音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■ 生誕150年のアルベニス、その独特な和音の秘密 ■

2010-06-28 00:05:36 | ■私のアナリーゼ講座■
■ 生誕150年のアルベニス、その独特な和音の秘密 ■
                 2010.6・28 中村洋子


★6月も、あと数日です。

梅雨空に、梔子の白い花、甘い芳香が漂ってきます。

南天も星砂のような白い花弁を、地面に散らしています。

雪と、見まがうばかりです。


★太陽の明るい湘南・平塚市で、6月17日、

斎藤明子さんが、私の「夏日星」と「東北への路」を、

演奏されました。


★平塚のフレンチ・レストラン「マリー・ルイーズ」での、

「音と衣と食の和音 ~ Toriades トリアド~ 」という、

楽しい会でした。


★アトリエ「ヌゥイ」の服装デザイナー・島田佳幸さんによる、

紬など、日本の伝統的布を素材としたドレス、

その美しいドレスで、明子さんが10弦ギター、

シェフ・尾鷲幸男さんが、曲に合わせた創作料理、

という見事な “ トリアド 三和音 ”。  

肩肘を張らずに、目と舌と耳を楽しむ、素敵な会でした。


★曲目は、組曲「夏日星」より「スギナのような双子星」、

組曲「東北への路」より、「五月雨の降り残してや光堂」、

バッハやタレガ、アルベニスの曲も演奏されました。


★ことしは、ショパン、シューマンの生誕200年が、

有名ですが、アルベニスも、生誕150年になります。

アルベニスの作品は、親しみやすく、

スペインの香りが、立ってきます。


★ここで、手軽にピアノでスペイン的な和音を、

作ってみましょう。


★分かりやすくするため、「イ短調」で、説明しますと、

右手で、短三和音 ラ ド ミ ( A C E ) を、3回弾きます。

そのとき、左手で、順番に ラ ミ ラ ( A E A ) を、

和音に合わせて、弾いていきます。


★これだけですと、ごく普通の響きですが、

左手2つ目の ミ ( E )に、前打音 レ♯ ( Dis ) を、

付けてみましょう。


★不思議にも、ピアノで弾きましても、ギターのような、

スペインの響きがします。

これは、「前打音の解決音を、その上行に置かない」という

和声の規則に、実は、反しています。

つまり、前打音 レ♯ ( Dis ) の解決音 ミ ( E ) が、

右手三和音 ラ ド ミ のなかに、含まれているから,

規則違反なのです。


★しかし、その規則違反こそが、

エキゾチックで魅力的な響きを、醸し出しています。


★さらに、この解決音 「 ミ 」 を省略して、

左手を、「ラ レ♯、ラ ( A Dis A ) 」とすることも、可能です。

そうしますと、 ラ から レ♯ への音程、増 4度が、

さらに、異国情緒を増した響きとなります。


★アルベニスの実演を収録した蝋管のCDを、聴きますと、

彼は、その増 4度 を強調するために、

2番目の音 「 レ♯ 」 に、アクセントすら付けて弾いています。


★この響きは、スペインに憧れをもった、

ドビュッシーやラヴェルの作品からも、聴くことができます。


★この種の「楽しい和声の種明かし」を、

7月14日の、第6回バッハ平均律・アナリーゼ講座「ニ短調」で、

お話いたします。


                            ( プチトマトの花 )
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■■ お能の関根祥人さんが急逝されました ■■

2010-06-25 16:35:58 | ■伝統芸術、民俗音楽■
■■ お能の関根祥人さんが急逝されました ■■
                 2010・6・25    中村洋子


★訃報:
関根祥人さん50歳=能楽師シテ方観世流
 
 関根祥人さん50歳(せきね・よしと=能楽師シテ方観世流)22日、
急性大動脈解離のため死去。葬儀は7月3日午後1時、
東京都文京区大塚5の40の1の護国寺桂昌殿。
葬儀委員長は観世流宗家・観世清和さん。喪主は妻治美(はるみ)さん。

 同流シテ方の重鎮、関根祥六さんの長男に生まれ、
将来を期待されていた。
1961年初舞台。98年に「道成寺」で芸術祭新人賞。
05年に松尾芸能賞優秀賞受賞。
主演映画に「能楽師」(田中千世子監督)がある。
12日に上海万博の上海芸術祭に招かれ、
「船弁慶」のシテの知盛の霊を舞った。
長男の祥丸さんも能楽師で、親子3代で活躍していた。
             毎日新聞 2010年6月23日 12時56分


