音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■アンダンテ・カンタービレは、「3度の関係」を織り込み、夢見る世界を創出■

2019-06-16 01:03:10 | ■私のアナリーゼ講座■

Tchaikovskyアンダンテ・カンタービレは、「3度の関係」を織り込み、夢見る世界を創出■

                2019.6.16  中村洋子

                                                (私の掌で光る蛍)
      

★夏至まであとわずかです。

いつまでも暮れない夕日がとっぷり落ちた後、

川の草叢では、蛍が淡く緑色の神秘的な灯りを点しています。

偶然指にとまった蛍は、ほんの一瞬“光の指輪”となります。

六本の足がゴソゴソ、掌を歩き回るこそばゆさ。

★≪移す手に光る蛍や指のまた≫                          

                                炭 大祇(たん たいぎ  1709-1771)の、

何やらユーモラスな句。

蕪村さんの朋友です。

★辞書によりますと、大祇は「四十歳を過ぎてから、京都の大徳寺の

僧となり、後、島原遊郭に「不夜庵」を結び、島原の女性たちに俳諧など

を教えていた。与謝蕪村らと≪俳諧三昧≫の生活を送る」とあります。

「三昧」の意味を調べますと、「仏語。心を一つの対象に集中して、

動揺しない状態」と、定義していました。

≪俳諧三昧≫とは、これ以上ない贅沢な生き方のようですね。

 

 

 

★それでは、私たちも前回ブログで書きました

Tchaikovsky チャイコフスキー(1840-1893)の

Andante Cantabile アンダンテ・カンタービレ

(String Quartet No.1 D-Dur Op.11

弦楽四重奏 第1番 ニ長調 作品11 第2楽章)という対象に、

集中してもう少し、この曲から学んでみましょう。

★多くの人の心を捉えて止まないこの名曲の、名曲たる所以は、

その魅力的な和声にも起因しています。

冒頭、4小節はごく一般的な和声です。

 


和声を要約しますと、こうなります。



★主調 B-Dur のごく一般的な和声進行です。

5小節目はまた、B-Dur のⅠに戻ることが順当な和声進行です。

 

 

 

ところが、Tchaikovskyはそうしませんでした。

5小節目は一転して d-Moll に転調したのです。

  

 

 

d-Moll 二短調は、主調 B-Dur 変ロ長調の属調平行調

(属調である F-Dur の平行調)で、近親転調(近親調への転調)ですが、

主調 B-Dur の主音「B」と d-Moll の主音「d」は、長3度の関係にあり、

 

 

 

これも、前回ブログで書きました 「medianten」の一種とみることも

可能でしょう。

★この5小節目から6小節目1拍目の d-Moll 「Ⅰ- Ⅳ¹- Ⅰ」の和声は、

大変美しく、1~4小節目の淡い月の光のような響きに、

一瞬、陰が射すような美しさをもっています。



 

★6小節目2拍目から8小節目の終わりまでは、F-Dur です。

F-Durは、主調B-Dur の属調ですから、珍しくもない近親調なのですが、

1~4小節目のB-Dur、5~6小節目前半の d-Moll、そして、

このF-Durという調の変遷を見ますと、「3度」の階段を段々に

登っていくような設計です。

 

 

これも、この曲の魅力の一つです。

F-Durは、6小節目2拍目のF-DurのドミナントⅤから始まりますが、

このドミナントは、主和音Ⅰに解決せず、

何とⅢの和音に進行してしまいます。

 

 

 

Ⅲの和音に進行せず、定石通りⅠに進行しましたら、こうなった筈です。

 

 

 

 

 

★皆さまも是非、この二つの譜を弾き比べて下さい。

Tchaikovskyが書いた属和音からⅢの和音に進行する

ビロードのようにデリケートな響きが、属和音から主和音Ⅰに

進行しますと、魔法が解けたかのように色褪せます。

★Ⅴから5度下のⅠではなく、Ⅴから3度下のⅢに

進行するのですから、大きく捉えれば、

これも、「3度の関係」と言えます。

 

  

 

★9小節目から16小節目までの第1Violinの旋律は、

1~8小節目と変わりません。

しかし、第2Violin、Viola、Celloは、この1~8小節目までと比べ、

和声が変化することに伴い、大きく、変わっていきます。

★まず、1~2小節目と9~10小節目を、比べて下さい。

第1Violin以外は、ガラリと変わっているのです。

1小節目は、B-Dur の主和音Ⅰをずっと1小節間保っていたのですが、

9小節目は、1拍目こそⅠの和音ですが、2拍目はⅥの和音、

このⅥの和音は、10小節目の2拍目にも現れます。

 

 

の和音の根音は、主和音Ⅰの根音より「3度下」です。

もう、お気づきと思いますが、Ⅲの和音の根音は、主和音Ⅰの

根音より「3度上」です。

Ⅵの和音の根音は、「3度下」。

Tchaikovskyは、この「3度の関係」を、巧みに処理しているのです。

 

  

★6小節目2拍目から7小節目冒頭にかけての和声進行について、

先ほどご説明しましたが、Ⅴから主和音Ⅰに本来進行すべき和音が、

ⅤからⅢの和音に進行しますと、どんな効果、あるいは変化があるか

ご説明します。






長調(この場合、B-Dur)の主和音Ⅰは長三和音です。

属和音Ⅴも長三和音ですので、Ⅰ→Ⅴの進行は、

長三和音が2回続く、明るい色彩の和声進行になります。

★これに対して長調のⅢの和音は、短三和音ですので、

主和音Ⅰの長三和音から短三和音Ⅲに進行しますと、

陰影に富んだ中間色の色彩になります。

9小節目の2拍目Ⅵの和音は、短三和音ですから、

ⅠからⅥに進行しますと、ⅠからⅢの進行と同じように、

長三和音と短三和音の二つの和音の連結になります。

1小節目の1小節間は、Ⅰの主和音であったのに比べ、

この9小節は更に和音明度が低くなった、

とも言えるかもしれません。

Tchaikovskyは、ⅢやⅥの和音を多用することにより、

このAndante Cantabile を夢見るような、霧に霞んだような

色彩にすることに、成功しました。

そのほとんどが「3度の関係」を、巧みに織り込むことによって

得られた効果でした。

★それでは、その「3度」とは、一体何なのでしょうか?

これこそ、Bachが「平均律第1巻」の序文に記した、

≪調性の正体を決定する≫ものなのです。
 

★私が解説を書きました【ベーレンライター原典版 

バッハ 平均律クラヴィーア曲集 第1巻 日本語による詳細な解説付き楽譜】       

http://www.academia-music.com/shopdetail/000000177122/  

 解説、2~8ページをお読み下さい。

 https://www.academia-music.com/products/detail/159893

   

★「平均律第1巻」は、「長3度」即ち「ド レ ミ」と、

「短三度」即ち「レ ミ ファ」により、

1~6番の「6曲1組」を、構成しています。

それでは、7番 Es-Dur からどんな世界が広がったか・・・

それを7月20日にお話いたします。

https://www.academia-music.com/user_data/analyzation_lecture

 

 

 

 

※copyright © Yoko Nakamura           

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▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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■中村洋子アナリーゼ講座≪平均律1巻と、この「1巻を源泉」とする名曲」≫第2回■

2019-04-22 11:03:39 | ■私のアナリーゼ講座■

■中村洋子アナリーゼ講座≪「平均律1巻」と、この「1巻を源泉とする名曲」≫第2回 ■

   ~第2回は、平均律第1巻「7番 Es-Dur 変ホ長調」です~  
           

            2019.4.22        中村洋子

 

 
 

 

