなかで、この男にはまた会うことになるだろうと思った。
それはいつの時代だったろうか。

歓楽街の嬌声が潮騒のようにきこえている。
「ねえっ、あれいこう」
「うん、あれいい。いこう。いこう」
キャッチの少女が今宵はじめての客をゲットしたらしい。
獲物の中年、スケベエジジイに向かっていく。
魔界の領域にあるボッタクリバーに連れ込まれ、
生き血を吸われるとは気づいていない。哀れな男。
ホステスたちはオウナーに過酷なノルマで生き血をすわれている。
不法滞在の女。東アジア諸国からの出稼ぎ。
少女が黄色い声をハデニはりあげ、
客をエッセ、ワッセといった感じでバーに連れ込む。

ひさしぶりの歌舞伎町はミイマには刺激的な風景ばかりだ。
……この男、だれだ。

電子音がミイマのピストルポケットで着メロを奏でる。
ハナミズキだ。
君と好きな人が百年続きますように。
という一青窈の歌からスピンオフした映画。
気にいったGGが、このメロデーにしたものだ。
わたしは何千年でもいっしょにいられるのに。
人間であるかぎりGGには、それはムリ。

身を引く男の哀れさがせつせつと歌いあげられている、
歌詞がGGを惹きつけたのだろう。

わたしが長く生きるという事実が、
GGには悲しい現実なのだろう。
わたしは長く生きつづけられるが、
GGにはそれができない。
いつかは別れが来る。
若いままで年を取らず生き続けるわたしを思慕している。
出会ったときは、
ふたりとも、いやGGのほうが若く見えたくらいだった。
いつかは、別れが来る。
未来の彼と末長く生きてください。
GGのわたしへの想い。わかりすぎるから……かなしい。

「おい、真面目に、おれの相手をしろ」
「あら、おまたせ。彼からの電話なのよ」
「そんなもの、出なくていい」



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必殺バラの鞭/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-08-22 09:58:32 | Weblog
21

mimaは採血室に入った。
医療品の臭いにガソリンの臭いが混ざっていた。
ミイマの腕が駆血用のゴムで縛られる。
採血用の注射針が刺される。真空採血管をつなぐ。
セットされた採血用真空試験管に蘇芳色のミイマの血がどくどくと吸いこまれていく。
血をみるとミイマは胸が熱くなった。
嫌悪感から吐き気がする。
「大丈夫ですか? 中止します?」
と看護師がやさしく労わりの言葉をかけてくれる。
血を抜かれるのはこの歳? になって初体験だ。
「歳よりずっとお若いですね」
と看護師はさらにやさしく言う。
献血者カードに記入した年齢もウソだ。
わたしがその年齢よりも、若く見えるどころか、
なんと平安の鬼が跋扈したころから生きていると知ったら、
この看護師どんな顔をするだろうか。

「ミイマ。なにも献血しなくても……」
「心配ないから。
それに白衣の看護師たちはフツウの人だわ。
あの献血車の秘密をあばくにはこれしかないでしょう」

といって入室した車の中だ。
看護師さんも親切。
なにもやましいことはない顔。
裏がある。表で働いている従業員にはなにも知らされていないのだ。

「どうだった。なにかヤバイことあった」
はるかにいま輝きだした風林会館のあたりのギラツク原色のネオンが見える。
夜間になっても献血車は動きださない。
次々と献血する人が入っていく。
車の後部扉が開いた。
人がなだれるように降りてくる。
舗道に吐いている。
喉をかきむしって苦しんでいる。
その数、十名ほど。
「いまよ、翔子。とどめを刺すのよ」
翔子にはなにが起きたのかわからない。
それでも、鬼切丸を抜くと彼らに向かって走りだした。

「わたしたち夜の種族は、同族の血を飲むとああなるのよ。
それを確かめたかった。あいつらまちがいなく、吸血鬼。遠慮はいらないわ」
ミイマも翔子と並走している。サスガはマインドバンパイャ。仲間内のことには明るい。
「捕食もせずに、血を飲む。セコイ手を思いついたものね」

ミイマのバラの鞭が吸血鬼の心臓に突きたつ。
ジュと音を立てて吸血鬼は溶けていく。

「すごい。すごいよ、ミイマすごい」
翔子も鬼切丸をふるいながら感動している。
ミイマは残忍な害意を感じてふり返る。
「おまえ、だれだ」


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刀エクササイズ/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-08-20 09:27:58 | Weblog
20

GGは大森でとんでもないことをはじめた。
『BB刀エクササイズ』という看板のジムを開いた。
テレビでちらっと見た。
そのパクリだ。
元祖はイケメン。こちらは、GG。
BBはbeautiful body。
ノッペリトシタイカメンGGの指導では生徒はくるまい。
早稲田の村上道場に居候を決める。
それは遠慮したかった。
年はとってもGGのイジだ。
「酒飲み友だちが出来てうれしいから」と翔子の祖父に誘われたが。
 
特殊ウレタン製の刀だけ用意した。
チンドン屋でも頼んで『道場開き』の宣伝をしょうかとあいかわらず古風なことを考えた。ところが、ところが。
さすがはトウキョウ。
即、道場をイツパイにする申し込み。
それも、うら若き女性ばかり。
どうなっているんだ。この世の中は。
なんて、バチアタリなことは思わなかった。

ロックのリズムにのせて袈裟がけ、逆袈裟、胴ギリ、真っ向から竹割り。
と調子に乗っての演武。
そして喉への突き。これが結構受けた。
「神に代わって、お仕置きよ」叫ぶ練習生もいる。
職場でのウップンを晴らしている感じだ。
そして、まちがいなくヤセル。
と、あっては、生徒がふえるのはあたりまえだ。

「こんなことなら、はやくトウキョウへくればよかったわ」
「いや、田舎暮らしも、けっこうたのしかった」
「化沼のバラ園は玲加ちゃんにまかせてあるし。心おきなく戦えるはね」
刀エクササイズをはじめたのもそのためだ。
人知れず命がけで戦う。
夜の闇で鬼を倒しても、収入にはならない。
平安の御代の鬼キラーは侍だった。
陰陽師にしても帝おかかえの人材がほとんどだ。
この世に生きるGGたちは、まったく無収入だ。
イイ仕事をはじめたものだ。

ふいに携帯がなった。
翔子からだった。

「GG、献血車がやけにおおいのよ」
「それはおかしいな」
「すぐきてくれない」
「あと一マス授業がある」
「わたしが、さきにかけつける」
「場所は?」


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