田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

俳句 亀頭おなじ彼方見る春の池  麻屋与志夫

2024-04-27 14:57:01 | 俳句
4月27日土曜日 23℃

亀頭(かめあたま)おなじ彼方(おち)見る春の池
亀頭おなじ空見る春の池
亀頭おなじ陽を見る春の池
亀頭見あげる先は春陽射し

初句は亀頭(かめあたま)とよんでください。
さもないととんでもない猥褻な句となってしまいますものね。
あくまでも毎日散歩の道すがら眺める弁天池での具象句としてよんでください。
たちどまって柵にもたれて見下ろす池の面。
中央の木材を井桁にくんだ島に亀がいます。
17匹もいました。
みんなうれしそうに寄り添って同じ方向を空をみあげています。
親亀の上の子亀。
三匹くらい重なっています。
甲羅干しをしているのでした。

麻屋与志夫の小説は下記のカクヨムのサイトで読むことができます。どうぞご訪問ください。
ブログで未完の作品は、カクヨムサイトで完成しています。
カクヨムサイトはこちら

●角川のbookwalkerーにも載っています。
 

  今日も遊びに来てくれてありがとうございます。
 お帰りに下のバナーを押してくださると…活力になります。
 皆さんの応援でがんばっています。





















コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

超短編31 肥満体。麻屋与志夫

2024-04-24 07:30:58 | 超短編小説
4月24日 水曜日
超短編31 肥満体

100キロを超す巨女が、肉の山がのしのしと近寄ってくる。
このあたりにいた野ら猫の所在をきこうとおもった。
「このあたりで、かわいい小さな子猫がいたのをみかけませんか」
と訊ねようとした。
聳え立つ肉の山に、小さいとか、かわいいとかきくのは、皮肉と取られる。
そう思うと、怖くなった。
なにもきけなかった。
この町では、猫がつぎつぎと消えていく。
肥満体の女性は増えていく。


●discriminatory remark,ともかくGGです。肥満体の女性に対して、目前の女性にたいして個人的ではないとしても差別用語になるのでしょうか。男子厨房に入るべからず、といった時代に育ってきたGGにはとても面白い時代に生きていることになります。わからないことばかりです。マイナス思考におちいることはありません。Z世代の孫がいますのでなにかと勉強させてもらっています。なにか不都合な表現があったら指摘してください。ちなみに、わが家は昔。両親とわたし三人と85Kありました。だから肥満には誇りをもっていました。太りたくてもふとれない食糧難の時代を生きぬいてきました。ところがわたしの妻となった女性はスリム。わたしの半分の体重です。そこでわたしも減量に励みました。現在62K。どうです。20K以上の減量に成功しました。でなかったら、現在、膝の痛みをかかえています。歩けなかったかもしれません。献立に気をくばり、なにかと手のかかる亭主の世話をしてくれているカミさんに感謝しています。

麻屋与志夫の小説は下記のカクヨムのサイトで読むことができます。どうぞご訪問ください。
ブログで未完の作品は、カクヨムサイトで完成しています。
カクヨムサイトはこちら

●角川のbookwalkerーにも載っています。
 

  今日も遊びに来てくれてありがとうございます。
 お帰りに下のバナーを押してくださると…活力になります。
 皆さんの応援でがんばっています。





















コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

失敗をプラス思考に。 麻屋与志夫

2024-04-23 16:17:45 | わが家のニーユス
4月23日 火曜日
失敗をプラス思考に
昨日の「親切もほどほどに」。
どこかで読んだような気がしていた。
他人様の作品だと申し訳ない。
盗作になる。
ハタと思いついた。
わたしのブログ内を検索してみました。
ありました。
2022、3、6にアップしていました。
うれしくなった。
おなじ作品を二度も載せた。
その点は、じぶんの不注意をせめた。
だがこれは不注意、マチガツタあーー。
ということではない。
長編ならいざ知らず。
超短編となるとブログに載せたほかにもたくさん書いている。
むしろ、どこかで読んだことがある。
疑問に思った記憶力こそほめられるべきだ。
と、まあGG的にはかんがえました。
なにか失敗してもメゲズニプラス思考に変換する。
これがわたしのように長生きするコツですよ。
とまあ老婆心ならぬ、GGの考えを披露するなんぞはボケのはじまりではありませんよね。




