田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

純、純、純が刺された/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-12-14 07:25:13 | Weblog
20

ミイマの右肩がまだ治りきっていない。
純がミイマの右サイドを固めている。
翔子が左側を守ってVと戦っていた。

Vはこのさい、ミイマに攻撃を集中してきた。
Vが人にまぎれて、吸血行為に励もうとすると、かならず邪魔される。
銅のような血の臭いがミイマには嗅ぎあてられてしまう。
ゆっくりと血をすっていられない。
なにせ彼女はMVなのだ。
そして死なない女。玲加も同族だ。
翔子も純も、クノイチ48のメンバーもVの行動をよく感知する。

「翔子。気をつけてよ。今夜のVは手強いよ!!」
「百子の武器が有効なのよ」

流星錘の錘が風をきる音がする。
ビュっと錘が弧を描く。
そこにはかならず血を流したVがいる。
肉片を削がれたVが青い粘液を垂らしている。
妖空間でひとびとの動きが止まっている。
街の騒音もしない。

鎖鎌の分胴も唸る。
Vは音に敏感だ。
いらいらしている。

今夜こそ。とミイマは思った。GGの仇を撃つ。
Vをまちがいなく追いつめている。
クノイチ48のガールズは最強だ。
Vという怪異な生き物にもひるまない。
いままでのわたしの戦場では、勇気を鼓舞してたたかうことがまず大切だった。
まして、この敵はVなのだ。
平成になってからは純のような男はめずらしい。
女の子がやたら強くなった。
特殊な相手におびえてはいない。
スゴイ。
リツパヨ。
仮想現実(ばーちゃる・りありてい)の世界で。
架空の、異世界体験をしているからだろう。
アバターにしてもトワイライトにしてもあれらの映像。
電子工学的なメカニズムによって。
異界の敵と戦うことにならされているのだ。
なにが起きてもおどろかない。
どんな怪物が出現しても不安はない。
むしろこの戦いをたのしんでいる。
スゴイ。

「ミイマ。右!!」

純の叫びではっとわれにかえった。
戦いのさなかにものを思っていけない。
注意が散漫になっていた。

Vの攻撃が翔子に集中していた。
ミイマは翔子に右サイドを守られていた。
それで正面のVと戦うことができた。
右手の鬼切丸を翔子を取囲んでいるVに突きだした。
突きながら跳んだ。
着地するときに剣を稲妻状にふるった。
さらにふたりのVを倒した。

このときだ、左にいた純に茨木童子が右手を長く伸ばした。
ミイマの真向かいにいたはずの童子だ。
その手の先には!!
翔子のそばに走りよって来ようとしていた純!!

童子の手の先は、X―メンの。
アダマンチウムの爪のように見えた。
そのナイフの爪が矢のように飛んだ。
一瞬そう見えた。
純がみ切れなかった。
まさか爪が倍近くのびるとは!!
爪は純の胸に鋭くつきたった。
「純!!」
翔子が絶叫した。
翔子も純が刺されるのを見た。
翔子の絶叫が戦場を切り裂いた。
すべての動きがとまった。
そして、純が倒れた。
胸から血を噴いている。
真っ赤な血が噴き上がった。

「カクゴ!!」
ミイマの鬼切丸が勝ち誇った茨木童子の眉間に突きたった。

「ナンノコレキシ」

童子は鬼切丸をにぎった。
「翔子!!」
駆けつけた百子が童子の首に錘を投げた。

 ――そして、純が――。



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