★「 関根祥人 」さんは、これからの、

能楽界を背負っていくべき方でした。

お忙し過ぎた、のかもしれません。

心より、お悔やみ申し上げますとともに、

とても、残念です。


★私は、祥人さんの舞台は、それほど拝見していませんが、

お父様である名人、「 関根祥六 」さんのシテを支える

「 後見 」としての、祥人さんに、よく接し、

その後見としての姿に、感動していました。



★祥人さんの、後見としての所作は、

隙がなく、目立たず、無駄がなく、

そして、とても美しいのです。

お能は、指揮者のいないオーケストラですが、

見えない指揮者は、「 後見 」である、

と言っていいのかもしれません。


★演目のお能の、すべてを知り、

シテが演じやすいよう、準備し、送り出す。

シテより先輩が「 後見 」をすることが多い、といわれるのも、

そういう理由から、でしょう。

舞台上でシテが突然、急病などで、演じられなくなった場合、

後見が、直ちに、シテを演じることもあるそうです。


★祥人さんは7月3日、「 観世能楽堂 」での 「 花祥会 」の演目として、

親子三代 「 祥六、祥人、祥丸 」 で、「 石橋 」を演じられる予定でした。

その日が、不幸にして葬儀の日となってしまいました。


★昨年 2009年 10月 31日の、このブログ で書きました

≪ お能 「 定家 」 を、関根祥六のシテで観る ≫

の「 定家 」でも、「 祥人 」さんが、後見をなさっていました。

http://blog.goo.ne.jp/nybach-yoko/e/1627fe81ddfbcd45f637d500a98b744b


★「 祥人 」さんが「 地謡 」として参加されている若き日の姿を、

「 DVD 」で、拝見することができます。

これは、観世寿夫さんの三十三回忌と、雅雪さんの二十三回忌を、

追善して、NHKが企画しました CD+DVD集

≪ 心に伝える花の芸 ~観世銕之丞家 名吟・名演集~ ≫に、

収録されています。


★「 祥人さん 」は、DVD 「 三 山」 に、

「 地謡 」 として、参加されています。


★なお、この「 CD+DVD 」集には、

観世寿夫さんの、歴史的名演といえる

「 熊野 ( ゆや ) 」 が、CDで、収録されています。

シテ: 観世寿夫    ツレ: 浅見真州
ワキ: 宝生弥一  ワキツレ: 宝生閑
笛 : 一噌幸政    小鼓: 北村治  
太鼓: 亀井忠雄  

という、夢のような配役です。

 
★この ≪ 心に伝える花の芸 ~観世銕之丞家 名吟・名演集~ ≫は、

近く発売されますが、詳細は、

≪ 檜書店 ≫ のホームページで、ご覧ください。
http://www.hinoki-shoten.co.jp/
電話 03-3291-2488 ファックス 3295-3554
〒101-0052 東京都千代田区神田小川町2-1


                         ( 露草の花 )
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■私の新しい作品が6月12日、ベルリンで初演されました、再演も!■

2010-06-20 17:03:03 | ■私の作品について■
■私の新しい作品が6月12日、ベルリンで初演されました、再演も!■
                2010.6.20 中村洋子


★本業の作曲が忙しく、ブログの更新が遅くなりました。

6月12日に、私の「チェロとピアノのための新しい作品」

「Einleitung, Thema und Variationen ueber

 ein Japanisches " Erntelied " 」が、ベルリンで初演されました。


★この曲は昨年、チェロのヴォルフガング・ベッチャー

Wolfgang Boettcher 先生と、

お姉さまのピアニスト、ウルズラ・トレーデ=ベッチャー

Ursula Trede-Boettcher 先生のために、作曲いたしました。

20分以上の長い作品で、技巧的に、かなり高度なものが要求され、

お二人は、半年にわたり、折りにふれて、練習を重ねられました。


★題を、直訳しますと、

「日本の収穫の歌による、序奏とテーマ、変奏 」と、なります。


★コンサート直後に届きましたファックスで、ベッチャー先生は、

「 Yesterday we had a very successfull concert ,

packed full with very good audience , and everybody liked

your music. It was a good - nearly perfect - performance.

We plan to play your " Erntelied "-Variation

in other concerts. 」 と、おっしゃってくださいました。


★「ほとんど、完璧な演奏でした」と、書かれており、

さぞ、いい演奏だったことでしょう。


★以下が PROGRAMM です

■12. Juni 2010

▼CARL PHILIPP EMANUEL BACH
    Sonate D-dur Wtg 137 (1746)

▼LUDWIG VAN BEETHOVEN
7 Variationen über “Bei Männern, welche Liebe fühlen”
  aus Mozarts “Zauberflöte”. (1801)

▼YOKO NAKAMURA
 Einleitung,Thema und Variationen über ein japanisches     
 „Erntelied“.  ( 2009 )
   für Ursula Trede-Boettcher und Wolfgang Boettcher          
      komponiert.       Uraufführung.

