田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

吸血鬼浜辺の少女外伝/魔闘学園 麻屋与志夫

2008-08-31 19:01:27 | Weblog
 ジの顔みたい。
 マスクじゃないよ。
 はがれないもの……。
 ふふふふふふはふはふと。
 さもおかしそうにマスクがわらった。
 タカコがぎょっとした顔で麻屋をふりかえった。
 なにか異様なものを感じたのだ。
「なによ。これ」
「説明はあとだ、逃げるんだ」
「逃げられるかな」           
 男がメグミの腕をつかんだ。
 あまり聞きたくない音がした。
 みきっというような骨のくだける音だ。
 絶叫が路地裏にびびく。
「あああ。女の子の悲鳴はいつきいてもオイシイですね。もっとおいしんものをいただきますか」
 乱杭歯がのびてきた。
 汚れた灰色の歯がにきょつとのびる。
 さすがのサンタマリアのGガールズも動けなくなっていた。
 キンキンという可聴領域すれすれの音波がながれる。
 Gガールは動けない。
 メグミの首筋に犬歯がよせられていく。
 犬歯がによろっとさらにのびる。
「吸血鬼だ。こいつは異界のもの。きみらが闘うあいてではない」
「おや、よくわかっていますね」
「センセイ。マジかよ。吸血鬼だなんて。いい年こいて、ゲームのやりすぎかヨ」
「タカコ、ここはおれにまかせてメグミちゃんをいっこくもはやく医者につれていけ」
 吸血鬼と麻屋はふたりだけで対峙していた。
「おれ、の気分にひさしぶりでならせてもらった」
 麻屋は右手の平を鬼にむけて念を凝らした。
 彼の体から、青白い炎がたちのぼってきた。
 炎のなで墨染めの衣をつけた僧が杖をかまえている。                

 穴のふちに直立していた。       
 動けない。              
 恐怖がまだ小どもだったおれをその場にくぎづけにしていた。         
 来るな。                  
 あとは、学、(まなぶ )にまかせた。       
 父の声がする。            
 父のからだが斜面をすべり落ちていく。 
 異界の底へのみこまれた。       
 足もとから妖気が吹きあがってくる。  
 金縛りにあったように動けない。    
 動けても、父を助ける術がない。    
 動けたら、父をおいて逃げたかもしれない。
 それほどの恐怖だった。
     
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吸血鬼浜辺の少女外伝/魔闘学園

2008-08-31 06:25:48 | Weblog
 田舎街で。
 学習塾の英語教師としての。
 平穏な生活をのぞんで、生きてきた。       
 
 ……わたしをリタイアに追いこんだ。
 その死の臭いの源としての吸血鬼を。
 いま目の前にしている……。

「なによ、あんたら。あたし知らないの。鹿沼中学スケバン、サンタマリヤのタカコよ」
 タカコには普通の若者としか見えていないらしい。
 妖気がみなぎっている。
 こいつら、まちがいなく吸血鬼。
 だが、タカコのタンカにかれは顔の肌を剥きとることでこたえた。
「やっぱ、これくらいではおどろかないんだな」
 マスクだった。
 よくできすぎている。  
 よくできすぎたマスク。 
 青黒い肌。
 乱杭歯。
 尖った耳。
 吸血鬼の顔には。
 牙が光っている。

 毎晩塾の授業がある。         
 夜の街には出ていない。        
 遊びもかわった。           
 年だな、と麻屋はおもい知らされた。
 自分の早とちりが笑えてくる。
「なにカギまわっている」
 裏口につれだされた。
「カギまわられて、ヤベェことしてるんかよ。あんたら、みかけねえツラしてるけど、どこの族なのよ。おしえていただけます」
「きいてるのは、こっちなんだよ」
 ビューとタカコが口に指をいれて合図した。
 指笛が狭い路地にひびいた。
『マリア』と腕章のついた族の制服姿が路地にはいってきた。
 ギャング。
 女の子だけ。
 Gガールズが群れる。
「わたしがひとりできてると思ったの」

