田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

指剣のおもわぬ効果/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2011-01-31 11:12:25 | Weblog
3

「獏もコウジも、許さない」
「たっぷりと、吸わせてもらったぜ」

 コウジが挑発するようにいっている。

「百子。冷静に」

 美香の頭に怒り心頭に発した百子のこころが。
 ながれこんでくる。
 こころを乱せば、技もみだれる。
 技のみだれは、勝負のわかれめだ。
 美香は浮船で袈裟がけに獏に斬りつけた。
 斬りつけられた浮船を受けるために。
 獏が鉤爪を交差させた。両手をあげて浮船をハジイタ。
 胸がガラ空き。
 指剣が貫いた。
 獏の心臓を青い光を放つ指剣が貫いた。
 指剣が触れた肉がやけこげた。

「太陽の光――紫外線で刺された。コウジ逃げろ」

 獏はぶすぶすともえた。
 獏は青みどろの粘塊となった。
 くすぶっている。
 スサマジイ悪臭をたてた。
 どろっとした物体は。
 燃えカスとなって……。
 四散していく。

「百子。アンビュランスがくるまでにかたずけよう」

 美香もコウジに浮船できりつける。
 コウジは長い鉤爪を歯車のように動かす。
 三人の刃を防ぐ。

「兆子。あれを――」

 兆子が眼つぶしをなげる。
 鉤爪でうけた。
 袋がさけた。
 コウジの顔が真白。
 コウジは窓ガラスをやぶった。
 窓の割れ目からコウモリの大群が侵入してきた。
 コウジを追えなかった。

「美智子さん。ダイジョウブですか」
「ありがとう。百子師範。
これでもジャーナリストのはしくれよ。
……でもあなたたちは、アンナ恐ろしい怪物とたたかっていたのね」
「怪物でなくて――吸血鬼。人に憑依することもできる怖い敵」
「シンジラレナイ」

 美智子は床のもえかすを見つめている。
 兆子はコウモリ忌避剤を天井にむけて噴霧する。
 コウモリは入ってきた窓の裂け目から逃げていく。
 遠くでやっと救急車の警笛の音がきこえだした。

「吸血鬼の駆除までにabout10ミニツね」
 と百子。

「おかあさんは血を吸われただけ。
喉は食いちぎられていないから輸血と血清で助かるから……」
 兆子が美智子を励ましている。

「おかあさん、おかあさん」
 それでも、美智子は涙声で母によびかけている。
 母にとりすがっている。
「おかあさん。おかあさん」





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お母さん死なないで/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2011-01-30 15:34:18 | Weblog
2

「ハァイ。みなさんおそろいね」

美香だ。
兆子と一緒だ。
バイクのりャーシートからとびおりた。

「ハヤァイ」
百子がおどろく。
「学校の帰りなの」
偶然、兆子と出会った。
美香は青田学園の方角をふりかえってみせる。
重そうなカバンをふっている。 
美香はさわやかに笑っている。

「ナンダ。おまえら……」

「こまったときには、Vバスターズ。
夜の帰りに、Vバスターズ
ストーカーに、Vバスターズ。
吸血鬼除けに、Vバスターズ」

みんなが、元気に声をそろえて唱和する。

「ナンダ。おまえら、学芸会か」
「アンタラこそ、この場所に現われたということは、
青山霊園の地下街の住人かしら」

あそこは、壊滅されたはずだけど……。
獏とコウジは沈黙した。
隙を見ておそいかかってくる体勢だ。
こけおどしの長い牙。
シュツと臭い息。
立場が逆転したのでおもしろくないのだ。
兇暴な顔をさらに兇暴にして……。
逃げた――。
まさか。
えっ!!
!……。


吸血鬼が戦わずに、狙いをつけた獲物を置いて逃げる。
はじめてのことだ。
「兆子。川村さんを家までおおくりして」

「初仕事にしては、ものたりなかったわね」
美香が重そうなカバンを拾い上げた。
「じゃ、わたし青山一丁目の地下鉄で帰る……」
そのとき。
川村家の方角で悲鳴が起きた。
「なにかしら」
百子は走りだしていた。
悲鳴をきいたときには。
全員。
全速力で走りだしていた。
川村家の中で争う気配がする。
玄関から。
走りこむ。

