■シューマンの没後150年、古典の学習とは?■
2006/6/2(金)
モーツァルト生誕250周年のお祭り騒ぎに隠れがちですが、ことしは、シューマンの没後150年です。
1810年生まれのシューマンは、1856年に46歳の若さで亡くなっております。
モーツァルト、シューベルト、シューマンの3人の大作曲家は、ともに短命でした。
シューマンは、後に妻となったピアニストのクララ・ヴィークの父に、ピアノと作曲を学んだ以外は、
独学のようにとられています。
独学とはなんでしょうか。
それは、自ら古典にあたり、まずはその古典を模倣し、古典を自分のものとし、その上で、自分独自の
ものを創りあげていくことです。
シューマンは、世間では、何もないところから、いきなり傑作を書き上げた、理解しがたいような天才、
とうけとられています。
しかし、彼の作品は、実はバッハ、シューベルトに負うところが非常に大きい、ということがいえます。
シューマンは、若死にしたシューベルト(1797~1828年、31歳で没)の楽譜を発掘し、出版に尽力しました。
そのなかで、シューベルトの技法、つまり、シューベルトが古典から学び、模倣し、蓄積したものを、
シューマンも自分のものとして血肉化していきました。
朋友・メンデルスゾーンが、バッハを再発見していった過程と同じことです。
ちなにみ、ブラームスは、シューマンの没後、クララ夫人と一緒に、シューマンの未出版作品を世に
出しましたが、その過程で、同じようにシューマンを学んでいきました。
これこそが、古典の学び方と継承です。
その具体的な一例として挙げますと、シューマンが終始一貫して愛した和声進行があります。
「Ⅰ」→「Ⅵに行くための属和音」→「Ⅵ」の和声進行です。
ピアノソナタ第2番の第1楽章・第2テーマで使われています。
この和音はシューマンが、憧れに満ちた優しい場面でよくつかい、有名な「謝肉祭」や、独奏作品としては
最後の作品「森の情景」でも見られます。
この独特な和音進行は、どこから来たのでしょうか。実はシューベルトの「冬の旅」にありました。
こうした発見は、作曲家としての視点で、曲を分析していきますと見えてきます。
音楽学の文献に基づいた書物や、通常のピアノレッスンでは、大変少ないと思います。
そんなお話を、6月11日午後1時半から4時半まで、日本ベーゼンドルファー・東京ショールーム
(地下鉄・中野坂上駅徒歩1分)で、「やさしい楽曲分析(アナリーゼ)講座」としていたします。
このほか、「子供の情景」から「トロイメライ」、「知らない国々」。「幻想小曲集」から「夕べに」
「なぜに」。「森の情景」から「森の入り口」「予言の鳥」なども分析いたします。
詳細は、http://www.bosendorfer-jp.com/の Event Calendar→Lesson/Seminar→
「やさしい楽曲分析講座」をご覧ください。
▼▲▽△▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲▽△▼▲
■ブラームスの「4つのピアノ小品」
2006/4/7(金) 午後 4:07アナリーゼ(楽曲分析)
日本ベーゼンドルファー・東京ショールームで、数ヶ月ごとに「アナリーゼ講座」を開いております。
これは、バッハやドビュッシー、ラベルなど特定の作曲家を一人に絞り、その作曲家の代表的な曲を数曲アナリーゼします。
その作曲技法を分析することで全体像に迫るのが狙いです。約3時間の講座です。
これとは別に毎月2回、第1、3水曜日(午前11時半~午後1時)、カワイ青山店で「アナリーゼ講座」をしております。
1時間半の中で、1曲をじっくり分析いたします。
場合によっては1曲に数週間かけることもあります。
4月5日の講座は、ブラームスの最後のピアノ作品「4つのピアノ小曲:Opus119」の第1曲インテルメッツォでした。
ブラームスは肝臓ガンにより63歳で亡くなりましたが、この作品は60歳。
1893年の作です。
わずか67小節の曲。一見単純に見えますが、対位法と不協和音の網が、精緻に張り巡らされています。
それを一つ一つ解きほぐしていきますと、1時間半で冒頭の16小節までしか、たどり着きませんでした。
それでも、ブラームスと向き合う至福の時間を、受講者の方と分かち合いました。
シューマンの未亡人クララはこの曲を「灰色の真珠」と評したそうです。
私はこの主要音形となる下行分散和音が、頬を滴る涙のように思えてなりません。
講座からの帰り途、ハッと思いつきました。
あの音形は、バッハの「インヴェンション」の中で、ブラームスがとりわけ愛していた「ト短調シンフォニア」だ---と。
ともに「短調の3拍子」。曲頭に現れる分散和音が、主和音の第5音から始まり第3音を経て、主音にたどり着く下行形です。
