田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

愛の告白/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-06-25 15:02:11 | Weblog
愛の告白

12

陳腐な表現しかできないのがもどかしかった。
ありきたりのことばでしか、じぶんの心を表せないのが、ものたりなかった。
そんな翔子だった。
もっとロマンチック愛の告白ができたらいいのに。
「わたし……早稲田の街歩いていて
……この街に純がいてくれたらどんなにうれしいだろう
……そんなこと、いつも想っていた。
純に万葉集の相聞、恋歌の話をきけたらいいなぁとねがっていた」

ドクターが診察にきたので、純は外に出た。
すれちがうとき「直ぐ元気になるわよ」と声をかけてくれた。
「Gチャン先生によろしく」女医さんはGGの塾の教え子だった。

完全看護だから付き添いは不要とナースにいわれたが、純が残った。
翔子の枕元で一夜を過ごした。
それで、翔子が意識をとりもどしたときに、そばにいてやれた。
よかった。
純はうれしかった。
喜びの知らせを翔子の母に携帯で電話した。

「野犬があんなにいるとは想定外だった。
今回は紅子さんにたすけられたが、
いつも彼女のたすけを期待するわけにはいかないものな」
「わたしも鶴巻公園で襲われたときは、
抵抗できなかった。
犬と黒装束の忍者みたいな連中にふいをつかれて
……拉致された」
「人狼がいるなんて、
いまでも信じられない。
おどろいたよ。
GGに人狼のはなしをきいていてよかった。」
「鹿沼のGちゃんは? 早稲田に泊ったの」
「深大寺の奥さんの実家にいった。
mimaさんのの知恵をかりることがあるから
……といっていた」
mimaはマインドバンパイア(前々回の、奥様はバンパイア参照)だから、
とはいわなかったが、
翔子には以心伝心、
純のいいたいことは、
伝わっていた。



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翔子の告白/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-06-25 09:08:24 | Weblog
翔子の告白

11

蝙蝠に目や耳や顔を攻撃された。
犬の吠え声と人狼の怒号や悲鳴が墓地の中空にこだまする。
その一瞬のスキに六人はひと塊りになってはしりだした。
「墓地を抜けよう」
GGにいわれて、純は翔子を抱え込むようにして走りだした。
都営荒川線の通っているとおりにでた。
街灯がともり、信じられないほど平凡な街がそこにはあった。
あれだけの戦いをしてきたのがウソのような静けさだ。
翔子が、純の腕の中でぐったりとしている。
ダランと両手がたれたままだ。
左肩からはまだ血がにじみでている。
純があてたバンダナが真っ赤に染まっている。
しぼれば血がしたたりそうなほどぼってりとぬれている。

「翔子。翔子。目をさませ」
「女子医大に連絡だ」とGG。
「救急車をよぶよりタクシーのほうが早い」緊迫した声でさらにいう。

翔子が意識をとりもどしたのは明け方になってからだった。
純の手の中で、翔子の指がピクっとかすかに動いた。
指先がピクっとはねた。なにかつかもうとするように痙攣した。
「翔子。翔子」
ナースコールを押しながら、純は翔子の手をにぎりかえした。
翔子が反応した。

「気がついたとき、純がそばにいてくれた。
すごくうれしかったよ。これからはどこにもかないで」
「ずっといっしょにいられるから。
どこにもいかない。そのつもりで帰ってきた。
これからはずっとずっといっしょにいられるから」
「わたしたちは、なぜか邪悪なモノが許せない。
ひとに害意をもつモノが許せない。そんなたちよね」
「先祖から受け継いだ〈性〉なのだろう。
いつの時代でも、世間に悪をなす〈業〉の深いモノに対抗する存在が必要なのだ」
「わたしたち似ていたのね。
小学生のころからずっと純のことおもいつづけてきた。
うれしい。……だから泣かせて。
こうしていっしょにいられるなんて夢みたい」 



