田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

とある田舎町の「学校の怪談」episode13 口裂け女(バラエティー) 麻屋与志夫

2013-01-31 11:57:21 | とある田舎町の「学校の怪談」
episode13 口裂け女(バラエティー)

●タカコチャンはこの春、小学校に入学したばかりのピカピカの一年生です。
校舎のなかを探検して歩くのが好きです。
楽しくてしかたがありません。
「ここにはピアノがあるから音楽室ね」
一年生でも、それくらいのことはすぐわかりました。
でも、壁に飾ってあった白いお面が、なんなのかわかりません。
家にある白キツネのお面に似ています。
でも、口はトガッテいません。
口がキツネのように耳のほうまで裂けていません。
かぶってみました。
とれません。
息がつまりそうです。
必死ではがしました。
お面のうらがわに血がついていました。
とくに、口のあたりに血がべっとりとついています。
痛みよりもその赤い血をみてタカコチャンはこわくなりました。
泣き出しました。
泣き声を聞いて、どっと生徒が入ってきました。

「わあっ。口裂け女だ」

●まさか、あんなことになるとは、昭雄はおもわなかった。

「おい、富雄。邦子の両手を押さえろ」

昭雄は富雄に命令しました。
ふたりは六年生の双子です。
悪ガキです。
いまも邦子の顔に音楽室の壁にかかっている白いマスクをかぶせました。

「やあい。ぶよぶよふとったドブス。これかぶってスマートになれ!!」

女の子にはけっして言ってはいけない。
禁句です。
侮蔑用語は使ってはいけません。

邦子は夢中になって逆らいました。
でも二人の力にはかないません。
邦子が静かになった。
息がつまったのです。
ぐったりしています。
昭雄は邦子の顔からお面をはずそうとしました。
はずれません。
持ち歩いていたシャープペンシルの先をお面と邦子の顔とのあいだにさしこみました。
とがった先が邦子の肌につきたったようです。
ヤットはがした下から邦子の顔が――。

「わあっ。口裂け女だ」


●音楽室に飾ってあるマスクは。
楽聖、ベートーベンのデスマスクです。
デスマスクというのは死んだ人の顔から石膏型をとって制作するものです。
死人の魂がやどっていてもふしぎはありませんよね。

●なに、あなたの学校の音楽室にはない。
楽聖のデスマスクが飾ってないのですか。
それはやはり、なにか祟りがあったからでしょう。
部屋の奥の棚を探して御覧なさい。

●バラエティーは、寄せ集めというような意味です。



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とある田舎町の「学校の怪談」episode12 口裂け女2(第三稿) 麻屋与志夫

2013-01-30 08:00:59 | とある田舎町の「学校の怪談」
episode12 口裂け女2

東武日光線の新鹿沼駅で降りた。
ここが、がわたしのhome townだ。
まだ宵の口なのに構内は暗かった。
浅草からの乗客が数人降りただけだった。
興奮して大声で話し合っていた。車内にひびきわたるような大声だ。
スカイツリーを見物してきたのがわかる。
「あんなに高いとはおもわなかったっぺ」
「二股山より高かっぺよ」
「それにひともぎょうさんいてよぉ」
U字工事のお笑いですっかり全国区となったなつかしい栃木弁だ。
にぎやかな御一行様が改札をぬけるともうあとはわしだけ。

下校時なので、それでも日光方面に帰る高校生はかなりいた。

わたしは白いマスクをして歩きだした。
母校の中央小学校が真新しくなっていた。
驚き――。でも、わたし的には、あの古びた校舎のほうが好きだ。
いろいろな思い出がいっぱいつまっていた木造の校舎。
わたしはたちどまって感傷にふけっていた。
クラブ活動でおそくなった小学生が新しい校門からどっとはきだされた。
わたしを見てギョッと男の子がたちどまった。
わたしはマスクに手をやった。
並んで歩いていた少女も青白い顔をしている。
わたしはマスクをとった。
そして「ワタシキレイ」定番のことばをささやく。
男の子は、アワアワとあわてふためいた。
あわくったように逃げ出した。
残された少女がほほ笑みながら話しかけてきた。
「おばさん、ありがとう。わたしぃ、告られていたんだけどね、あんな草食系の子とおもわなかった。つきあうの、やめた!!」
「口裂け女とまちがったのよ。おばさんがきゅうにマスクをとったから」
「怖がったから、みなくていいものが、見えてしまったのね」
口裂け女だ!
口裂け女だ!!
口裂け女だ!!!
離れたところでこちらを指さして少年が叫んでいる。
「ワー。ワー」
と、悲鳴を上げて小学生が「駅の街」の広場のほうへ逃げていく。
クモの子を散らすように逃げていく。
逃げていく。
「ワァー。ワァー。口裂け女だ。口裂け女が出たぞ」
ランドセルがガクガクと音をたてている。
ドタドタと靴音が響く。
夕暮れの街に恐怖のサプライズだ。