「キザムぞ」

 マスクを外した男がナイフを取り出した。

 バタフライ・ナイフだ。
 すう年前、この宇都宮からさほど離れていない。
 黒磯の女教師を中学生が刺殺した。
 マスコミをさわがせたナイフだ。

 チャカチャカと音をたてる。
 光る凶器が迫る。
 威嚇してくる。

「あんたら、三人ともバカじゃない。あたしたちが、そんなトイザラスでうってるようなナイフでおどろくとおもうの。ナメンジャネエヨ」
「よしなよ。メグミ。そんなモノ出すのはやすぎるよ」
 メグミの手には。
 圧倒的な存在感のある……。
 クロコダイルダンデイでつかわれたような。
 特大のソリューション・ナイフがにぎられていた。

 大刃のナイフ。
 みねが鋸になったアレだ。

 ひるまず、つっかけてきた男のナイフをそれが弾いた。
 みねのぎざついた部分でかみあった。
 おとこのナイフが手からはなれた。
 
 メグミの刃が男のふとももを切り裂いた。
 浅く長く。
 
 この子たちは、慣れている。
 こんなことをいつもやっているのだろう。
 そのスリル。
 その快感。
 その興奮のはてにやってくるカタルシス。
 そうしたことをもとめて夜の街をさまよっているのだ。
「やめないか。もういい」
 麻屋がとめにはいった。
 それがGガールズを刺激してしまった。
「フクロにしちゃいな」
「そいつのマスクもとってみな。ツラおぼえとくからね」
 2人目の男のマスクにメグミが手をのばした。
「よせ」
 不気味な妖気がその男からただよってくる。
 妖気の発現点だ。
 並の妖気ではない。
 精神に狂いを生じさせるほどの悪意が噴き出している。
「やめろ。にげるんだ」
 なにこのオジンセンセイはビビツテルの。
 そんな顔でメグミはマスクにかけた指先に力をいれた。
 あれっといった顔になった。      
 あれ、これおかしいよ。

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吸血鬼浜辺の少女外伝/魔闘学園

2008-08-31 00:23:25 | Weblog
 だが体をこすりあわせて踊る若者からは。

 いやな臭いも妖気も感じられない。

 バーカウンターにもタカコがもどってきた。
 店内を見渡していた麻屋に首を横にふる。
 みあたらないということらしい。

「それよりさ。ケイコヤバイコトになってるみたい」

 なんの脈絡もなくとつぜんいいだす。

 よく聞き取れない。          

「センセイ、ミミとおいのとちがう」   
 タカコがいらいらしている。      
 タカコは麻屋の耳に口を寄せる。             
「ケイコのさがしてたのは、兄貴のほうらしいのよ。二荒さん、なんて聞く。わたしのことだったら、タカコとか、おタカきてない……っていうわよね、ヤッパあたしってとろいな。いくらケイコがいいとこの女の子でも、あたしをさがすのに、二荒さんきてませんか、なんて聞くわけないもん」
「どうして、それがヤバイんだ」
「だからァ、トラブッたらあたしの兄貴のなまえだしなっておしえたことがあるのよ。鹿陵高総番二荒三津夫の名前はダテじゃないよって、教えたことがあるのよ。ケイコ兄貴にホレてたからさぁ」
 これが中学2年生の女子学生との会話か。
 
 バーのうしろの鏡に吸血鬼が映った。

 とりかこまれていた。

 やっぱりなぁ。

 現れたか。
 いやな臭いと妖気の源流。
 なん年ぶりだろう。
 でも、決して忘れることのできない恐怖の源。
 
 吸血鬼は鏡には映らないいのではなかったか。
 麻屋の吸血鬼にたいする古典的な知識が頭にうかぶ。
 爬虫類のようなごつごつした青黒い鮫肌の男たち。    

 
 厚木基地での日々。
 ベトナムの戦線から運ばれてきた死体の処理実績があった。
 遠い日々のことではあったが過去その実績はいきていた。      
 湾岸戦争の戦没者の死体がそのために24時間体制で空輸されてきた。
 黒色の死体袋からもれでる。      
 すさまじい死の臭い。         
 わたしは食べ物が喉をとおらなくなった。