PAUSE

▼ROBERT SCHUMANN
     Adagio und Allegro op.70 (1849)

▼DIMITRI SCHOSTAKOWITSCH
           Sonate op.40 (1934)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

▼カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ 
   ≪ ソナタニ長調 ≫ (1746)

▼ベートーヴェン
 ≪「魔笛」の「恋を知るほどの殿方には」の主題による
                7つの変奏曲 ≫ ( 1801 )

▼中村洋子
 ≪ 日本の収穫の歌による、序奏とテーマ、変奏 ≫
                     ( 2009 初演 )

               [ 休憩 ]

▼ロベルト・シューマン
 ≪ アダージオとアレグロ ≫ Op.70  ( 1849 )

▼ディミトリ・ショスタコ―ヴィッチ
 ≪ ソナタ ≫ Op.40   ( 1934 )
-----------------------------

★このプログラムを拝見して、感じましたのは、

日本のリサイタルとは、比べようがないほどの、

質の高い演奏曲目、内容の濃さです。


★ロベルト・シューマンの「アダージオとアレグロ」については、

かつて、ベッチャー先生から、興味深いお話を伺いました。

作曲家のクルタークが、ベッチャー先生のお宅を訪問した際、

次のようなことを、おっしゃったそうです。


★≪ このシューマンの曲のテーマには、

モーツァルト「魔笛」のなかの、タミーノのアリア

「 何と美しい絵姿 」の引用が、聴き取れる ≫


★この話に加え、ベッチャー先生は、

≪ この曲の冒頭は、4分の4拍子で始まるが、

2分の2拍子のように、弾くといいでしょう。

そうすると、シューマンの

「 Langsam, mit innigem Ausdruck

親密に、愛情を込めてゆっくり 」という指定が、生きてきます。

また、第 1楽章 86小節目の、チェロによる 

G、 As、B の、4分音符で始まる旋律を弾くとき、

「 タミーノが、パミーナの絵姿をウットリと見ている

光景を、想像しながら弾いている 」 ≫と話されていました。


★今回の「 プログラム 」は、

ベートーヴェンとシューマンとを、陰で、

モーツァルトがつないでいる、とも言えそうです。


★大変うれしいことに、ベッチャー先生は、

この新作の 「 再演 」 を、計画してくださっています。

日本では、せっかく書きましても、

“ 初演しっぱなし ”ということが多いのです。


★何度も再演してこそ、その曲が、演奏家にとっても、

はっきりと見えてくる、ということは、言うまでもありません。

「 作品を育てていこう 」 という、

ベッチャー先生の姿勢を、尊敬いたします。
 


                        ( 睡蓮 )
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■第 6回「バッハ 平均律クラヴィーア曲集 アナリーゼ講座」のご案内■

2010-06-10 00:02:43 | ■私のアナリーゼ講座■
■第 6回「バッハ 平均律クラヴィーア曲集 アナリーゼ講座」のご案内■
                 2010.6.10  中村洋子


★第 6回  第 1巻 第 6番 ニ短調  前奏曲とフーガ
≪「バッハ・平均律」の源である「J.C.F.フィッシャー」の鍵盤作品が、
      ベートーヴェン・ピアノソナタに、及ぼした影響≫

