田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

わたしまだ赤い血を流している/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-12-05 16:35:02 | Weblog
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 男の口からヨダレのように血がたれている。
「ハジメ兄ちゃん」
「なんだジロウ」
 兄弟だった! よく似ているわけだ。
「ぼくは、平成になってからハジメて生まれた。百年ぶりの子どもだ」
「兄ちゃん。この娘もたべてよかっぺ?」
てんで恐怖を感じていない!! 
 バカかこいつら。とルイは思った。
 Vが「ぼく」なんて一人称を使った。ミイマがダットこけた。
 U字工事みたいだ。ご当地方言のカケアイ漫才のようだ。
 それにしても栃木弁とはなつかしい。言葉もイントネーションも若者らしい。 
 テレビを見ているのだろう。
 バカどころではない。とルイは反省した。
 栃木弁。なつかしい。
 ルイとミイマの思いが油断を誘った。スキができた。
 ハジメとジロウのふたりが消えた。
「ルイ、天井だよ」
 Vは、天井に張り付いていた。
 ふたりの襲撃者を油断させて置いて、瞬時に跳躍したのだ。

 まだたらたらと赤いよだれをたらしていた。飽食を覚えてしまった。
 地下街から逃亡した。
 地上では獲物がウジャウジャいる。
 おもうぞんぶん血が吸える。
 捕食動物の血? に目覚めてしまったVの兄弟だ。

 上からおおいかぶさるように襲ってきた。
 ミイマは前に跳んで避けた。
 蜘蛛のように四肢をひろげてVは着地した。
 そして、バック転で部屋の中央に立つた。

 振り返りざま、ミイマはGGの鬼切丸で空を斬った。
 そこへ巻き込まれるようにVの上半身が入ってきた。
「おまえ、ぼくの行動パタンがわかるのか」
「ルイ!!」
 叫んだが間に合わなかった。
 ハジメはミイマを再度襲うとみせ――。
 ジロウと戦っているルイの背に爪を突きたてた。
 その瞬間ルイが吸血鬼化した。
「ヤベェ。こいつとはた戦えない」

 ふたりはすばやく部屋から逃走した。

 目の前がすべて真紅に、血の色に染まったようだった。
 かわいそうなルイ。
 助けようがない。
 ミイマは震えていた。 
 ルイの悲鳴が赤い血の流れのなかでした。
「よかった。ミイマ、わたしまだ赤い血だった」
「ルイ。ルイ」
 ルイのからだが戦慄に震えている。
 怒りが戦慄となった。ミイマの背骨がふるえている。
「クミには言わないで。クミを助けに戻ったとき噛まれた。噛まれてしまったの」
 犬歯がニョキッとのびてくる。
「ココを――首筋を噛まれた。いつ発病するか怖かった。」
 いままでV化しなかったのはルイの意思が強かったからだ。
 V化することを激しく拒んでいたからだ。
「どうしてもじぶんでは死ねなかった。Vになるくらいなら死にたい。ミイマに死なせてもらいたいと、ここへきたの。ミイマに斬ってもらいたいの。人間でいるうちに斬り捨てて。クミにはなにも言わないで」

 またひとりクノイチの若い命が消えた。
 Vとの戦いで戦士、クノイチの命が露と消えた。



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