★4月20日は、≪平均律1巻と、この「1巻を源泉」とする名曲」≫

第1回のアナリーゼ講座でした。

取り上げました曲は、「Inventio & Sinfonia 各1番」です。

★私は、Bachが平均律1巻で自ら書き下ろした「序文」について、

それを翻訳し、その「序文」でBachが何を言いたかったかを、

詳しく解説して出版しています。

 https://www.academia-music.com/products/detail/159893

 

★「序文」での、核となる用語の≪長三度即ち「ド レ ミ」、

短三度即ち「レ ミ ファ」≫を象徴しているのが、

平均律第1巻1~6番の6曲です。

★Bachは、「序文」でわざわざ謎めかすように「ド レ ミ」、「レ ミ ファ」を

明記して、取り上げていますが、

「ミ ファ ソ」、「ファ ソ ラ」、「ソ ラ シ」、「ラ シ ド」、「シ ド レ」

については、何故か、何も記述しておりません。

 

★Bachの謎かけは、“それを皆さんが各々考え、探求してください”、

“探求により、さらに大きな世界が広がり、

平均律1巻の全体像がつかめますよ”という、暗示であると

私は思っております。

 

 

 

★その謎かけを解くカギが、「Inventio & Sinfonia」の各1番といえます。

「Inventio & Sinfonia」は、この2曲が一体となって、

Bachの平均律「序文」を、裏付けています。

 

★「Sinfonia1番」には、ハ長調の音階「ド レ ミ ファ ソ ラ シ ド」の

音階音のすべてを「開始音」とする「音階」が存在します。

これこそが、Bachの「counterpoint 対位法 」です。

 

どこにその音階が存在し、それをどのように見つけ出し、

演奏でそれをどう提示していくか・・・

それを、講座で詳しくご説明いたしました。

 

★ 「Sinfonia1番」は、音階が流れるように花開いています。

各音階は、それぞれ色彩溢れた音のパレットをもち、

 Inventioのわずか22小節、 Sinfoniaわずか21小節の中で、

 Claude Monet クロード・モネ(1840-1926)の「睡蓮」のように、

 色が響き合い、融け合っています。

 決して、無色透明な曲ではありません

 

★「Sinfonia1番」の核となるmotif モティーフは、

「ソ ラ シ」の長三度です。

「ソ ラ シ」の長三度は、即ち「C-Dur ハ長調」のドミナントを意味します。

 そして、この「ソ ラ シ」は、平均律1巻では「7番」 Prelude & Fugaの

 主要モティーフ
となっています。

 次の第2回アナリーゼ講座は「平均律1巻7番 Prelude & Fuga」

 を学びます。

 この7番を勉強するためには、「Sinfonia1番」の理解が

 不可欠
だったのです。

 

 

 

★このように、平均律第1巻以外の曲に光を当てることで、

平均律第1巻への理解を盤石にすることができます。

全4回のこのシリーズでは、第3回は、

Beethoven ベートーヴェン(1770-1827)の

≪Piano Sonata  op.27-2 「月光」の第1楽章≫と、

Chopin ショパン(1810-1849)≪プレリュード op.28-15「雨だれ」≫

の2曲です。

第4回は「平均律1巻第8番 プレリュードes-Moll、 Fuga dis-Moll」

予定しています。

 

★これは、8番の Preludeと Fugaが異名同音調であることを、

Beethovenと Chopin がどう学んだかを、まず明らかにすることにより、

1巻8番の音楽史を変えるほどの「凄さ」が、理解できるはずです。

その結果、Bachがなぜ、この革命的手法をとったかも、

実感として、納得できるはずです。

 


 

 ★20日の講座の前夜、国立能楽堂で、お能の「邯鄲」を鑑賞

してまいりました。

「邯鄲」は、中国の唐代の伝奇小説「沈中記」を基にしたお話。

旅の宿で一人の青年が、霊験あらたかな枕でひと眠りします。

夢の中で、彼は王位を授けられ、たくさんの妃に囲まれ、

無上の歓楽の日々、治世の栄華は五十年にも及び、

さらに千年の寿命を約束される霊薬が与えられるところで、

「粟飯が炊けた、起きなさい」と、宿屋の女主人が揺り起こします。

すべてはつかの間の幻影、一瞬の夢でした。

 

★私は、いつも 「Inventio & Sinfonia 1番」を弾きますと、

この短い一瞬に終わるような曲の中に、なんと豪華な音楽が

繰り広げられているか、と感嘆するのです。

弾き終わった後は、夢から覚めたような心地です。

 

★20日の講座は、前夜の「邯鄲」の心地よさが余韻として

残っている中、満員の聴講者の皆さまと共に、

Bachの世界を深めることができたと、思いました。

 

 

 

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 ●第2回中村洋子アナリーゼ講座≪「平均律1巻」と、この「1巻を源泉とする名曲」≫     

      ~第2回は、平均律第1巻「7番 Es-Dur 変ホ長調」~

・「プレリュード7番」は、『プレリュード』の範疇を大きく逸脱して
 『二重フーガ』の構造となっています。一体これは何故なのでしょうか。

・繊細にして軽やかな「フーガ7番」の応答主題の中に、バッハの平均律「序文」の
 真意が読み取れます。
https://www.academia-music.com/user_data/analyzation_lecture

■日 時: 2019.7.20 14:00~18:00

■会 場: エッサム本社ビル4階 こだまホール        

         住所:東京都千代田区神田須田町1-26-3 ℡03-3245-8787

■定 員: 70名

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●「平均律第1巻」の1番から6番までは、バッハの「序文」に則り、一本の太い道筋  

 をなぞるように、各曲の「プレリュード&フーガ」が粛々と進行していきました。  

 ところが、7番に至って、劇的な展開を見せます。70小節にも上る重厚長大な  

 「二重フーガ」の大伽藍を、何故バッハは「プレリュード」としたのでしょうか?

●その「プレリュード」に続く、本来の「フーガ」は初夏の小鳥の囀りのように、
 
 軽やかで繊細な37小節。鮮やかな逆転劇です。このフーガの変応技法

(alteration)による応答主題(tonal Answer)を勉強しますと、バッハが

「序文」で言いたかったことが、浮かび上がってきます。


●この「フーガ」は、底知れない嘆きに満ちた8番(プレリュード:es-Moll、   

 フーガ:dis-Moll)を準備しているのが、刻々と伝わってきます。

 8番は平均律第1巻で最も人気のある曲の一つです。

●私が書きました《Bärenreiterベーレンライター版平均律1巻楽譜に添付の   

 「前書きに対する注」》20~23ページ、33~36ページをお読み下さい。

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★平均律クラヴィーア曲集第1巻7番 ・プレリュード7番 Es-Dur  1~9小節は、

 絶え間なく動く16分音符の「テーマⅠ」、10~24小節は、4分音符と  

 2分音符によるゆったりとした「テーマⅡ」。25~70小節は、

 このテーマⅠ、Ⅱによる二重フーガです。バッハならば、サラサラ流れる流麗で

 典型的なプレリュードを、いともたやすく作曲できたはずですが、

 そうはしなかったことを考え抜きますと、平均律第1巻がまた一段とその輝きを

 増します。

 
・フーガ7番 Es-Dur  軽やかで清澄、一抹のメランコリーをたたえているフーガは、

 この上ない和声の極上パレットでもあります。この和声をよく理解し、

 身につけますと、バッハがコラールを歌い、コラールを作曲し、

 演奏し続ける一生涯を送ったことが、深く納得させられます。

 

 

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■講師: 作曲家  中村 洋子                           東京芸術大学作曲科卒。

・2008~15年、「インヴェンション・アナリーゼ講座」全15回を、  

 「平均律クラヴィーア曲集1、2巻アナリーゼ講座」全48回を、東京で開催。  

  自作品「Suite Nr.1~6 für Violoncello無伴奏チェロ組曲第1~6番」、  

  「10 Duette fur 2Violoncelli チェロ二重奏のための10の曲集」の楽譜を、              

  ベルリン、リース&エアラー社 (Ries & Erler Berlin) より出版。

  「Regenbogen-Cellotrios 虹のチェロ三重奏曲集」、   

  「Zehn Phantasien fϋr Celloquartett(Band1,Nr.1-5)     

