田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

吸血鬼に恋をしたの?/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2010-12-25 14:04:49 | Weblog
3

美香は震えがとまらない。
頭から吸血鬼の姿を追いだすパワーはない。
アイツ美形だった。
ブラピにどこか似ていた。
『インタビュー・ウイズ・ヴァンパイア』を見て感動していたからかしら。
美香は倒れこむ。
香世が必死で美香を支える。
長身の姉を小柄な香世が支えて『人』の字になる。

「どうしました」

空港のセキュリティが駆けつける。
周りに人だかりができた。

「OK。ドンマイドンマイ」

香世がオカシナ英語で応えている。
美香は思っていた。
父の蔵書にあった。
田村隆一訳の『夜明けのヴァンパイア』。
あれで吸血鬼の存在をしった。
バンパイァにあこがれてしまった。
あれから5年。
やっと会えたのに。
はじめから命のやりとりをしなければならなかった。
運命の皮肉。
悲しいことだ。
だからこんなに消耗してしまった。
ああ、もういや。
じぶんの心にそぐわないことしている。
つかれるのだ。
こわいのだ。
からだの震えが止まらないのだ。

「まえにスタートした車、わかりますか」

タクシーにのった。
香世が運転手にきいている。
美香は心配顔で見送っているセキュリティのおじさんに手を振って挨拶した。
ごめんなさい。
ご迷惑かけました。
何人かがまだこちらをみている。
好奇心から……?
ねね。
わたしが戦ったのは吸血鬼だったの。
これから追いかけるのもその吸血鬼。
と、いったらあのひとたち、どんな顔をするだろうか。

「ほんとですか!!」

香世が頓狂な声。
なに、どうしたのと眼でたずねる。

「やだぁ。おねえちゃん。ボーっとしてないで。アイツの車がO森の赤十字病院の駐車場にとまったのがわかったの。この運転手さんの会社の車だったの。すぐ調べてくれたの。ラッキー」
 
赤十字病院のリノリウムの廊下を滑るようにやってくる。
カメレオンのような擬態だ。
だって、白衣。
それだけだって、病院に溶け込んでいる。
隠蔽的カモフラージだ。
普通だれがみたってドクターだ。
ハンサムすぎるけど。
普通ではない、姉妹にはバレバレだ。
でも、ここで戦いを再開するわけにはいかない。
ここは人の命を救うところだ。
人の命を危うくするような争いはさけたい。
柱のかげに姉妹はかくれた。

ナースステイションで看護師がひそひそばなしをしている。
能力者である姉妹にはきこえてしまう。
血液がぬすまれた。
警護職員がたおれていた。
血液がぬすまれた。

「オネエ、あまり元気ない。アンデイに恋をした? 吸血鬼の小説いっぱい読んでるものね。美香オネエは、バンパイァのファンだものね」 

アンデイの顔が、たしかに脳裏からきえない。
香世のいう通りかもしれない。
バンパイァに一目ぼれ???           


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