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蝙蝠の助け/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-06-24 02:49:58 | Weblog
蝙蝠の助け

10

翔子の左肩の傷口が開いてしまった。
また血が滲みだした。
目ざとくそれを見て純が「引こう」と翔子にささやく。
離れているので声はとどかない。
大声をだすわけにはいかない。
こちらの退路を断たれる恐れがある。
黒装束も黒犬も黙々と迫ってくる。
数がおおすぎる。
紅子。
芝原と柴山。
GG。
純と翔子。
こちらは六人だ。
ナイフと牙は増えつづける。
切り倒す数より、街からもどってくる員数のほうが多いのだから始末に悪い。
そして多勢に無勢のこちらは疲労が加速する。
やがて、動けなくなるだろう。
抜け穴の入り口に向かって後退する純はハッと固まった。
敵は街から抜け穴を使って戻ってきていた。
あたりまえだ。そのために、街と墓地をつなぐためにある抜け穴だ。
味方を穴の入口に誘導できなくなった。
翔子ともまた離れてしまった。

「翔子。どこだ?! 翔子」

純の声をきいてGGが敵を切りたてながら必死でこちらによってくる。

「ここよ」

おもわぬところで翔子の声がした。
遠くばかり見ていた。
翔子は意外と近くで戦っていた。
背中あわせになった。
「純こそダイジョウブ」
「いっしょにたたかえてたのしいよ」
「わたしも。うれしい。このまま死んでもいい」
「なにを不吉なこと」とGG。
しぜんと紅子たちも寄ってきた。
サークルをつくって敵に対した。
紅子が超音波をさきほどから発しつづけている。
だがすこしちがう。なにものかに呼びかけている。
すると、このとき――薄闇の空が月光をはばまれたのでほとんどまっくらになった。
蝙蝠の大群だった。

「もう、おそいわよ。でもありがとう」
「助かりそうだな」
芝原と柴山がつぶやく。
こうもりは急降下して敵を襲う。
紅子を守るように重なりあって飛び交っている。


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皆ありがとう/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-06-23 15:22:24 | Weblog
皆ありがとう

9

「鹿沼のGちゃん」
わたしのためにかけつけてくれた。
鹿沼のGちゃん。
翔子はなつかしい眼差しでみつめる。
でも、どうして? 鹿沼からきたの。
純。
純に元気で会えてうれしい。
そして、敵であるはずの紅子まで。
ありがとう、ありがとう。
翔子は心の底からみんなに感謝した。
ほんとうにうれしい。ありがとう。

翔子は生きていることが信じられない。
あのまま人狼に食われてしまうと覚悟していた。
GGが鬼切丸をふるっている。
みんなが、わたしのために命がけで戦っている。
わたしのためにかけつけてくれた。
鹿沼のGちゃん。
純。
そして、敵であるはずの紅子まで。
ありがとう、ありがとう。

翔子と紅子のあいだには、敵としての関係を超えた女同士の友情が芽生えている。
パーフェクトな男性社会である人狼にはふたりともイヤラシサを感じている。
そして貪欲な肉食系。
凶暴さ。

純が翔子にかけよる。
「純!! あいたかった」
気丈な翔子が涙をこぼしている。
よほど悔しかったのだ。
よほど怖かったのだ。

「純。鬼切丸をかして」
「翔子の鬼切丸はこれだ」
「アイツラ、わたしの腕の肉を食べたのよ。ゆるせない。
くちゃ、くちゃ噛みながら、うまいなんて評価していたの。ゆるせない」
 
GGは翔子がたすけられたのを見た。
翔子は元気だ。安心して、翔子たちを囲んだ人狼の群れに切りこんだ。
なんとかしてこの囲みをやぶって街にでなければ。
あの抜け穴までは50メートルはゆうにある。
人狼はいくらきりたてても減らない。
街に補食にでていたものが、変異に気づきもどってきている。
頭数はふえるばかりだ。
墓地でも狩はできる。
そうヤッラは思っている。