 チェロ四重奏のための10のファンタジー(第1巻、1~5番)」をドイツ・     

 ドルトムントのハウケハック社  Musikverlag Hauke Hack  Dortmund       

 から出版。
 

・2014年、自作品「Suite Nr. 1~6 für Violoncello       

 無伴奏チェロ組曲第1~6番」のSACDを、Wolfgang Boettcher       

 ヴォルフガング・ベッチャー演奏で発表               

  (disk UNION : GDRL 1001/1002) 「レコード芸術特選盤」

                     

・2016年、ブログ「音楽の大福帳」を書籍化した   

 ≪クラシックの真実は大作曲家の自筆譜 にあり!≫     

 ~バッハ、ショパンの自筆譜をアナリーゼすれば、曲の構造、

  演奏法までも 分かる~ (DU BOOKS社)を出版。

・2016年、ベーレンライター出版社(Bärenreiter-Verlag)が刊行した  

 バッハ「ゴルトベルク変奏曲」Urtext原典版の「序文」の日本語訳と  

 「訳者による注釈」を担当。

   CD『 Mars 夏日星』(ギター二重奏&ギター独奏)を発表。      

 (アカデミアミュージック、銀座・山野楽器2Fで販売中)
 

・2017年「チェロ四重奏のための10のファンタジー(第2巻、6~10番)」を、   

 ドイツ・ドルトムントのハウケハック社                                  

 Musikverlag Hauke Hack Dortmund から出版。

・2017年、ベーレンライター出版(Bärenreiter-Verlag)刊行のバッハ    

 平均律クラヴィーア曲集第1巻」Urtext原典版の≪「前書き」日本語訳≫       

 ≪「前書き」に対する訳者(中村洋子)注釈≫

 ≪バッハ自身が書いた「序文」の日本語訳≫      

 ≪バッハ「序文」について訳者(中村洋子)による、詳細な解釈と解説≫を担当。


・2016~18年、「ゴルトベルク変奏曲・アナリーゼ講座」全10回、

 「平均律クラヴィーア曲集第1巻 第1~6番・アナリーゼ講座」全6回を、

  東京で開催。

 

 

 

 

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■Bachの「平均律序文」は何故、「ソ ラ シ」について触れなかったのか?■

2019-03-31 21:20:24 | ■私のアナリーゼ講座■

■Bachの「平均律序文」は何故、「ソ ラ シ」について触れなかったのか?■

~Sinfonia Ⅰの「ソ ラ シ」は ドミナントをも暗示している~

~4月20日「新アナリーゼ講座」第1回のご案内~

                  2019.3.31  中村洋子

 

 


★金木犀の枝の上を行ったり来たりしている小鳥。

メジロにしてはやや大柄、体の色も鶯色。

そうです、春の鳥ウグイスでした。

≪鶯の枝ふみはづすはつねかな≫ 与謝蕪村(1716-1784)

どうしてあのように落ち着きなく、せわしないのでしょう。

蕪村先生、少々大袈裟ですが、枝を踏み外さないのが不思議なくらい。

春の喜びを、全身で表現しています。

 

 

★4月20日の講座でお話します「 InventioⅠ & Sinfonia Ⅰ

インヴェンション 1番& シンフォニア1番」の勉強を続けています。

Bach 「Wohltemperirte Clavier 平均律クラヴィーア曲集」の「序文」を

解読してから、この二曲を学び直しますと、今まで何を聴き、

何を考えていたのかと、以前の自分を訝しく思う程、

全く新しい広大な世界が、眼前に広がってきました。

 

  

 

平均律第1巻「序文」の解釈の2、3ページを是非、お読み下さい。

https://www.academia-music.com/products/detail/159893

 

  

★『長3度即ち「ド レ ミ」と短3度「レ ミ ファ」を含む全ての全音と半音』

 について、詳しく解説しました。

 そして、3ページから8ページで、更に論を進めましたように、

それが、平均律1巻「1番C-Dur から 6番d-Moll の6曲1セット」の、

構成原理でもありました。
 

 

★それにつきましては、昨年2018年1、3、5、7、9、11月の

6回シリーズの講座で、1~6番までを詳しくご説明しました。

 

 ★さて、Bachが平均律1巻の序文を書いた1722年の翌年に完成された

「 Inventio & Sinfonia インヴェンション & シンフォニア」全30曲が、

この平均律第1巻の序文と、無縁の訳がありません。

全30曲という曲数は、「Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲」の、

変奏曲の数とも一致しています。

即ち、未来をも凝視するBachの鋭い視線が、そこには存在します。

★私は今まで、「Inventio & Sinfonia インヴェンション& シンフォニア」

全30曲は、平均律1巻を蒸留し、要約し、纏め上げたものとばかり

思っていましたが、認識が浅すぎたと、言わざるをえません。



 


★さて、平均律1巻「序文」に戻りますと、

長3度即ち「ド レ ミ」と、短3度即ち「レ ミ ファ」の、

「ド レ ミ」、「レ ミ ファ」について、別の視点から見ることが

できます。

長3度即ち「ド レ ミ」は、「トニック」主和音を暗示し、





短3度即ち「レ ミ ファ」は、「サブドミナント」下属和音をも、

暗示しているのです。

 

  

下属和音とは、本来音階の(上)属和音、即ち主音の5度上の

属和音Ⅴに対し、主音から5度下の下属和音Ⅳを、意味します。

通常5度上の上属和音は、「上」を省略して「属和音」と言います。

 

 

 

 

サブドミナントは、機能和声(functional harmony)では、

ドミナントに進行する機能を持ちます。

ドミナントは、トニックへと進行する機能を有します。

 

 

 

下属和音は「Ⅳ」のみですが、下属和音Ⅳの代理の機能をもつ和音を、

下属音和声(subdominant harmony)と呼び、これには「Ⅱ」「Ⅵ」等も

含まれます。



Bachの「序文」は、トニック「ド レ ミ」とサブドミナント機能の「レ ミ ファ」

に、言及しています。

以前からの疑問は何故、「ソ ラ シ」が暗示する属和音について、

あえて書かなかったか、ということです。

★それに対する見事な答えは、 Sinfonia  シンフォニアⅠの自筆譜と、

Edwin Fischer エトヴィーン・フィッシャー(1886-1960)の校訂版

(Wilhelm Hansen Edition ~ Dreistimmige Inventionen)を、

手掛かりにして、見つけ出すことができます。


  

 

★エトヴィーン・フィッシャー(1886-1960)の Sinfonia 校訂版は、

「Dreistimmige Inventionen 3声のインヴェンション」という、

古い表記になっていますので、楽譜をお探しの際は、

お気をつけてください。

https://www.academia-music.com/products/detail/158499
https://www.academia-music.com/products/detail/32389

 

 ★フィッシャーは、この Sinfonia 1番について「優雅な落ち着いた

ニュートラルな作品である」とも、書いています。

Allegro - Fliessend(Fluently)流れるようによどみないアレグロで

弾くことも、指示しています。

落ち着いた、ニュートラルな、流れるような性格は、

どこに起因するのでしょうか。

自然に逆らわないで流れるように進行する、

そうです、これこそが「ドミナント(属和音)」の役割です。

「ソ ラ シ」の長3度です。

 


 

Sinfonia Ⅰの冒頭1小節目上声は、「g¹ a¹ h¹」が、

堂々と登場します。

 

★その「g¹ a¹ h¹」の「h¹」は、C-Durの導音ですので、

自然にサラサラと、主音「c²」に流れます

その4つの音により形成されるmotif モティーフ「g¹-a¹-h¹-c²」は、

1小節目下声3拍目から2小節目下声1拍目にかけて、

拡大形「g- a-h-c¹」のカノンとなります。

 