■日時:2010年 7月 14日(水) 午前 10時 ~ 12時 30分

■会場:カワイ表参道 2F コンサートサロン・パウゼ

■会費:3,000円 ( 要予約 )  Tel.03-3409-1958 


★バッハ「平均律クラヴィーア曲集」のアイデアや形式は、

何もないところから、突然、

打ち上げ花火のように、出てきたのではありません。


★バッハ (1685~1750 ) より、少し前に生まれた

「ヨハン・カスパール・フェルディナンド・フィッシャー」

( 生年は二説あり1656 or 1670ころ~1746 ) という作曲家が、

「アリアドネ・ムジカ Ariadone Musica」という曲集を

出版しています。


★「平均律クラヴィーア曲集」とアイデア、様式、

さらには主題まで酷似した曲集です。

その相似点を、ただ指摘するだけではなく、

バッハがフィッシャーから、何を学び、

それをどう発展させ、その結果として、

自分の「 プレリュード&フーガ 」 を完成させたか、

詳しくご説明いたします。


★フィッシャーからバッハへの流れを理解しますと、

ベートーヴェンが、バッハのみならず、

フィッシャーをも、実に深く研究していたことが、

分かってきます。


★ピアノソナタ 21番 「 ワルトシュタイン 」 Op.53や、

15番 「 パストラーレ 」 Op.28 などに、

どのように影響を及ぼしているか、

さらに、それを知ることにより、

どのような演奏をベートーヴェンが望んでいたかさえが、

自ずと分かり、演奏するうえで、大きなヒントとなります。


★ワルトシュタインの冒頭は、

夜間工事で、アスファルトを剥がす掘削機のように、

鍵盤を叩きつけるべきものでは、ないのです。


★平均律クラヴィーア曲集 1巻 6番の,

プレリュードに含まれる保続音や、

フーガに使われている、バッハでしか書けない、

特徴的な和音についても、

分かりやすく、お話いたします。


■ 今後のスケジュール

第 7回 9月 9日 (木) 第 7番 変ホ長調 前奏曲とフーガ 
    午前10時~12時30分 
    会費:3,000円

■カワイ表参道
 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5-1 
 Tel.03-3409-1958 
 http://shop.kawai.co.jp/omotesando/
 omotesando@music.kawai.co.jp



                         ( 野草 )
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■平均律 1巻 5番の講座と、鳥が羽ばたくようなシューマンの自筆譜■

2010-06-08 18:25:06 | ■私のアナリーゼ講座■
■平均律 1巻 5番の講座と、鳥が羽ばたくようなシューマンの自筆譜■
                 2010.6・8 中村洋子


★200年前の本日、「 ロベルト・シューマン 」( 1810~1856 ) が、

ドイツ東部のザクセン王国、ツヴィッカウで、生まれました。

「 ショパン 」と同じ年です。

日本では、ショパンのほうが、圧倒的に人気があります。

ショパンの人気は、彼の真価を理解したうえでのそれではなく、

耳に馴染みやすく、心地よいメロディーを、ムード音楽のように

聴くことができるため、という要素が強いようです。


★ショパンについて、彼の真価を理解したうえで、

それを楽しむ、という聴き方でしたら、

日本では、それほど人気は高くなく、

シューマンと同程度の人気しかないであろう、と思われます。


★二人の天才の作品は、とても深い内容で、

それ弾いたり、聴いたりして、真髄に迫るには、

彼らの作品の源泉とした「 バッハ 」の勉強が、

不可欠です。


★特に、本日の講座で取り上げました、シューマン「 予言の鳥 」は、

平均律クラヴィーア曲集 1巻 5番の「 プレリュード&フーガ 」を、

「 土壌 」として、作曲されています。


★ 5番のフーガの「 付点 」の処理の仕方が、正しくできますと、

曇天が、快晴になるように、

シューマンがとても、弾きやすくなります。


★≪ 付点のリズム ≫を、ただ単に、「 慣習だから 」として、

「 フランス風序曲 」の様式で、弾くようにと、

お習いになった方が、多いようですが、

これこれの方法でしか、弾いてはならない、

ということは、決してありません。


★名ピアニストたちが、それぞれの解釈で、どのように、

リズムを選択しているか、ご説明いたしました。

例えば、アンドラーシュ・シフは、

平均律クラヴィーア曲集 1巻 5番のフーガの演奏で、

付点を、鋭いリズムで刻んでいるところと、

楽譜の音価通りのところと、二種類に弾き分けています。

なぜ、彼がそのように弾いているのか、ご説明しました。


★平均律クラヴィーア曲集「 ヘンレ版 Henle版 」の

新版 ( 楽譜番号14 ) は、

このシフが、フィンガリングを、書き入れています。

彼が楽譜に書いた「 演奏ノート 」の日付は、

2007年春と、記されています。

ご興味のある方は、この新版を見ながら、

シフのCDをお聴きになりますと、

そのフィンガリング一つからでも、彼の解釈が読みとれます。


★余談ですが、私がこのブログ ( 2010.1.24 ) で、

指摘しました http://blog.goo.ne.jp/nybach-yoko/d/20100124 、

1巻 1番プレリュードの、「 34小節目 」のバス「 C 」のタイについて、

この新版では、「 括弧 」で、くくっています。

( タイを削除せずに、括弧にしているのは、

完全には非を認めたくない、ということでしょう)

旧版は、堂々と「タイ」を付けていました。

バッハの自筆譜には、「タイ」は、記入されていません。


★しかし、残念なことに、2番のフーガ、29小節目バス「 C 」の、

「 タイ 」は、旧版どおり、そのまま残っています。

バッハ自筆譜には、ここにも「 タイ 」はありません。


★ここに「 タイ 」を付けなかったことこそが、

バッハが「 天才 」であることを、証明しているのです。


★トン・コープマンが、著書「 トン・コープマンのバロック音楽講義 」

で、以下のような趣旨のことを、書いています。

「 原典版 」で、校訂者が、バッハの自筆譜に修正を加えているのは、

( 質の低い教師が )、宿題(=バッハという天才の作品の真価を理解せずに)に、

( ある部分が、常識や規則通りではないという理由で ) 赤ペンで、

書き直しているような、印象を受ける。

間違っているように見えるものが、間違いでないことも多い。


★この「 5番のフーガ 」が、弾けてこそ、

シューマンの「 予言の鳥 」を、真に解釈できると思いますが、

バッハの「 土台 」の上に、シューマンが、

どのような幻想を、羽ばたかせたか・・・

一例として、自筆譜から分かった点をご紹介します。


★第 1部の頂点である「 13小節目 」の1拍目 右手部分 ( H C Es A ) は、

通常の楽譜であれば、符尾を下向きに書かれますが、シューマンは、

不自然に、全部上向きにしています。

その結果、この4音にかかるスラーが、符頭より下に記されます。

一方、2拍目のスラーは、常識的に、符頭の上に記載されています。

同様に、3拍目は符頭より下。

4拍目は、符頭より上、続く14小節の 1拍目が上、2拍目が下、

と交互に、続きます。


★この部分は、楽譜の中央に位置し、シューマンの美しい自筆譜で、

見ますと、あたかも、スラーが羽ばたいている鳥の羽根のように見えます。


★シューマンの楽譜は、右手と左手の部分が、並行して進行するように、

几帳面に、書かれています。

しかし、「11小節目」だけは、それが大きく乱れています。

右手部分が、大きく左側に寄り過ぎており、

左手の下声の流れと、一致しません。

この乱れは一見、奇妙ですが、それは、

頂点である「13小節目」に向けて、駈けあがって行く前の、

シューマンのはやる心が、期せずして、譜面に現れた、と言えそうです。


★この「 11小節目 」の部分については、大ピアニスト、

アルトゥール・ルービンシュタインの、

アッチェレランドが掛った演奏が、飛び切り素晴らしい、と思います。

それは、シューマンの意図を、ルービンシュタインが、

正しく汲み取っているからでしょう。


★次回のアナリーゼ講座は、平均律クラヴィーア曲集1巻6番、

7月14日 ( 水 )です。

                           ( ユキノシタ )
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■平均律クラヴィーア曲集 1巻 5番フーガの、付点リズムの扱い方■

2010-06-07 02:10:37 | ■私のアナリーゼ講座■
■平均律クラヴィーア曲集 1巻 5番フーガの、符点リズムの扱い方■
                    2010・6・7 中村洋子


★カワイ表参道での「第5回平均律アナリーゼ講座」は、

明 8日となりました。


★「 1巻 5番」の「 フーガ 」を弾くうえで、

皆さまが、最も気にかけるのは、

「付点 8分音符と 16分音符」のコンビについて、

「 16分音符」を、「 32分音符 」のように、

鋭くリズムを刻んで、演奏すべきかどうか、

という点であると、思います。


★上記の演奏は、このフーガが、

「フランス風序曲の様式に則って、作曲されている」

という解釈に基づき、ヴァンダ・ランドフスカが、

チェンバロで、「 32分音符 」のように録音したため、

1950年代から、広く知れ渡りました。


★この「付点 8分音符と 16分音符」の扱い方を、

12人のピアニスト、チェンバリストの演奏で、

比較検討してみました。


★ランドフスカと、ほぼ同じリズムの取り方は、

グスタフ・レオンハルト ( 1968年と1973年の録音 )。


★一方、バッハの記譜通りのリズムでの演奏は、

エドウィン・フィッシャー ( 1933~34年録音 )

ワルター・ギーゼキング ( 1950 )

スヴャトスラフ・リヒテル ( 1970 )

フリードリッヒ・グルダ ( 1972 )

ヴィルヘルム・ケンプ ( 1975 )

ミエッチスラフ・ホルショフスキー ( 1979~80 )

マルリッツィオ・ポリーニ ( 2008 )


★両者の折衷派は、

主題頭部の「32分音符」の対主題として、付点リズムを使う場合、

16分音符をやや鋭く、32分音符に近づけています。

それ以外の、例えば、16分音符のモティーフに、

付随させて使う場合は、バッハの記譜通りのリズムとしています。

そのような演奏は、

アンドラーシュ・シフ ( 1984 )

トン・コープマン ( 1982 )

アンジェラ・ヒューイット ( 1997 )です。


★この三通りに、優劣をつけるのではなく、

どのような考え方から、その奏法が導き出されたか、

それを、ご自身の演奏に生かす方法を、

講座で、お話したいと、思います。


★また、「 5番プレリュード 」 8、9小節目のバスに現れる、

「Fis」の保続音と、16、17、18小節に現れる

「 H 」の保続音は、演奏中に見落とされがちですが、

この曲の要となる、重要な音です。


★この二つの音が、バッハの序文の意味を解く、

カギともなりますので、

詳しく、お話したいと、思います。


                              ( カンゾウ )
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■シューマンは「予言の鳥」を、どのように演奏しながら作曲したか?■

