■《11人の大作曲家「自筆譜」で解明する音楽史》 の読後感を頂きました■
~「三つのワルツ 作品64」は一曲として考えるべき、よ〜く分かりました~
2022年7月20日 中村洋子
★《11人の大作曲家「自筆譜」で解明する音楽史》が6月22日に
発売されましたが、のんびりしている間に、ブログ更新が、1ヵ月
も間が空いてしまいました。
★その間にも、世の中は目まぐるしい勢いで変化しています。
私の本の、若い読者の方から「じっくり拝読させて頂いておりま
す! この時代にこそ、クラシック音楽が必要であると、痛感い
たします」というお便りを頂きました。
★そうですね、困難な時代に、本当に必要なのは、安易に作ら
れた音楽ではないでしょう。
大作曲家が全身全霊を込めて、作曲した作品にこそ、時代に
対峙する力がありますし、私たちは、手抜きすることなく、それを
学ばなければならないと思います。
★長い間ピアノと離れていましたが、最近またピアノのレッスン
を、再開された方からもお便りを頂きました。
偶然、Chopin ショパンの「Valse Op64.No.2 cis-Moll 嬰ハ短調」
を、レッスンで弾いていらっしゃるそうです。
ショパンのワルツ作品64は3曲から成り、作品64-1は有名な
「子犬のワルツ」です。
この本のchapter 3(第3章)は「子犬のワルツ」でしたので、
第3章から読み始められたそうです。
★第3章の小見出しをご紹介します。
・ショパンが、フォーレなどのフランス近代音楽の扉を開く
・ドビュッシーは晩年、ショパンの「ピアノ作品全集」を校訂
・「フーガ」を徹底的に学んだラヴェル
・Chopinショパンの「子犬のワルツ」は晩年の大傑作
・子犬のワルツのある「三つのワルツ作品64」は1曲として考えるべき
・冒頭のスラーの絶妙な位置、どう音楽を始めるかを示唆
・子犬のワルツは「四声体和声」、「符尾」の向きは声部を示す
・「作品62-2」の性格を決定する「gis¹」音は、最後に付け加えられた
・1小節の両端に「gis¹」を配置、堅固は"柱”を構築
・大作曲家の五線紙は、建物の設計図と同じ
・「属音」を積み重ね、クライマックスで「主音」に到達させる設計
・ショパン人気の秘密は、ドミナントから主音に達した時の開放感
・大富豪への贈呈譜でも、彫琢の過程を余すところなく記載
モリアオガエルの卵
★この第3章をじっくりお読みいただけましたら、「子犬のワルツ」
冒頭の、この曲のニックネームの由来ともなった、子犬がコロコ
ロと転げまわるような八分音符の主題と、その主題が再現され
る73小節以降は、旋律は同じであっても、ショパンの胸の中では、
違う声部であったことがお分かりいただけると思います。
声部が違うのであれば、当然音色や曲想も異なります。
★その答えは、
《子犬のワルツは「四声体和声」、「符尾」の向きは声部を示す》
にあります。
大作曲家の「自筆譜」にしばしば見られますように、
大作曲家は、音の高さにかかわらず、ソプラノ声部の符尾は
上向き、アルト声部の符尾は下向きに記譜する例が枚挙に
暇がないからです。
正確に把握するためには、まず「自筆譜」をご覧ください。
すぐに納得できると思います。
★ショパンは、常に「四声体和声」の物差しmeasureに則って
作曲しています。
そしてそれはショパンに限らず、本書で取り上げましたどの大作
曲家の頭の中にも、厳然として存在している基準でもあるのです。
ピアノのレッスンでショパンを弾いていらっしゃる方のお便りは、
《「三つのワルツ 作品64」は一曲として考えるべき 、よ〜く分か
りました。64-2から始めましたが、何年かかるかわかりませんが、
三つのワルツを弾きこなしたいです》と締めくくられていました。
★嬉しく拝読し、この本を書いて「本当によかった!」と思います。
本の校訂は何度も何人かの目を通して、目が痛くなるくらいした
つもりでしたが、ごめんなさい。目次に二カ所ミスがありました。
★訂正 その1
目次 chapter 4
Die Kunst der Fugue のFugueのuを削除して、Fugeに訂正して
ください(Fugaに訂正していただいてもO.K.です)。
本の92ページ(注)で詳しくご説明しましたように、
フーガの技法の初版譜のタイトルは Die Kunst der Fugeと
すべてドイツ語です。
1742年にバッハが清書したフーガの技法の自筆譜に、バッハ
自身による題名の記入はありませんが、表紙にバッハ以外の
人が書いた題名は「Die Kunst der Fuga」となっています。
この「Fuga」はイタリア語またはラテン語です。
★訂正 その2
目次 chapter 11
「Deux arabesques」のarabesques冒頭の小文字aを、大文字Aに
訂正してください。
これにつきましては、5月31日当ブログに詳しく書いてあります
ので、是非お読みください。
https://blog.goo.ne.jp/nybach-yoko/e/ae7bbd01c6a301fbae0a3dab68a15904
小さなスペルにも、これだけ多くの情報が含まれています。
そしてそれは単なる衒学趣味ではなく、
その曲を読み解く大きなヒントとなることもあるのですね。
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