音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■インヴェンションの、心に刻み込む 「 暗譜 」 方法■

2013-10-27 22:35:14 | ■私のアナリーゼ講座■

■インヴェンションの、心に刻み込む 「 暗譜 」 方法■
KAWAI 名古屋 「 中村洋子・第12回 インヴェンション・アナリーゼ講座」
                    
             2013.10.27   中村洋子

 


★憂愁の霧に閉ざされたような 「 11番 g-Moll 」。

それに続く
「 12番 Invention  A-Dur 」 は、

Invention も sinfonia も、
真夏の太陽のように明るく、

力の漲った曲です。

sinfonia 12番 の 9 ~ 12 小節目や、

20 ~ 23 小節目のバスは、あたかも、

次の時代の様式を先取りしたような、音型です。


★類似した音型の曲は、Telemann テーレマン (1681~1767) の

「 Leichte Fugen mit kleinen Stücken 簡単なフーガと小品 」

にも、見られます。

これを、インヴェンションと併用しますと、

Bachを、より深く理解することができます。

比較することで、Bach の素晴らしさが、

客観的に、一層良く分かるのです。


 

 

★この 12番を基に、もう一度、「 暗譜の方法 」 を、

おさらいいたします。

漫然と、反復練習して ≪ 曖昧に指先で覚える ≫ のではなく、

≪ 心と頭に、インヴェンションをゆるぎなく定着させる暗譜 ≫ が、

必要です。


★私が考案し、実践してきました方法を、

具体的に、詳しくお教えいたします。

その際に重要なことは、≪ Fingering ≫ の役割です。

「 頭に焼き付ける 」 ため、

≪ Fingering ≫ に、どのような機能をもたせるか、

≪ Fingering ≫ を、どのように活用するか、

ということです


★Edwin Fischer エドウィン・フィッシャー(1886~1960)の、

Bach  平均律クラヴィーア曲集 1巻、2巻の全曲録音は、

Europeでは、

Pablo Casals パブロ・カザルス(1876~1973) の、

Bach 無伴奏チェロ組曲全6曲の録音と同様、

「 聖書 」 と、されています。

その Edwin Fischer 校訂版の ≪ Fingering ≫ を学べば、

曲の構造がすべて、解き明かされるのです。

決して 「 easy to play 」 を示すものでは、ありません。






≪ Fingering ≫ には、

1)  構造を示すもの、

2)「 easy to play 」

3) 実際に、演奏するときに使う fingering

が、あります。

この三種を、暗譜にどう組み合わせるか、ということです。


★すなわち、暗譜の方法は、

曲を真に理解し、演奏する方法と、

完全に、重なるのです。

決して、「 暗記 」 の方法ではありません。


★日本で最近、出版された 「 Invention」 の楽譜を見ましたが、

 fingering や発想記号、ディナミークなどが、たくさんの書き込まれ、

 一見、とても親切そうな楽譜です。

 しかし、驚愕しました。

 冒頭から途中までが、Edwin Fischer 校訂版の、

 丸写しだったのです。

 Edwin Fischer 校訂版が、現在、入手がかなり困難であることから、

 気がつく方は、少ないかもしれません。

 




★しかし、さらに驚くべきことに、

 それに続く部分は、チェンバロ演奏の発想による fingering を用いた、

 他のエディションの、模倣でした。

 すなわち、ピアノ演奏を想定した Edwin Fischer の fingering と、

 根本的に、齟齬があるのです。

 一曲のなかで、二つの発想を同居させることは、

ありえません。

これでは、まともな演奏は不可能です。
 


これは、Edwin Fischer の Bach を理解していないがため、

 このような “ 竹に木を継いだ ” ような、

 不可思議な、乱暴な、辻褄の合わない 「 校訂 」 ができるのです。

 

★こうした 「 校訂版 」 に、惑わされないようにするのが大切です。

 そのためには、皆さまご自身で、Bach を理解する力を、

 養わなければなりません。

 アナリーゼする力を養うことで、良い 「 校訂版 」 を、

 自分で、選ぶことができ、

 完璧な暗譜も、できるようになるのです。

 

★そのような ≪ 暗譜 ≫ ができますと、「 本物 」 の音楽と、

そうではない音楽とを、判断する能力が、自然に身に付きます。


 