 

 

 ★続いて、2小節目内声の2拍目「g¹-a¹-h¹-c²」に、

カノンが受け継がれ、春の小川のようにサラサラ Fluentlyに

流れます。

 


 

★ちなみにこの2小節目1、2拍目内声について、

フィッシャーは、Fingeringにより、このように注意喚起しています。

 

 

 

  

2拍目「g¹-a¹-h¹」は、重要なドミナントmotif。

2小節目1~2拍の内声「c¹-d¹-e¹-f¹」は、 InventioⅠのテーマから

展開されていることも、理解できます。

 

 

 

Sinfonia Ⅰの2小節目内声3拍目「h¹-c²-d²」に、フィッシャーが

わざわざ書く必要のない「1-2-3」のFingeringを記したのも、

 InventioⅠの1小節目4拍目から2小節目1拍目の

「h¹-c²-d²」を想起せよ、と言っているようです。



★もちろん、 InventioⅠと Sinfonia Ⅰは、平均律1巻C-Durの

 Fuga と三位一体です。

 

 

 
★これは、Bachの当初からの計画でしょう。

その中で、この SinfoniaⅠのドミナントを暗示する「ソ ラ シ」が、

どのような役割をもち、どのように Sinfonia Ⅰを構成しているか、

それを、どう解釈し、演奏や鑑賞につなげていくかを、

講座で分かりやすくお話いたします。

https://blog.goo.ne.jp/nybach-yoko/e/22472ff66e26d100a0530320d5e80299

 


 

 

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■「インヴェンション1番」自筆譜の不思議な記譜レイアウト、そこに構造を解く鍵が■

2019-03-04 22:46:36 | ■私のアナリーゼ講座■

■「インヴェンション1番」自筆譜の不思議な記譜レイアウト、そこに構造を解く鍵が■
~新アナリーゼ講座、Bach「平均律クラヴィーア曲集第1巻」と、この「1巻を源泉とする名曲」(全4回)≫~              

             2019.3.4   中村洋子  

 


                   
(水ぬるむ池)

                                 

★3月3日は雛祭り、6日は啓蟄、いよいよ春です。

3月3日は、旧暦では1月27日、

旧暦の雛祭りは、ことしは4月7日になります。

「桃の節句」は、4月7日の方が相応しいように思えます。


★早春の蝋梅からいま盛りの梅、そして桃、桜と

春の花リレーは続きます。


★≪菜の花の黄をまじへけり雛あられ≫ 久保田万太郎

緑、白、桃色の「雛あられ」の上に、黄色の菜の花の花びらが、

はらはらと、舞い落ちます。

うららかな春の幻想的な句です。


★菜の花の咲く頃まで、もう少し、自然素材のクチナシ、ヨモギ粉末、

赤ビートで彩色された「雛あられ」の封切りを、待ちましょう。

 




4月20日から、アカデミアミュージックでの新講座が始まります。

≪バッハ「平均律クラヴィーア曲集第1巻」と、この「1巻を源泉とする名曲」
                              (全4回)≫
https://www.academia-music.com/user_data/analyzation_lecture
https://www.academia-music.com/images/pc/images/2019-1_Analyse.pdf


★今回、講座で取り上げます「Inventio1番 & Sinfonia1番」は、

どちらも「左、右ページとも各3段」が、基本のレイアウトです。

ここで驚くべきことに、各段最後(右端)は、小節の終わりである小節線では

終っていません。
(Inventio1番の左ページ2段目と、Sinfonia1番の左ページ3段目を除く)。


★例えば、「Inventio」1番の1段目右端は、4小節目3拍目で終わり、

残りの4拍目は、2段目冒頭から始まっています。

小節線ごとに整然と、区切られている実用譜を見慣れた目には、

奇異に感じられます。

 

 


★「Inventio & Sinfonia」の各15曲は、上記のように、

格段の終わりが、きれいに小節の終わりで閉じられてはいないことが、

非常に多いのです。


★小節線と段落分けが完全に一致しているのは、

「Inventio」の3、4、9番、「Sinfonia」の11番の4曲のみです。

むしろ、この4曲が例外といえます。


★「 Inventio」の3、4番と、「 Sinfonia」の11番は、

8分の3拍子ですから、小節を分断して記譜することは、

極めて難しいともいえます。



 

★4曲中の残りの9番は、4分の3拍子。

この曲集の「白眉」とも言える「4分の3拍子」です。

 

 

★「Inventionen und Sinfonien  インヴェンションとシンフォニア」

につきましては、これまで、東京、横浜、名古屋、金沢で既に、

講座を開催しましたが、勉強すればするほど、その奥深さに

圧倒されていきます。

「平均律第1巻」の集大成とも言えます。

 

 


どこが「集大成」なのかを解くカギは、平均律第1巻の「序文」にあります。

これについては、私が解説を書きました

  【ベーレンライター原典版  
    バッハ、平均律クラヴィーア曲集 第1巻
              日本語による詳細な解説付き楽譜】       http://www.academia-music.com/
http://www.academia-music.com/shopdetail/000000177122/

の「解説」をお読み下さい。

 

★さて、「平均律クラヴィーア曲集1、2巻」の自筆譜が、

縦長の楽譜に記譜されているのに対し、

「Inventio & Sinfonia インヴェンション & シンフォニア」は、

各曲がおよそ横23㎝弱、縦17㎝弱の横長五線譜です。

1ページが、B5版のコピー用紙を、一回り小さくしたサイズです。


★どの曲も、見開き2ページに記譜されています。

各ページ3段ずつの計6段が、基本レイアウトですが、

「Inventio」の2、5、6、12、13番は、右にページ追加の1段が

ありますので、左ページ3段右ページ4段の計7段です。


★「Sinfonia」2番は、左右のページとも追加の1段があり、

左4ページ、右4ページの計8段です。

「Sinfonia」の3、6、7、9、11、12、15番は、右ページに追加の1段が

ありますので、左3段、右4段の計7段です。


★それ以外の「Inventio」1、3、4、7、8、9、10、11、14、15番の10曲と、

「Sinfonia」の1、3、4、5、8、10、13、14番の8曲は、

左右ともに、3段ずつの計6段が基本レイアウトです。

 

 


何故 Bachは、このように小節を中途半端に、分断し、

段落を改めたのか・・・それを考えることが、

「曲の構造を知り演奏にどう結びつけるか、あるいは、どう鑑賞すべきか」の、

最短の手引きとなる、と言えます。


★お話を「Inventio& Sinfonia」1番に戻しますと、

Edwin Fischer エドウィン・フィッシャー(1886-1960)の校訂版

(Edition Wilhelm Hansen)を、勉強しますと、

Bachの素晴らしい counterpoint 対位法が、まざまざと眼前に迫ります

https://www.academia-music.com/products/detail/32389
https://www.academia-music.com/products/detail/158499


★一例を挙げますと、「Inventio」1番の上声3小節目の

Fingeringフィンガリング は、このようになっています。

 

 

★1拍目の「e¹, a²」を「1、4」の指にしますと、それに続く Fingeringは、

ごく自然に、こうなる筈です(赤い色)。

 

 

★何も3拍目3番目の16分音符「e²」と、4拍目冒頭の「c²」に、

各々「1」、「1」と書く必要はないはずです(緑色で囲った音)。

それをあえて「1」、「1」と書いたのは、その音こそ

≪大切な音です、よく注意してください≫と、

Fischerが注意喚起しているのです。

その大切な音「e² d² c²」は、実は、冒頭1小節目1拍目上声開始音の、

「逆行形」になります。

 

 

★続く4小節目上声を見ますと、

 

 