今宮神社の境内をぬけた。
大ケヤキが切られていた。
老樹なので幹に空洞ができて倒れる危険がある。
そのための処置。という立て札が設置されていた。
市役所前の十字路までさしかかった。
なつかしい安喜亭のラーメンの匂いがしてきた。
田舎町では、乗用車でラーメン店にやってくる。
広いのに、満車だった。
そして、その駐車場のむこうが「アサヤ塾」だ。

わたしは中学生になってから中途入塾した。
それまで、学校では陰湿ないじめにあっていた。
いじめられっ子だった。
ところが、同じ学年の塾のクラスの子がわたしを助けてくれた。
安生、星、神山、平山君たち。
わたしがいじめられていると、どこからともなく彼らが現れた。
わたしを助けてくれた。
たよりになるわたしの白馬の騎士。
仲良し4人組。
いまごろどうしているかしら? 
 
わたしがキレイだと認めてくれたのは、アサヤ先生だった。
わたしは自信をもった。みごと進学した宇都宮女子高校では演劇部で活躍した。
全国高校演劇大会で優勝した。
そのとき主役をこなした。
東京の向日葵劇団の人の目にとまった。
その劇団に研究生としはいった。
そのまま演劇をずっとつづけた。
テレビの連ドラにもでるようになっていた。
ところが、秋葉の通り魔事件にまきこまれてしまった。
いや、あれはわたしのストーカーがやったことだ。
わたしは両耳にたっする傷をおった。
悲鳴をあげだが口が裂かれていた。
声にならなかった。
もうこれで、わたしの演劇人生はおわりだ。
声のでない女優ななんて……。
わたしは母を呼んだ。母に助けを求めた。
「お母さんたすけて。まだお芝居止めたくない――」
どうしてこんなことが、起きたの。
こんなことになったの。
どうしてこうなの?
ナゼ。
ナゼなの。
こたえは、もどってこない。
ストーカーは白昼のアキバでナイフをきらめかせている。
こんなことって、あっていいの。
でも、すごくリアルな狂気の姿だ。
イタイ、いたい。
お母さん。助けて。
わたしは口裂け女なんかになりたくない。
ノロウ。のろう。呪う。
こんな運命を呪ってやる。
栄光の絶頂からの転落。
いやだぁ。
こんなのってひど過ぎる。
テッペンから地獄へ真っ逆さまだ。
天空から地獄へ投げ落とされた。
わたしは堕天使だ。
でも、わたしはなにも悪いことなんかしていない。
痛い。痛いよ。お母さん。助けて。
アサヤ先生タスケテ。
わたしの白馬の騎士。
タスケテ。
テレビドラマにだってでているのに。
まだまだこれからなのに……。
声が出ない。
口の中は血がいっぱい。
ゴボゴボと血があふれ出る。
口裂け女。
わたしは口裂け女。
わたしこんなところで口を裂かれるなんて。
いや。
これからなんだから。
これからまだまだいっぱい芝居をやりたい。
テレビにもでたい。
わたしきれい。
わたしはきれいなの。
 
掘りごたつの上は、あのころとおなじ。
乱雑。まるであのころと同じだ。
本、雑誌、原稿のやまだ。
アサヤ先生はコタツで原稿を書いている。
もちろんパソコンだ。
先生の視線の先に――わたしがいた。
先生の正面の仏壇に――わたしの写真がかざられていた。
先生はわたしの遺影をみながらブラインドタッチで打ち出した。 

episode12口裂け女2
東武日光線の新鹿沼駅で降りた。
ここが、わたしの hometownだ。

わたしはふいに気づいた。
ストーカーの二突き目は、わたしの心臓につきたった。
わたしは死んでいる。
わたし亡霊だ。
みえるひとにしか、見えないのだ。
「先生。わたしきれいだった?」
わたしは昔ながらの、すこしも変わっていない教室にいた。
わたしの白馬の騎士の声がする。
すごくきれいだよ。
美香ちゃんのことはぼくらが守るから。
守るから。
「先生。アサヤ先生。その「怪談」が打ち終わるまでココにいていいかしら」



