田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

超短編 君は大谷翔平になれるか 麻屋与志夫

2024-05-19 10:48:02 | 超短編小説
5月19日 日曜日
君は大谷翔平になれるか

「だれもが大谷翔平になれるわけではないのだよ」
隣のベンチの老人に話しかけられた。
武尾は朝練のグランドまで走っている途中だ。
いつもよりすこし早く家を出た。
朝食をたべてなかった。
母のつくってくれた特大の梅干しオニギリを食べるくらいの時間はあるだろうと座った街角公園のベンチだ。
かぶりとやったところで隣から声がした。
父にもよく言われる。同じ文句だ。
おせっかいなジジイだ。
それにしても、父とまったく同じセリフ。
「若い時はみじかい。一日もむだにしないことだ」
「野球をやることが青春の浪費だというのかよ。よけいなお世話だ」
とはこたえなかった。
はやくたべおわって、学校にいそがなければ。
大人はみんな自分の青春のつまづきを悔いている。
若者にその轍を踏ませないために
助言するのがすきなのだ。
返事もしないでたちあがった武尾に老人はさらに声をかけてくれた。
「がんばってな」みように余韻がのこった。背中にいたいほど老人の視線を感じた。

その翌日。
いよいよ県大会がはじまった。
武尾の対戦相手は下野高校。春の選抜でベストエイトにのこった北関東随一の強豪だ。
九回の裏。得点差三点。ツウアウト満塁。
バッター武尾。カウント、ツウスライク。

このときあの老人の言葉が耳にひびいてきた。
「だれもが大谷翔平に成れる。なれる。ナレル」
みように余韻として残った言葉は改ざんされていた。
武尾はバットをふった。
確かな手ごたえが腕から全身に伝わってきた。
この確かな快感。
この快感を感じたくておれは野球ををやっているのだ。
この快感が青春だ。


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