何と9つもFingeringが、記されています。

どれも、至極当たり前のFingeringです


★Fischerは何故、それをこんなに詳しく書き込んだのでしょう。

上述の3小節目の「e² d² c²」の「1」、「1」と、よく似ているのが、

4小節目1、2拍目の「c² h¹ a¹」の「1」と「1」でしょう。

 

 

★この2つをつなげますと、「e² d² c²」「c² h¹ a¹」

 

 

当然、次に期待される音列は、

 

 

「e² d² c² h¹ a¹ g¹ fis¹」の下行音階が、成立します。

さあ、この下行音階を、Bachのレイアウトからどう読み解き、

演奏するか。

「Inventio」1番の巨大なエネルギーが、沸々とたぎっています。

講座で、詳しくご説明します。

 

 

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▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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■2019年は、≪「平均律1巻を源泉とする名曲」のアナリーゼ講座≫■

2019-01-01 17:20:16 | ■私のアナリーゼ講座■

■2019年は、≪「平均律1巻を源泉とする名曲」のアナリーゼ講座≫■
~第1回:Inventionen und Sinfonien 全30曲は、
                    平均律1巻大宇宙の凝縮~

                                 2019.1.1  中村洋子
  



★≪我に許せ 元日なれば 朝寝坊≫1899年(明治32年)
                    夏目漱石(1867-1916)

新年おめでとうございます。

漱石はこの句を詠んだ翌年1900(明治33)年9月、ヨーロッパに

渡りました。

明治のお正月はどんな様子だったのでしょう。

元旦の朝寝坊は、120年たった今も、変わりありませんね。

災害のない、穏やかな一年となるように願っております。


★本年のアナリーゼ講座は、新シリーズが4月20日(土)スタートです。

2016~17年の二年間全10回シリーズで、

「Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲」アナリーゼ講座を、

開催しました。

ゴルトベルク変奏曲は、主題である「Aria」と30の変奏曲から成っています。

1回につき、3曲ずつ変奏曲を、取り上げました。

1曲はほぼ32小節前後の短い変奏曲ですが、その中に、

クラシック音楽の、ほとんどすべての要素が網羅されているのではないか、

と思うほど、密度の濃い作品です。


★10回の講座を終えた後、Bachを学ぶうえでの視点が、

さらに、ピンポイントで、焦点が合ってきたと感じております。

2018年は、6回シリーズで「平均律第1巻1~6番」の

アナリーゼ講座を、開催しました。

平均律第1巻」のBach≪ 序文≫の日付は、1722年です。

「Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲」は、1741~42年の出版


★平均律第1巻でBachが試みたこと、それが人類の宝として結実したこと。

そのほぼ20年後、その「平均律第1巻」をどう発展させたか、

「Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲」で、明確に分かります。


★平均律第1巻でBachが試みたことにつきましては、
   私が書きました≪「Bärenreiterベーレンライター版
        平均律第1巻楽譜」添付の解説≫を、お読み下さい。
    https://www.academia-music.com/products/detail/159893

 


2019年のアナリーゼ講座は
■バッハ「平均律クラヴィーア曲集第1巻」と、
      この「1巻を源泉とする名曲」のアナリーゼ講座(全4回)です。
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第1回: Inventio & Sinfonia インヴェンション & シンフォニア
                           1番 C-Dur

 ・インヴェンション & シンフォニア は、平均律1巻の真髄を抽出
 ・平均律1巻「序文」を読み解くカギはインヴェンションにあり
≪インヴェンションとシンフォニア全30曲は、平均律1巻大宇宙の凝縮≫

■日時:2019年4月20日(土)  14:00~18:00
■会場:エッサム本社ビル4階 こだまホール(地図)
   住所 東京都千代田区神田須田町1-26-3
   TEL 03-3254-8787
 東京メトロ神田駅 5番出口 徒歩1分
JR神田駅 北口 徒歩3分 ※エッサム1、2号館ではありません 
https://www.academia-music.com/user_data/analyzation_lecture
https://www.academia-music.com/

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■「平均律第1巻」序文の日付は1722年。意外に思われるかもしれませんが、
「インヴェンションとシンフォニア」は翌年の1723年。つまり、インヴェンションのほうが後です。
バッハはインヴェンション≪序文≫で、 この曲集は「音楽愛好家や学習者の
ための手引きの曲集」としています。しかし、バッハの溢れる創造力は、
インヴェンションを単なる「愛好家の手引き」にとどめず、平均律1巻の真髄
すべてを抽出し尽しました。
逆に、この曲集を学んでこそ、平均律1巻が理解できるともいえます。

■インヴェンション1番の冒頭「c¹-d¹-e¹」の長三度は、平均律1巻1番
プレリュード冒頭「c¹-e¹」の長三度音程と重なります。


 


この「c¹-d¹-e¹」に続く「f¹-d¹」の短三度は、
バッハの平均律1巻「序文」を
示唆し、
平均律1巻6番 d-Moll のモティーフを暗示します。

 



シンフォニア1番冒頭上声の「g¹」から始まる音階の後半
「c²-d²-e²-f²」を、
1オクターブ下げますと、
平均律1巻1番フーガの冒頭で提示される主題と、
同じになります










このように、インヴェンション&シンフォニア1番には、

平均律1巻1番が絶えず顔を出してきます。
決して偶然ではありません。

バッハはそれにより、何を訴えたかったのでしょうか?


 

■豪壮な大伽藍のような平均律第1巻「7番 Es-Dur」と 、
平均律第1巻の中で屈指の前衛的な作品でありながら、
底知れぬ嘆きに満ちた「
8番( Prelude :es-Moll、Fuga:dis-Moll)」
の講座は、
少しお待ちいただきますが、
このシリーズの後の方で勉強いたします。

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Inventio インヴェンション 1番 C-Dur
この短く愛らしい、わずか22小節の Inventio 1のどこに、
平均律の頂点に
屹立する凄さが、あるのでしょうか。
≪ベーレンライター版「平均律第1巻」楽譜の
添付解説
(中村洋子著)≫をお読み下さい。

きっと、はたと膝を打たれることでしょう。
この曲を和声、対位法の観点からも
詳しくお話いたします。
いままで何気なく弾いたり、聴いたりしていた 「Inventio 1」 を、
より深く理解することがバッハの音楽に、
また一歩近づくことなのです。

Sinfonia シンフォニア 1番 C-Dur
何という清明な曲でしょうか。
上声8小節目後半から9小節目にかけての「a²-g²-fis²」は、

清々しい大気に響きわたる、トランペットを彷彿とさせます。


 


色彩に満ちた全21小節、
その華やかな音のパレットの根源を、
詳しく探ります。平均律1巻が厳かに大地から、

浮かび上がってくることでしょう。
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★アカデミアミュージックのホームページに、
私のアナリーゼ講座のページが、
新設されました。

https://www.academia-music.com/user_data/analyzation_lecture

https://www.academia-music.com/

過去の講座記録も、各々のクリックより、
案内文を読むことができます。

 

 


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■Bachは何故、平均律1巻を作曲した後にインヴェンションを作曲したのか■

2018-11-24 20:38:42 | ■私のアナリーゼ講座■

■Bachは何故、平均律1巻を作曲した後にインヴェンションを作曲したのか■
~新アナリーゼ講座第1回は、来年4月20日~
~平均律1巻1番とインヴェンション1番との緊密な関係~
           2018.11.24   中村洋子

 

 


★山の紅葉は、いまが盛り、

雪の便りが聞かれるようになりました。

冬がいよいよやって来ます。


★≪よく眠る夢の枯野が青むまで≫ 金子兜太(1919-2018)

素直に読みますと、お腹一杯にドングリや山の秋の実を食べ、

冬眠に入ろうとする熊さんを、想像してしまいます。

春が来るまで、温かい洞穴でぐっすり眠る・・・。

 

 


★しかし、「枯野」の前の「夢の」という形容で、

≪旅に病んで夢は枯野をかけ廻る≫ 芭蕉(1644-1694)

否が応でも、芭蕉を思い起こさせます。


★旧暦10月12日が命日、太陽暦では11月半ばでしょうか。

この句が、芭蕉の死の床で詠まれたことを考えますと、

兜太さんの句も、明るいほのぼのとした情感だけ

ではなさそうです。


★兜太さんは、第二次世界大戦で兵士として参加させられ、

辛酸を嘗め尽くしておられます。

前々回のブログでご紹介しました香月泰男(1911-1974)のシベリアとは、

反対に南方です。

晩年になって、やっと体験を話すことができるようになった程、

極限状態を味わわれています。


★そういう経歴をふまえ、この句を読みますと、

「よく眠る」が、誰であるのか?

南方で散った日本兵のことでもあるように、私には思われます。


★「よく眠れ」でなく、「よく眠る」という強い意志さえ感じられます。

夢の枯野が青むまで、

枯野こそ、戦争が絶えることのない、この現世ではないか?

枯野が平和に青むことがあるだろうか?

人類永遠の問いがあるようにも感じます。

 

 


★先週11月7日は、平均律第1巻第6番 d-Moll プレリュード&フーガの

アナリーゼ講座でした。

ことしの1、3、5、7、9、11月に、1番から6番まで、

1巻最初の1セット6曲について、詳しくお話いたしました。


★1回4時間ですから、計24時間(休憩も含みます)、

お話し続けたことになります。

しかし、それでも、まだまだBach先生の音楽の扉の前に、

やっと、たどり着いたというのが、実感です。


★ここで、私の講座は暫く冬籠りいたしまして、

作曲に励みます。

春爛漫の来年4月20日から、新シリーズのアナリーゼ講座を、

始めます。


★今回は、2019年4月、7月、10月、2020年1月の4回を、

予定しております。

第1回は、平均律1巻を"蒸留し、抽出した"曲集である、

「Inventio & Sinfonia インヴェンション&シンフォニア」各1番に

光を当てます。

Bachは何故、平均律1巻を作曲した後に

「Inventio 1番 C-Dur、Sinfonia 1番 C-Dur」 を作曲したのか?


★平均律1巻と、「Inventionen und Sinfonien

インヴェンションとシンフォニア」との関係を、明らかにします。

 

 


★11月7日(水)、国立能楽堂で「狂言 千鳥」(小アド 野村萬 1930-)、

「能 三井寺」(シテ 粟谷能夫 1949-を、

16日(金)は「狂言 狐塚」(アド 山本東次郎 1937-

「能 小鍛冶」(シテ 浅見重好 1960-を、鑑賞いたしました。


★どれも素晴らしく、堪能いたしました。

「小鍛冶」は、「剣を打て」という勅命を受けた

名工・三条小鍛冶宗近が、自分と同等の力量をもつ相槌が

いなくては、剣は打てないと悩み、稲荷明神に参拝したところ、

稲荷明神の化身が現れ、相槌を務めてくれたため、

見事に、名剣を打ったというお話。


★「相槌を打つ」、鍛冶が交互に槌を打ち合わすことなのですね。

相手の話に頷いて受け答えをするあの「相槌」の語源です。

 

 


★この同等の力量を持つという相槌は、

「Fuga フーガ」のストレッタについても、言えます。

既に日本語になっている「フーガのストレッタ」は、本来、

「stretto(英、伊)、strette(仏)、Engführung(独)」と、

表記します。

英、伊語では「ストレット」です。

独の「eng」は、「狭い、間隔の詰まった、密な」という形容詞の

Engführungで、それがストレッタとなります。


★イタリア語の「stretta」は、(英)stretto、

(独)「schneller Schlussteil」、(仏)「strette」で、

「曲の終結部でテンポを速め、緊張度を増す部分」という意味です。


★このように、ストレット、ストレッタは、少々紛らわしいのですが、

慣習的に使われているフーガの「ストレッタ」(本来はストレット)

について、少しお話いたします。

 

 


ストレッタは、フーガで使われるカノンの技法の一種です。

カノンという大きな範疇の中に、ストレッタは存在します。

ですから、「カエルの歌が聞こえてくるよ」の輪唱を、

「カノン」とは言いますが、「ストレッタ」ではありません。


★それでは、フーガで使われるカノンは、皆ストレッタか?

と言いますと、これもまた、違います。

先ほどの「相槌」の例にもありますように、フーガのストレッタとは、

同等の力量をもった Subject主題や、Answer応答、

Counter-subject対主題等が、まだ完全にすべて奏されていないうちに、

次の同等の力量をもったSubject主題なり、

 Answer応答なり、Counter-subject対主題が出現してくる部分

のことを、指します。


平均律1巻6番 d-Moll フーガを例にとりますと、

わずか44小節のフーガの中に、ストレッタの部分は6ヵ所もあり、

その6ヵ所すべてを合わせますと、27小節にもなります。

例えば、第1ストレッタの始まり部分は、以下のようになります。

 

 


フーガ6番:ストレッタの数が多いのみならず、さらに、なんと

曲が始まって間もない12小節目からストレッタが始まっているという、

この異様に緊迫したフーガ6番は、まさしく、

異例中の異例であるフーガ1番 C-Dur と、開いた扇の両端を

形成していると、言えましょう。


その扇の内側に、2、3、4、5番が物凄いエネルギーで、

互いに互いを支え合っています。

次回アナリーゼ講座では、それについて、

 Inventio & Sinfonia インヴェンション & シンフォニア1番から、

解明していきます。

 

 

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■平均律1巻6番フーガ、8小節目から始まる謎のテーマ■

2018-11-03 20:02:40 | ■私のアナリーゼ講座■

■平均律1巻6番フーガ、8小節目から始まる謎のテーマ■
~謎のテーマが解明できれば、平均律の核心にまた一歩迫る~
  ~平均律1巻6番d-Moll アナリーゼ講座のご案内~
          2018.11.3  中村洋子

 

 


★霜月11月になりました。

来週11月7日は、いよいよ立冬です。

≪寒菊や日の照る村の片ほとり≫   蕪村

郊外に車で行きますと、よくこのような風景を目にします。

農家の庭の片隅に、素朴な小菊。

決して、品評会に出すような大輪の菊ではありません。

菊に暖かく、陽の光が当たっています。


★前回のブログ「平均律1巻6番前奏曲の半音階進行は、

指の練習曲にあらず」で、蕪村について書きました。

画家であり、詩人でもある蕪村の句は、絵画的です。

文学の世界に、絵画が侵入しています。


★まだ、学校に通っていた頃、画家「香月泰男遺作展」を、

国立近代美術館で見ました。

シベリアシリーズ(シベリアでの抑留体験を絵画に昇華したもの)

中で、見る者の魂が凍るような作品がありました。


★真っ黒な背景に、点々と雪を象徴した白い点が、

ポトリポトリと、落とされているだけです。

しかし、そのモノクロの世界に、シベリア抑留の凄まじい体験、

言葉ではかえって伝えられないような、恐ろしい戦争の現実が、

凝縮されていました。

 

 


★同じように、一見モノクロにしか見えない蕪村の60歳過ぎての

絵画「夜色楼台図(やしょくろうだいず)」

静かに寝静まった家々。

ほんのり暖かみのある墨色の空。

そこに、なんとなく楽しくなるような、こころときめくようなボタ雪、

大きさも、降る方向も異なるボタ雪が、舞っています。

ボタ雪は、胡粉をまき散らしただけです、見事です。

遠くに雪で覆われた山々。

それすらも寒の辛さより、優しさを感じさせる柔らかい稜線です。

 

★私は、この作品「夜色楼台図」に触発され、

チェロ独奏のための小品を作曲しました。

私のCD「無伴奏チェロ組曲3、2番」に、集録されています。


★このCDは、銀座・山野楽器2階クラシックCD売場と、

アカデミアミュージックで、お求めいただけます。

残念ですが、SACDの無伴奏チェロ組曲には集録されていません。

 

 


★香月泰男の極限の悲しみを描いた雪。

その悲しみの「雪」が、再び"降る"ようなことがなく、

蕪村の、心に春の暖かさを予感させる「雪」が、

この冬も、穏やかに降って欲しいものです。

 

★前回ブログでは、11月17日のアナリーゼ講座の

「平均律第1巻」6番 d-Moll のプレリュードについて、書きました。
https://www.academia-music.com/news/74


★17日の講座では、初めに「プレリュード」の和声と、

その和声が形成していく 「counterpoint 対位法」のご説明をします。

その後、何故 Bachのフーガが、他の作曲家のフーガを

寄せ付けない高みにあり、傑出しているのかについて、

お話しいたします。


★具体的に、一音一音、一小節一小節を、じっくり検討し、

味わっていきます。

その過程を経ますと、

Bachのフーガが、「調性」そのものを解明していく手段であることも、

難なく分かっていきます。

 

 


★それでは、どこにそのポイントを絞って、フーガを見ていけば

よいのでしょうか。

フーガとソナタの決定的な違いは、フーガはテーマが一つ、

ソナタはテーマが二つあることです。

フーガのテーマ(主題と応答)の、主題と応答との関係は、

次のようになります。

「主題(主唱)Subject」 がまずあり、そのSubjectを5度上

(または4度下)で模倣した「応答(答唱)Answer」が、

出現する、ということです。


★一般的に、「2声のフーガ」では、冒頭で主調によるSubjectが

提示された後、 Answerが出てきます。

Subject1回、Answer1回の計2回です。

「3声のフーガ」では、冒頭の主調によるSubjectの後、

Answerが続き、もう一度 Subjectが提示されます。

Subject→Answer→Subjectの計3回です。


★「4声のフーガ」では、これに更にもう一回Answerが提示されます。

同様に、「5声のフーガ」は、更にSubjectが追加されます。

このように、フーガの声部の数と、冒頭の主調提示部の主題の

提示回数は一致します。

これを第1提示部 1st Exposition といいます。

Subjectの「声部」と、Answerが提示される「声部」は、

同じではなく、すべて異なります。


2声のフーガの例として、「平均律第1巻」10番e-Moll を挙げますと、

冒頭Subjectは「上声」で提示され、Answerが「下声」で出現します。

これが第一提示部です。

4声のフーガの例として、「平均律第1巻」5番D-Dur では、

まずバス声部にSubject、次にテノール声部にAnswer、

そして、アルト声部のSubjectが続き、最後にソプラノ声部の

Answerが奏せられます。

バス→テノール→アルト→ソプラノの各声部が網羅されています。

 

 


★では、この6番d-Moll フーガは、どうなっているのでしょうか。

6番は、3声のフーガですから、Subject→Answer→Subjectと、

3回の提示があるはずです


★まず、上声(ソプラノ)で、Subjectが提示されます。

 

 

次に、内声にAnswerの提示があります。

 

 

そして、下声(バス)にSubjectが登場し、

 

 

★これで、第1提示部は終了していいはずですが、

8小節目上声に、主調のSubject(レから始まる)でもなく、

主調のAnswer(ラから始まる)でもないテーマが、配置されます。

 

 

このフーガの場合、AnswerはSubjectを逐一正確に

5度上(4度下)に模倣するreal Answer(真正答唱)ですので、

 

 

この8小節目から始まるテーマが、SubjectかAnswerかを、

その旋律の形の上から、判断することはできません。


★しかし、この8小節目から始まる不思議なテーマが、

「Subject」か「Answer」か、どちらかであるかを解明できますと、

この6番が、1番から6番までを総括するエネルギーに満ちた曲

であることすら、分かってくるのです。

さらに言いますと、この不思議なテーマの解明で、

平均律の核心に、また一歩迫ることができるのです。

この点について、講座でじっくりとご説明する予定です。

 

 


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■平均律1巻6番前奏曲の半音階進行は、指の練習曲にあらず■

2018-10-29 20:41:56 | ■私のアナリーゼ講座■

■平均律1巻6番前奏曲の半音階進行は、指の練習曲にあらず■
~半音階の和声を理解すると、美しい調性進行が、整然と姿を現す~
   ~平均律1巻6番d-Moll アナリーゼ講座のご案内~


            2018.10.29 中村洋子

 

 

★秋も深まりました。

月の光が皓皓と、夜空に冴え渡っています。

≪秋をしむ戸に音づるる狸かな≫ 蕪村

「秋をしむ」は「秋惜しむ」、「音づるる」は「訪れる」の意。

月の光に誘われて、戸口に立っている狸さん。

トントンと木戸を叩いたのでしょうか。

なるほど「音づるる」ですね。


★≪戸を叩く狸と秋を惜しみけり≫ 蕪村

狸と並んで月を眺め、秋を惜しむ蕪村先生、

はて、本当に一緒に座って眺めたのか、

でも、その光景が目に浮かぶようですね。


★俳諧と絵画に、屈指の才能を発揮した、

天才・与謝蕪村(1716-1783)。

彼の蕪村自賛像(自画像)、

かじかむような寒い夜、抜け落ち、まばらになった歯で、

凍った筆先を噛みながら、筆を構えている横顔。

暖を取る炭にもこと欠いた生活だったのでしょう。

しかし、その芸術はなんと伸びやかで、

心の豊饒の産物だったことでしょう。

 

                     (むかご飯、お茶碗:松本芳実)


★私の方は、秋を惜しむ狸さんと交流する余裕もなく、

11月17日(土)の、「平均律第1巻」6番 d-Moll アナリーゼ講座

勉強中です。
https://www.academia-music.com/news/74


★今回は、「平均律第1巻」1~6番までの、総まとめとなります。

この6番の中に全24曲のエッセンスが、凝縮しているともいえます。

講座では、再度基本に立ち戻り、Bachにとって、「和声」とは何か、

「フーガ」とは何かを、具体的に分かりやすくお話する予定です。


Bachの和声は、 「counterpoint 対位法」 と

がっちり、手を結んで形成されています。

それを読み解くには、「機能和声(functional harmony)」に

立ち戻り、

Bachの和声を凝視し、和音の連結を解釈する必要があります。


★しかし、それは決して難しいことではありません。

恐れることでもありません。

「機能和声」とは、何かといいますと、

例えば「音階の第7音(導音)は主音に進行する」という機能がある、

という規則のことです。

 

 

★その機能は、属和音の第3音である導音に受け継がれ、

「属和音Ⅴは、主音を根音とする主和音Ⅰを、強く志向する、

という

 

 

耳で聴けば、当たり前過ぎるほど、当たり前のことなのです。


★ただし、20世紀の「十二音技法twelve-tone technique」

による「十二音音楽 twelve-tone music」で、使われる

「十二音音階 twelve-note scale」になりますと、

 

 

1オクターブの中に存在する12の音階は、どれも機能をもたず、

対等です

このため、導音も属和音も存在しません。

 

 


★例えば、「cis 嬰ハ音」と「des 変ニ音」は、異名同音ですが、

機能和声では、「cis」と「des」は全く違う機能をもちます

 

 

★しかし十二音音楽では、この音が「cis」と記譜されようが、

「des」と記譜されようが、何ら違いはないのです。


★お話を戻しますと、今回の「平均律第1巻」6番d-Moll の

プレリュードを詳しく、分かりやすく和声分析し、

それをピアノによる音で耳から、そして、その分析した和音を

テキストにより、目からご説明する予定です。

それにより、Bachの機能和声がBachの対位法と、

表裏一体であることを、深く実感できると思います。


★「平均律第1巻」6番 d-Moll プレリュードの和声について、

少し、ご説明しますと・・・

24、25小節目の絶壁から深い滝壺へと、ほとばしる奔流となって

流れ落ちるような「半音階」、

 