★ Bach の最高の演奏家であった Albert Schweitzer 

アルベルト・シュヴァイツァーは、著書で、

次のように書いています。

≪ 平均的な音楽家が、もし、本物の芸術と偽物を、

厳しく見分ける能力をもっているとすると、それは、

まさに Bach のインヴェンションのお陰である、といえる。

インヴェンションを、練習したことのある子供は、

ピアノ習得のための、機械的な練習だったとしても、

多声部の作曲法を、既に見につけたといえる。

 

★それは生涯、消えない。

それを習得した子供は、どんな音楽に接しても、

本能的に、その音楽の中で、インヴェンションと同じように、

多声部が、巧みに見事に、織り込まれているかどうか、

探究するようになる。

多声部が紡がれていない部分は、貧困な音楽であると、

感じるのである ≫


インヴェンションを、生涯にわたって忘れないためにも、

「 本当の暗譜 」 が必要なのです。




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■日時: 2013年10月30日 10:00~12:30

■会場: KAWAI 名古屋 2F コンサートサロン 「 ブーレ 」

■予約: 052-962-3939

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■ 講師 :   作曲家  中村 洋子  Yoko Nakamura

 東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。
日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。

2003 ~ 05年:アリオン音楽財団 ≪東京の夏音楽祭≫で新作を発表。

07年:自作品 「 Suite Nr.1 für Violoncello
        無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 などをチェロの巨匠
        Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー氏が演奏した
     CD 『 W.Boettcher Plays JAPAN
                         ヴォルフガング・ベッチャー日本を弾く 』 を発表。

08年:CD 『 龍笛 & ピアノのためのデュオ 』
    CD 『 星の林に月の船 』 ( ソプラノとギター ) を発表。

08~09年: 「 Open seminar on Bach Inventionen und Sinfonien
                  Analysis  インヴェンション・アナリーゼ講座 」
                    全 15回を、 KAWAI 表参道で開催。

09年: 「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

        「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲第 3番 」が、
           W.Boettcher 氏により、Mannheim ドイツ・マンハイム で、
           初演される。

10~12年: 「 Open seminar on Bach Wohltemperirte Clavier Ⅰ
                  Analysis 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 アナリーゼ講座 」
                全 24回を、 KAWAI 表参道で開催。

10年: CD 『 Suite Nr.3 & 2 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 3番、2番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。

     「 Regenbogen-Cellotrios  虹のチェロ三重奏曲集 」 を、
             ドイツ・ドルトムントのハウケハック社
      Musikverlag Hauke Hack Dortmund から出版。

11年: 「 10 Duette für 2 Violoncelli
                         チェロ二重奏のための 10の曲集 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

12年: 「 Zehn Phantasien für Celloquartett (Band 1,Nr.1-5)
    チェロ四重奏のための 10のファンタジー (第 1巻、1~5番)」を、
      Musikverlag Hauke Hack  Dortmund 社から出版。

13年: CD 『 Suite Nr.4 & 5 & 6 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 4、5、6番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。

         「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

   スイス、ドイツ、トルコ、フランス、チリ、イタリアの音楽祭で、
    自作品が演奏される。

★上記の楽譜とCDは、
「 カワイ・表参道 」  http://shop.kawai.co.jp/omotesando/
「アカデミア・ミュージック 」 
https://www.academia-music.com/ で、販売中。







※copyright © Yoko Nakamura    
             All Rights Reserved
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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■ミケランジェロ展、「階段の聖母」の緊密な構成、動物的母性がにじみ出る■

2013-10-20 01:41:20 | ■楽しいやら、悲しいやら色々なお話■

■ミケランジェロ展、「階段の聖母」の緊密な構成、動物的母性がにじみ出る■
               2013.10.20 中村洋子



★紅葉の季節となりました。

このほど 「 Ries&Erler Berlin リース&エアラー社 ベルリン 」 から、

出版されました私の作品 「 Suite für Violoncello solo Nr.3

無伴奏チェロ組曲第 3番 」 の最終楽章タイトルは、

「 錦秋 」 です。

http://shop.rieserler.de/product_info.php?

info=2840&XTCsid=24e91095ba1fabd23887c811e5f68d73


http://shop.rieserler.de/index.php

http://shop.rieserler.de/index.php?manu=m729_Nakamura--Yoko.html&XTCsid=24e91095ba1fabd23887c811e5f68d73



