田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

寒さをボヤク 麻屋与志夫

2010-03-31 20:43:53 | Weblog
3月30日 火曜日
ひさしぶりで、プログです。
中年ボヤキ節になってしまった。

昨夜は就眠時に室温が3℃しかなかった。
おやおや、これでは冬に逆戻りしたようだ。
そうぼやきながら、エアコンを付けた。
朝になったら暖かになっていた。
こんな陽気もあるのだなと思った。

このところの寒さで、せっかく開いていた白木蓮が茶色くしぼんでしまった。
気候の変わり目についていけず、このところ不調だ。
身体の調子もわるいし、文章もまとまらない。

まあこういうこともある、と焦らずいる。
塾のほうは、入塾シーズンなのでこれまたいろいろ悩むことが多い。
脱ゆとりある教育で、教科書が増ページ。
現場の混乱は避けられないだろう。
どうなるのでしょうね。

ひさしぶりに5週目で休み。
テレビでも見ようと番組をみたが、おバカ番組ばかりでみるものがない。
WOWOWだってこのところヒドイものだ。
いっそのこと、テレビをみるのをやめてしまうのもひとつの見識ではないかと思っている。

日光に雪が降った。
青い山並みが白のまだらな雪化粧。
きれいだ。この故郷の町が、いちばんきれいに思える季節だ。

あまり田舎町では、人事には関心をもたず。
自然を愛でて過ごすのが田舎住まいの極意のような気がする。
都会の感覚でどうこういってもはじまらない。
ああ、いま書いている小説。
栃木芙蓉高校文芸部にでてくる。
翔太GGのように雑木林に囲まれた家ですごしたいよ。
でも生身のわたしは、
日々かくのごとく俗事にどっぷりとつかり、
身動きのとれない日々を悶々と過ごしている。

身体が不調だつまらないことばかりかんがえるものだ。

ぼやきはこのへんでやめて、
明日からは春四月、
千鳥が淵の桜をみにいこう。


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魔王降臨2 麻屋与志夫

2010-03-31 04:39:05 | Weblog
part12 魔王降臨2 栃木芙蓉高校文芸部(小説)


57

「うそだ。おれには人間にしかみえない。
おまえは何者なのだ?
ルーマニヤの吸血鬼を倒した娘、
おまえはどこからきた」
「それには応えられないわ」

ぞくぞくするような戦慄が龍之介を襲った。
文子はこの邪悪な波動に耐えている。
すごい。
また、あの羽音がする。
いや今度は、金属をこすり合わせるような音だ。
ガラスを爪でこすったような不愉快な音だ。
脳髄に突き刺さるような苦痛。
とても耐えられそうにない。
音、音、音。
「どうだ、娘。
おまえには耐性があっても、
その若者は苦痛に耐えきれず発狂するぞ」

龍之介は刀の下げ緒を短くきって耳栓をした。
さして効果はない。
どうやらこの音波攻撃は直接頭にひびいてくるらしい。

「やめて。彼を苦しめないで」
「ならいえ。おまえはだれだ」
「わたしは、神の庭園で園丁を告発したもの。
バラのトゲをさした園丁が、
みずからの血をうっとりと吸っていたと神に告げたもの。
堕天使となった者を監視する監察官。
古きより吸血鬼とは敵対する者。
吸血鬼に懲罰をあたえられる者」
「もういいわかった。
そういう娘、おまえも密告したために神の園から追い出された。
堕天使となったのではないか。
神を恨んだらどうだ」
「あんたらと同じではない。
その証拠に、吸血鬼を滅ぼす能力がある」

龍之介の痛みはさった。
ガクッとその場にだが、崩れてしまった。
「龍、しっかりして」
「今夜のところは顔見世だ。
このつぎあったら、覚悟しておけ。
あのものたちの灰を夜明け前に回収しなければならない。
まだ消滅させるには惜しいからな……」
魔王、ベルゼブブは現われたと同じように、
不意に消えてしまった。



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魔王降臨 麻屋与志夫

2010-03-30 22:42:09 | Weblog
part12 魔王降臨 栃木芙蓉高校文芸部(小説)