2010-06-05 00:59:00 | ■私のアナリーゼ講座■
■シューマンは「予言の鳥」を、どのように演奏しながら作曲したか?■
               2010・6・5  中村洋子


★6月8日 (火) の、第5回カワイ表参道「平均律アナリーゼ講座」のため、

シューマンの「予言の鳥」を、直筆譜でじっくり勉強しています。

シューマンがどれだけ、バッハを深く学び、その結果として、

「予言の鳥」という傑作に、結実していったか、

それが、直筆譜を読み込むことで、

改めて確認でき、感動しています。


★シューマン ( 1810年6月8日~1856年7月29日 ) の、

ピアノ独奏曲のうち、傑作と呼ばれる作品群が、

その長くもない生涯のうちの、初期から中期の時期に、

集中していることから、

一部のピアニストの方々は、シューマンの後期の作品は、

初期中期と比べ、 " 天才的爆発力に欠けている "  とか、

" 創造力が枯渇していった " などと、

思い込んでいるようです。


★そのような誤解は、ピアノ作品のみに目を向け、

シューマンの他の作品への、勉強が欠けているからかもしれません。

例えば、クラシック音楽史上の最高傑作の一つといえる、晩年の

「チェロ・コンチェルト」 OP.129 (1850年作曲、54年出版)は、

「予言の鳥」のすこし後に書かれ、両者には、

深い相関関係が、あります。


★(余談ですが、1845年に作曲したピアノ独奏のための

「4つのフーガ」 Op. 72 =出版は1850年= は、

バッハとみまごうばかりのフーガ集で、

以前、G.フォーレ校訂の素晴らしい楽譜が、

デュラン社から、出版されていました)


★ピアノ作品として、「4つのフーガ」の次に書かれたのが、

「森の情景」 Op.82 (1848~49に作曲、出版は1850年)で、

その第 7番が「予言の鳥」です。


★この両曲集を、合わせて見ていくことにより、

バッハをどのように、吸収していったか、

それが、より確実に分かります。

この点については、講座で詳しくお話いたします。


★シューマンは、生前に多くの作品が出版されています。

バッハは、数少ない作品しか出版されていません。

シューマンの直筆譜を見る場合、その点を考慮する必要があります。

バッハは、出版を想定していないため、

直筆譜は、 実質的に、“ 出版して公表した楽譜 ”と、
  
見る必要が、あります。


★ショパンやシューマンは、確実に出版されることが、

分かっていたため、その直筆譜によって演奏されることは、

想定していません。


★このため、直筆譜は ≪ より本音に近い記譜 ≫が、なされています。

この事情は、ベートーヴェンも同じです。

それにより、彼らがどのように、演奏しながら作曲していったか、

あるいは、どのように、演奏してほしいと、思っていたか、

それが、よく分かってきます。


★一番、顕著な例は、スラーの位置です。

現在の実用譜では、スラーは、必ず、符頭から符頭へと、

掛けられていますが、シューマンやショパンは、必ずしも、

そのようには、スラーを付けていません。

決して、彼らが“投げやりな ” 書き方をした訳ではありません。

きちんと符頭から始めたり、終わったりしているものと、

そうではなく、意図的に、符頭からずらした位置に、

置いているものが、併存しています。


★その意味を読み込むためには、バッハを勉強し、それなりに、

音楽的力量がありませんと、難しいかもしれません。

( 「 ナショナル・エディション 」 と喧伝されている

「 エキエル校訂のショパンの楽譜 」 は、ショパンの意図を、

正しく読み込んでいないところが、多々見受けられます。

この点につきましては、以前のこのブログで、

実例を挙げておきました。)


★参考までに「 予言の鳥 」で、その一例を挙げます。

第 1小節目 4拍目の、上声のスラーは、

前打音 「 G 」 の少し前から始まり、

終わりは、4拍目の終わりの 「 Es 」では、

明確に閉じずに、空中にたなびいて、

あたかも舞っているかように、終わることがなく、

その次の小節線の近くまで、たなびいています。


★シューマンの記載したスラー通りに、演奏しますと、

大変に弾きやすく、納得させられます。

スラーの位置に限らず、このような実用譜との相違点は、

ほとんど、毎小節に見られます。

シューマンが書いたとおりに、虚心に弾いてみますと、

誰のレッスンを、受けることもなく、

「 素晴らしいシューマン 」 が、自然に弾けます。


★符尾の書き方も、バッハの筆跡と、とてもよく似ています。

それは、シューマンが、バッハの直筆譜をも研究したのか、

あるいは、天才同士が、同じような対位法による、

音の構築法をとりますと、記譜まで似てくるのか・・・、

不思議な、気持ちがします。


★平均律クラヴィーア曲集を、学ぶことにより、

シューマンが、より身近になる、ということを、

講座でお伝えしたいと、思います。

                ( シューマンのお誕生日を祝して:ピアノのケーキ )
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲
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■私の作品 「 無伴奏チェロ組曲第 1番 」の楽譜が、日本に到着■