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もどってきた紅子/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-06-23 06:37:16 | Weblog
もどってきた紅子

8

ウエストサイド物語の指パッチンではないが、バタフライナイフでチャカチャカと威嚇音をあげてせまってきた黒装束の中央に、いた。翔子だ。左肩から血が流れた跡がある。
「翔子」
純が叫んだ。
悲痛な声だ。
取り乱している。
翔子を捕獲している男にむかって突き進んだ。
前進を阻まれる。
幾重にも男たちが立ちはだかる。
男たちの必殺の怒号と純の叫びが翔子を気づかせる。
失神から目覚めた翔子が「純」と一声呼びかける。
男たちは堅牢な遮断機のように純の前進を拒んでいる。

「刀をすてろ。純」

翔子を抱え込んでいる男がいう。
静かな声だ。

「すてるんだ」
「そっちのジジイも」

ナイフの音にあざ笑われているようだ。
チャカチャカチャカ。
このとき、その金属音にほかの音がひびいた。
キーンというような超音波? らしき音。
人狼があわてて耳をふさぐ。
ナイフを取り落とす。
いつのまに忍び寄ったのか紅子が翔子の脇に立っていた。
翔子を突きしとばす。
翔子と入れ替わった。
「逃げたんじゃなかった。敵が人狼とわかったので仲間を呼びにいって、手間取った。でも、もみんな人狼が相手となると、しりごみして。たつたふたり。情けないよ」

ル・芝原と柴山が翔子を守っている。

「なにをグチグチ言っている。おまえだっていい。きりさくぞ」
「わたしは紅子。吸血鬼よ。あんたらと同じで簡単には死なないから」

紅子がさらに金属音を発した。

キーン。
キーン。
キーン。



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バタフライナイフ/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-06-22 07:14:02 | Weblog
バタフライナイフ

7

おどろおどろした凶悪な殺気が夜の底からわきでている。
新月が照らす墓標の群立をぬってまちがいなくこちらにやってくる。
「きますね……」
純は鬼切丸をはやくもぬきはなった。
「Gもこれを。翔子さんがおいていったものと、村上道場には鬼切丸三振りありましたから……」
「いや、おれも鬼切丸がある」
「ごめんなさい。Gのところは、野州夢道流の分家でしたね」
「だから鬼切丸をいつも持参しているわけではないのだが。このところナイフによる殺傷事件がおおいから。いつなんどきこちらに突発しないとはかぎらない。黒磯の英語女教師がバタフライナイフでさされた事件があったからな」
「あれからですね。ナイフによる傷害事件が多発するようになったのは」
「ああ、毎日のように、いやな事件がおきている」
ひとびとは、いますぐそこにある危険に、無頓着だ。
じぶんの周りでも凶悪な魔物がナイフをもってうろついているのに気づいていない。
墓地のはてで遠吠えがする。
獲物の侵入に奮い立っている遠吠えだ。
墓石の影から黒犬がとびかかってきた。
吠え声もあげず、闇からとびだした。
この犬は気配を絶つことができる。
ふいに闇からおそいかかりその鋭い牙で敵を倒す。
まさに、犬というより狼に近い。
腰のくびれた狼の姿態をしている。
純は鬼切丸を一振りした。黒犬はかわす。
「翔子をかえせ!!!」と純。
「翔子はどこだ!!!」とGG。
GGも怒り心頭に発していた。
忿怒形。
逆立つ髪。
焔髪。といっても頭髪のない悲しさ。絵にはならない。

黒犬がGをおそった。
できるだけひきつけた。
犬は身をかわすことができなかった。
ぎりぎりまで迫った。瞬時GGの突きがノドをつらぬいた。
吠えもしない。ばたりと地面に倒れ落ちた。
「くるぞ」
GGの声がまだ消えやらぬ間に、黒装束の忍者みたいな人影にとりかこまれていた。
「望み通り、翔子をつれてきたぞ」