「三五秒」
獏が血だらけの唇で不気味に笑っている。
わたしたちが悲鳴きいて駆けつけるまでの時間だ。
「ふざけるな」
百子の声が部屋にひびきわたった。
隣の部屋では、兆子がコウジと戦っていた。
美智子は顔中血だらけの老婆をかかえている。
床に血だまり。まだ出きたばかりだ。広がっていく。
「おかあさん。おかあさん」
美香が獏に向かう。
百子が兆子の加勢をする。
「なんてことするの」
「なんとしても生き血を飲みたかった」
コウジも過酷な笑みをうかべている。
「まえもって、このへんの家族構成は調べておいたのさ。
まさか、あんたらがバックについているとは、
そこまではしらべていなかった」

コウジが過酷な笑みで、得意面。
老婆が喉をぜいぜいさせている。
救急車のくるのが遅く感じられる。 




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寝床で読書/麻屋与志夫

2011-01-30 08:31:57 | Weblog
プログです。

1月30日 日曜日

●夜の1:55分。
暖房をつけておいた黒板の裏の書斎。
中国製のオリタタミ式簡易ベッドにもぐりこむ。
75キロの体重にギシギシトとベッドがきしむ。
部屋が暖かになっているのは、ありがたい。
昨年までは、エアコンはあったのだが、つけられなかった。
もちろんビンボーしていて光熱費を倹約しなければならなかったからだ。

●今年は、卒業生が子どもさんをつれてきてくれた。
うれしかった。
わたしがいいかげんな教師だったら卒業したらそのまま。
二度と寄りついてはくれない。
そう思いつづけて37年――やっと努力が報われつつある。

●ブラッキーをだきかかえて夜の寝床でひとしれず泣いた。

●寝床にもぐりこんだからと言って、すぐに寝るわけではない。
わたしの5万冊をこえる読書は、すべて寝床の中で行われてきた。
ウソ(いまの健康体からすると)のような話だ。
わたしは小学校に入学したころは病弱だった。
学校へもほとんどいっていない。
ただひたすら、病床で本を読んでいた。
そのとき以来の習慣だ。

●今夜は、堕天使ルシフェルのことを調べなければならない。
いまgooのブログで書きつづけている。
「さすらいの塾講師」の二部。
「超能力シスターズ美香&香世」に。
堕天使のことをもっと細かく描写しなければリアリティがでない。

●この小説は漫画の原作を意識して書いている。
そのおかげで文章を短く分かりやすく書けるようになった。

●このほかにも、有料サイトに書いているものをいれて、四本。
書くことが楽しいのだから。毎日、一番のお気に入りの玩具。
いまだったらゲームをしているようなものだ。

●そのほか明け方までに読まなければならない本が二冊ある。
ともかく、図書館の中に寝ているようなものだから読む本にはことかかない。 

●それがすんだら、三時間ほど睡眠をとる。
起きたらこのメモをブログにアップする。
今日は日曜日。
だれかあと五人くらい入塾してくれないかな。
ときわめて形而下的なねがいごとをして……。読書にとりかかった。




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Vバスターズ初登場/超能力美香&香世 麻屋与志夫

2011-01-29 12:55:37 | Weblog
part 3  危険が迫ったらVバスターズ

1

青山のホンダビルの裏道。
直進すれば美香&香世の在籍する青田女子学園に通じている。
トワイライト。
街灯に灯がともった。
でもここは、薄暗い。
長い塀がつづく。青山の住宅地。
両手にレジ袋を幾つもさげた女性があわただしくあるいている。
会社からの帰り道。思わずスーパーで買い物をしてしまった。
あの大谷石の塀の角を曲がれば、わが家まであと2分くらいだ。
母が待っている。
このとき、彼女はストーカーの気配をかんじた。
足音が近寄ってくる。
家にむかって走る。
立ち止まって、やり過ごしてみる方を選択した。
いままでにも、こんなことはなんどもあった。でもこわい。
護身術には自信がある。それでもなお怖い。
いい機会かもしれない。大森の『GG刀エクササイズ』に通っている。
そこでの新規ビジネス『Vバスターズ』の会員に登録した。
携帯のボタンを押すだけで本部につながる。
こちらの所在はすぐ本部でわかる。押した。

