part14 文子恋に死す2 栃木芙蓉高校文芸部(小説)
69
凄惨な言葉になにもいえなかった。
それでも玉藻はおずおずといった。
「それほどまでにしてもらったら悪いわ」
「そんなことはない。
わたしは、玉藻さんをあのとき助けた気でいた。
でも、この土地から出られないように封印した。
それって……死ぬより辛いことがあったはずよ。
例えば、翔太さんを追いかけて上京できなかった。
ただこの土地で、
この家で待つだけしかできなかった。
さぞや辛かったことでしょうね」
「だからって文子さんがしようとしていることは、
あまりに犠牲が……おおきすぎる。
わたしはこれでいい。
翔太がこのまま死ぬようだったらわたしも死ぬ。
あまり長く生きすぎたからこの辺で死んでもいい。
さいごに翔太と暮らせてうれしかった。
生涯の幸せをこの短い日々の暮らしで味わった」
「いいえ、玉藻さんと翔太さんには、
これからも末長く生きていてもらいたい。
わたしは龍之介と人としての生活をまっとうする。
それでいいわね? 龍、それでいいわね」
「ああ、文子と同じ棺に横になる。
目覚めた時代でひととしての生涯を送るということだよな。
それでいいよ」
文子の下宿に隠してある棺はタイムマシンだ。
監察官文子はどこへでも神の思し召しのまま移動できる。
そう龍之介は文子から知らされていた。
「いつの時代でも文子と一緒なら、それでOKだ」
one bite please 一噛みして。おねがい。
69
凄惨な言葉になにもいえなかった。
それでも玉藻はおずおずといった。
「それほどまでにしてもらったら悪いわ」
「そんなことはない。
わたしは、玉藻さんをあのとき助けた気でいた。
でも、この土地から出られないように封印した。
それって……死ぬより辛いことがあったはずよ。
例えば、翔太さんを追いかけて上京できなかった。
ただこの土地で、
この家で待つだけしかできなかった。
さぞや辛かったことでしょうね」
「だからって文子さんがしようとしていることは、
あまりに犠牲が……おおきすぎる。
わたしはこれでいい。
翔太がこのまま死ぬようだったらわたしも死ぬ。
あまり長く生きすぎたからこの辺で死んでもいい。
さいごに翔太と暮らせてうれしかった。
生涯の幸せをこの短い日々の暮らしで味わった」
「いいえ、玉藻さんと翔太さんには、
これからも末長く生きていてもらいたい。
わたしは龍之介と人としての生活をまっとうする。
それでいいわね? 龍、それでいいわね」
「ああ、文子と同じ棺に横になる。
目覚めた時代でひととしての生涯を送るということだよな。
それでいいよ」
文子の下宿に隠してある棺はタイムマシンだ。
監察官文子はどこへでも神の思し召しのまま移動できる。
そう龍之介は文子から知らされていた。
「いつの時代でも文子と一緒なら、それでOKだ」
one bite please 一噛みして。おねがい。