 そして……その死体のなかに明らかに銃火器による死体ではないものがあった。

 一刻もはやく死体を焼却処分するようにという命令のなかには、それらの死体が蘇るという確信があったのだろうか。
 もくもくと作業につくものは、なにも感じていないようだった。
 気づいてはいけないことだった……恐怖にたえられかった。
 
 死体が夜のあいだに消えていく
 
 …その恐怖の実体を知った。
 そしてわたしは田舎に身をかくした。

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吸血鬼浜辺の少女外伝/魔闘学園

2008-08-30 05:42:31 | Weblog
 不安があった。            
 ひさしぶりで、すさまじい凶念を体感した。
 街が邪悪な気配にピリピリふるえている。
 この凶念。
 この邪悪な気配は記憶にある。 

 麻屋は英語圏で、日本ではあるが厚木の米軍キャンプにいた。
 英語を話すことで生きていた。
 時の流れが逆流していた。   


 厚木基地での日々。          
 遠い湾岸で戦争が続いていた。
 兵士たちの死体が黒い袋につめこまれて毎日はこばれてきた。
 テレビで公表されているような員数ではない。
 すべて、目にみえる表の世界のできごとには裏がある。           
 焼却炉からは、火葬の、人を焼く臭いが。
 いがらっぽい煙に混入して。
 基地の一隅をおおっていた。                 
 

 タカコとクラブにはいった。
 むろん、うさんくさい目でみられた。
「マッポじゃないからね」
 タカコときてよかった。
 犬飼中次期生徒会長の犬飼ケイコが宇都宮のクラブで踊っていたというのだ。
 けっしてケイコの現れるはずのない場所だ。         
 それも失踪した月曜日からかぞえて3日目、麻屋がケイコの家から連絡をうけた日だ。
 あのとき、すぐに捜査にかかればよかった。
 警察に届けてある、というので安心してしまった。                 
 警察で本気で捜査しているのなら、「アサヤ塾」にもケイコの交遊関係くらい調べにきてもいいはずだ。
 いや、警察が怠慢なはずがない。
 あまりにも不可解な殺人事件をかかえている。
 河川敷住民のスロートカット殺人事件をかかえている。
 多忙すぎるのだ。
「なんてクラブなの……」
「クラブは宇都宮にはひとつしかないの」
 携帯を打ってきたタカコが「センセイ、ダセェ」とケタケタ笑っていた。
「松が峰にあるリリスょ。アサヤ先生聞いてよ、二荒さんいますかなんて、ケイコがさぁ、スカして、たずねていたって。わたしが塾バックレちゃってるから会いたくなったのかな。どうかしちゃったのかな。センセイ、オール5のケイコがあたしんとこへなにしにきたの……」                
「松が峰のリリスだな」
「やだぁ、先生ほんきで、いくき。オッチャンはセキュリティにことわられるよ。マッポとまちがえられるものね。あたし、イッテアゲる」
 
 スモークが、踊の群れの足元にまつわりついている。

 すきかってに踊っている。
 下半身の動きはまったく見てとれない。
 重低音にときおりラップがはいる。
 それ以上のことは、麻屋にはわからない。
 臭い。
 若者の汗の臭いなのだろうか。
 それにしても、臭いがきつすぎる。
 青緑のような匂い。
 脇の下と足の臭いか。
 通風性のわるい、安もののスニカー。
 洗ったこともなく、うすぎれればすててしまう靴下が悪臭の源なのか。
 それとも……発情したセックスの?               
 しかしタカコは慣れている。
 平気だ。  
 
 スモークには妖気がふくまれていた。
     
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鹿沼/鹿沼/鹿沼発信のブログです 麻屋与志夫

2008-08-29 10:52:46 | Weblog
8月29日 金曜日
●ワイドショーや、天候に関する番組でも鹿沼に言及するコメンテーターがおおくなった。勿論あの悲しむべき、女性ドライバ―水没死事件があったためだ。

●昨夜などは、西大芦地区の草久で土砂崩れの危険があるので住民が避難した。と報じていた。いままでも再三この程度のことはあったはずだ。ただニュースにはならなかった。

●今朝はまた黒川が増水していると報じていた。黒川の左岸から川上澄生美術館を望むアングルで濁流渦巻く流れがテレビの画面に映っていた。

●わたしのブログや小説に掲載されている鹿沼を代表する清流である。

●その清流である黒川も、上流の山の植林がないがしろにされているので、大雨がふるとこのありさまだ。

●いつまで続くか分からないが、自然現象だけでなく、いま鹿沼で起きていることにマスコミの目が注がれ続けることをねがっている。

●わたしのブログの訪問者も三ケタとなった。閲覧者は四ケタという日もある。

●これもマスコミで鹿沼のことを連日話題にしてくれているからかもしれない。

●鹿沼が有名になったといっても、あの事件があったからで、よろこんでばかりはいられない。

●痛ましい事件が起きないように市民のひとりひとりが日々の生活を細心の注意をはらって生きることが大切なのだろう。

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吸血鬼浜辺の少女外伝/魔闘学園

2008-08-29 06:31:46 | Weblog
 だから勉強がつらいわけがない。
 ケイコにかぎって、塾がいやなわけがない。
 男の子とトラブッテいるわけがない。

 だからこそなにかいやな予感がする。  
 頼まれもしないのに、麻屋が動いた。  
 分厚い防音扉を押した。
 広い。
 天井からおちてきた光りが複雑に交差する。
 店内はむろん若い客ばかりだ。
 中学生もいる。
 耳をつんざくハードロック。
 ゴシック系の衣装もいる。
 ごていねいに体に包帯をまきつけた群れがいる。
 スモークがたかれ、もうもうとした煙りにアルコールの匂いがする。
 大麻タバコの匂いまでまざりあっている。
 そして妖気。
 クラブにはいるにはもっとも怪しまれる中年オヤジの顔と体に、妖気がうちよせてきた。
 麻屋には覚えのある妖気だった。     
 情報をくれた二荒タカコがきてくれてよかった。
 ケイコがクラブにいたらしいの。    
 中年のオジン。
 ひとりでは入店できなかった。

 ……もしやと疑念をいだいていた。   
 
 この妖気を予感したことが……おれの動いたモチベイションなのか。
 
 もしや、とうたがっていた。

 震源地不明の直下型の地揺れがあった。

 あのあと微震がつづいた。       
 街がゆれている。
 不吉な余震がつづいた。
 体に感じられるだけでも100回は越えている。

 あれが現れたのか?          
 麻屋の予感はそこにいきつく。

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吸血鬼浜辺の少女外伝/魔闘学園 麻屋与志夫

2008-08-29 00:16:10 | Weblog


 大バコだ。              
 地方都市。
 宇都宮のクラブにしては。
 かなりの広さがある。
 地下への階段をなんどか曲がった。
 屈折部には監視カメラが。
 めだたないように。
 設置されていた。
 階段を下りる。
 こういう場所にくるとタカコはいきいきとする。
 麻屋はケイコの失踪について不安を感じていた。
 ただごとではない。
 母親が7時ごろ、時間に遅れないように、森山眞弓事務所の前まで車で送ってきた。
 そこからは塾まで、細い路地をはいって10メエトル。
「がんばってくるからね」
 ケイコはヘッドライトの光の中で。
 ひらひらと手をふっていた。
 いつもの送迎風景。       
 ところが、ケイコは塾に現れなかった。
 なにが、ケイコに起きたのか。
 ケイコはどこに消えてしまったのか?  
 彼女の内面でなにか起きている気配は感じられなかった。
 麻屋はそれを恥じた。
 塾がきらいだ。            
 勉強はもうたくさん。         
 フケちゃおう。
 そうした、ようすはみえなかった。
 ケイコがそんなことをするはずがない。
 成績はつねに学年のトップ。
 県内でも再難関校、宇都宮女子高校への合格が期待されていた。                
 失踪の連絡。             
 めんくらった。
 そして、独自の調査にのりだした。
 家族からたのまれたわけではない。
 塾生への愛情がそうさせた。
 学校とはちがう。
 小学1年生から8年間も教えてきたかわいい塾生だ。                 
「おれの生徒にかまうな」        
 というヌベエ先生のセリフソノママノのきもちだ。 
 いい年コイテ……劇画の世界かよ。   
 塾生たちとの共有した時のながれのなかで鹿沼の街は激変してしまった。
 日本で一番有名な鹿沼中学の定期試験撤廃事件がある。
 日変り担任制度がある。
 きまった担任がいない。
 試験もなんにもない。         
 人よんで『ゲゲゲの鬼太郎学校』。
 この街の子が勉強がつらいなんてことがあるわけがない。                 
 どの中学も勉強にはあまり力をいれていない。
 どの中学もクラブ活動は運動に力をいれている。 
 学生にとっては、天国に一番近い街だ。 
 近隣の街から転校希望者が殺到している。
 人気絶頂の中学校のある街だ。

