田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

義母の死 俳句の周辺

2020-03-30 18:53:34 | ブログ
3月30日 月曜日
 俳句の周辺 「月刊万葉 1997, 8, 1」
 
梅雨寒や粗食の膳に妻とあり

また梅雨の季節がめぐってきた。子育てがすんでからというもの、毎年同じょうな日常をくりかえしている。
 五月晴れの陽射しの強い日、掘りごたつの掛布団が暑苦しいというので、とってしまった。二階のベランダまで頭にのせて持ち上げるのぼくの役目だ。ともかくふつうの布団の倍も大きい。八人は入れる横幅が二メトールはある炬燵だ。華奢な妻にかわって、日向に干す。
「猫の毛がいっぱいついているわ」
「抜け毛の季節だからな」
 こんな会話がはずむのも、毎年のことだ。
「すこし早く炬燵止めすぎたかしら」
「鬱っとおしい、なに食べる気がしない」
「でも、なにか食べるだけは……」
「なにも食べないですめば」
「そうはいかないわ」
 ありあわせの食事となる。子どもたちも三人とも上京してもういない。二人だけの食卓は寂しいかぎりだ。箱根卯月の花がもうすっかり散ってしまった。日当たりの悪い庭なので、ようやく紫陽花の花が咲きだした。今日も鹿沼は雨。

 夜桜や呼び鈴を押すさびしさよ

 ずいぶんと昔の句だ。学が小学生。長女は就職。次女は大学生。妻はよく早稲田のマンションにでかけていった。桜の季節に、独り夜桜でも見ようとでかけたのはいいが、生来の怠け者。花より惰眠をむさぼりたくなる。途中で引き返してくる。
 何気なく、玄関の呼び鈴を押していた。
 かすかに、誰もいない家の中で音がしている。
 なんども押した。桜の花びらが我が家の庭にさっと花吹雪となって、舞い込んできた。指先とまった。花弁が愛おしい。呼び鈴を押すことで、押しつぶすには忍びない。呼び鈴の余韻がコダマしている。一片の桜を手に載せて部屋に入る。
 あのときは、この句を得意がっていたが、一茶に「南天よ炬燵やぐらよさびしさよ」という同じような手法の句があるのを知ったいまでは複雑な思いだ。

 涙せよ寒林虚空煙消ゆ
 涙滂沱寒林虚空煙うすし
 青く冷え義母煙となりぬ寒林虚空
 紅葉の葉義母の煙と溶けて舞う

 こういう句を詠もうとする時である。独りで楽しみながら句作に励んでいる境涯が恨めしくなる。素人の悲しさ、師も句友もなく、どうにも俳句にならないのだ。手練れであったなら、どんな句づくりをするだろうか。
 昨年の十二月一日に妻の母がなくなった。黒髪颪の吹きすさぶ寒い日だった。
 夕暮れ義母は焼却炉におくりこまれた。小柄であった。死のまぎわには三十キロくらいに痩せて細っていた。
 煙も薄く、風にとばされ、瞬く間に消えてしまった。妻とぼくはただ黙って空をみあげていた。妻の眼に涙が溢れていた。

●書棚を整理していたところ、黒田さんが出していた豆新聞「月刊万葉」がひらひらとおちてきた。わたしのエッセイがのっていたので再録してみました。

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「ヒッキー」になってみませんか?  麻屋与志夫

2020-03-29 13:57:48 | ブログ
3月29日 雪

●三月も末になってから降る雪は珍しい。それもわたしの田舎町としては初雪だ。

●おりから、コロナウイルスの蔓延で毎日新感染者数が発表され、世の中が騒然としている。雪で外出を控える人が多いだろうから、都内の感染者が跳ね上がらないことをねがうばかりだ。

●コロナウイルスが恐怖の鱗粉をまき散らして猛威をふるっている。外出は控えるようにとの呼びかけも若者にはあまり効果がないようだ。

●わたしは物書きのハシクレだ。むかしから、家の中が職場だからいつもどおりの生活をしていればいいのだからなんら困ることはない。そういうわたしからみるといまの若いひとたちはむきなって、楽しみを外にもとめすぎるようだ。

●原稿を書くのに疲れればジャズをきく。カミサンがコーヒーをいれてくれる。アメショウのルナが寄ってきてスリスリをしてくれる。ヘソ天でみせる。楽しい。

●万巻の書物がある。このところクーンツの「オッド・トーマス」ものを読み継いでいる。
そのうちフイリップ・ソレルスの「女たち」をよむ。飯田章さんの「破垣」も再読したい。同じ世代の作家であり昔の同人仲間でもあるので、楽しく読める。元気でいるのだろうな。

●ともかく家からでる必然性がない。

●このさいだからミナサンも「ヒッキー」引き籠りのたのしさを発見してはいかがですか。

  
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「禁猟区」の標識がまだ残っていた。 麻屋与志夫

2020-03-28 19:04:06 | ブログ
3月28日 花曇り
●昨日御殿山からの帰り、裏道を下って切通しにでた。いまどき、この道を切通しなどと呼ぶ人はほとんどいないだろう。ふと道端をみたら「禁猟区」の標識がまだ立っていた。だいぶ古い。わたしが子どものころからあった。標識を支える棒が半分ほどの高さになっていた。それでも昔ながら標識が残っていた。

●わたしの家の近く、教会の前にもあった。弁天池のそばにもあった。両方とも、いまはない。

●年のせいか、昔からあったものがなくなっていくのは寂しい。

  
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さまざまなこと思いだす桜

2020-03-27 19:57:49 | ブログ
   
3月27日 晴

●妻と御殿山で花見をした。いつものことだが、花見をしているひとはいなかった。広い野球場をみわたせる。誰もいない。周辺の観覧席になっている土手の桜が今年もみごとに咲いた。五分咲きといったところだ。




●コロナ騒ぎがあるので、世の中が騒然としている。終戦後、ここで韓国人がフットボールの試合をするのをはじめてみた。手をつかわないので、すごく奇妙な感じがしたのをおぼえている。

●あのグランドを友だちと走り回った。そのときの野球仲間はもう全員故人になってしまった。

●セブンイレブンで買ってきたシャケのおにぎりを一個。稲荷ずしを一個食べた。まだまだはずかしいほど食欲がある。

●焼き鳥一本と菊水のゴールド缶は家にもちかえった。さまざまなことを思いながら飲む。午睡。

  
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「これじゃ、寒戻りだんべな」 麻屋与志夫

2020-03-17 07:39:57 | ブログ
3月17日 火曜日

●おどろいた。天気予報がドンピャで的中した。寒い。室温5℃。「冴え返る」という季語を思いだした。家内に教わった季語だ。

●もっとも、この季語は2月ごろのことらしい。

●わたしの田舎では「これじゃ、寒戻りだんべな」という。この季語も桜の咲くころの寒さをいうらしいですね。俳句の季語に関しては全くの素人。悲しくなる。

●「だんべな」という方言もいまどきの子どもは使わない。急速に、「田舎」がこの町から消えていく。

●薬局、酒屋さん、衣料品店、魚屋さん。町から商店が消えていく。土地の言葉で会話を楽しみながら、買い物をする習慣もすっかりすたれてしまった。マニアル通りの慇懃無礼な挨拶しかもどてこない。

●それでも人間がいるうちはいい。ロボットが人間の職場に浸透してきている。これでは、まるで侵略だ。

●鶯が鳴いている。これまさか、録音ではないよな、と裏山を仰いだら、竹やぶががさがさとゆれているのでホットした。
●考えごとをしていたので炊飯器の空焚きをしてしまった。コワレテいないといいな。
   


  
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