56

「なにかがくるわ」
文子が声を低めた。
病室にいるほかのものにはきこえない。
龍之介の耳もとでささやいた。
龍之介はすばやくドアを開いて廊下にすべりでた。
夜明けにはまだ間がある。
廊下がふるえていた。
巨大なモグラが這いよってくるように波打っている。
窓ガラスがはじけ飛ぶ。
フロントのドアが開いた。
そして、そこに。
夜のしじまをかきみだして虫の羽音を反響させて、
そこに。
きくものを不安にさせ、恐怖をたたきつけて、
そこに。
ついにあらわれた。

「魔王。ベルゼブブ。蝿の王」
「どうやらおれをしっているようだな。娘」
「あなたが、影で大沢や下館を操っていたのね。
でもどうして? わたしにはわからない。
どうして日本のこんな小さな田舎町を……さわがせるの」
「それに応えるよりも、
よくも彼らを消したな。
人間相手にはモッタイナイほどの精鋭だったはずだ」
「わたしは応えてあげる。
わたしが人間ではないからよ」


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番長襲名/ガントレット6 麻屋与志夫

2010-03-29 21:12:58 | Weblog
part11 番長襲名/ガントレット6 栃木芙蓉高校文芸部(小説)


55

番長は出血とショックで意識を失ったままだった。
それでよかったのもしれない。
信頼する副番がゾンビーの群れてなって、
襲ってくるのをみたら、どう感じただろうか。

『手術中』の標示燈が消えた。
部屋からでてきた医師に「どうなの」と知美がきく。
「傷はたいしたことはない。
ショックと痛みで意識をうしなったのだ。
麻酔が覚めればすこしくらいなら話してもいい」
「ああ、よかった。お兄さんありがとう」
警察よりはさきに、石原病院に直接はこびこんだ。
知美の家は番長の家と同じ万町にある。

そこへ警察からは亀田刑事がきた。
「大怪我か」
「心配おかけしてすみません」
知美がていねいに謝罪している。
副番の連中も噛み親の大沢と下館が文子に滅ぼされたので、
元に戻った。
番長を襲ったことなど記憶していない。
「番長、もう危ないことしないで」
麻酔からさめた番長の枕元で、
いままで気丈にふるまっていた知美が泣きだした。
「机、番長を襲名してくれるだろうな。
お前だけだ。
あの狭い道で両側から攻撃されて、
抜け出たのは。
それもゾンビーやろうに襲われたのに無傷だ」
「ちょっとまってください。
ぼくはガントレットに参加したのではなくて、
山田のところへはやく着きたいと先を急いだだけです」
「いや、どうしても受けてもらいたい」


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番長襲名/ガントレット5 麻屋与志夫

2010-03-28 03:55:59 | Weblog
part11 番長襲名/ガントレット5 栃木芙蓉高校文芸部(小説)


54

番長が意識を失うまで、倒れるまで気づかっていた仲間だ。
その副番の連中が、あろうことか番長に群がってきた。
「目を覚ませ。操られている。これは番長だ。おまえらのアタマだ」
番長の腰にささった槍を抜きたいのだが、出血がこわい。
「番長。しつかりして。いま石原をよぶから。知美さんに連絡するから」
龍之介は携帯をしながら、
操られている副番たちから番長を守った。
「どうしてこんなことをするんだ」
下館に龍之介は疑問をたたきつけた。
襲われる側には、襲われる理由がわからない。
攻めこむ側には、攻めこむ口実があるのだろう。
でも、応えはもどってこない。

番長に噛みつこうとした副番の足を剣で削いだ。
ばたっとボーリングのピンのようにみごとに倒れた。
こいつらもう人間ではないのか。
もとに戻すことはできないのか。
もとに戻れた時のことをかんがえると、
深く傷つけるわけにはいかない。
「番長。植木さん。目をさまして」