★ ≪ 「 錦秋 」 は、お能の 「 紅葉狩り 」 の物語を表現しました。

全山が錦と化した紅葉の山に誘われ、迷い込んだ貴公子が、

絶世の美女に、お酒を振る舞われます。

眠り込んだ貴公子を、鬼の姿に戻った美女が襲いかかる怖いお話。

貴公子を秋、美女を万物が枯れる冬と、

とらえることも出来るでしょう ≫ CDに添付しました解説です。

Europeの音楽家、愛好家が、この曲をどのようにとらえるか、

どうお聴きになるか、反響が楽しみです。



★朗らかな秋の一日、

上野の国立西洋美術館で、「ミケランジェロ展」を観ました。

Michelangelo ミケランジェロ (1475年 - 1564)。

今回の見どころは

『 階段の聖母 』、 『 キリストの磔刑 』、

『 クレオパトラ 』、 『 レダの頭部 』 の 4点でした。


★『 階段の聖母 』 は、大理石の板に彫られた 56㎝×40㎝の、

小さなレリーフです。

驚くことに、1490年頃、ミケランジェロが15歳の作品ですが、

完璧なマスターピースでした。


★画集で見たのでは、全く分からない 「 鑿 ( のみ)」 の、

細かい彫り跡も、 まじかに見ることができました。

画面中央より、やや上に位置する幼子イエスの背中だけは、

すべすべに、磨き上げられており、

この背中が盛り上がり、迫ってきます。

見た瞬間、ここがまず、目に入ってきます。


★聖母マリアは、ショールのような大きな布でイエスを覆い、

彼を、何かから守ろうとしています。

イエスの顔は描かれず、後頭部が一部見えるだけです。

眼差しも、我が子を見ずに、

遠い将来の受難を、予見しているかのごとく、

厳しく、遠くを見つめています。


★子供が3人ほど、左上の階段上に描かれ、

手摺に、もたれかかっていたりします。

天使であるようにも、そうでない子供であるようにも見えます。

階段の段と手摺が、横と縦に交差して、十字架のようにも見えます。

キリストが磔になった十字架です。





★イエスを抱えるマリアの左手が、マリアの頭部と比べ、

随分と大きく、彫られています。

このレリーフに、対角線を2本引きますと、

ちょうど、マリアの大きな左手の手首が、

このレリーフの中央点に、なります。

蝸牛の渦の中心のように、見えます。

マリアは、左手で、イエスを抱きかかえています。


★マリアのもう一方の右手は、なだらかなカーブを帯び、

イエスの頭に、ショールを掛けようとしているかに、みえます。

この左手から右手、イエスの頭、不自然なねじれた形をしたイエスの右手、

そして、マリアの左手へと、円を描いて、丸くつながっています。

中心にある、イエスの滑らかな背中が、浮き上がっています。


★レリーフ上端にあるマリアの頭部には光輪、これも円です。

この二つの円に対し、マリアの座っている台座に垂れ下がる衣が、

大きな半円形で、どっしりとした安定感をもたせます。

半円から、対角線に沿って左上に上がっていきますと、

階段の子供たちの頭に、到達します。


★マリアの左手は、十字架を象徴するかのような階段の段と、

平行であるのに対し、背中を見せるイエスの右手は、

右上に行く対角線と平行して、斜め上を目指します。

この対角線は、マリアの左肩から、左足の先へと流れ、

レリーフの屋台骨を、成しています。







見る人の最後の視線は、マリアの顔に釘付けになります。

幼い子の、将来の受難を感知し、それに決然と対峙しようとしている母。

恐ろしいまでの眼差し。

子を思う母の強さ、動物的な母性が、にじみ出ています。

圧巻です。

これが、レリーフの主題であり、観る人の心の襞に、

深く強く、刻み込まれます。


★このように見ていきますと、まるで、Bach の作曲と同じように、

緊密な構成でできているのが、分かってきます。

Michelangelo ミケランジェロや Bach の音楽を、楽しむためには、

自分の頭で、積極的に構成を分析し、

味わう作業が不可欠であると、いえるでしょう。


★同室にありました、 『 キリストの磔刑 』 は、高さ26.5㎝、

本当に小さな、木彫です。

Michelangelo ミケランジェロが88歳の頃の作品。

死の前年です。


★ミケランジェロの木彫は、若い頃にもう一点あるだけです。

この木彫を見た瞬間、 “ まるで円空 ” と思いました。

ふんわりとしたイエスの頭髪、深い 「 掘り 」 による顔の輪郭。

この顔の表情は、Georges Rouault ジョルジュ・ルオー(1871 - 1958) の、

「 キリストの顔 」 にも、とてもよく似ています。







★最初に目に入るのは、イエスの左右の膝頭、次いで、局部です。