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とある田舎町の「学校の怪談」episode12 口裂け女2(第二稿) 麻屋与志夫

2013-01-30 05:38:18 | とある田舎町の「学校の怪談」
episode12 口裂け女2

東武日光線の新鹿沼駅で降りた。
ここが、がわたしのhome townだ。
まだ宵の口なのに構内は暗かった。
浅草からの乗客が数人降りただけだった。
興奮して大声で話し合っていた。車内にひびきわたるような大声だ。
スカイツリーを見物してきたのがわかる。
「あんなに高いとはおもわなかったっぺ」
「二股山より高かっぺよ」
「それにひともぎょうさんいてよぉ」
U字工事のお笑いですっかり全国区となったなつかしい栃木弁だ。
にぎやかな御一行様が改札をぬけるともうあとはわしだけ。
下校時なので、それでも日光方面に帰る高校生はかなりいた。
わたしは白いマスクをして歩きだした。
母校の中央小学校が真新しくなっている。
驚き――。でも、わたし的には、あの古びた校舎のほうが好きだ。
いろいろな思い出がいっぱいつまっていた木造の校舎。
わたしはたちどまって感傷にふけっていた。
クラブ活動でおそくなった小学生が新しい校門からどっとはきだされた。
わたしを見てギョッと男の子がたちどまった。
わたしはマスクに手をやった。
並んで歩いていた少女も青白い顔をしている。
わたしはマスクをとった。
そして「ワタシキレイ」定番のことばをささやく。
男の子は、アワアワとあわてふためいた。
あわくったように逃げ出した。
残された少女がほほ笑みながら話しかけてきた。
「おばさん、ありがとう。わたしぃ、告られていたんだけどね、あんな草食系の子とおもわなかった。つきあうの、やめた!!」
「口裂け女とまちがったのよ。おばさんがきゅうにマスクをとったから」
「怖がったから、みなくていいものが、見えてしまったのね」
口裂け女だ!
口裂け女だ!!
口裂け女だ!!!
離れたところでこちらを指さして少年が叫んでいる。

今宮神社の境内をぬけた。
大ケヤキが切られていた。
老樹なので幹に空洞ができて倒れる危険がある。
そのための処置。という立て札が設置されていた。
市役所前の十字路までさしかかった。
なつかしい安喜亭のラーメンの匂いがしてきてた。
田舎町では、乗用車でラーメン店にやってくる。
広いのに、満車だった。
そして、その駐車場のむこうが「アサヤ塾」だ。

わたしは中学生になってから中途入塾した。
それまで、学校では陰湿ないじめにあっていた。
いじめられっ子だった。
ところが、同じ学年の塾のクラスの子がわたしを助けてくれた。
安生、星、神山、平山君たち。
わたしがいじめられていると、どこからともなく彼らが現れた。
わたしを助けてくれた。
たよりになるわたしの白馬の騎士。
仲良し4人組。
いまごろどうしているかしら? 
 
わたしがキレイだと認めてくれたのは、アサヤ先生だった。
わたしは自信をもった。みごと進学した宇都宮女子高校では演劇部で活躍した。
全国高校演劇大会で優勝した。
そのとき主役をこなした。
東京の劇団の人の目にとまった。
その劇団に研究生としはいった。
そのまま演劇をずっとつづけた。
テレビの連ドラにもでるようになっていた。
ところが、秋葉の通り魔事件にまきこまれてしまった。
いや、あれはわたしのストーカーがやったことだ。
わたしは両耳にたっする傷をおった。
悲鳴をあげだが口が裂かれていた。
声にならなかった。
もうこれで、わたしの演劇人生はおわりだ。
声のでない女優ななんて……。
わたしは母を呼んだ。母に助けを求めた。
「お母さんたすけて。まだお芝居止めたくない――」
アサヤ先生たすけて。
わたしの白馬の騎士。
たすけて。
テレビドラマにだってでているのに。
まだまだこれからなのに……。
声が出ない。
口の中は血がいっぱい。
ゴボゴボと血があふれ出る。
口裂け女。
わたしは口裂け女。
わたしきれい。
わたしはきれいなの。
 