バッハと全く同じ形で、バッハは♭2つのト短調、ブラームスは♯2つのロ短調です。
ブラームスは一生涯、バッハに寄り添うようにして作曲してきました。
(クララの夫「ロベルト・シューマン」でも全く同じことが言えます)。
それが、晩年、巧まずしてブラームスの珠玉の作品に滲み出てきたのです。
▼▲▽△▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲▽△▼▲
アナリーゼ講座第6回は「シューマン」です 傑作(0)
2006/3/20(月)
バッハ、モーツァルト、ドビュッシー、ラヴェル、と続いてきました「アナリーゼ講座」の第6回目は、「シューマン」を取り上げます。
シューマンは、ことしが没後150年。
この講座で「ロマン派」は初めてですが、文学的側面が強調されることの多い「ロマン派」を、
アナリーゼ講座らしく、言葉に囚われることなく、音楽の構造そのものを深く分析したい、と思います。
例えば、「アベッグ(ABEGG)変奏曲」では、“人名のアルファベットABEGGをドイツ音名に移し変えて
作曲した”など、本質とはあまり関係のない表層的な次元のことで、作曲ができているかのように解説
されがちです。
そして、それが誇張され、そのことだけが強調されています。
しかし、この曲を理解するためには、それほど重要な要素ではありません。
作曲に取り掛かる際の単なるヒントとしてABEGGをつかったに過ぎません。
作曲という営みはそれ以降のことです。
講座では、「トロイメライ」を初めとする名曲を取り上げます。
ご自分で演奏される場合でも、アナリーゼから得られるいろいろなヒントが、新しい発見へと導き、
弾く喜びをきっと増すことでしょう。
堅苦しくなく、楽しみながら理解が深まれば、と思っております。
シューマンについては「夢想の中に生きた常人には測り知れない天才作曲家」、「いまひとつ捉えようの
ない模糊とした曲の構造」などの印象をお持ちの方が多い、と思われます。
この講座で、シューマンの本当の世界に一緒に分け入ることが出来れば幸せです。
日時は6月11日(日曜日)、会場は、日本ベーゼンドルファー・東京ショールームです。
詳しい時間などが決まりましたらまた、お知らせいたします。
▼▲▽△▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲▽△▼▲
2006/6/2(金)
モーツァルト生誕250周年のお祭り騒ぎに隠れがちですが、ことしは、シューマンの没後150年です。
1810年生まれのシューマンは、1856年に46歳の若さで亡くなっております。
モーツァルト、シューベルト、シューマンの3人の大作曲家は、ともに短命でした。
シューマンは、後に妻となったピアニストのクララ・ヴィークの父に、ピアノと作曲を学んだ以外は、
独学のようにとられています。
独学とはなんでしょうか。
それは、自ら古典にあたり、まずはその古典を模倣し、古典を自分のものとし、その上で、自分独自の
ものを創りあげていくことです。
シューマンは、世間では、何もないところから、いきなり傑作を書き上げた、理解しがたいような天才、
とうけとられています。
しかし、彼の作品は、実はバッハ、シューベルトに負うところが非常に大きい、ということがいえます。
シューマンは、若死にしたシューベルト(1797~1828年、31歳で没)の楽譜を発掘し、出版に尽力しました。
そのなかで、シューベルトの技法、つまり、シューベルトが古典から学び、模倣し、蓄積したものを、
シューマンも自分のものとして血肉化していきました。
朋友・メンデルスゾーンが、バッハを再発見していった過程と同じことです。
ちなにみ、ブラームスは、シューマンの没後、クララ夫人と一緒に、シューマンの未出版作品を世に
出しましたが、その過程で、同じようにシューマンを学んでいきました。
これこそが、古典の学び方と継承です。
その具体的な一例として挙げますと、シューマンが終始一貫して愛した和声進行があります。
「Ⅰ」→「Ⅵに行くための属和音」→「Ⅵ」の和声進行です。
ピアノソナタ第2番の第1楽章・第2テーマで使われています。
この和音はシューマンが、憧れに満ちた優しい場面でよくつかい、有名な「謝肉祭」や、独奏作品としては
最後の作品「森の情景」でも見られます。
この独特な和音進行は、どこから来たのでしょうか。実はシューベルトの「冬の旅」にありました。
こうした発見は、作曲家としての視点で、曲を分析していきますと見えてきます。
音楽学の文献に基づいた書物や、通常のピアノレッスンでは、大変少ないと思います。
そんなお話を、6月11日午後1時半から4時半まで、日本ベーゼンドルファー・東京ショールーム
(地下鉄・中野坂上駅徒歩1分)で、「やさしい楽曲分析(アナリーゼ)講座」としていたします。
このほか、「子供の情景」から「トロイメライ」、「知らない国々」。「幻想小曲集」から「夕べに」
「なぜに」。「森の情景」から「森の入り口」「予言の鳥」なども分析いたします。
詳細は、http://www.bosendorfer-jp.com/の Event Calendar→Lesson/Seminar→
「やさしい楽曲分析講座」をご覧ください。
▼▲▽△▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲▽△▼▲
■ブラームスの「4つのピアノ小品」
2006/4/7(金) 午後 4:07アナリーゼ(楽曲分析)
日本ベーゼンドルファー・東京ショールームで、数ヶ月ごとに「アナリーゼ講座」を開いております。
これは、バッハやドビュッシー、ラベルなど特定の作曲家を一人に絞り、その作曲家の代表的な曲を数曲アナリーゼします。
その作曲技法を分析することで全体像に迫るのが狙いです。約3時間の講座です。
これとは別に毎月2回、第1、3水曜日(午前11時半~午後1時)、カワイ青山店で「アナリーゼ講座」をしております。
1時間半の中で、1曲をじっくり分析いたします。
場合によっては1曲に数週間かけることもあります。
4月5日の講座は、ブラームスの最後のピアノ作品「4つのピアノ小曲:Opus119」の第1曲インテルメッツォでした。
ブラームスは肝臓ガンにより63歳で亡くなりましたが、この作品は60歳。
1893年の作です。
わずか67小節の曲。一見単純に見えますが、対位法と不協和音の網が、精緻に張り巡らされています。
それを一つ一つ解きほぐしていきますと、1時間半で冒頭の16小節までしか、たどり着きませんでした。
それでも、ブラームスと向き合う至福の時間を、受講者の方と分かち合いました。
シューマンの未亡人クララはこの曲を「灰色の真珠」と評したそうです。
私はこの主要音形となる下行分散和音が、頬を滴る涙のように思えてなりません。
講座からの帰り途、ハッと思いつきました。
あの音形は、バッハの「インヴェンション」の中で、ブラームスがとりわけ愛していた「ト短調シンフォニア」だ---と。
ともに「短調の3拍子」。曲頭に現れる分散和音が、主和音の第5音から始まり第3音を経て、主音にたどり着く下行形です。
バッハと全く同じ形で、バッハは♭2つのト短調、ブラームスは♯2つのロ短調です。
ブラームスは一生涯、バッハに寄り添うようにして作曲してきました。
(クララの夫「ロベルト・シューマン」でも全く同じことが言えます)。
それが、晩年、巧まずしてブラームスの珠玉の作品に滲み出てきたのです。
▼▲▽△▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲▽△▼▲
アナリーゼ講座第6回は「シューマン」です 傑作(0)
2006/3/20(月)
バッハ、モーツァルト、ドビュッシー、ラヴェル、と続いてきました「アナリーゼ講座」の第6回目は、「シューマン」を取り上げます。
シューマンは、ことしが没後150年。
この講座で「ロマン派」は初めてですが、文学的側面が強調されることの多い「ロマン派」を、
アナリーゼ講座らしく、言葉に囚われることなく、音楽の構造そのものを深く分析したい、と思います。
例えば、「アベッグ(ABEGG)変奏曲」では、“人名のアルファベットABEGGをドイツ音名に移し変えて
作曲した”など、本質とはあまり関係のない表層的な次元のことで、作曲ができているかのように解説
されがちです。
そして、それが誇張され、そのことだけが強調されています。
しかし、この曲を理解するためには、それほど重要な要素ではありません。
作曲に取り掛かる際の単なるヒントとしてABEGGをつかったに過ぎません。
作曲という営みはそれ以降のことです。
講座では、「トロイメライ」を初めとする名曲を取り上げます。
ご自分で演奏される場合でも、アナリーゼから得られるいろいろなヒントが、新しい発見へと導き、
弾く喜びをきっと増すことでしょう。
堅苦しくなく、楽しみながら理解が深まれば、と思っております。
シューマンについては「夢想の中に生きた常人には測り知れない天才作曲家」、「いまひとつ捉えようの
ない模糊とした曲の構造」などの印象をお持ちの方が多い、と思われます。
この講座で、シューマンの本当の世界に一緒に分け入ることが出来れば幸せです。
日時は6月11日(日曜日)、会場は、日本ベーゼンドルファー・東京ショールームです。
詳しい時間などが決まりましたらまた、お知らせいたします。
▼▲▽△▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲▽△▼▲