この3点が、盛り上がって輝き、力強い三角形を形成しています。

局部が、中心に位置します。

削げ落ちた腹部が、見事です。


展覧会の醍醐味は、この木彫を前からだけでなく、横、後からも、

じっくり、鑑賞できることです。

正面から顔を見ますと、やや分かりにくいイエスの表情が、

左横から見ますと、頬が削げ落ち、悲しい顔、

実に悲しい顔へと、変化するのです。

悲しみが、浮き上がってきます。

息絶えた直後の顔、かもしれません。


★15歳と 88歳の中間ともいえる、1535年、60歳の作品が、

黒石墨で、紙に描かれた 『 クレオパトラ 』 です。

自殺するクレオパトラが、左乳房を毒蛇に噛ませる場面です。

まるで、映画のお話のようですが、裏打ちの紙から、新たに、

別の素描が、出現したそうです。


★この素描の顔は、口を開け、歯も見え、苦悶にもだえています。

一方、 『 クレオパトラ 』 の顔は、苦しみ、悲しみを超越した、

達観の境地が、描かれています。

従容として死を受けいれる、静謐な、永遠の眼差しです。






★Beethoven ベートーヴェン(1770~ 1827) は、デッサンから、

作品をどう仕上げたか、

その過程を、私たちは、よく知ることができます。

それは、Beethoven がデッサンをたくさん、残していたからです。


★このミケランジェロ展では、ミケランジェロの素描を模写した作品も、

たくさん出品されていました。

それは、ミケランジェロの素描は、作品が完成後、焼却することが、

多かったためです。


★これは、作曲家にもよく見られ、

Claude  Debussy  クロード・ドビュッシー (1862~1918)や、

Maurice Ravel モーリス・ラヴェル(1875~1937) は、

注意深く、痕跡を消し去っています。

Johannes Brahms ブラームス (1833~1897) は、

晩年、手紙類まで焼却しています。


★それに対し、Johann Sebastian Bach  バッハ  ( 1685~1750 ) は、

自筆譜で、その秘密を隠すどころか、

なんとか、作曲の構成や意図を分かってもらおうと、懇切丁寧に、

分かる人には分かるように、ヒントをいろいろな手段で散りばめています。

これだけ親切な楽譜は、ないでしょう。


私の作品の 「 Suite für Violoncello solo Nr.1、Nr.3 

無伴奏チェロ組曲 第1番、第3番 」 には、

Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー先生が、

Einrichtung で、普通のチェリストならば隠すようなテクニックを、

すべてさらけ出し、懇切丁寧に、書き込んでくださいました。

演奏者が、困難を取り除き、すぐに弾けるよう、

Bach と同じ、親切心です。







★「 ミケランジェロ展 」  では、たくさんの方々が、

主催者が作成した、大スクリーンの解説ビデオに見入っていましたが、

名画の前は、数人だけ。

また、イアホンで解説を聴きながら、回っている方も、

多く、見受けられました。


本物の名画が眼前にありながら、イアホンを付けて見ることは、

自分で、名画と対決して楽しむことの、妨げになるのではないかと、

私は、思います。

学者的な、些末なことにこだわる説明に、耳を傾けるのは、かえって、

本当の理解に到達せず、もったいない。

本当の感動は、得られないのではないでしょうか。

自分で、名画と対決してはじめて、感動が湧き上がることでしょう。


音楽で申しますと、 Chopin の自筆譜を見ないで、

エキエル版だけを見る、あるいは、

Bach の自筆譜を現代ならば、誰でも見ることが可能であるのに、

編集者の恣意的な改竄が見られる 「 実用譜 」 だけを見て、

Bach を演奏しようとすることに、似ているような気がします。




★「 無伴奏チェロ組曲 」の楽譜とCDは

「 カワイ・表参道 」   http://shop.kawai.co.jp/omotesando/
「アカデミア・ミュージック 」 
https://www.academia-music.com/ で、販売中。 


※copyright © Yoko Nakamura    
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▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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Bach、Mozart へと、連綿と続く Fischerの フーガ ■