掘りごたつの上は、昔とおなじ。
乱雑。まるであのころと同じだ。
本、雑誌、原稿のやまだ。
アサヤ先生はコタツで原稿を書いている。
もちろんパソコンだ。
先生の視線の先に――わたしがいた。
先生の正面の仏壇に――わたしの写真がかざられていた。
先生はわたしの遺影をみながらブラインドタッチで打ち出した。 

episode12口裂け女2
東武日光線の新鹿沼駅で降りた。
ここが、わたしのhome hometown だ。

わたしはふいに気づいた。
ストーカーの二突き目は、わたしの心臓につきたった。
わたしは死んでいる。
わたし亡霊だ。
みえるひとにしか、見えないのだ。
「先生。わたしきれいだった?」
わたしは昔ながらの、すこしも変わっていない教室にいた。
わたしの白馬の騎士のこえがする。
すごくきれいだよ。
美香ちゃんのことはぼくらが守るから。
守るから。
「先生。アサヤ先生。その「怪談」が打ち終わるまでココにいていいかしら」

●第二稿です。すきなテーマなのでなんどでも書き改めたいと思います。コメントお願いします。


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とある田舎町の「学校の怪談」episode12 口裂け女2 麻屋与志夫

2013-01-29 17:58:18 | とある田舎町の「学校の怪談」
episode12 口裂け女2
東武日光線の新鹿沼駅で降りた。ここが、がわたしのhome townだ。まだ宵の口なのに構内は暗かった。浅草からの乗客が数人降りた。こうふんして大声で話し合っていた。スカイツリーをみてきたのがわかる。その人たちが改札をぬけるともうあとはわしだけ。下校時なので、それでも日光方面に帰る高校生はかなりいた。わたしは白いマスクをして歩きだした。母校の中央小学校が真新しくなっている。でも、わたし的には、あの古びた校舎がすきだった。いろいろな思い出がいっぱいつまっていた木造の校舎。わたしはたちどまって感傷にふけっていた。クラブ活動でおそくなった小学生が新しい校門からどっとでてきた。わたしを見てギョッと男の子がたちどまった。わたしはマスクに手をやった。並んで歩いていた少女も青白い顔をしている。わたしはマスクをとった。そして「ワタシキレイ」定番のことばをささやく。男の子は、アワアワとあわてふためいた。あわくったように逃げ出した。
「おばさん、ありがとう。わたしぃ、告られていたんだけどね、あんな草食系の子とおもわなかった。つきあうの、やめた!!」
「口裂け女とまちがったのよ。おばさんがきゅうにマスクをとったから」
「怖がったから、みなくていいものが、見えてしまったのね」
 今宮神社の境内をぬけた。大ケヤキが切られていた。老樹なので幹に空洞ができて倒れる危険があるためのやむを得ない処置と立て札が設置されていた。
 市役所前の十字路までさしかかった。なつかしい安喜亭のラーメンの匂いがしてきてた。そして、駐車場のむこうが「アサヤ塾」だ。わたしは中学生になってから中途入塾した。それまで、いじめられっ子だった。ところが、同じ学年の塾のクラスの子がわたしを助けてくれた。安生、星、神山、平山君。わたしがいじめられていると、どこからともなく彼らが現れた。わたしを助けてくれた。たよりになるわたしの白馬の騎士。仲良し4人組。いまごろどうしているかしら? 
 わたしがキレイだと認めてくれたのは、アサヤ先生だった。わたしは自信をもった。高校では演劇部で活躍した。全国高校演劇大会で優勝した。そのとき主役をこなしたのが東京の劇団の人の目にとまり、そのまま演劇をずっとつづけた。ところが、秋葉の通り魔事件にまきこまれてしまった。いや、あれはわたしのストーカーがやったことだ。わたしは両耳にたっする傷をおった。悲鳴をあげだが口が裂かれていた。声にならなかった。もうこれで、わたしの演劇人生はおわりだ。テレビドラマにだってでているのに。まだまだこれからなのに……。
 掘りごたつのうえは、昔とおなじ。乱雑。本、雑誌、原稿のやまだ。アサヤ先生はコタツで原稿を書いている。もちろんパソコンだ。先生の視線の先に――わたしがいた。先生の正面に仏壇に――わたしの写真がかざられていた。先生はわたしの遺影をみながらブラインドタッチで打ち出した。 

口裂け女2
 東武日光線の新鹿沼駅で降りた。ここが、わたしのちhome hometown だ。
わたしはふいに気づいた。ストーカーの二突き目は、わたしの心臓につきたった。即死だった。
「先生。わたしきれいだった?」



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とある田舎町の「学校の怪談」episode11 理科室の骸骨模型 麻屋与志夫