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吸血鬼浜辺の少女外伝/魔闘学園 麻屋与志夫

2008-08-28 17:59:14 | Weblog
 あの時、武と稲垣は不審尋問をした男をとり逃がしていた。
 本田にどなられた。

「しらない男よ。ここ歩いていて声かけられたの。2まんだすからって、ネダられたのよ。しかたないじゃん」
「カネ出せば、だれとでもつきあうのか」
「そうだよ。武なら、ただで、あげちゃう」
「そうゆう、もんだいかよ」

 タカコと話していると、頭がおかしくなる、と武は思う。
 思いながらも、タカコの豊かな胸を眺め……なにか聞き出そう焦っていた。
 だが、武はタカコからは男にかんする情報はなにもえられなかった。
 いまどきの中学生の考えていることはわからない。
 わかったところで彼女たちの行為をとめることはできない。

 これは教育の問題です。

 親と学校の先生に責任があります。
 親の自分の子どもにたいする教育がなってない。
 なにか問題がおきれば、すべて学校の責任にする。
 教師の監督不行き届きだとわめきちらす。
 モンスターマザがいる。
 すべてを行政側の責任にする。
 子どものことを理解していないのは。
 その両親だ。

 本田の口癖をおもいうかべる。
 気がらくになった。

 あのとき、男は三段跳びを逆転写したような動きをみせた。
 稲垣の尋問をこばんだ。
 なんの予備運動もなかった。
 正面をみたまま背後に跳んだのだ。
 あっけにとられた。
 ふいをつかれてばか面をしていたろう。
 武と稲垣。
 ふりの顔をみたまま男は不気味な哄笑をあげた。
 さらに跳び、そしてもう1回。
 3回の後ろ跳びで視界から消えてしまった。

 タカコのことなどほうっておけばよかった。
 稲垣と二人で消えた男の残像をもとめて河川敷を見渡した。

 太古から変わらぬ黒川の流れがあるだけだった。
 河原には枯れすすきが春の夜風にそよいでいた。
 男の消えかたに、武は不自然なものを感じた。
 
 なにか、〈非現実〉的なことが……起きている……。

 採集した指紋からは犯罪に該当するような人物はうかびあがらなかった。

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吸血鬼浜辺の少女外伝/魔闘学園  麻屋与志夫

2008-08-28 05:22:30 | Weblog
「なんだぁ。三津夫の妹じゃないか」
「スケベデカ。あまりみつめないでよ」
 女子中学生にしては熟れきった豊乳をおしげもなく、月光にさらしタカコが武をにらんでいる。
 夜風がそよいでいる。
 タカコに背をむけた。
 武の目の前で稲垣が男を尋問している。
 なにがスケベデカダ。
 ガキのくせに、発情しやがって。
 兄貴にコロサレルゾ。



「だれも、信じてくれないんスよ」
 
 三津夫は武にすがるようにいった。
「あたりまえだ。いそがしんだ。そんなゲームの世界みたいなことがあるかよ。もう、いいかげんにしろ。鹿陵総番の名がすたるぞ」

 三津夫と番場が御殿山公園についたときには、暴走族の一団の影もかたちもなかった。

 だれにも見えていないらしい。

 あの時、新鹿沼駅にいた学生たちにきいてまわった。
 なにも目撃していなかった。
 あれから数週間がすぎていた。       
 この鹿沼の里は春。          
 ……やつらには見えないのか。     
 みんなに聞いてまわった。