2013-10-17 23:00:11 | ■私のアナリーゼ講座■

■ Bach、Mozart へと、連綿と続く Fischerの フーガ ■
  平均律クラヴィーア曲集 第 2巻 9番 E-Dur アナリーゼ講座

                  2015.10.17   中村洋子 

 

 

★10月14日、KAWAI 「 横浜みなとみらい 」 での、

平均律アナリーゼ講座で、

Chopin の Ballade F-Dur Op.38 は、

平均律 第 1巻 15番が、基になっていることを

具体的に、分かりやすく、お示しいたしました。


★10月 15日、KAWAI表参道での、

第 6回 「 平均律 2巻 8番 dis-Moll 」 のアナリーゼ講座では、

逆に、 Ballade F-Dur Op.38 の曲頭の弾き方が、

8番 dis-Moll prelude の、冒頭の弾き方と、

見事に、
シンクロナイズしていることを、

ピアノで具体的に、
体験していただきました。



★本当の意味で、Chopin が弾ければ、

Bach も弾ける、ということを、

机上の論理でなく、具体的に体験していただきました。




★次回の平均律 第 2巻・アナリーゼ講座は、

9番 E-Dur です。

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■第 7回・平均律クラヴィーア曲集 第 2巻 アナリーゼ講座■
    平均律クラヴィーア曲集 第 2巻 9番 E-Dur
 ~ Bach、Mozart へと、連綿と続く Fischerの フーガ ~


★全 54小節からなる Preludeは、


ほぼ中央の 24小節と 25小節との間に、

反復記号が置かれる 「 Binary form 2部構成 」 の曲です。

バスに主音のオルガンポイントがある第 1小節目は、

後半冒頭 25小節目で、そのまま 5度上に移調される形で、

出現します。


★このことは、バス声部が属音のオルガンポイントとなる、

ということを意味します。

最後の 51~ 54小節は、バスに主音のオルガンポイントを

配置して、締めくくられます。


★この Prelude が、穏やかで温かく、

安心感に満たされているのは、

この 「 調 」 の安定感にあるのかもしれません。

 

 


★Fuga の主題と 第 1提示部は、

J. C. F. Fischer  ヨハン・カスパル・フィッシャーの、

Ariadne Musica の E-Dur の Fuga と、

瓜二つです。


★しかし、テーマの 4番目( gis ) と 5番目( fis ) の音を、

Fischer は、全音符にしていますが、

Bach は、 2分音符に変更しています。

Fischer の曲は、素朴で明るく、

のどかな合唱曲のような曲想ですが、

Bach の黄金の 「 一筆 」 により、この Fuga が一変し、

力漲る
Countepoint 対位法の世界へと、

変貌したのです。

新しい命が、吹き込まれたのです。


★そして、 Mozart モーツァルト は、

この Fuga をほとんどそのまま、

弦楽五重奏(KV405)に編曲し、豊かな滋養としたのです。

Fischer、 Bach、Mozart と、

流れが、
連綿と続くのです。




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■日 時 : 2013年 11月12日(火) 午前 10時 ~ 12時 30分

■会 場 :  カワイ表参道  2F コンサートサロン・パウゼ

■ 要予約 :   Tel.03-3409-1958


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■ 講師 :   作曲家  中村 洋子 Yoko Nakamura

 東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。
日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。

 

2003 ~ 05年:アリオン音楽財団 ≪東京の夏音楽祭≫で新作を発表。

 

07年:自作品 「 Suite Nr.1 für Violoncello
        無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 などをチェロの巨匠
        Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー氏が演奏した
     CD 『 W.Boettcher Plays JAPAN
                         ヴォルフガング・ベッチャー日本を弾く 』 を発表。

 

08年:CD 『 龍笛 & ピアノのためのデュオ 』
    CD 『 星の林に月の船 』 ( ソプラノとギター ) を発表。

 

08~09年: 「 Open seminar on Bach Inventionen und Sinfonien
                  Analysis  インヴェンション・アナリーゼ講座 」
                    全 15回を、 KAWAI 表参道で開催。

 

09年: 「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 を、
     ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

 

        「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲第 3番 」
              が、W.Boettcher 氏により、Mannheim ドイツ・マンハイ ム
              で、初演される。

 

10~12年: 「 Open seminar on Bach Wohltemperirte Clavier Ⅰ
                  Analysis 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 アナリーゼ講座 」
                全 24回を、 KAWAI 表参道で開催。

 

10年: CD 『 Suite Nr.3 & 2 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 3番、2番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。

 

     「 Regenbogen-Cellotrios  虹のチェロ三重奏曲集 」 を、
             ドイツ・ドルトムントのハウケハック社
      Musikverlag Hauke Hack Dortmund から出版。

 

11年: 「 10 Duette für 2 Violoncelli
                         チェロ二重奏のための 10の曲集 」 を、
     ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

 

12年: 「 Zehn Phantasien für Celloquartett (Band 1,Nr.1-5)
     チェロ四重奏のための 10のファンタジー (第 1巻、1~5番)」 を、
      Musikverlag Hauke Hack  Dortmund 社から出版。

13年: CD 『 Suite Nr.4 & 5 & 6 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 4、5、6番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。

         「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」 を、
     ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。
  
     
  

   スイス、ドイツ、トルコ、フランス、チリ、イタリアの音楽祭で、

    自作品が演奏される。

 

★上記の楽譜とCDは、「 カワイ・表参道 」   http://shop.kawai.co.jp/omotesando/
「アカデミア・ミュージック 」 
https://www.academia-music.com/ で、販売中。

 

 

    ※copyright © Yoko Nakamura    
                 All Rights Reserved
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■ Ries & Erler が、私の作品 「 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」 を、出版 ■

2013-10-11 23:28:58 | ■私の作品について■

■ Ries & Erler リース&エアラー社が 「 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」 を、出版 ■
                    2013.10.11  中村洋子

 





★季節外れの台風が迷い込み、どこか不順な秋ですね。

それでも、ときおり顔を見せる青空は、

抜けるように爽快です。

 
★私の作品 「 Suite für Violoncello solo Nr.3 

無伴奏チェロ組曲 第 3番 」 が、出版されました。

「 Ries & Erler  Berlin  リース&エアラー 」 社の、

ホームページを、ご覧下さい。

http://shop.rieserler.de/product_info.php?info=2840&XTCsid=24e91095ba1fabd23887c811e5f68d73
http://shop.rieserler.de/index.php

表紙には、私が手書きしました「漢字」の題名を、

適当に、散りばめてあります。


★ヨーロッパの方々には、漢字がクールでかっこよく、

デザイン的にも、斬新に見えるのでしょう。

楽譜は、まもなく届くようですので、

とても、楽しみです。


この作品は、 「 秋 」 がテーマです。

この組曲は、6曲でできていますが、

きょうは、第2番目の 「 鶺鴒 」  ( せきれい ) 

Die Bachstelze バッハシュテルツェ

The white wagtail について、ご説明します。

 

  


★これは、私の好きな詩人、三好達治の 「 鶺鴒 」 という詩に、

触発されました。

≪ 紅葉して 日に日に山が明るくなる

   谿川は それだけ緑りを押し流す

  白いひと組 黄色いひと組 鶺鴒が私に告げる

  「 この川の石がみんなまるいのは 

  私の尻尾で敲いた ( たたいた ) からよ 」 ≫


★微笑ましい詩です。

深閑とした山奥、河原のなにげない石に止まり、

水しぶきを浴びながら、

一心に尾を振るう鶺鴒。

いつまでも、いつまでも叩いています。

人知の及ばない自然の営み。

無限に続きます。

秋の一こまです。


★この鶺鴒を、それほど深山ではないのですが、

実際に、見たことがあります。

どうしてこんなに、飽きもせず、

せわしなく、尾っぽを上下させるのか、

無為ともとれるその行為に、

何故か、感動します。

 

 


★Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー先生は、

この 「 鶺鴒 」 の曲が、大好きです。

Boettcher 先生が、この曲に、

Animato  =80 [ =66 ]  という、

速度記号を、 Einrichtung で書き込まれています。

Animato  の語源は、 Animal です。

また、 [ flott und leicht ] も、記入されています。


flott は、敏速、てきぱき、きびきび。

leicht は、軽く、軽やかに、という意味です。

先生の録音は、  [ flott und leicht ] をどう弾くか、という

最もよい例でしょう。


34小節目には [ col legno ] という指示があります。

弓の裏側、つまり、木部のほうで、軽く叩いて演奏されています。

この曲がドイツで演奏された際には、新聞評がとても好意的で、

聴衆の皆さまが、楽しまれたようです。


★音楽は、自然を模す 「 標題音楽 」 でないことは、勿論ですが、

歴史的大作曲家でも、ときどき、

このような遊びを、するものです。

 

 


★ 見かけは楽しい曲ですが、実は、仕掛けがあるのです。

「 鶺鴒 」 の第 1小節目の 16分音符  「 c、 c1、 fis、 g 」 が、 

第1楽章 「 Prelude 」 の冒頭と、どういう関係にあるか、

是非、 CD と楽譜を見ながら、謎解きしてください。


★この2小節目 「 D、 A 」 で始まる 16分音符のモティーフが、

このたび、 CD録音ができました私の

「 無伴奏チェロ組曲  4、 5、 6番 」 の、どの曲と対応しているか・・・

などを、ミステリーのように、

秋の夜長、楽しみながら CDを聴いていただきたいと、思います。


★そうしますと、私の 全 6曲の 「 無伴奏チェロ組曲 」 が全部、

宇宙をめぐる惑星のように、互いに、交感しながら、

響き合っているのが、お分かりになると、思います。


★私の作品は、微々たるミクロコスモスですが、

Bach の巨大なコスモスに、近づこうとした勉強の成果であることは、

間違いありません。

 

 


この CDの聴きどころの一つは、 Boettcher 先生が、

たった一本の弓で、Legato Stacoto  Tenuto Crescend 

Decrescend などを、どのように、表現しているかという点です。 

こうした Spieltechn は、実は、

ピアニストが最も欠けているものであると、

思います。


ピアノは、指を 10本使うことができるため、一つの音に対する、

研磨の方法がやや、おろそか、単調になりがちな面があります。

ひどいときには、ガラスを割ったような音、

あるいは、威嚇するような激しい音を出し、

聴く人を不快にさせ、神経を傷つけかねません。


私がお薦めしたいのは、弦楽器の演奏家はもちろん、

ピアニスト、特に、ピアノの先生方が、

楽譜を見ながら、Boettcher 先生の演奏を聴いてくださることです。

個々の音を、弦楽器でどう発音しているか、

それを、体験して欲しいのです。

 

 


そうしますと、例えば、Burgmüller ブルグミュラー

「 25の練習曲 」 の、
「 pastoral パストラル 」 のような、

初心者用の曲でも、左
手の  「 g、 h、 d1 」  和音の、

スタッカートとなっている repeated notes を、どう弾くか、

そのとき、右手をどのように、レガートで歌わせるか、

具体的に、学ぶことができるのです。


★『 無伴奏チェロ組曲 3、2番 』 の CDは、
「 カワイ・表参道 」   http://shop.kawai.co.jp/omotesando/
「アカデミア・ミュージック 」 
https://www.academia-music.com/ で、販売中。 

 

 

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■お能が深く、深く理解できる本 『 横道萬里雄の能楽講義ノート 【 謡編 】』 ■