2013-01-28 10:03:24 | とある田舎町の「学校の怪談」
episode11 理科室の骸骨模型。

理科室には骸骨の模型がありました。
なに……? 
そんなものないよ、だって。

骸骨の模型ってどんなものなの。

たしかにあるわけだけどな。
あのころは小学校の理科室にはかならず骸骨の模型があったんだ。
わからない子は、パソコンで「人体骨格模型・ヒューマンスカル特大フィギュア」で検索してごらん。
ていねいな紹介がみられるよ。
すこし怖いけどね。
でも、それを検索してよ。
簡単に、「人体模型」とだけ打ち込んでもみられるよ。
そう、骨の見本がでたろう。
みてくれないと。
これからのぼくの話の怖さが実感できないとおもうんだ。

理科室にはなにか薬品ににおいがしていた。
実験台の上にはまだピーカーや試験管、アルコールランプ、薬品の瓶などが乱雑に置いてあった。
それらを「片づけてきなさい」と三橋先生にいわれた。
こわがりのぼくを教育するためにその指示がくだされた。
当時のぼくは、素直に、そうおもっていた。
まさか、先生にイジメられているとは気づかないでいた。
放課後のことで部屋は静かだった。
太陽が千手山のかなたに沈むところだった。
もうすぐ、暗くなる。
はやく整頓して、先生に報告して下校しなければ――。
帰り道に宝蔵寺の暗い墓地を横切らなければならなくなる。
そう思うと手元がふるえた。
ぼくはあせっていた。
床が振動した。
動いている。
ゆれていたのは骸骨だった。
骨の一本一本が、がくがくうごいている。
おどっているようだ。
あぐががくがく開閉している。

「この標本のつくりかたしってるか」
と三橋先生が理科の時間にいった。
「死体をもらいうけてきて、酸をかけてとかすんだ。するとこうした骨だけが残る」
いまなら、先生にからかわれているとわかる。
そんなばかげたことはないと、否定できる。
でも、あのころはできなかった。
先生の言葉を素直に信じていた。

「これは交通事故でなくなったタカコちゃんの骨だぞ」
と五郎ちゃんがいっていた。
「ほら、腰のあたりの骨にひびがはいっている。くだけちまつているのを補修したんだって三橋先生がいってたぞ」
タカコちゃんは交通事故で死んだ同じクラスのいちばんきれいだった女の子だ。
あごががくがくしている。
「ショウちゃん」
とよびかけられたような気がした。
いやたしかに声がした。
ぼくはドアをあけて廊下に逃げた。
廊下はもうくらくなっていた。
だれもいない。

「死ねば骸骨。燃やせば炭素。くだけば灰。死んだ人間なんか、怖くはない。生きている人間だけが害をなす」
臆病なぼくをいつも父がはげましてくれる、諭してくれることばだった。
そんなこといっても、こわいものはこわいよ。
床がかすかに動いている。
骸骨がおいかけてきた。
「ショウちゃん。いっしょに遊ぼう」
とさそっている。
いやだぁ。
こわいよ。
ぼくはふるえながら夢中になって逃げた。
あとで、あとで遊ぼう。
こころのなかで、タカコちゃんにへんじをしながら廊下をはしった。
角をまがる。
もうすぐそこが、階段だ。
下りれば昇降口だ。
校庭にでられる。
どんとなにかに、ぶちあたった。
骸骨だ。
いや、父だった。
ぼくは父さんの顔をみるとなきだしていた。
「おまえに、理科室の整頓をいいつけておいて、帰宅するなんて教師のすることか」
事情をきいた父は激怒した。
ぼくは、父がのばした手にすがった。
冷たい。
死人のようだ。
かわいている。
かたい。
ぼくは骸骨の手をにぎっていた。
「ショウちゃん遊ぼう」
ぼくは理科室にいた。
あれから一歩もこの部屋からでていなかった。
「ショウちゃん。遊ぼう」



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黒田夏子さん、芥川賞おめでとうございます。 麻屋与志夫

2013-01-27 05:27:07 | ブログ
1月27日 日曜日
●書こうか書くまいかと迷っている。
黒田夏子さんのことである。
だいち、芥川賞をもらった黒田さんが、わたしの記憶にある黒田さんなのか?
さだかではない。
でもあれだけの文体を紡ぎだすことができるのは黒田夏子そのものだと確信している。