「おくさん、今夜は買い物ですか」

男がちかよってきた。
昨夜遅くまで見ていた『デスノート』の死神のような声。
痩せている。黒いコートも不気味だ。
塀に映っている影。羽根が生えているようにみえる。
もちろん、恐怖からくる錯覚だ。
ズルッと唾を飲んでいる。
歯をむきだした。
長い犬歯。
牙みたい。
ウソだ。
入れ歯に細工でもしたのだ。
でも、息が生臭い。魚の腐ったような臭いだ。
顔だってあの死神に似ている。
いや――吸血鬼の顔だ。
このときになって、彼女は走って逃げなかったことを後悔した。

「バァ」男の後ろから同じ体型、同じ顔がのぞいた。
「生血をすするなんてしばらくぶりだよな、獏ちゃん」
「そうだね。コウジ君」

漫才でもやっている調子だ。
腕が伸びてくる。
レジ袋を叩きつけた。
腰のベルトから特殊警棒をはずした。
ひとふりした。60センチほどに伸びた。
青眼にかまえた。

「おやおや、勇ましいことですね。奥様」

てんで相手にされていない。
こんなところで死ぬのはいや。

「選択肢は3つありますよ。
1つ、喉から。
2つ、鉤爪でひきさかれて。
3つ、ナイフで刺されて」
「どれがいいかな」

獏の背中から現われたコウジがナイフをとりだした。
掌にナイフをたたきつけて、ピタピタという音をたてている。
背筋が恐怖で粟立つ。
さっとナイフがつきだされた。
警棒でたたいた。

「オヤオヤ……すこしはできますね」

獏が牙をムイテせまってくる。
くさくて、あたまがくらくらする。
いや、恐怖だ。恐怖で痙攣している。
このまま気をうしないそうだ。
ナイフと牙が――まさに――。

ストップモ―ション。

「三分二十秒」

百子がバイクからおりる。
バイクの音なんかきこえなかった。

「まあ、しかたないか。こんなものね。原宿にいたのよ」

三分二十秒。
そうか。
わたしがSOSのキーを押してからヘルプが到着するまでの時間だ。

「百子、師範」
「川村さん心配いらない」

川村美智子は夢中でうなずいていた。
助かった。
震えはまだとまらない。

でもそれからが戦いだった。

クノイチ48メンバーがぞくぞく到着した。




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Vバスターズ/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2011-01-28 23:57:16 | Weblog
9

 ついてこなかった。
 闇法師は美香の誘いを丁寧にことわった。

「Vの犠牲となったものを弔ってやる仕事が残っているから。病院に運ばれた仲間を見舞う、こともある」
 
 公園の雪はとけていた。
 雪のなかでは見えなかったものが、眼につく。
 白い発泡スチロールの容器だ。
 温かな天ぷらそばのはいっていた容器だ。
 ホームレスのオジサンたちが、よろこんでそばをすする音が。
 まだ美香の耳もとに……のこっている。
 
 現実は次の瞬間なにが起きるか。わからない。
 なにが起きても適切に対応できるように、心と技を磨いておく。
 但馬家の家訓だ。
 
 あの温かいソバに涙ぐんでいたオジサン達。
 何人かは亡くなっていしまった。
 あの少年たちもおおかたはもうこの世にはいない。
 心が痛む。
 なにがテレパスだ。
 予知はできても、敵を倒しても、救えない人がいた。
 悲しい。
 悲しいことだ。
 
 通り魔。
 防げない。
 ナイフをふりかざす異常者。
 後を絶たない。
 
 加害者は変質的男性。
 被害者はほとんど女性。
 無防備な女、子ども。

「許せないよね」

 と百子も美香に同調する。
 みんなそろって美香&香世の部屋に凱旋してきた。
 たしかに吸血鬼との戦いには勝利した。
 つかの間ではあるが勝利の雄叫びを上げた。
 だが悲しみがのこった。
 何人も死んでいる。
 