麻屋与志夫の小説は下記のカクヨムのサイトで読むことができます。どうぞご訪問ください。
ブログで未完の作品は、カクヨムサイトで完成しています。
カクヨムサイトはこちら

●角川のbookwalkerーにも載っています。
 

  今日も遊びに来てくれてありがとうございます。
 お帰りに下のバナーを押してくださると…活力になります。
 皆さんの応援でがんばっています。





















コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

超短編30 親切もほどほどに。麻屋与志夫

2024-04-22 21:20:03 | 超短編小説
4月22日 月曜日
超短編30親切もほどほどに。

「葉ッパがついていますよ」
前をいく女の髪に葉ッパがついていた。
とってあげた。
葉ッパといっしょにウイッグまでとってしまった。
「見たわね」
女の頭皮はワニ膚だった。
ハ虫類の女だ。
もう逃げられない。



麻屋与志夫の小説は下記のカクヨムのサイトで読むことができます。どうぞご訪問ください。
ブログで未完の作品は、カクヨムサイトで完成しています。
カクヨムサイトはこちら

●角川のbookwalkerーにも載っています。
 

  今日も遊びに来てくれてありがとうございます。
 お帰りに下のバナーを押してくださると…活力になります。
 皆さんの応援でがんばっています。




















コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

顎さげて杖つき桜盗み見る

2024-04-20 04:49:51 | 俳句
4月20日土曜日
桜もちり蕊桜(しびざくら)の季節。
ことしは妻が同伴してくれなかった。
花見はできなかった。それで一句。

顎さげて杖つき桜盗み見る
顎さげて杖つき横目みる桜

杖をつきそれでも足元に注意を集めなければならない。
うつむいて歩いている。
諭吉さんでもありはしないかと路面注視の歩行だ。
杖をついているからだ。
杖の先が歩道にあいた穴にでも入ると、そのために転んでしまう。
転ばぬ先の杖とたよりにしているのに、かえつて危険をともなう。
道の向こう側の桜を観たいのだがままならぬ。
横眼でうなだれたまま彼方の桜を……見る。
鑑賞とまではいかない。
これが年寄りの現実だ。
そのうち桜に興味がなくなるかもしれない。
そうなったら、おわり。
人生卒業だ。

こっちとら、いよいよ31歳。文学青年。まっただなか。
わかりますか? 
得意のアサヤ流自虐です。
還暦とは十二支を五回繰り返したからもういいだろう。
赤ん坊にもどりなさい、ということと心得ている。
されば、小生は30と一歳にもうじきなる。
あと20年は生きてみせる。
そうでないと、書きかけの数ある小説をかんせいできない。
まだまだ新作にも取り組みたい。
31歳になんなんとする青年のこころいきでいまが満開のハナミズキをみにいきたいものだ。
こんどこそ、歩道のわきにあるベンチにすわって赤と白のハナミズキの花を観賞したい。
ハナミズキ通りにはさいわいベンチがある。
それよりも、なによりも、ベニマルに買い物に行く通りなのでカミさんが同伴。
うれしいな。
うれしいな。
はい。今朝は、これで、おそまつ——。


麻屋与志夫の小説は下記のカクヨムのサイトで読むことができます。どうぞご訪問ください。
ブログで未完の作品は、カクヨムサイトで完成しています。
カクヨムサイトはこちら

●角川のbookwalkerーにも載っています。
 

  今日も遊びに来てくれてありがとうございます。
 お帰りに下のバナーを押してくださると…活力になります。
 皆さんの応援でがんばっています。




















コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

花の季節を引き延ばしたい。麻屋与志夫

2024-04-17 10:07:56 | わが家のニーユス
4月17日 水曜日
御殿山と千手山の桜が散った。
わが庭の藤の花が咲きだした。
藤の花は咲きながら花房がしだいにのびていく。
それを毎朝眺めるのが楽しみだ。