●海藻のように揺らぐわたしの記憶のなかの黒田さんは、東京同人雑誌連絡協議会の月例の合評会の席上にいる。
会場は水道橋の「トミグリル」だったと思う。

●その日わたしたち同人誌「現代」のメンバーは四人が同席していた。
「現代」に載せた渡辺耕史の「春はロシナンテに乗って」を合評会の俎上にのせてくれることになっていた。

●日頃はものしずかな長い黒髪をかたまでたらしていた黒田さんに渡辺の作品は酷評された。
自然主義的な時代遅れの手法が彼女から見たら気に食わなかったのだろう。
そうとしか思えないほど厳しい舌鋒だった。

●こういった合評会。
歯に衣着せぬ論評にはなれていない渡辺はがっくりきてしまった。
あとで慰めるのに一苦労した。
栃木の文学青年だから、宇高の高校教諭だったから、ほめられることに慣れている。
よほど、ショックだったのだろう。

●わたしたちの「現代」は栃木県で発行している同人誌としては名門だった。
なにしろあとになって文芸春秋の社長となる白石勝さんも参加していた。

●「いろいろご批評ありがとうございました。これから作品を書く上での励みにします」
と合評会が終わってからまだゴテテいる渡辺に代わって黒田さんに挨拶した。

●どんな言葉が黒田さんからもどってきたかは記憶にない。

●そのころ、黒田さんは「砂城」という同人誌の責任者だった。
1969年のことだ。

●それから何年かして川路重之作品集刊行会に名を連ねた黒田さんから案内状がとどいた。
早速購入してよんだ。
すばらしい作品集だった。
さすが、黒田さんが推薦するだけのことはあるとおもった。

●こうした思い出だってどこまでがリアルなのかいまとなってはわからない。

●文中実名を出してしまってみなさん、御免なさい。
余り懐かしかったのでついつい実名で書いてしまった。

●あのころの、東同連のみなさんはいまでも健在なのだろうか?

●上京してくれた渡辺、柳田、大野の諸子とは水道橋の上で別れた。

●橋のたもとの名前は忘れてしまったが、ジャズ喫茶にはいった。

●ひりりで熱いコーヒーをのんだ。

●あれから気になって、パソコンで検索した。水道橋の際のジャズ喫茶は「スイング」という店名だった。村上春樹さんが早稲田の学生だった頃バイトをした店とのっていた。懐古。しみじみとした気分になった。

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とある田舎町の「学校の怪談」 episode10 ひき子さん 麻屋与志夫

2013-01-24 15:59:22 | とある田舎町の「学校の怪談」
episode 10 ひき子さん

星真一は東中学の一年生。
バスケ部の部活で帰りが遅くなってしまった。
ばんばんとボールを床にたたきつけた疲れがまだのこっている。
黒川にかかった朝日橋までさしかかっていた。
そろそろ9時なる。

お腹がすいていたので、少しでも早く家に帰りたくて、この橋を渡ることにしたのだが。
こわかった。
怖いというより悲しかった。
ここは小学校のときつきあっていた恵子ちゃんがバイクにはねられて死んだところだ。
あんなことがなければ中学生になってもずっと一緒でいられたのに。
幼馴染で、幼稚園のころから仲良しだった。
いつも一緒にあそんだ。
よくこの川岸で砂遊びをしたものだった。

ああ、恵子ちゃん、いまごろ東中学ふたりでかよえたのに――。

バイクにのっていたのは暴走族化沼連合の沢木だった。
星は沢木をいまでも恨んでいた。
恵子はバイクにひきずられて血だらけの肉団子みたいになって息絶えていた。
大人たちがそうはなしていた。
あの日のことはいまでも忘れない。
忘れるわけがない。
恵子の母親はそのために神経を病みいまでも上都賀病院の精神科に入退院を繰り返している。

ふいに河川敷でバイクのエンジン音がした。
こりもせず暴走族の連中が河川敷公園をわがもの顔にのりまわしている。
――すこしおかしい。
バイクの後ろになにかひきずっている。
夜目でよくわからないが、どうやら猫らしい。
猫をロープでくくってひきずっているのだ。

「ひどいことをする」

真一は怒りがこみあげてきた。
恵子のことをいま思い出していたばかりだ。
河川敷にかけおりた。

「やめろ。やめろ。猫をひきずるなんて、やめるんだ」
「なにイキガッテルンダ」

男はまちがいなく沢木だった。

「なんなら、おまえをひきずってやろうか」

真一は怒りで体があつくなった。
こいつが、恵子をひきずって殺してしまつたのだ。
事故とうことで処理されてしまったが、こいつに殺意はなかったのか?