 でも、唯一の救い。
 クノイチ48のメンバーには負傷したものがいなかった。

「いつもわるいはね」

 アツシ少年。
 だいぶ慣れてきた――動作。
 折り畳み式の座卓にテンプラソバを並べていく。
 剣道場をかねている部屋。
 ソバからあがる湯気で霞みがかかったようだ。
 この狭い空間が美香のすべてだった。

「だからオネエは広場恐怖になったのよ」
 と香世が美香のことを自慢する。

「死ぬほど、5歳の誕生日からここで、修行したのよ」

 クノイチのメンバーも伊賀の山野での厳しい鍛錬にうちかった女の子だ。
 共通の体験がある。
 はなしに華が咲く。

「いい機会だからみなさんにれんらくしとくわ、いままでどおり吸血鬼にたいするセルフガードてきなパトロールはつづける。ただなにか、虚しくない。みんなバイトでかすかすの生活してる。そこでビジネス。Vバスターズ――仮名だけど。会社を起業しようとおもうの。どうかしら」
 
 百子からでた起業提案。
 みんな食べかけのソバをのみこむのもわすれて、ポカン。
 みんな啜りかけのつゆをあわてのみこんだ。そして、ぽかん。



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サムライvampire/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2011-01-27 10:02:31 | Weblog
8

「バカが。
永遠に生きられる体質にしてやったのに。
このチッポケナ島国のホームレスのくせに。
――なに考えている」

マスターが軽蔑のことばをはいた。

「吸血鬼にされて、夜毎に、はしたなく血を啜り。
――キサマラの奴隷にされるくらいなら。
人間として死ぬ。
そのどこがわるい」
「おう、玉砕ね。
サムライスピリット。
武士の心。
すばらしい。
プラボウ」

おひゃらかされている。
からかわれているのだ。
ほめられているわけではない。

「しょせんは、東と西。
菊と刀の世界は理解されないのか。
四国、九州の武力に屈した幕臣旗本の悔しさを。
歴史の裏に流れる怨念の渦を。
またもっと大きなスケールであじわうとわな。
長い生きはしたくないものだ」

闇法師の嘆きはしかしさわやかなものだった。
明治、大正、昭和、平成と。
怨念の凝り固まった鬼は。
――西の吸血鬼のような。
血まみれのどろどろとした怨念に。
支配されているわけではない。
松林をふきぬける風のような。
澄みきったこころをしていた。
浮浪者仲間のためならいつでも喜んで死ねる。
だからこそ、人で在りつづけるために。
――みずから死を選んだ留吉の気持ちは。
わかりすぎるほどわかる。

「残虐非道なマスターにはなんとでもいわせておけ。
留吉のこころは、この法師がしっかりうけとったからな」

ふたたび、闇法師はエイドリアンと対峙した。

「おう。
その目。
いやですね。
みんな逃げましょう。
この、日本の鬼さんは。
刺しちがえる――気だよ。
そんなの、いやですからね」

おかしな日本語とロックの音だけがのこった。
真正吸血鬼たちはフリットして消えていた。

(注。フリット。吸血鬼が軽く跳ぶように素早く動くこと)


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人として死なせてくれ!!/超能力シスターズ美香&香世  麻屋与志夫

2011-01-26 11:08:07 | Weblog
7

 百子は吸血鬼の群れに斬りこんだ。
 翔子も兆子もクノイチのメンバーが――。
 ホームレスにたかっていたVをおそった。
 ところが。
 なにかおかしい。
 手ごたえがない。

「まって。みんな。コイツラ真性の吸血鬼じゃない。疑似吸血鬼よ。レンフイルド――元は浮浪者よ」

 刃を納めて百子がいう。
 みんなも、百子に従って刀を引く。
 そういえば、まったくちがう。
 サタンに率いられていた――。
 いままでの吸血鬼のような魁偉な存在感がない。