小説を書くのにももっとも適した季節だ。
わたしは歳を取ってからすごい寒がりになった。
気力がなくなったというよりは、体力が衰退している。
今朝は、小雨が降っていた。
右手に杖。
左手に傘で散歩にでるのは危険だ。
両手がふさがっているときに、転倒して額をわった。
手をついて受け身をとるのが遅れたのだ。
だいたい、倒れるときには何の予告もなく瞬間的に倒れてしまう。

だから年寄りは倒れて怪我をする。
そこで寝込んでしまう。
こわい。こわいな。

思い切って杖なしで出かけた。
なんとか30分いつもどおり歩ききった。
小説を書き、わたしの頭に咲く花の季節をまだまだつづけたい。
花の季節を引き延ばしたい。

麻屋与志夫の小説は下記のカクヨムのサイトで読むことができます。どうぞご訪問ください。
ブログで未完の作品は、カクヨムサイトで完成しています。
カクヨムサイトはこちら

●角川のbookwalkerーにも載っています。
 

  今日も遊びに来てくれてありがとうございます。
 お帰りに下のバナーを押してくださると…活力になります。
 皆さんの応援でがんばっています。

















コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

桜散る。   麻屋与志夫

2024-04-14 08:32:22 | わが家のニーユス
4月14日 日曜日
まさに咲き満ちた桜を今見ている。
美しさに息をつめて観ている。
はっと息をはきだすとひとひらひとひらと散り始めた。
満開の桜が散り始める瞬間にたちあえたことにかんげきしてごつごつした黒い幹に手をおいて囁きかけた。
おまえさん、こんな不格好なからだからどうしたらこれほどみごとな桜を咲かせることができるのだ。
あわい桜色の花弁がひとひらわたしのほほに張りついた。
みみもとでささやく声。
それは、ものごとは見た目だけで判断してはだめ、ごまかされてはだめなのよ。
美しい花を咲かせるには毛根から水分や栄養分をすいとることからはじまって、たいへんなくろうをしてくれているの。


麻屋与志夫の小説は下記のカクヨムのサイトで読むことができます。どうぞご訪問ください。
ブログで未完の作品は、カクヨムサイトで完成しています。
カクヨムサイトはこちら

●角川のbookwalkerーにも載っています。
 

  今日も遊びに来てくれてありがとうございます。
 お帰りに下のバナーを押してくださると…活力になります。
 皆さんの応援でがんばっています。














コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

桜咲きケヤキ新芽の宮の内  麻屋与志夫

2024-04-10 13:40:05 | 俳句
4月10日 水曜日
ひさしぶりで今宮神社の境内を散策した。そこで一句。

桜咲きケヤキ新芽の宮の内
桜咲きケヤキ新緑宮の内

春はこころがウキウキする。
なにか新しいことをやりたくなる。
旅立ちの季節なのかもしれない。
GGはもはやこの家から離れられない。

孫娘が念願かなって、新しい職場に就職できた。
婚約を知らせてよこした孫娘もいる。

やはり新しい季節だ。そう実感できた。

麻屋与志夫の小説は下記のカクヨムのサイトで読むことができます。どうぞご訪問ください。
ブログで未完の作品は、カクヨムサイトで完成しています。
カクヨムサイトはこちら

●角川のbookwalkerーにも載っています。
 

  今日も遊びに来てくれてありがとうございます。
 お帰りに下のバナーを押してくださると…活力になります。
 皆さんの応援でがんばっています。














コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

超短編小説29 きみとみし崖の桜は咲きたるか 麻屋与志夫

2024-04-03 14:14:21 | 超短編小説
4月3日 水曜日  桜が咲きだした。
超短編29 きみとみし崖の桜は咲きたるか

小田垣鷹雄は航空便で初恋の彼女に俳句をおくった。定年となった。再就職の誘いはすべて断った。生まれ故郷の鹿沼にもどることにした。烏小路鹿子はあれからどんな人生をおくっているだろうか。それが気がかりだった。会うのがなつかしいやら、こわいやらでためらいがあった。その気持ちを俳句に託したのだった。