沢木はバイクからおりようとした。
ギョッとした顔になった。

「おまえ、だれだ」

真一の背後をみて震え声でいった。
たしかにうしろから呼吸音がする。
うしろに、だれかいるようだ。

「だれなんだよ」

沢木はおびえている。
バイクにまたがると、フルスピードで逃げ出した。
うしろにひきずられているのは、まちがいなく猫の死骸だった。
わあっと、沢木の絶叫が前方の闇の中でした。
ころころと沢木の首がころがってきた。
真一は沢木を追いかけるのをやめて、その首をひろいあげた。

あとになって、朝日橋の下の段ボールの家に住んでいるホームレスが証言した。
男の目撃証言は――。
沢木の首をバスケのボールのようにはずませていた少年がいた。
バンバンと公園の道に丸い肉団子のような首をたたきつけていた。
ということだった。
人の首が弾むわけがない。
置き去りにされていたスコップに激突したからといって。
人の首がすっぱりと切り落とされるわけがない。
そのへんのところは――。
田舎町の都市伝説ですからあまりつきつめてリアルにかんがえないでください。

もうひとつ。
蛇足。つけたしです。
上都賀病院の病室でこのころ恵子の母親が、ふいに正気にもどりました。
「恵子が、あいにきてくれた。恵子がわたしにあいにきてくれた」
とくりかえしいって、涙をこぼしていたそうです。


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カミサンと街を歩く  麻屋与志夫

2013-01-23 11:50:07 | ブログ
1月23日 水曜日

●よく晴れた朝をむかえた。
気温も5°。

●のどが痛むので、原稿にむかえない。
扁桃腺は若い時にとってしまっているのだが、すぐにノドノ奥がはれる。
するとからだがサンドバックみたいに重くなる。
だるくて、眠い。
もっとも、この持病があるから、あまり無理をしない。
それで、ここまでやってこられたのだと思う。

●受験生はこれからがいよいよ県立高校の入試だ。
アサヤ塾では、私立は全員合格している。
よかったね。

●でも、気をゆるめないで、第一志望校である県立高校に合格するまでは頑張ってください。

●今日は、体はだるいが、ベニマルまで買い出しに行かなければならないだろう。
大きなリックを背に、愛するカミサンとおしゃべりしながら街を歩く。
楽しみだ。


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春を招くような小雨がふっていた  麻屋与志夫

2013-01-22 12:40:43 | ブログ
1月22日 火曜日

●久しぶりのブログだ。
このところ、学校の怪談を再録するのにいそがしかった。
そのままソックリノセル。
なんてことは、凝り性のGGにはできない。
新しく書くよりも、校正しながらのせるほうが骨がおれる。

●とある田舎町の「学校の怪談」はようやくpart2を書き出すことができた。
紛失したかとさがしまくったMちゃん提供のネタのメモ。
見つかったっぁ!!
これからは、机の上をもっと整頓しておかなければ、と反省した。
反省するだけなら猿でもできる。
でも、すっぽりとニットの目だし帽をかぶって。
コタツで寒さにふるえているネズミ男。
のような風体の。
GGにはそれは無理だろう。
机の上を整然とととのえておく。
なんてことはできないだろうな。

●きのうは、塾のPRのために新聞に折り込みをいれた。
塾生がふえるといいなぁ。

●今朝は小雨。
デッキが雨にぬれ、しっとりと湿った質感がみていて心地よかった。
春がそこまで来ているようなやわらかな質感だ。
やはり木製でよかった。
金属製だとこうはいかなかったろう。

●デッキのさきには、カミサンが地植えにしたバラが数本。
春をまっている。


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とある田舎町の「学校の怪談」part2 episode9 口裂け女 麻屋与志夫

2013-01-21 13:55:19 | とある田舎町の「学校の怪談」
とある田舎町の「学校の怪談」
part 2 episode 9 口裂け女

「レイコおねえちゃん。またあの女の人たっている」
「ほんとだ。風子わたし怖い。白いマスクしているよ!! 怖いわ」
口裂け女恐怖症のレイコと風子はがくがくふるえている。
ふたりは小学6年生の双子の姉妹だ。

「レイコも風子も、怖がることないって。インフルエンザがはやっているからよ」
あとから追いついてきたマリ。
レイコと風子の背をとんとんと交互にたたいて、元気づける。
「レイコ。あまり妹を怖がらせないほうがいいよ」
「怖がらせてなんかいないよ。でも……あのマスクの下は……」