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思い出トンネル/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-06-21 06:16:41 | Weblog
思い出トンネル

6

GGはなんども講談社にはモチコミをした。
いまとなってはなつかしい思い出だ。
「このへんだ……」
モチコミの原稿はもちろんことわられて、がっくりと落胆して池袋まで歩いた道だ。
墓地の付近なので数十年たっているのに、さほどの変化はない。街並みがかわっていない。さらに、霊園を囲む有刺鉄線の外側。樫の木のこんもりとしげった街灯の光も届かない薄闇に場所にあった。倒れかけた小屋。なぜそこに朽ちかけた小屋があるのか。存在していることそのものが曖昧な小屋。それでも入口の木製の扉には鍵がかかっていた。真っ赤に錆ついている。いつもあのころ、気になっていたいまで言えば、ミステリースポットだ。扉をあけて探検したい誘惑にかられた場所だ。その扉の前に立っている。
この小屋が、この扉そのものがGGの思い出の中では象徴的存在だった。結婚するまではなんとか文学賞をもらい、暖簾分けをしてもらい、小説家として一本立ちしたかった。雑誌のしごとはときおりあったがじぶんが喰っていくのにやっとだった。
(あのとき、都落ちをしないで、小説を書き続けていたら……どんな作品を書きあげていたろうか)
回想から覚めた。
トンネルからぬけだしていた。
洞穴の内部にはなにもなかった。
ただ、
街の歩道から墓地にぬける穴だった。
だが、月光に照らしだされた墓地には、
ただ、
ならぬ凶悪なモノがまっていた。


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人狼は墓地が好き/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-06-20 05:01:10 | Weblog
人狼は墓地が好き


5

翔子の母の文枝がGGの姪だ。
その縁故で純が東北さすらいの旅にでて、最初に投宿したのが「アサヤ塾」だった。
塾で万葉集の特別授業をしながら半年ほど鹿沼で過ごした。
よほど居心地がよかったのだろう。

翔子がいたらしい鶴巻南公園には子犬があそんでいた。
そして、砂場には争った気配の足跡がいりみだれていた。
さらに!! 人狼と指で書いた文字が砂の上にのこされていた。

純はおもいだした。
GGが、鹿沼の犬飼地区にからんだ「人狼伝説」を書いていたことを。
人狼の知識をもったひとが身近にいた。
GGの「奥様はバンパイア」では人狼が主役をはっていた。
純はそれをおもいだした。
この世に人狼がいるなんて当時は信じられなかった。
携帯電話で読みかえしながら電話してきたのだった。

「腹が減っては戦は出来ぬ」とGGも餃子をぱくつきながらきいていた。
話がすすむにしたがって、ことの重大さが認識できた。
GGは財布から千円札をとりだしだ。
レシートにはさむと隣の席にオーダーをとりにきたウエトレスにわたす。
釣りはいらない。言い残して、駅に走った。
新幹線に乗れば宇都宮―上野間は45分だ。
日ごろの鍛錬のたまものか、息切れはしなかった。

純が東京にもどってからの経緯を話している。

これはたいへんなことが起きている。

GGはせっかく買った特急券の席にはつかなかった。

純は早稲田の街を探している。
翔子はどこにいったかわからない。
焦燥にかられているようすが、携帯から伝わってくる。

純の焦燥がGGを怯えさせた。
吸血鬼ならいい。
いちどや二度血を吸われたからといって生命には別状はない。
ところが人狼は肉食だ。
もし翔子が飢えた狼に捕獲されたとしたら。
そうおもうと恐怖でGGの額から脂汗がふきだしていた。

「この小説では、人狼の巣窟は地下になっていますね」
純の声がとぎれとぎれにする。
電波のとどかないところにいるのだろうか。
雑司ヶ谷霊園。ふいにそのことばがGGの脳裡にうかびあがった。
「もうじき上野につく。そのまえに護国寺の墓地を調べておいて」

雑司ヶ谷霊園は広すぎる。
純ひとりでは広すぎる。それに危険だ。

上野まではあと10分くらいだ。
上野からタクシーをとばせばあと30分かかかるまい。
講談社の前で落ち合うことにした。

タクシーがとまった。
「護国寺の墓地は?」
後部座席からGGが声をとばした。
純はくびをよこにふった。
のりこんできた。



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宇都宮餃子、食べにきさっせ!!/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-06-19 03:33:51 | Weblog
宇都宮餃子、食べにきさっせ!!