きみとみし崖の桜は咲きたるか

鹿子さんと別れた日。崖には桜が咲いていましたね。今でも咲いているでしょうか。桜に託して、鹿子さん元気ですか、と問いかけたのだ。ぜひお会いしたいです。

断崖の桜は見事に咲いていた。若木だったものがすっかりたくましくなっていた。そしてなによりも驚いたのはふたりで逢引の場所としていた坂田山は団地となっていた。家々が密集してまるでほかの場所に迷い込んだようだった。

「わたしも鷹雄さんと東京の大学に進学したい。親が許さないのよ」
気丈な鹿子がはじめてみせた涙だった。ふたりはまさに崖っぷちに立たされていた。ふたりで家をでるか、別れるか。崖には若い桜の木が見事な花を咲かせていた。

階段でつまづいた彼女の手からなんまいも短冊が宙にまった。そのとき鷹雄は彼女の下の段にいた。舞い上がった短冊を何枚か手をのばして拾ってあげた。それが鹿子と知り合うきっかけとなった。

「わたし、英語部の部長をしていた小田垣さんが好きだった。くちもきいたことがない。片思い。そこで、小田垣さんが階段を下の方から登って来た時。チャンスだと感じたの」
そこで、鹿子はわざと階段を踏み外した。手にもった短冊が宙に舞い上がった。

鹿子オバアチャんにもそんな青春。高校時代があったのだと美和に話したというのだ。

わかいふたりが意気投合して、恋人同士となるのにさしてじかんはかからなかった。
会えばあうほど恋心はもえあがった。土曜日がくるのがまちどおしかった。会えば彼女は俳句の話をした。鹿沼はむかしはとても俳諧の盛んな街だった。芭蕉のまごでしの与謝野蕪村の初めての句集が宇都宮で印刷された。鹿沼の隣町だ。このへんは旅館や、呉服屋、床屋、八百屋から魚屋まで街の旦那衆はみんな俳句をたしなんでいた。いまはその人たちをまとめているのがうちの父なの。彼女の家は『烏小路』といって街の通りの名になっているほどの富裕な名家だった。

「その影響でわたしも幼い時から俳句に興味をもっていたの」
彼女のいっていることは、もう耳には入らなかった。明日は上京する。このままもう会えないかもしれない。
わたしはそっと彼女の手をとった。彼女のあたたかさがつたわってきた。彼女の胸の鼓動がつたわってきた。いや激しく脈打っているのはわたしも同じだった。わたしは彼女を引き寄せた。夢中で、熱い口づけをかわした。唇をかさねた。そしてそれだけでは若い鷹雄の情熱はとどまらなくなっていた。

崖の先の鹿沼の街はむかしとあまりかわっていなかった。鷹雄は崖の上の小道を歩きだそうとして段差につまづいた。みるとこじんまりとした御影石の句碑がたっていた。その境界石につまづいたのだった。
『寒烏鷹ををめざして高く飛ぶ』鹿女とあった。
まちがいない、これは鹿子の句碑だ。彼女はわたしを恨んでいた。烏はまちがいなく彼女の分身だ。鷹はわたし。烏は鷹においつきその鋭いくちばしで攻撃してくる。一緒になれなかった恨みをその鋭いくちばしで鷹につきたてる。
恨まれているだろうとは思ってもみなかった。鷹雄はその場にへたりこんでしまった。
わたしも、老いたものだ。ふとみると方丈がある。少し離れて瀟洒な平屋の日本住宅。
句碑は方丈の脇に立っていたのだ。そして句碑も方丈も灯りのともっている家の広い庭の一部となっている。

鷹雄はおずおずと呼び鈴をおそうとして気づいた。表札には小田垣鷹雄 鹿子とあった。
なにか夢をみているようだった。これはなんどとなく鹿子とかたりあった未来のじぶんたちの、理想の愛の住み家ではないか。
「ここに家を建てましょう。鷹雄さんにも俳句作ってもらいたいわ。この街の文芸復興よ。昔のように俳句を創る人をたくさん養成しましょうよ。わたしは隣に方丈を建ててそこにこもり、俳句三昧の生活」