「バレマシタカ。やはり……現地調達のよせあつめではダメですね」

 クワックワッとエイドリアンが哄笑する。

「助けてくれ。助けてやってくれ」
「留吉じゃないか」

 マスターと剣を交えていた法師が声をかける。
 吸血鬼の腕に生えた獣毛がきえていく。

「留吉、どうした」
「仲間がどこかへつれていかれた。アイツに」
 震える手。
 指差す先には。
 法師にかわって美香が戦っている――。
 エイドリアン。

「しっかりしろ。いま血清をうってやるからな」
「おれはいい。法師、仲間を助けて。……どこかに連れて行かれた」

 闇法師が棺桶で仮眠しているあいだに。
 なにが起きたというのか。
 もし闇法師が目覚めなかったら。
 どうなっていただろう?
公園のホームレスは全滅していたろう。

「さいごに、あんたに会えてよかった」

 いいおわる。
 舌をかんだ。
 覚悟の自殺。
 人のままで死にたい。
 そういう願いの強い。
 男。
 だ。
 った。

「留めさん」

 闇法師の眼にキラリとひかるものがあった。

「鬼の目にも涙だ」
 悲しい眼で、泣き笑いをしている。

「留めさん。留吉」

 まだひとで在りつづけていたホームレスが留吉の死体にとりすがった。



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地下テンプルへようこそ3/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2011-01-25 14:05:05 | Weblog
6

「あっ。法師だ。どこにいたのよ!! おれたち、あんたがいないとダメだよ!!! たすけてくれよ!!!!」

 五体満足な浮浪者は闇法師にすがってきた。
 足を鉤爪で斬りおとされて這い寄ってくるものもいる。
 みんな、痛みと恐怖で子どものように泣いている。
 戦う気力などない。
 吸血鬼は選別している。
 従者として使えるか?
 それが基準だ。
 使えると選ばれた者は――軽く噛まれる。
 レンフイルド。RFとなる。

「許さん。われわれホームレスをくいものにする、のは許さん」
「わたしたちインベーダーね。侵略するのが好きなのよ」

 なにかおかしなことばだ。
 なにか理屈をいっている。

「なんでもいいから、おれの仲間からはなれるんだ」

 エイドリアンのほかのメンバーがロックを演奏する。

「ロックンロール!! やっちまえ!!!」
 マスターの命令だ。
 吸血鬼となりたてのRFがおそってくる。

「RFは斬らないで。血清で治療できるから……」

 深く噛まれたもの。
 体を引きちぎられた犠牲者。
 喉から血を噴いているホームレス。
 かれらをヨソ眼にバトルは再開された。
 いま助けてあげる。
 かならず助かるから。
 そのおもいは美少女剣士、すべてのものだった。
 そして恋人純を失いかけた翔子には。
 その思いは――、
 ホームレスのひとたちを救いだしたい。
 そのおもいはひといちばい強かった。

「百子。あのひと、闇法師の剣さばきみて」
「伊賀の小太刀」
「わたしたちのご先祖さまよ」
「ご先祖様の剣の技を見られてしあわせだね」
「もう、5人も倒した」
「わたしたちも、いくわよ」


 洞窟は広い。
 部屋は狭い。
 テンプルというよりも。
 飯場のような安普請だった。
 付近の建築現場で建材をくすねてきたようだ。
 吸血鬼がたおれると周囲の鉄板の壁が音をたてる。
 ロックもうるさい。ただの騒音だ。

 
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地下テンプルへようこそ2/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2011-01-24 12:31:03 | Weblog
5

「兆子、なかはどうなっている」

 入口に残った百子からだ。

「この穴、フェイクだったみたい。でも掘り方がおかしいの。土遁の術で、おおぜいで逃走路を掘った感じがする」

 穴に潜り込んだのは兆子のほかに、但馬姉妹と翔子だ。

「わたしもアイツラのテンプルではない、と思う。引きかえしておいで」
「このさきに、なにかある」

 兆子の照らすハンドライトのさきに。
 香世がいうように。
 朽ち果てた棺桶があった。

「やだぁ。ここカタコンベ」
「香世。カタコンベってなによ」
「オネエ。地下墓地のことよ。ゲームなんかによくでてくる」
「わたし、ゲームやらないシ」
「美香、なにかはいっている」
「兆子、ミイラだ」
「なにか……みたことあるみたい」
「香世。それってどういうこと」