2010-06-03 01:04:17 | ■私の作品について■

■私の作品 「 無伴奏チェロ組曲第 1番 」の楽譜が、日本に到着■
                   2010・6・3    中村洋子




★私の作品「 無伴奏チェロ組曲第 1番 」の楽譜 が、

ベルリンの歴史ある出版社 Ries & Erler Berlin

リース&エアラー社から、出版され、

このほど、日本にも入荷しました。

同社から、日本人作曲家の作品が出版されるのは初めてです。


★今春に出版されていましたが、アイスランドでの火山噴火の影響で、

日本への到着が、遅れに遅れていました。

やっと、日本で入手できることになりました。


★2007年に作曲された作品で、日本の初春から初夏までの自然を、

心の中にイメージして、作曲いたしました。

私の中の日本を、歌い上げたものではありますが、

厳格に、モティーフを展開していく、という手法で作曲しました。

バッハのチェロ組曲と同じ、六曲から成っています。

バッハを吸収し、その足元にでも近付きたい、

という願いから、この構成をとりました。


★一見、日本を売り物とした「情緒的」な作品と、

受け取られるかもしれませんが、そうではありません。

骨格は、あくまでヨーロッパ・クラシック音楽そのものです。

日本伝統音楽の情緒的な世界とは、無縁の曲です。

それが、ドイツの音楽愛好家の皆さまに広く愛され、

受け入れられた理由である、と思います。

この出版も、そのような皆さまの声に押されて、実現しました。


★この作品を献呈しました、ドイツの著名なチェリスト、

ヴォルフガング・ベッチャー先生が、校訂してくださいました。

また、丁寧で詳細なフィンガリングとボーイング

Spieltechn.Einrichtung  も先生によって、付けられています。

演奏するうえで、大変に弾きやすく、また、勉強になると思います。


★例えば、私が書きましたスラーによるフレージングを残しつつ、

先生の校訂では、そのスラーを、あえて途中で、

分割している個所などが、あります。

作曲家が書いたスラーのフレージングは、

"そのように聴こえるように演奏してほしい" 

という、意味です。

しかし、それを、どのように演奏するかは、別のことです。

その手法が、細部にわたり、懇切丁寧に記載されています。


★私の願いは、この楽譜を見ながら、

先生が演奏されたこの曲のCDを、聴いてほしい、

ということです。

特に、ピアニストに、お勧めしたいのです。

ピアニストが、常に頭を悩ましているフレーズの作り方、

アーティキュレーション、ブレスなどが、

手に取るように、分かります。

ピアノ作品は、和音の手助けがあることもあり、

単旋律のみが続くことは、稀で、

旋律を極限まで問い詰めて、演奏することが少ないからです。


★この作品は、私の作品ではありますが、

先生の演奏の集大成である、ということも、

この楽譜から、読みとることができます。


★表紙のデザインを、Ries & Erler Berlin リース&エアラー社

に任せきりにしていましたので、

出来上がった表紙を見て、びっくりでした。

各曲の題に付けた漢字が、散りばめられ、踊っていました。

例えば:山笑う、惜春、五月雨、青田波・・・です。

しかし、漢字をデザインとして見るドイツ人には、

とてもセンスがよい表紙と、評判が良いそうです。


★Ries & Erler Berlin リース&エアラー社は、1881年に、

フランツ・リースとヘルマン・エアラーにより、

設立された楽譜出版社です。

フランツ・リースは、音楽史で有名な、リース一族の出身で、

伯父のフェルディナント・リース Ferdinand Ries(1784~1838)は、

ベートーヴェンの弟子で、ピアニスト、作曲家、

そして、ベートーヴェンの写譜や、秘書の仕事もしたことで、有名です。


■この楽譜と、ベッチャー先生が演奏の「無伴奏チェロ組曲1番」などが

収録されたCD 「 ヴォルフガング・ベッチャー 日本を弾く 」 などは、

・輸入楽譜の専門店 「 アカデミア・ミュージック 」 https://www.academia-music.com/ 、

・「 カワイ・表参道 」 http://shop.kawai.co.jp/omotesando/

で、購入できます。
.
                             ( 楽譜の表紙 )
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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■西洋音楽の「調性」を規定する「プレリュード」様式■

2010-06-02 00:58:18 | ■私の作品について■
■西洋音楽の「調性」を規定する「プレリュード」様式■
               2010.6.2  中村洋子