玄関の引き戸が開いた。
「お帰りなさい」
鹿子だ。セーラ―服の鹿子がそこに立っている。微笑んでいる。いま学校から帰ってきたばかりといったういういしい鹿子が満面に微笑をうかべている。
わたしは遠野物語にでてくる『マヨイガ』にひきよせられたのだ。鷹雄はふるえながらそうおもった。さきほどからの、ひとりごともここでつきる。恐怖はなかった。ふしぎと怖いというきもちにはならなかった。
「鹿子さん」
「いいえ。わたしは鹿子おばあさんの孫の美和です」
「孫? マゴ」
「そうよ。ここはオジイチャンと鹿子バアチャンの家でしょうな。表札にもそうでてたでしょう」
「鹿子は」
鷹雄はいちばん聞きたかったことを、座卓につくと美和に聞いた。
「それは母の口からきくのがいいわ。連絡しといたから明日は東京からもどってきますから」
慶応大学の文学部の教授になっている。それも英文科。鷹雄が在学した科だ。

鷹雄は卒業して外交官となり海外生活。そしていま、なつかしい故郷にいる。
「鷹雄オジイチャンのメール届いていたから。母はすぐかけつけられる準備はできているはずよ」

「聞かせてくれ、鹿子さんは」
「オジイチャン海外生活がながいから。妻にはさんをつけなくてもいいでしょうな」

「お母さんにしかられるけど、じゃあわたしから話すね」
「鹿子おバアチャンは……」
この時、美和の携帯が着信音を奏でた。
「母からよ。オジイチャンが句碑を見ていると母には連絡しといたの」
「お母さん、ちょっとまって」
コードをテレビにつないでいる。
テレビからなつかしい鹿子の声がが聞こえてきた。声だけではない。
「お父さん、お帰りなさい。会いたかったわ。長い間の海外勤務ご苦労さまでした。お父さんの外交官としてのご活躍は逐一母に知らせておきましたのよ。母もお父さんが帰鹿するのをたのしみにしていましたのに……」

「ただひとたびの契りなれども、わらわは生涯のちぎりとおもいて……」
美和が気取って朗誦するようにいった。
「わたし、日本の古典文学がすきなの。俳句も大好き、鹿子おばあちゃんに負けないような俳句作家になるわ」
孫の美和と方丈で、妻の鹿子をしのび俳句を、文学を勉強する老後の暮らし。
それも、わるくない、と鷹雄は思った。
娘どころか孫までもいるとは——マルチバースの世界に迷い込んだような不思議な感覚にひたっていた。目の前にいるのは鹿子だ。あの時の、鹿子とおなじ歳だ。鷹雄は目がウルムのを覚えた。外交官という職業柄、けっして感情的にはならなかった。鹿子とわかれてからの年月、長い時間の中で涙をこぼしたことがなかった。
涙がほろりとほほをつたった。涙はとまらなかった。まるで鷹雄も青春の初めの季節、鹿子と別れた時点に立ち返り、ながした涙が、またわきだしたようだった。美和がお酒を用意してくれた。おちょこが二つある。
「まだ早すぎるんじゃないか」
「おじいちゃん。一八歳で成人式は済ませたの。運転免許だってもっているんだから。明日は母と三人で日光に行きましょう。三仏堂の前の金剛桜みにいきましょうよ」
なんでも、ほんとうに知っているようだ。あの場所は鹿子とデートでなんども訪れたお気に入りの場所だ。
「だったら四人で行こう」
セピヤ色にいろあせた片時も離したことのない鹿子の写真を鷹雄は泣きながらテーブルのうえに置いた。
桜の花をこよなく愛していた鹿子だ。
鹿子にも三仏堂の金剛桜を見せてあげたい。





麻屋与志夫の小説は下記のカクヨムのサイトで読むことができます。どうぞご訪問ください。
ブログで未完の作品は、カクヨムサイトで完成しています。
カクヨムサイトはこちら

●角川のbookwalkerーにも載っています。
 

  今日も遊びに来てくれてありがとうございます。
 お帰りに下のバナーを押してくださると…活力になります。
 皆さんの応援でがんばっています。














コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする