音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■第 12回平均律アナリーゼ講座は 3月 30日、ラフマニノフ「鐘」との関係■

2011-02-19 23:56:08 | ■私のアナリーゼ講座■

■第 12回平均律アナリーゼ講座は 3月 30日、ラフマニノフ「鐘」との関係■
                           2011.2.19 中村洋子

 

 

 

 

★昨日は、第 11回 「 平均律アナリーゼ講座 1巻 11番 」を、

開催いたしました。

表参道に向かう途中は、激しい雨、

傘もさせないほどの、強風でしたが、

それをものともせず、熱心な皆さまが、

大勢、お集まりくださいました。


★講座が終わるころは、薄日もさし、

風には、早春の香りも感じられました。

カワイ・表参道のお隣にありました

「 ハナエ・モリ 」 ビルが、完全に、取り壊され、

青空が、ぽっかりと、顔をのぞかせていました。

 


★講座では、バッハの音楽が250年以上、

ヨーロッパの、クラシック音楽を規定し、

「 平均律クラヴィーア曲集 」 が、

「 調性とは何か 」 という、命題に対する

≪ 解答 ≫ であることを、分かり易くお話しました。


★さらに、バッハの音楽は、

その ≪ 調性 ≫ を、≪ 崩壊へと導いていく萌芽 ≫ も、

いたるところに、宿していることや、

バッハを忠実に受け継いだ  「 ブラームス 」 を、懸け橋として、

20世紀の「 調性崩壊 」 へと、導いていったことも、

詳しく、解説いたしました。


★つまり、バッハの音楽は、

「 調性の確立と、その破壊 」  という両面性をもち、

バッハ以降の音楽は、ゆっくりと、

その崩壊に、歩を進めていったのです。


★次回は、ブラームスが、

近代ロシアの作曲家・ラフマニノフに、

「 バッハの何を、受け渡していったか 」

前奏曲 「 鐘 」 を例に、お話します。

 


■第 12回 中村洋子 「 バッハ 平均律・アナリーゼ講座 」 

       第 1巻 第 12番  ヘ短調 前奏曲 と フーガ

≪ ラフマニノフ・前奏曲 Op.3-2「 鐘 」のラフマニノフ・トーン、
                         その源泉はバッハ ≫

・日時: 2011年 3月 30日(水) 午前 10時 ~ 12時 30分
・会場: カワイ表参道  2F コンサートサロン・パウゼ
・会費: 3,000円  ( 要予約 )  Tel.03-3409-1958 

 

★平均律 1巻 全 24曲の前半を閉じるのが、

この「 第 12番 へ短調 」です。

10番ホ短調のフーガで、姿を現した 「 半音階 」が、さらに発展し

1番フーガの「 全音階 」と対を成し、この 12曲を束ねています。

 

★アルマンドの性格を宿している前奏曲や、

二つの対主題 ( カウンターサブジェクト )をもった、

実に、充実したフーガに、

平均律1番から11番までが、すべて凝縮されているのです。

 

★ブラームスは、このフーガの半音階を、徹底的に咀嚼し、

さらに、それを、ロシアのラフマニノフへと、手渡していきました。

ブラームス・トーンと同様、誰が聞いても、ラフマニノフと分かる

 “ ラフマニノフ・トーン ” 。

この ラフマニノフ・トーン はすべて、バッハの手の内にあったのです。

お釈迦様の手の平を飛び回る “ 孫悟空 ” ともいえます。

 

★ラフマニノフを楽しむ手掛かりとして、

バッハの「和声」、「和声進行」と、全く一致しているところ、

即ち、彼がバッハから吸収したことを、

分かりやすく、お話いたします。

 

★この講座は、音楽をバッハを、

心から愛している方々のためのものです。

難しいことはやさしく、分かりやすいことは、

さらに深くご説明いたします。 

 


● 今後のスケジュール
第 13回  5月  27日 ( 金 )  第 13番 嬰へ長調 前奏曲&フーガ
     午前10時~12時30分 
     会費:3,000円

■ 講師:作曲家 中村 洋子
東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。
2003年~ 05年:アリオン音楽財団《東京の夏音楽祭》で新作を発表。
07年:自作品「無伴奏チェロ組曲第 1番」などをチェロの巨匠W.ベッチャー氏が
   演奏したCD『 W.ベッチャー日本を弾く 』を発表。
08年:CD「龍笛&ピアノのためのデュオ」、
      CD  ソプラノとギターの「 星の林に月の船 」を発表。
08~09年:「 バッハのインヴェンション・アナリーゼ講座 」全15回を開催。
09年10月:「 無伴奏チェロ組曲第 2番 」が、W.ベッチャー氏により、ドイツ・マンハイム で 初演される。
10年:「 無伴奏チェロ組曲第 1番 」が、ベルリンの
       リース&エルラー社 Ries &Erler Berlin から出版される。
     : CD『 無伴奏チェロ組曲第3番、2番 』 W.ベッチャー演奏を
        発表。
     :「 レーゲンボーゲン・チェロトリオス( 虹のチェロ三重奏曲集)」が
    、ドイツ・ドルトムントのハウケハック社Musikverlag Hauke Hack社か
    ら出版される。
        スイス、ドイツ、トルコの音楽祭で、自作品が演奏される。

 

 

        (万作、ハナエモリ跡 蕗の董、椿、古い経師屋さん)
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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■ブラームスは「ピアノ・ワルツ集Op.39」で、バッハの何を取り込んだか■

2011-02-17 02:46:08 | ■私のアナリーゼ講座■

 ■ブラームスは「ピアノ・ワルツ集Op.39」で、バッハの何を取り込んだか■
                  2011.2.17 中村洋子

 

 
Johannes Brahms ブラームス( 1833~1897)は1865年、

16曲からなる  「 Walzer für Klavier zu vier Händen

 四手連弾ピアノのためのワルツ集  」  Op.39

を、作曲しました。


★2年後の 1867年、ブラームス自身により、

2種類の、ピアノ独奏集に、編曲されました。

ひとつは、「 Walzer für Klavier zu zwei Händen 」

さらに、子供でも弾けるよう、平易に編曲された

「 Walzer für Klavier zu zwei Händen
           ( Die vom Komponisten erleichterte Fassung )

「ピアノのためのワルツ  作曲者による、平易な楽譜」。


★その結果、現在では、ブラームスによる、

 3種類の 「ワルツ集」 が、存在します。

この 3種で、調性の異なっている曲は、

6、13、14、15、16番です。

6番は、四手と二手では、嬰ハ長調、

平易楽譜では、ハ長調です。

これは、嬰ハ長調が、調号にシャープが七つも付くため、

子供でも、弾きやすいよう、

ブラームスが、「 ハ長調 」 にしたのでしょう。


★13から 16番の 4曲は、四手と平易楽譜が、

「 ハ長調、イ短調、イ長調、ニ短調 」 で、

二手が 「 ロ長調、嬰ト短調、変イ長調、嬰ハ短調 」

と、なっています。

 

 


★どうして、ブラームスは、二手だけ調性を変えたか?

ここに、ブラームスが、バッハから汲み取った

“ ブラームス・トーン ” の、秘密があるのです。

これについては、講座で詳しくお話いたしますが、

有名な 15番のワルツを見ますと、二手版では 「 変イ長調 」、

平易楽譜では 「 イ長調 」 と、異なっています。


★調号が、フラット4つの  「 変イ長調 」 と、

シャープ3つの 「 イ長調 」 とは、

主音が、「 半音 」 ちがうだけです。

しかし、フラット系か、シャープ系かにより、

曲の性格が、がらりと変わってしまうことに、

つくづく、驚かされます


★二手版と平易楽譜の、自筆譜を見ますと、

現在、出版されている実用譜とは、

かなり、異なっています。


★ 3小節目の 2拍目と 3拍目の 4分音符に、

付けられたメゾスタッカート

(スタッカートとスラーが同時に、付されているもの)を、

ブラームスは、ソプラノの 「 ド シ 」 に、付していますが、

実用譜では、その位置を内声の 「 ミ レ  」に、付けています。


★ブラームスは、ソプラノの 「 ド シ 」 を、メゾスタッカートで

弾くように、という意志で付していますが、

実用譜は意図に反し、スタッカートやスラーを、

符尾と反対の位置に、付けるという、

常識的記譜法に、勝手に、変えてしまっています。


★これでは、大切なソプラノの 「 ド シ 」 が、

隅に追いやられ、この実用譜だけを見ますと、

ブラームスが、内声に特別な意味をもたせて、

メゾスタッカートを、付けたのではないか、

という疑問が、当然のこととして、湧き上がります。

実際、当惑されている方は、多いでしょう。

 


★さらに、自筆譜では、5小節目の 1拍目ソプラノに、

「 アクセント 」 を、付していますが、

ほとんどの実用譜では、これも 「 内声 」 に付けています。

自筆譜では、二手版も平易版も、

はっきりと、ソプラノに付けています。


★このような例は、ベートーヴェンの、

「 ピアノソナタ 31番 」 の ヘンレ版にも見られ、

以前、ブログで指摘しました。


★演奏者にとっては、大変に重要なことですので、

編集者は、せめて、脚注で自筆譜との違いについて、

触れてほしいものです。

 

 


★また、この Op.39の 15番は、

バッハ平均律クラヴィーア曲集

「 1巻 11番 へ長調 」を、凝縮して作曲されたような、

曲ですが、その ブラーム・ストーンが、

バッハの 11番 の何から、導き出されているか?

勉強中に、私自身 「 アッ 」 と、

声を上げてしまうような、発見がありました。


★シューマンが、若きブラームスの天才を見抜いたのは、

おそらく、“ ブラームスのどこに、バッハが宿っているか ”、

それを、シューマンの天才が、瞬時に解読し、

“ 天才だ ” と、叫ばせたのでしょう。

曲の、表面的な面白さではなく、

バッハを基にして、

「 どんなオリジナリティーを、作り出しているか 」 、

ということが、クラシック音楽の質の、

根本的な、判断基準となります。


18日のカワイ表参道での

「 平均律アナリーゼ講座 第11番 」 では、

上記の点を、じっくりと、解説いたします。

この発見は、これまで、全く指摘されていなかったこと

 であると、思います。


★念のため、 「 ウィキペディア 」 で、

このワルツ集の解説を、見ましたが、

「 ショパンのような高雅な洗練には欠けるものの、

総じて小ぶりで親しみ易い 」 と、記されています。

私は 、 ≪  高度に洗練された曲  ≫  で、

短い曲のなかに、バッハをはじめ、

西洋音楽のエッセンスが、凝縮した、

真の名曲であると、思います。


★楽譜を読み込む力が、ありませんと、

上記のような、本当の価値を理解できない

惑わすような、解説となります。

 

★現在は、いろいろなことを、インターネットで検索し、

そこに書かれている、無署名で無責任な、

浅薄な内容を、無批判に受け入れる風潮に、

なり勝ちです。

 

★さらに悪いことには、それが、孫引きされ、流布され、

大手を振って、市民権を、得かねないことです。

この 「 ブラームス ワルツ集 」 に、対する、

誤った評価のように、真の音楽理解から、

逆に、遠ざける、という、

悪い結果を、招きかねません。

自分自身の判断力を養うことが、本当に、

必要な時代と、なりました。

つくづく、そう思います。

                               (チョコ、欅の幹、白梅、雪と瓦)
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

 

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■ベートーヴェン ≪ 月光 ≫ の初版譜と、私のデュオ作品の出版■

2011-02-13 15:38:24 | ■私の作品について■

 ■ベートーヴェン ≪ 月光 ≫ の初版譜と、私のデュオ作品の出版■
                                2011.2.13 中村洋子

 

 

 


2月 18日 「 第 11回平均律アナリーゼ講座 」 に向け、

ブラームス  「 Walzer für Klavier  」  Op.39

「 ピアノのためのワルツ集  」  Op.39  の勉強で、

忙しい毎日です。

この講座では、私の考える

「 10 のブラームス・トーン 」 や、

フーガの 「 変応 」 ( 意味不明な日本語訳ですが・・・ )

 などについても、お話を、する予定です。

 

★また、 2月 2日に、ベルリンで演奏されました、

私の  2台チェロのための楽譜  が、

≪ 無伴奏チェロ組曲 第 1番 ≫  に続き、

Berlin  ベルリン の 、

「 Ries & Erler リース & エアラー社 」 から、

出版されることが、正式に決まりました。

※ 参照: 2月 2日 のブログ

 http://blog.goo.ne.jp/nybach-yoko/d/20110202


★この曲集は、昨年 12月、

斎藤明子さんと、尾尻雅弘さん により、

10弦ギターと、7弦ギターにより、

CD 録音 されました。

※ 参照:12月 22日、24日 のブログ

http://blog.goo.ne.jp/nybach-yoko/d/20101222

 http://blog.goo.ne.jp/nybach-yoko/d/20101224

 

 


★この 10曲からなる 「 二重奏曲集 」 は、

原題は、「 For Young Cellists 」 という言葉を、

添えていましたが、

 「 Ries & Erler リース & エアラー社 」が、

決めました題は、
 
≪ 10  kleine  Duette  für  2 Celli ≫

≪ 二台チェロのための、10の 二重奏曲集 ≫。


★作曲家が、若い演奏者や、音楽愛好家を想定して、

作りました曲が、通常の音楽会のレパートリーとなる例は、

数多く、見られます。


★例えば、フォーレ  Gabriel  Fauré (1845 ~ 1924)の、

有名な、四手ピアノ連弾曲  「 Dolly ドリー 」 Op.56

チャイコフスキー Tchaikovsky (1840 ~ 1893)の、

ピアノ独奏曲集 「 Les saisons   四季 」 Op.37b


★さらに、あのブラームス Johannes Brahms (1833 ~ 1897)の、

名曲「 Cello Sonata No.1  チェロソナタ 1番 」 Op.38 ですら、

当初は、アマチュアでも、誰でも弾け、親しめるように、

難しい技巧を、使わないということを、

念頭に置いて、作曲されました。


★私の、  ≪ 二台チェロのための、10の 二重奏曲集  ≫  も、

ベッチャー先生が、お孫さんと、

家庭で楽しんで頂けるようにと、作曲しました。

しかし、結果的に、ヨーロッパ各地で、

プロのチェリストの、演奏曲目として、

定着してきました。

 


★現代曲に限らず、技巧をこらした、難解な曲が、

優れているとは、決して、言い切れません。

なぜならば、誰でも弾けるように書く、ということは、

楽器の特性を、最大限に活かす、

という効果を、もたらすのです。


★和音一つを、とりましても、

困難な、フィンガリングによるものより、

指を押さえずに弾ける、開放弦を、和音に混ぜるだけで、

容易に弾けると同時に、楽器が美しく響くことになります。


★難解な奏法は、ある意味で、

楽器本来の美しい響きから、かけ離れ、

本領を、発揮できない、

“ 痛めつけられた音 ” になります。

これは、皆さまが、現代音楽と称するものを、

演奏会や、テレビなどでお聴きなり、体験され、

ご納得されていることと、思います。


★ごくわずかな、 「 本物 」 を除きまして、

いわゆる 「 現代音楽 」 に対する、

私の評価は、 “ 王様は裸 ” です。


★しかし、その難解さゆえ、

“ 本当は素晴らしいものかもしれないが、

自分が理解できないだけかもしれない ”  と、

誠実に、思われている方が、

いかに、多いことでしょうか。


“ 王様は裸だ "  と、叫んだ少年のように、

美しくないものに対しては、叫ばないまでも、

背を向け、無視すればいいのです。

 


★私の作品は、幸い、ヨーロッパで、

正当な評価をされている、ことを嬉しく思っています。

日本におけるバッハ演奏、あるいは、バッハの教え方、

バッハの解説本なども、実は、

この “ 裸の王様 ” と、かなり似ており、

あまり、褒められたものではないでしょう。

私の講座には、勇気ある少年のように、

本物のバッハを、求める方々が、

集まって、いらっしゃいます。


★作曲家の当初の意図と、初版が微妙にずれることは、

往々にして、あります。

有名な話では、シューベルト Schubert (1797 ~ 1828)

「 Impromptus 即興曲集 」 が、あります。

「 Impromptu 即興曲  」は、出版社によって、

後から、書き加えられた題名です。


★その反対に、作曲家の意図を、

あくまでも活かそうとした 「 初版譜 」 も、存在します。

ベートーヴェン  Beethoven (1770 ~ 1827) の、

ピアノソナタ  Op.27-2  ≪ 月光 ≫ の例が、そうです。

 


★ベートーヴェンの自筆譜と、初版楽譜を比べますと、

面白いことに、気付きます。

有名な第 1楽章は、( ベートーヴェン自筆譜では、

14小節目からしか、現存していませんが )

それを見ていきますと、16小節目のソプラノ

付点 2分音符の 「 C 」 の付点の位置が、

1拍目 の符頭からは、はるかに遠く離れ、

何と、ほぼ 3拍目に記されています。

この第 1楽章では、付点 2分音符の 付点は、

このように、遠く離れて記しているのが、ほとんどです。


★しかし、これは、ベートーヴェン独特の記譜ではなく、

実は、バッハも時々、使っています。

伝統的な記譜法の一つと、言っていいのです。

もちろん、ベートーヴェンも、普通に、

符頭の直ぐ横に、付点を付けることは、多々あります。
 

★なぜ、このような記譜をしたのでしょうか?

本来の 2分音符の、2拍が伸びきった後の、

3拍目 近くに置いた、ということは、

“ もう 1拍 ” 延長して伸ばしたい、

というような意志が、「 視覚的 」 に、

ヒシヒシと、伝わってきます


★漣 ( さざ波 ) のような、3連符の上に奏される、

息の長い、チェロの音色にも似た旋律、

この音が、ずっーと伸びている感じが、

付点を遠くに離す記譜法から、強く伝わってきます。


★あらためて、 ≪ 月光 ≫  の初版譜を見ますと、

ベートーヴェンが書いたのと、同じ位置に、

正確に、記されています。

見事です。

 

 

★現在の実用譜では、残念ながら、

もちろん、このようには、記されていません。

この作曲家に、忠実な 「 初版譜 」 では、

もう一つ、面白い点が見つかります。

20小節目のバスの 1拍目は、「 Eis 」 のオクターブ音ですが、

ベートーヴェンは、自筆譜で、オクターブの下の方の音を、

おそらく、誤って 「 Dis 」 音にしています。

下第 5線と、下第 1線に、 2分音符で記譜されています。

これは、初版の際、当然に訂正されていいものですが、

この初版譜は、それすら、愚直に自筆譜どおりに、

記譜しています。


★前後がオクターブ進行だから、ここで、

急に 「 9度音程 」 が出てくるのは、

間違いであるとして、編集者が、

オクターブに、直してしまうのは、簡単です。

この誤った記譜から、出てくる 「 9度音程 」 は、

この瞬間の和音構成では、絶対にあり得ない音程です。

しかし、仮に、上部に他の種類の和音が、

置かれていた場合、可能性として、

 「 下部音を 7の和音の 第 7音 」、

「 上部音を、その 根音 」  とすることも、可能ではあります。

このため、初版譜は、その正誤を判断せず、

そのままに、記したのでしょう。


★それを、判断するのは、作曲家本人だけであり、

もし、この初版譜のように記されている場合は、

演奏者が、自分で判断することです。

その中間に、編集者や、出版社の思惑が入るべきではないのです。

せいぜい、脚注で、指摘すべきことでしょう。

 

★ベートーヴェンの、自筆譜と初版譜を、見ていますと、

バッハの現代の実用譜とは、随分と異なった環境にある、

と、つくづく思います。

ただし、そのベートーヴェンのソナタの楽譜も、

現代の実用譜では、大きく、

改竄されていることも、多いのです。

 

 

                 (蕗の薹、椿・白玉、蔦、残菊、蝋梅、石仏)

▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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■バッハ ≪ イタリア協奏曲 ≫ のアナリーゼ講座■

2011-02-05 12:45:29 | ■私のアナリーゼ講座■

 バッハ ≪ イタリア協奏曲 ≫ のアナリーゼ講座■
       ~  バッハの誕生日  3月 21日に寄せて  ~ 

                                               2011.2.5  中村洋子

 

 

★バッハは 226年前の、1685年 3月 21日に、生誕しました。

バッハの作品は生前、ごくわずかしか、出版されませんでした。

その一つが、  ≪  イタリア協奏曲  ≫  です。

音楽を学ぶ方が等しく勉強し、愛されている曲です。

1735年、バッハが 50歳の時でした。

 

★バッハは、 協奏曲 ( Concerto ) を、一台の鍵盤楽器に、

集中的に編曲した時期が、ありました。

バッハが 28歳ごろ、 ( 1713年 ~ 14年 ) です。

当時の大家であった、ヴィヴァルディ、マルチェルロ、

トレッリなど、イタリアの作曲家や テーレマンの、

協奏曲 ( Concerto ) を、編曲しました。

 

★この編曲が、 ≪ イタリア協奏曲 ≫  へと、

結実していったことは、言うまでもありません。

 

 

★バッハの誕生日、 3月 21日 (春分の日)、

≪ イタリア協奏曲 ≫  だけに、的を絞った

「 アナリーゼ講座 」 を、開催いたします。

 

★バッハは、マルチェッロなど、当時の、

イタリアの大家たちから、旋律をどのように歌わせるか、

その旋律が、どのような音色なのか、を学びました。

その結果、逆に、 ≪ イタリア協奏曲 ≫  から、

オーケストラの音を、想像することも、可能なのです。

 

 

★これにより、 ≪ イタリア協奏曲 ≫  を、色彩豊かに、 

生命力溢れる 演奏、とすることができます。

----------------------------------------------------------

■日時: 2011 年 3月 21日 (月、祝日) 14:00-16:30

会 場: カワイ表参道 コンサートサロン ・ パウゼ

受講料: 3000 円  〈要予約〉  Tel.03-3409-1958

----------------------------------------------------------

★(月 1回の 「 平均律・アナリーゼ講座 」 とは、別の講座です)

 

 

                                 ( 木瓜、シデコブシの蕾、 )

▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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■本日、ベルリンで私のチェロ・二重奏曲が演奏されました■

2011-02-02 23:49:03 | ■私の作品について■

 ■本日、ベルリンで私のチェロ・二重奏曲が演奏されました■
                          2011.  2. 2   中村洋子

 


★明日は、「節分」です。

日本中が、凍てついてます。

日本海側の北陸、新潟では豪雪、

東京は異常乾燥、九州では霧島連峰・新燃岳が爆発、

穏やかな冬では、ありません。


★厳冬のベルリンからは、ベッチャー先生からのお便り。

私の作品が演奏されることを、知らせてくださいました。

ベルリン芸大主催のコンサートで、先生のクラスのチェリストが、

私の「 チェロのための二重奏曲集 」 から、3曲を選んで、

きょう、演奏されました。

 


■ 2 Februar 2011 19.30 Uhr
              Carl-Fresch-Saal Bundesallee 1-12
      
       3 Kleine Duette fur 2 Violoncelli(2007)
       Zwei Grillen
       Choco chip cookie
       Spanish Festival


★演奏者は、Janka Jambor さんと、 Bike Oner さん、

 Jambor さんはハンガリー人、 Oner さんはトルコ人です。

 


★ベルリンには、世界中から、音楽を学ぶ方が、

集まって来ていらっしゃる、ということが、

本当によく、分かります。


★私の曲のほかには、ハイドンとシューマンの協奏曲、

バッハの 「 無伴奏チェロ組曲第 6番 」

ニ長調 のプレリュードが、演奏されました。


★このコンサートは、Carl-Fresch-Saal 

( カール・フレッシュ・ザール ) で、開催されました。


★ハイドンとシューマンの協奏曲は、

オーケストラパートを、ピアノが受け持ちます。

実は、バッハも、オーケストラを、鍵盤楽器に編曲することを、

集中的に勉強した時期が、ありました。

バッハが28歳ごろ、 ( 1713年夏~14年夏ごろ )、

当時の大家であった、ヴィヴァルディ、マルチェルロ、

トレッリなど、イタリアの作曲家や テーレマンの、

 Concerto 協奏曲を、編曲しました。


★バッハの編曲と原曲とを、比べますと、原曲を凌駕して、

明らかに、バッハの世界を展開していることに、驚かされます。

これが、バッハの後年の名曲 ≪ イタリアン協奏曲 ≫

( バッハが、50歳ごろ、1735年出版 ) へと、

結実していったことは、言うまでもありません。

 


★ 3月 21日 ( 1685年 ) は、バッハの誕生日です。

この祝日・春分の日、 3月 21日 ( 月 )に、

 カワイ表参道・コンサートサロン 「 パウゼ 」 で、

≪ イタリア協奏曲 ≫ だけを、取り上げる

「 アナリーゼ講座 」 を、特別に、

開催することに、なりました。

月 1回の 「 平均律・アナリーゼ講座 」 とは、

別の、講座です。


★講座では、バッハの源泉の一つ、

マルチェッロなど、当時のイタリアの巨匠たちから、

バッハが何を吸収したか、それを探ります。

それにより、バッハの ≪ イタリア協奏曲 ≫ が、

どのようなオーケストラの音を、想定して、

書かれているかが、よく分かります。

 ≪ イタリア協奏曲 ≫  を、

色彩豊かに、生命力溢れる演奏とすることが、

可能となります


★本日、ベルリンで演奏されました 「 チェロ二重奏曲集 」

( 全10曲 )は、昨年 12月、斎藤明子&尾尻雅弘さんによる

ギター二重奏で、 CD用に、録音いたしました。

日本で、この曲をお聴きいただくには、

この CDが最適であると、思います。

完成まで、もう少し、お待ちください。

 

                                            (  シクラメン、木瓜  )

▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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