★ギタリスト・斎藤明子さんが6日、「さいたま市民会館うらわ」で、

私の「無伴奏チェロ組曲第3番」を、10弦ギターで、

日本初演されますが、本日は、そのリハーサルでした。


★斎藤さんは、作曲しました私が予期しなかった、

別の魅力を曲から引き出すことに成功し、それは見事な演奏でした。

どういうところが素晴らしかったのか、すこし、分析いたします。


★今回、斎藤さんは、チェロ組曲の原曲を一音も変えることなく、

原譜のまま、10弦ギターで演奏することができました。

10弦ギターは、通常の6弦の下に、レ、ド、シ、ラと、

2度ずつ下げた弦が、4本張ってあります。

ギターという楽器は、記音 ( 音符に示された音 )より、

実際は1オクターブ低い音が、鳴ります。

その結果、8弦目の「ド」は、チェロの最低音の「ド」と、

全く、同じ音になります。


★それゆえ、斎藤さんの10弦ギターは、

チェロの楽譜をそのまま、演奏することができるのです。

4月に、斎藤さんが、バッハの「無伴奏チェロ組曲1,2,3番」を、

演奏された際も、チェロの原譜通りに、演奏しました。

(6弦ギターでは、移調しなければ演奏が不可能です。)


★斎藤さんのリハーサルで、感動しましたのは、

私の「チェロ組曲3番」のプレリュードの冒頭16小節で、

低弦の「ド」を、消すことなく響かせ、

まるで、オルゲルプンクト ( 保続音 )が流れるように、

音楽を形作っていた、ということです。


★それは、「プレリュード様式」と呼ぶべき世界を、

引き出していた、ということでもあるのです。

ベッチャー先生が、チェロで示された「グランディオーソ」、つまり、

堂々とした、コンチェルトのような大きな世界とは、また別な世界です。


★「プレリュード」という語の訳として、日本語では、

「前奏曲」が当てられます。

しかし、「プレリュード」という語には、文字通りプレリュードのほかに、

ハルぺジオ、タスタードなどの概念が、含まれています。

プレリュード=Praeludium の原義は、

「リュートを弾く前に調弦する」、という意味です。

ハルペジオ= Harpeggio は、「ハープのように」という意味で、

タスターダ=Tastadaは、「鍵盤楽器のように」が、直訳でしょう。


★バッハが、「平均律クラヴィーア曲集」で、

「プレリュード」と表現した曲には、

以上のような、たくさんの要素が込められているのです。

日本語の「前奏」という言葉の意味に、引きずられると、

曲の解釈を、誤る恐れが大きいのです。


★また、「プレリュード」の役割は、例えば、ある曲が「ハ長調」ですと、

聴く人に、「ハ長調」であることを、強く印象付けることです。

そのための手段として、主音である「ド」の保続音を、

多用することがあります。

そのよい例が、バッハの「平均律クラヴィーア曲集」

第2巻1番の、「プレリュード」です。

冒頭に、バス「ド」の保続音が、流れます。


★20世紀の作曲家・ヒンデミットの「中心音システム」は、

不協和な音をたくさん使っても、中心音である、例えば「ド」の

使用頻度が多ければ、人間の耳は、「ド」を中心とする調、

つまり「ハ長調」や「ハ短調」をイメージしてしまい、

調性から完全に逃れることはできない、という認識を、

元にしているようです。


★完全に「調」から逃れるためには、

シェーンベルクの「12音技法」による以外は、ありません。

「ある音」を使った後、オクターブの中の12の音のうちの、

残りの11個の音を、すべて使い切るまでは、

「その音」を使わない、という規則で、作曲する技法です。

ここまで、厳格にしないと、「調性」という強力な「くびき」からは、

逃れようがない、ということです。


★シェーンベルクは、その技法で、豊かな音楽を作りましたが、

彼以後の「現代音楽」は、荒涼として、殺伐とした、

暖かみに欠ける作品が、多いようです。

西洋音楽の構造そのものは、「調性」をもとに、構築し、

発展させていったものです。

私は、調性の魅力を、自分の曲に、

取り込んでいきたいと、思っております。


★斎藤さんの演奏は、チェロ組曲の「プレリュード」で、

オルゲルプンクトを、見事に表現し、その曲の性格と、

「プレリュード」様式を、際立たせることに成功していました。

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■「さいたま ギターコンサートを聴く会」
■2010年6月6日 ( 日 ) 午後2時

■さいたま市民会館うらわ 8F コンサート室
 JR浦和駅 西口から徒歩7分
■自由席:1900円
■連絡先 TEL・FAX 048-286-0365 ( 上原 )
     メール: yjugumus@tcat.ne.jp
     http://tcat.easymyweb.jp/member/guitarkikukai/


                                ( 野の花 )
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲
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