「もう、これまでね。容赦はしないよ」
文子の声が裏返ったようにひびく。
大沢と下館。
吸血鬼は性懲りもなく悪態をつきながら文子を攻め立てていた。
冷酷な眼差しで文子がふたりを睨んだ。
あたりの空気がきゅうに冷えた。
花冷えではない。
酷寒にもどったようだ。
ちらちらと雪が舞っている。
いやサクラの飛花だ。
花びらまで凍てついている。
一瞬文子の姿がゆらいだ。
消えたように見えた。

「はじめからこうすればよかったのよ」
文子の声だけが寒気の中で響いた。
ビュと矢がとんだ。
大沢と下館の心臓に銀の矢がつきたっていた。
「成敗」
鞭が銀色にきらめいた。
ふたりの首が切りおとされた。
文子の姿が、凄惨な悲しみを秘めた立ち姿がそこにはあった。
これが監察官の技なのか。



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番長襲名/ガントレット4 麻屋与志夫

2010-03-27 09:39:38 | Weblog
part11 番長襲名/ガントレット4 栃木芙蓉高校文芸部(小説)



53

ヌンチャックが襲ってきた。
叩きつけられる棍をかわして、
龍之介は敵の利き腕を切り下げた。
ヌンチャックを握ったままの腕が、
夜空にとんだ。
絶叫とともに男はバランスを崩した。
回転しながら倒れた。

番長はタンボ槍の男と戦っていた。
稽古用の槍の先に綿か布をまきつけて衝撃を和らげるものではなかった。
白い光がはなって真槍が番長を攻め立てている。
突くとみせて横に薙ぐ。
番長の腕から血が流れている。
それでも番長の威厳と怒りのためか。
一歩も退かずいずいと間合いを詰めている。
鋭い突きが番長の腰につきたった。
槍のほうがリーチが長い。
特殊警棒では敵にとどかない。
無念の形相で番長は投げた。
男の胸板に正確にヒットした。
警棒の半ばまで男の肉にくいこんだ。

「おれにはかまうな。机、ウチの副番たちが全滅だ。墓地で倒れている」

それだけいうと番長は倒れた。
痛みを必死でこらえている。
並みの男なら失神している。

「こっちはかたつけた」

「そうかい」
文子と戦っている大沢がふり返って龍之介に応えた。
「かたつけただと。あれをみろ」
下館がにやにやして余裕の声で叫んだ。
どうしたことだ。
番長がさきほど走ってきた墓地の狭路を、
ぞろぞろと男たちがやってくる。
ゾンビだ。
いやちがう。
かまれて従者にされた芙蓉高校の副番の哀れな姿だ。
いやまだ完全にはRFにはなりきっていない。
だが、ひととしての意識を欠いた副番の群れは、
龍之介と番長に襲いかかってきた。


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番長襲名/ガントレット3 麻屋与志夫

2010-03-26 20:58:58 | Weblog
part11 番長襲名/ガントレット3 栃木芙蓉高校文芸部(小説)


52

ふたりだけで監察官を襲うなんて無謀すぎる。
文子の掌底からの念波光をあびて、
爬虫類の肌を露呈してしまった吸血鬼だ。
文子の能力はわかっているはずだ。

それがふたりだけで宇都宮から恨みをはらしにやってきた。
そんなのって、おかしい。

物音に気づいてふりかえると、
いま龍之介がとおってきた墓の狭い道を番長がはしってきた。

「よかった。机、怪我はなかったか」
「なにがあったのですか」
きくまでもなかった。
ヌンチャックとタンポ槍の男たちが追いかけてきた。
「うちの若いもんと入れ替わってやがった」
その一言で納得した。
殺気があったわけだ。
こいつらは吸血鬼の従者だ。
レンフイルドだ。
RFだ。
龍之介は特殊警棒のグリップをひねった。
先端から刀身がとびだした。

「番長!! これを使ってくれ」
番長は龍之介から受けとった、
警棒をひとふりして手ごたえをたしかめている。
そして不審そうに龍之介を見返した。
「ぼくは、これ」
「どこに隠していたんだ」
龍之介がGから譲られた仕込みを抜き放っていた。
夜目にも白刃がひややかに光っている。



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番長襲名/ガントレット2 麻屋与志夫

2010-03-25 15:46:06 | Weblog
part11 番長襲名/ガントレット2 栃木芙蓉高校文芸部(小説)


51

第一関門はタンポ槍。
難なくかわした。
突きはするどかったが、横からだった。
脇腹をねらってきたが龍之介の動きがはやすぎた。
第二関門はヌンチャック。
これは正面から堂々と襲ってきた。
「どけ。先を急いでいる。ぼくは襲名レースに参加していない」
棍が風を切っておそってくる。
微塵も手加減していない。
それも頭部を攻撃してくる。
戦慄が背筋をはいのぼってきた。
ふるえていた。
このぼくがふるえている。
おれは、とGの声音が頭の中でひびいていた。
こんなことでは負けない。
心頭滅却。
心頭滅却。
おれは負けない。
なにかこの雰囲気は妖しい。
もっともらしい、次期番長を選ぶための腕試しにしては過酷過ぎる。
これでは命をかけた実戦だ。
まかりまちがえば、もっていかれる。
怪我では済まされない。
殺気が夜気のなかから伝わってくる。
「おれは、先をいそいでいる。もういちどいう、番長襲名には関係ない」
龍之介は怒りを押さえて冷やかに言い放った。
はじめて龍之介が凄みをきかせた声をだした。
それでも攻撃はやまなかった。
リンボーダンスのように反身になって棍をさけた。
腰の特殊警棒を振り出しながら引きぬいた。
おとこの脚にたたきつけた。
ガギッという音がした。
鉄の杭を叩いたようなてごたえがあった。
龍之介はその成果もみずに走りだした。

行く手の二階建ての家の明かりがふいに消えた。
「文子」
龍之介は胸騒ぎがして声に出した。
呼びかけた。
窓ガラスが室内から割れた。
黒い影が屋根にとびだした。
対峙している。
文子と思われる影が庭にとんだ。

「龍。きてくれたのね」
「敵は鬼村か」
「ちがうみたい」
「なに、いちゃついている。ふたりまとめて始末してやる」
「ルーマニヤか? ……下館だな」
「大沢もいるよ。
こんな鱗肌にされた恨みはらさせてもらう。
このご面相じゃ、夜でもなきゃ出歩けないもんね」
「もともと夜の一族でしょう」


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番長襲名/ガントレット 麻屋与志夫

2010-03-22 16:07:03 | Weblog
part11 番長襲名/ガントレット 栃木芙蓉高校文芸部(小説)


50

「文子さんが危ないわ。
いくら最強の監察官でも、
今回は粛清する吸血鬼がおおすぎる」
「ぼくもそう思う。
宇都宮には、大沢や下館がいる。
いつ反撃してくるかもしれない。
この栃木には鬼村とその配下がいる。
下野高校の番長グループも、
みんな吸血鬼化していると思わなければならないだろう」
「だったら、今夜からここへ呼んであげなさいよ」
それがいいだろうとGもいう。
携帯をかけた。応答がない。
龍之介はにわかに不安になった。
あのまま別れることはなかった。
文子は時間をジャンプするためにかなりのエネルギーを消耗したはずだ。
「ぼくのところへこないか。
Gも玉藻さんもよろこぶから」
そういって誘うべきだった。

夜の街には芳香が漂っていた。
沈丁花の匂いだろう。
街灯がまばらにしかついていない。
文子にきいておいた。
「巴波川」沿いの道を急ぐと人家がまばらになってしまった。
前方に人声がする。
人影のようにみえたが、墓石群だった。
石塔が黒々と薄闇の中に並んでいる。
墓地だ。
押し殺したような声がする。
「だれだ」墓石の根もとから人影がわいてでた。
いままで墓石の影に身をひそめていたらしい。
黒い影となってちかよってくる。
龍之介は驚きその場にたちすくんだ。
身構えた。
またトレンチコートのRFがあらわれたのか。
フラッシュライトで照らされた。
「オス。机じゃないか。おまえも参加するのか」
「先輩達ですか」
「ああ、おまえのことは、植木さんといっしょのところなんどもみている」
「どうした」植木の声だった。
「これ……なんのイベントですか。墓場で肝試しですか」
「まあ、それに近いな。慣例の番長選びさ。
おれはもう卒業だからな。
この墓地をむこうまで抜けられたやつが、
次期の芙蓉高校番長になれるのだ。参加したくてきたのだろう」
「それが」
龍之介は文子とともに鬼村とたたかったこと、
いま文子と連絡が取れないことをあわただしく話した。

「それは困ったな。その地図にかいてある山田の家はたぶんあそこだ」
番長が指差したのは墓地をぬける一歩道のさきの家の光だった。
闇の彼方にみえる家は二階建てらしい。
明かりがついている。あそこに文子がいる。
まだ別れて数時間しかたっていない。
それでも会いたさが募る。
歩きだそうとする。
番長に止められた。

「このみちの両側には番長の選考委員がひそんでいる。
素手で。あるいは得意な武器で。
通過するものをおそうことになっている。
赤いマークをつけられるように素手も武器も工夫してある。
まあ、ガントレットだ。
いまさら連絡のしようがない」
この狭窄した墓地の道を通りぬけることができるのか。
でも、そんなことでまごまごしている余裕はない。 
文子のことが心配だ。
いまこうしてぼくがグズグズしている間にも、
テキニそわれるかもしれないのだ。
龍之介は歩きだした。
走っているようにみえる。
すり足で敵に切りこむときの要領で風のように動きだした。


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血を吸うもの2  麻屋与志夫

2010-03-20 02:52:16 | Weblog
part10 血を吸うもの2 栃木芙蓉高校文芸部(小説)


49

「翔太ジイチャン。
どうしてぼくらの周りでは、
現実とは受けとれない事件ばかり、
起こるのだろう?
田舎に住めばもっと静かにすごせると思ったのに」
霧の降る街の本陣跡の土蔵で体験したことを報告した。

「それはね、龍チャンが、
いや机家の家系に目にみえないものも透視できる能力があるからよ」
翔太にかわって玉藻が応えた。
翔太はあいかわらず「北秋田」を黄瀬戸の茶飲みで豪快に飲んでいる。
ゴールデンリトリバーのハンターはおつまみのめざしのご相伴にあずかっている。
シャリシャリ音をたてて満足そうにめざしをたべている。
尻尾でぱたんぱたんと畳を打ってよろこんでいる。
「ほら龍ちゃん。障子に浮遊霊が映っている。
あれだって、普通の人がみたらただの庭樹の影としかみえないもの」

月も朧な春の夜だ。
青頭巾で知られている。
大中寺の七不思議でも有名なこの土地がらだ。
成仏できない霊魂がさ迷っている。
障子の影は風もないのに縮んだり大きくなにったり歪んだりしている。
啜り泣きさえきこえる。
「普通の人にはなにも感じられないのよ。
みえないのよ。
だから平気でいられるの。
みえるということは、
感じられるということは、
すごい能力なのよ。
大切にしてね」

「剣の道も、書も、きわめれば同じこと。
剣から目にみえない殺気が迸るのがみえてくる。
書も臨書していると故人の気迫が乗り移ってくる。
ここをハネルときは、
どんな気分だったろう……なんてことが推察できるようになる。
そういう意味では、
龍が文芸部にはいったことはいいことなのだろうな。
剣道はまだGが教えられるから。
龍には小説家になってもらいたい。
それも硬派の中上健次みたいなごつい作家になってもらいたいな」

中上健次に、
なにか特別な想い入れがあるのか、
翔太は遠くをみる目でぐいと茶碗の酒を飲みほした。

「龍チャン。監察官のこと好きでしょう」
不意をつかれた。
玉藻がイタズラっぽい眼差しをむけてくる。
「文子さんのこと、
愛しているのね。
あの人のこと話すときの龍チャンの顔色でわかるもの。
大切にしてあげてね。
わたしたちみたいに離ればなれになったら、
よほどのことがないかぎり二度と会えないもの」

「お九さんが昔のままなのにはおどろいた」
「あら、これでも年はとってきているのよ。
ただそれがすごくゆっくりと……」




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