2013-10-01 17:09:41 | ■ 感動のCD、論文、追憶等■

■お能が深く、深く理解できる本 『 横道萬里雄の能楽講義ノート 【 謡編 】』 ■
                      2013.10.1  中村洋子





★秋たけなわです。

思わず、読みふけった本があります。

檜書店からの新刊本、 ≪ ひのき能楽ライブラリー ≫ の1冊、

『 横道萬里雄の能楽講義ノート 【 謡編 】 』 です。


★この本は、横道先生が東京芸大を退官された 1983年、

その最後の講義を、テープ起こしした貴重な内容です。

先生は昨年 ( 2012年 )、 95歳でお亡くなりになりました。

能楽をはじめ、雅楽、声明、歌舞伎、文楽、沖縄芸術まで、

広く深く、日本の伝統芸術を分析、研究し、

極められた方といえます。


★私は、実はこの年、先生の別の講義を受けていました。

確か 「 日本音楽史 」 というような名前の講義でした。

他の講師による、同様の内容の講義もあり、

それは必修でしたが、

横道先生の講義は、必修でもなく、選択でした。


★面白いことに、必修のほうの 「 日本音楽の歴史と鑑賞 」 は、

私が日ごろ、このブログであきれている Bach研究家にも似た、

干からびた、死んだような内容で、

げんなりした記憶しか、ありませんでした。

ほとんど何も、頭に残らないうえ、

単位を取るためには、高い著書まで買わせられる仕組みで、

いやいや購入した記憶が、あります。







★選択だった横道先生の 「 日本音楽史 」 を、聴講していたのは、

邦楽系、楽理の学生がほとんどで、ピアノ、作曲などの学生は、

私と、もう一人だけでした。


★内容は、正直申しまして、当時の私には

中身が濃く、難しく、 “ 猫に小判 ” でした。

しかし、室町時代の 「 田楽 」 やら、

能が成立する前の、たくさんの芸能について、

先生の知識、分析、理解、愛情の深さに、

「 この人は本物だ!」 と、感銘を受けました。

そのような感動を覚えることは、

人生で、あまりないでしょう。


★当時の芸大の授業は、はっきり申しまして、

ろくな講義がなかった、と記憶しています。

その他で、心に残っているのは、

若桑みどり先生の 「 マニエリスム 」 の、講義ぐらいでした。

美術学部の講義でしたが、受講は可能でした。









今回の本 『 横道萬里雄の能楽講義ノート 【 謡編 】 』 は、

うれしいことに、CD付きです。

先生の、甲高い、歯切れのいい、懐かしい東京言葉、

当時の講義を、学生に戻った気分で、

また、聴くことができるのです。

奇跡的に、講義がカセットに録音されており、

それを、CD化したのです。

とても、貴重だと思います。


★練習室から漏れてくる、木管楽器による音階練習の音、

“ 芸大の生活音 ” も入っています。

講義は夕方でしたので、上野の山のカラスが、

物寂しげに鳴く声も、窓から闖入してきました。


この本の素晴らしさは、 「 お能の入門書 」 として、

とても素晴らしい本である、ということです。

例えば、 「 強吟 」 、 「 弱吟 」 という言葉が、

お能で、よく使われます。


★洋楽の私にとって、お能をお稽古する際、

お能の 「 音階 」 が、どうしても分かりませんでした。

具体的に言いますと、 「 強吟 」 の音階にある

≪ 中音 ≫ と ≪ 上音 ≫ が、

西洋音楽でいう 「 音の高さ 」 としては、
全く、

同じであるのです。

洋楽の人間にとっては、理解不可能でした。


しかし、この本では、それが見事に分かりやすく、

説明されています。

しかも、先生が実際に、謡いながら例を示されるので、

その違いが、否が応でも、体感できてしまうのです。

これは、先生が、単なる書物の上の学者ではなく、

お能の謡、仕舞、太鼓、小鼓まで、すべてを修め、

習得された方であるから、可能なのです。







★私はのちに、少し、お能をお稽古したことがありますが、

お稽古では、通常、理論的な説明はされないものですので、

音階の疑問は、残ったままでしたが、

今回、この本とCDで、ようやく、

完全に理解できた、と思います。


「 強吟 」 、 「 弱吟 」 の例に限らず、

シテ方、ワキ方、アイなど ≪ 能の役柄 ≫ についても、

懇切丁寧に、ご説明されています。

能に狂言方が参加することは、非常に多いのに、

狂言に、お能のシテ方、ワキ方が参加する例は、

全く、ありません。

それは、狂言のあとにお能ができたため、

シテ方、ワキ方が
絡むことができなかったと、

説明されています。



★≪ 地拍子 リズム ≫ についても、詳細に、

熱意溢れる講義を、されています。

お能に興味をもたれる未経験者、さらに初心者、

またお詳しい方にとっても、

座右の書になると、思います。





★また、付録 CDには、宝物が詰まっています。

「 ボーナストラック 」 では、観世、宝生などの 「 座 」 が、

どのようにできたのか、解説されています。


さらに、嬉しいことには、

先生が講義される内容を、

最高の名人が、実演して示されているのです。


例えば、 ≪ クセの地拍子謡 ≫ を、観世寿夫、

≪ 笛の呂中干の地 ≫ を、笛:藤田大五郎、小鼓:北村一郎、

太鼓:安福春雄、太鼓:金春惣右衛門 という、

最高の名人が、実例を示されています。

 
★「 観世寿夫 」 先生から、

直に、教えを受けることができるとは、

なんという幸せでしょう。 

「 Bachの自筆譜 」 から、 「 Bach の音楽 」 を、

直接学ぶことと、同じですね。


■檜書店 : http://www.hinoki-shoten.co.jp/




                                             ( 能の「井筒の井戸」 : 金沢・卯辰山 )



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