4

宇都宮JR駅。東口から歩いて5分。
ピンクのビルが右手に見えてくる。宇都宮餃子館だ。
この街は餃子の消費量は日本一だ。
餃子で町おこしをしている。
なかなかのものだ。
どの店も盛っている。
行列のできる店が多い。
いましも、「アサヤ塾」の塾長、自称GGが「ニンニク餃子」をオーダーした。
常連客なので、
「今日はおひとりですか」店の女の子に声を掛けられる。
中年のおばさんだが、GGからみればみんな若くてきれいだ。
「もしかして愛人」とか、
「二度目のカアチャンけ」、
「いまはやりの歳の差婚」などと興味本意の声をかけられることもある。
カミサンは週末なので、東京にもどっている。

GGはめずらしく入塾申し込みの大学浪人生がきたので同伴できなかった。
来春、下野大学を受験する学生、鹿沼武だ。
おれはあの武君の歳には代々木初台に住んでいた保高徳蔵先生の主宰する「文芸首都」に所属していた。
今月の作品ではいつも上位で取り上げられていた。
あのまますすめば……とGG年甲斐もなく、
めずらしく、
めめしくなっていた。
餃子館の壁にはった写真にこの店の顧問、
懐かしいセンパイの写真を見たからだった。
月に一度開かれた合評会の末席から、
いつもそのセンパイの発言に耳を傾けたものだった。
その後、彼は芥川賞をもらった。
いまでは経済評論家、コンサルタントと幅広く活躍している。

感傷にひたっていると胸のポケットで携帯が震えた。
泉純からだ。
GGは店内から外のテラスにでた。
宵の口でテラスにはまだ客はいない。
「翔子がもどってこない? ……おちついて、話すんだ」
純から意外なことが知らされた。



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オオカミがでた!!/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-06-18 13:37:23 | Weblog
オオカミがてた!!

3

遠吠えがする。
子犬がせわしなく砂場を走り回っている。
遠吠えにはゾクッとするような野性味があった。
子犬がいちにんまえに低い唸り声をあげている。
公園の外の暗がり、弁天町の方角から、なにか近づいてくる気配がする。
獣の臭気。
唸り声。
そして黒犬があらわれた。

「あれは黒犬なんかじゃない。狼よ」

紅子がむぞうさに翔子から離れていく。
紅子と翔子の視線の先には、狼と男。

「あんたらドイツの黒い森からさ迷いでたの? それとも」
「そのそれともだ。シュヴァルッヴァルト(黒い森)はカルパチア山脈にもあるだろうが」
「東京へヤバイやっらが侵攻してきたときいたわ。それあんたたちのこと?? そうよね」
「なにいっている。おれたちのほうがさきだった」
「どう、住みいいみたいね。この日本が気に入っているみたいね」
「そちらの翔子ちゃんとはにどめだな」

いわれなくても翔子にはわかっていた。
あの黒犬だ。この男だったのか。
あの薄暗い鉄格子の影に隠れていたのは。

「翔子。逃げなさい」

遅かった。
男はひとりではなかった。
数人の男たちに取囲まれた。

「翔子。刀をぬいて」
「置いてきたの。近所の散歩だったから」
「ばか。こんなときに、素手なの」
「ごめん」

わたし吸血鬼にあやまっている。
わたし紅子の守られている。
バカみたい。



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