「口裂け女だぁ」

と元気なはずのマリまで叫んだ。
声は恐怖におののいている。
レイコと風子は青くなっている。
けっきょく、三人とも怖がっていたのだ。
口裂け女だぁ、と三重奏。
三人で同時に声をはりあげた。
女の子が三人あつまっているのだ。
それも騒ぎたい盛り。
おしゃまな小学6年生。
姦しいこと、かしましいこと。

小学校の校門をでてすぐだ。
まだほんの数歩しか歩いていない。
少し傾いた電柱の影に赤いワンピースの女の人がいた。
いつものように白い大きなマスクで顔をかくして立っていた。

「風子。はなしかけてみない」 
「いやだもん。レイコお姉ちゃんやってよ」

双子の姉妹だ。
いつもなかよく登下校している。
母親が気をつかって、同じ服装をさせている。
友だちでも、区別はつけにくい。

「マリちゃん、おねがい」

姉妹が同時に同じことをいった。
いうことも、かんがえることも、いつも一緒だ。
おねがいと頼まれたマリは青い顔をするどころか。
堂々とした態度で電柱に近寄っていく。
姉妹はハラハラしながらマリの背を見ていた。
マリちゃんは、ヤッパすごい。
マリは平気で女のひとにはなしかけている。
女の人の後ろ姿は電柱の影で見え隠れしている。
とつぜん、マリが倒れた。
女の人はなにもしていない。
マリの顔が恐怖でクシャクシャに歪んでいる。
その表情がはっきりと見えるところまでふたりは近づいていた。
マリが道に腰をおとした。
あまりの恐怖に腰をぬかしていた。
女のひとを指さしながら口をパクパクさせている。
声はでていない。
マリの指さす先で、女のひとはかがみこんだ。
「見たわね。見たでしょう。見てたんでしょう」 

それにしても、見てたんでしょう。なんてきくのはオカシイ。
「わたしのこと見たいの? 見たい」
といって白いマスクをとると口が裂けている。
真っ赤な口紅をぬった口が両耳のほうまでさけている。
これが定番。
口裂け女のフェアな怪談だ。
だいいち、マスクはしたままだ。
マリはなにを怖がっているだろう。
ふたりは勇気をだしてマリをかばうように、女と向かいあった。
「見たわね。見たでしょう。見てたんでしょう」
そうだ。
このときふたりは瞬時に悟った。
そうだ、この女のひとは先週自殺した同じクラスの翔太くんのお母さんだ。
マスクをしていてもいつも遊びにいっていたから。
わかる。

「おばさん。翔太くんのお母さんでしょう」
うなずきながら女のひとはマスクをはずした!!
口は――裂けてはいなかった。
でも、その口から出た言葉は……もっと怖いことを訊いてきた。

「ねえ、教えて。翔太がイジメラレテいるの見たでしょう」
「…………」
「教えて。だれにイジメラレテいたの」
すごく悲しそうだ。
「それは……」
「風子、いわないで」
「そうよ。風子ちゃん、口が裂けても――いってはダメだよ」
とマリもレイコに唱和する。

「わたしは翔太がいじめの標的になっているなんてしらなかった。死ぬほどつらい、いじめにあっているとはしらなかった。おしえて。おしえてください。おねがいです」

「バスケ部の顧問の先生。わたしたちの担任の橋田先生よ」

翔太のことを好きだった。
風子は翔太のことを想い。
いっきに、いってしまった。
風子はなんども、翔太がなぐられているのを見ていた。
みていたものは風子だけではない。
レイコもマリもみんな大勢。
翔太がキャップテンテだから試合に負けた責任を取れ――と。
橋田先生になぐられているのを目撃している。
でも、それをチクッタラ、こんどはじぶんがなぐられるのがわかっているから。
こわくていえなかったのだ。 
「そう。先生だったの。うすうすは感じていたけどこれではっきりしたわ。風子ちゃんありがとう」
翔太君のお母さんは泣きだした。
かがみこんでさめざめと泣きつづけました。

このお話には、口裂け女はでてきません。
でも、口が裂けてもいってはいけないことを。
真実を明るみに出した勇気ある風子がヒロインです。
でも、風子には心配なことができました。
その後も、白いマスクをした女の人が。
恨めしげな眼で。
橋田先生を見るために下校時には電柱の影にたっていることです。
なにか不吉なことか起きそうで、心配です。


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