 だれもあの連中を見たというものがいない。

 三津夫の頭はヒートしてした。
 武のところに相談にきたのだ。

 見えていても怖くてなにもいえないのか。
 
 駅員からもなにもききだすことはできなかった。

「それより、三津夫、タカコ、なんかかわったことないか」
「なんスか、センパイ。うちのタカコがなにかやらかしたんですか」
「いやそういうことじゃない。きゅうにエロッポクなったとおもってな」

「ああ、あいつ、センパイのこと好きですから」
「よせ。デカとスケ番では、さまになららない」

「それって、差別。さべつですよ……だけど、そういえば……」
「どうした? なにかかわったことあるか」

「タカコのやつ夜出歩いている」
 武はガクッとなった。

「夜……ゲーセンにたむろしているから非行少女なんだろうが。夜の街を徘徊しなくなったらおかしい……からな。夜出歩いてなんの不思議がある‼」
「男ができたみたいなんス。武さんにはわるいが、男がいるみたいんス」
「ダカラ、おれは関係ないの。おれに遠慮することないの」
「ホントスか。武さんのタカコ見る目、あれほれてる目とおれ見たんスよ」
「ばかバカ馬鹿。刑事をからかうと、逮捕しちゃうぞ」

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鹿沼女性ドライバー水没死  麻屋与志夫

2008-08-27 07:21:28 | Weblog
8月27日 水曜日
鹿沼女性ドライバ―水没死事故

●事件の報道がますますエスカレートしている。

●不幸な事故であった。行政側が一方的に批判されているがともかく、非常に不幸な事故であったとしかいいようがない。

●冠水した道路で車の中にひとり閉じ込められ助けを呼んでもこない。その恐怖と苦痛を思うと痛恨きわまりない。

●これから責任の所在が問われつづけることになるだろう。

●この事件とはまったく無関係なことだが、故郷鹿沼についてすこし個人的なことをのべてみたい。他意はありません。

●わたしはこのブログで小説を書く時には、すこしでも鹿沼の知名度を上げることに貢献出来ればと土地の商店などの名前をそのまま使う。迷惑をかけていなければいいな、と考えながら毎日小説をかきつづけている。

●東京と鹿沼に仕事場をもっているので、つい「東京では」と言ってしまうことがある。これは禁句。いまも市役所の前をとおってきたのだが、テレビ局の中継車が何台も来ていた。プレスの人間が正義の御旗をたてて颯爽と歩きまわっている。それを恐る恐る見る市民の眼差し。あまり東京の人とは、とくにマスコミとはかかわりたくない。そうした因循姑息な考えがこの町にはある。ひとに批判されるのが嫌いなのだ。

●マスコミが去ってしまえばもとの平和な街だ。と市民は思っている。

●そうだろうか。市役所前のゼブラクロッシングに立ってごらんなさい。いくら待っても車は止まってくれません。信号機のある横断歩道でないと道を渡るのは困難です。

●つい先日などは鹿沼信金の脇の横断歩道を渡っていたところ、半ば横断歩道に乗り入れる形で停車していた女性ドライバ―が急発進した。わたしがまだ歩いているのに。車はわたしの足に軽くあたった。ドライバーは涼しい顔。そのまま走り去ってしまった。

●もっと歩行者にやさしい町になってほしいと思う。

●昨年のことだ。府中橋のところの横断歩道をカミサンと渡っていた。向こう側からくる小学生がどん、どんとわたしたちにつきあたる。しゃべりながら歩いている。まさか体をぶちあてることが親愛の情の表現だとは思えませんよね。

●「不注意だな」と低く妻に話しかけた。耳ざとくそれを聞き咎めた交通整理の男の人がいいました。

●「褒めてやってください」

●なにを褒めてやるのか、いまだにわたしにはわかりません。

●「鹿沼みたいに住みいいところは日本中歩いてもなかんべ」

●これは鹿沼ならず栃木県人のすぐれた県民性だと推察します。
「日本一」ということばを使うのがすきなのです。

●マスコミで大々的に鹿沼がとりあげられている。

●いまのところ日本一有名な街だ。これを機会に町のことをいろいろ話し合う会でもだれか立ち上げてくれないだろうか。

●「魔闘学園」ではこれからも鹿沼の事件が書かれていきます。が、これは小説です。現実の事件とはかかわり合いはありません。

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