 美香のほうが質問する立場になっている。
 きょうの香世の能力はさえざえとしている。 
 でも――美香にも死者の声がきこえてきた。
 ミイラには胸に新しいと思われる傷跡があった。
 刀傷というより、鉤爪で突かれたような――。
 血。血。……血が飲みたい。……血が欲しい。 

「コレって彼……」
「わたしもそうおもうよ。オネエ」
 
 美香は死者の声に感応した。
 死者の欲しがっている血をあげる。
 わたしの血をあげる。
 指先を浮船で少し切った。

「オネエ。オネエ。いいの、そんなことして」
「この若侍は、体をはってわたしを守ってくれたのよ」

 ふたりが話す間にも鮮血がたらたらと――。
 ミイラの口に赤い血がしたたった。
 唇が動いた。
 喉が鳴った。
 肉がもりあがる。

「ありがとう。美香ちゃん。こんなに早く復活出来るとは期待していなかった」

 闇法師だった。

「ホームレスの仲間をヤンキーの吸血鬼から守らないと」

 急いで入口までもどった。
 だれもいない。
 サテュロスの像まで消えている。

「穴はいくつもわれら伊賀組の同心がほった」
「だから……土遁術と感じたのね。法師はわたしたちのご先祖様かぁ」
 兆子が感激している。
「無念だったが、薩長連合の鉄砲隊にはかなわなかった」
「それで彰義隊は全滅したのね?」
 兆子が悲しい眼で聞く。
「それより、急がないとホームレスがみんな噛まれて吸血鬼の従者にされてしまう」
 闇法師ははしりだした。

 いくつも同じ形の洞窟がある。

「きこえた? 香世、百子の声よ」
「そうです。百チャンの声よ。戦っている」

 みんなで、洞窟に跳びこんだ。
 広い。

「こんな大きな穴はほらなかった。こここそ、舶来吸血鬼の牙城だ」

「地下テンプルへ、ようこそ。ウェルカムね」

 マスター・エイドリアン率いるロックバンド。
 4人のメンバーもそろっていた。
 
 ホームレスのひとびとをかばって百子たちクノイチ48がいた。
 先ほどの、雪の上で戦場の再開だ。
 首からすでに血をながしているホームレスもいる。
 吸血鬼は食事中。
 その気配。
 その血の臭い。
 を。
 感知して。
 百子たちが駆けつけた。
 だから、犠牲者はまだあまりでていない。 
 


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地下テンプルへようこそ1/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2011-01-23 12:25:03 | Weblog
4

吸血鬼の群れが逃亡する。
あわてふたむき去っていく。
そんな感じではない。
マスターが去っていくのに同調した。
もさっと、遠ざかっていく。
そんな感じた。

姿が遠のく。
そのなかには、疑似吸血鬼もいる。
ホームレス狩で。
むりやりRFにされたものたちだろう。
半透明となる。
透明となる。
みえなくなった。
だが、雪の上に残っていた。
血の跡が。
点々と青い血の跡が……。
樹木の影につづいている。

「香世。逆シードルよ」
「わたしもそう思ったシ」

まだ身近に吸血鬼の気配がある。
追尾の距離が離されるほど。
時間は経っていない。
吸血鬼シードルがはられている。
その彼方に逃げこんだのだ。

シードルを形成する――。
とは逆の作用をおよぼす
念波を前方に放射した。

「すごいよ。美香」と百子。
「すごいわ。香世」と翔子。

ふたりが、美香&香世のT能力をほめる。
なんでもありのテレパシー能力だ。

思念放射!!

みえた。
敵の障壁が薄れた。

みえた。
テンプルらしい正門。
入口。
青銅製と見えるグロテスクな像。

「半獣神(サテュロス)の門衛よ」

ギリシャ神話の森の精。
サテュロスの下半身は山羊か馬。
ファルスを聳え立たせている。

「イヤラシイわ」
「神さまだからいいのよ」

ガールズはガヤガヤさわぎながらサテュロスの門を潜った。
地下への穴に潜り込んだ。



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