 

これを24小節目上声16分音符10番目の「h²」から、

和声を要約し、三和音にまとめますとこのようになります。

 

 


★先ほど、十二音技法のことを書きましたが、

この技法は、機能和声から逃れるため、1オクターブを構成する

12個の半音(この場合、音高は問いません)を、使い切るまで、

もう一度その同じ音を使わない、というお約束があります。

 

 


★一つの例を挙げますと、

冒頭の「c」音を使ったら、残りの11個の半音階の音を使い切った後に、

やっと「c」音を、再度使うことが出来ます。

残りの11個を使い切る前に、その「c」音を登場させますと、

その「c」音が、聴く人にとって強く意識され、何らかの「調性」を、

感じさせてしまうからです。

 

 


★ところが、三和音にまとめたプレリュード24~25小節目の上声は、

(赤い線を引いた音を重複していますが)12の半音を、

ほぼ、満遍なく使い切っているのです。

 

 


★それでは、これは機能和声ではなく、十二音技法のような「無調」と

とらえるべきなのでしょうか

答えは「否」です。

この半音階的に連続して下降する三和音は、

一つ一つ立派な調性の役割を担っているからです。


譜例冒頭の「f²-gis²-h²」の三和音を、説明いたしますと、

このプレリュードの主調「d-Moll」の、ドッペルドミナント

(属々和音)の属九であり、正確にはその属九の根音を

省略した第4転回形です。

 

 

★続く「e²-g²-b²」の三和音は、同じ主調d-Mollの「Ⅱの和音」。

 

 


★次の「dis²-fis²-a²」の三和音は、主調d-Mollの「属調a-Moll」の

ドッペルドミナント(属々和音)の属七で、

その属七の根音を省略した第一転回形です。

 

 


★このように三和音を、丁寧に一つ一つ解明していきますと、

なんとも美しい調性の進行が、整然と姿を現します。

この半音階進行による、急峻な滝の流れのような16部音符を、

「それ! 指の練習曲だ」とばかりに、

何の分析もなく、弾き飛ばすことが、

いかにBachの世界からかけ離れているかが、

よく、実感できると思います。

 

 


★知人からよく聴く話ですが、日本の多くのコンクールでは、

平均律1巻5、6番を「オリンピック競技のように、速さを競って弾く」

そうです。

解釈の仕方によっては、速く弾くことも十分あり得ることです。

しかし、そうではなく、和声への無理解を糊塗するための

"スピード違反"は、反則であると思います。

これは、コンクールに生徒を"出品"した先生の「音楽」に対する、

つまりは「Bach」に対する不勉強、無理解、尊敬不足、

さらに名誉欲からくる傲慢さとも言えるでしょう。


★このように日本では、「指の練習曲」のような"Bachもどき"

はびこっているのが、現実です。

この和声進行を一例としまして、全26小節から成る

6番プレリュードの和声を、一音一音つぶさに理解し、

体得することこそ、Bachの演奏法に直結する勉強法です。

それを、11月17日講座で詳しくお話いたします。

 

 


※copyright © Yoko Nakamura    
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▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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■平均律クラヴィーア曲集は、book ではなく globe です■

2018-10-21 16:34:27 | ■私のアナリーゼ講座■

■平均律クラヴィーア曲集は、book ではなく globe です■
~「第6回平均律第1巻6番・アナリーゼ講座」のお知らせ~
              2018.10.21   中村洋子

 

 

★私の好きな句
 ≪新米はまだ艸(くさ)の実の匂い哉≫   蕪村

深山からの清冽な清水で育った新米を、いただいております。

農薬はもちろんのこと、肥料も有機のみ化学肥料ゼロの、純血米です。


★炊飯器から蒸気が立ち始めますと、部屋が、香ばしく黄あるいは

青みがかった穀物の香りで満たされます。 
                                                     

完熟した穀物の香りです。

育った田がまるごと、お釜で茹でられているみたい。

陶酔。


今日は「十三夜」、そして明後日はもう「霜降(そうこう)」。

実りの秋 闌(たけなは)に冬が忍び寄っています。


★昨年上映されました映画「人生フルーツ」が、

リバイバル上映されましたので、二度目の鑑賞。

この映画は不朽の名作です。

これからも上映され続けると、思います。

皆さまも機会がございましたら、是非ご覧ください。

 

 


★この映画については、たくさん書きたいことがございますので、

これから、少しずつブログで書いていきたいと、思っています。

津端修一さん90歳、奥さまの英子さん87歳、

お二人の日常を描いたドキュメンタリーです。


★この映画の撮影途中で、修一さんが亡くなられます。

そして、心に染み入るナレーションを担当されました

樹木希林さんも先ごろ、旅立たれました。

実りある人生の後、なんと爽やかで、かぐわしい香りと感動を

残されたことでしょう。

http://life-is-fruity.com/trailer/

 

≪稲かれば 小草(をぐさ)に秋の日の当たる≫ 蕪村

 

 


生きていく糧を与え続けてくれるBachの

平均律クラヴィーア曲集。

その第6回 第6番 d-Moll プレリュード&フーガ アナリーゼ講座

を、11月17日(土)開催いたします。
https://www.academia-music.com/news/74


★私の書きました解説 
https://www.academia-music.com/products/detail/159893

では、1番 C-Dur から、この6番 d-Moll までを、平均律第1巻の核

となる曲としております。

その論を更に進めますと、平均律クラヴィーア曲集は、

「 book ではなく globe 」という結論に、達します。


平面的に積み重ねられていくのではなく、

スケルトン(透明)の地球儀のように、

例えば、5番 D-Dur から、10番 e-Moll へと、

一気にビームが飛び出すように、

あるいは、4番 cis-Moll が、24番 h-Moll へと、

真っ直ぐに向かって行く、というように、

複雑な多面体を形成していくからです。


★今回で、ことし1月から始まりました

「平均律第1巻アナリーゼ講座」の第1期が、終わります。

1番から6番までの"豊饒の秋"を、刈り取ることができるよう、

勉強を続けます。
https://www.academia-music.com/images/pc/images/6_Analyse.pdf

 

 


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■第6回「平均律クラヴィーア曲集 第1巻第6番
         d-Moll Mollプレリュード&フーガ」 アナリーゼ講座

● 平均律 1巻は、「全音階」」「半音階」は、「長・短 3度」で形成される
巨大な球体

●6番プレリュード&フーガは、6曲1セットの統括であり、第2セットの船出

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■日時:2018年11月17日(土)  14:00~18:00  ※途中休憩あり
■会場:エッサム本社ビル 4階 こだまホール
 住所 :東京都千代田区神田須田町1-26-3 ℡:03-3254-8787
  (JR神田駅 北口 徒歩3分 ※エッサム1、2号館ではありません)
■≪申し込み 申し込み ・お問い合わせは≫
  アカデミアミュージック企画部 ℡03-3813-6767
  E-mail:kikaku@academia-music.com
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 ■なぜ、平均律クラヴィーア曲集がクラシック音楽の根源なのか

★「平均律1巻全24曲」は、巨大な一つの変奏曲集と解釈することができます。
 Bachはここで、24の調性すべての Prelude & Fugaを作曲しました。
 これを完成させた後、同じ変奏曲集をたった一つの調で試みようと、舵を
 切ったのは当然の帰結でしょう。それが、G-Dur(同主短調のg-Mollを
 三つ含む)の30曲の変奏曲から成る「Goldberg-Variationen
 ゴルトベルク変奏曲」です。

★平均律1巻の中核をなす「1~6番の大きな変奏曲」を、どのように解釈し、
 その理解を演奏と鑑賞にいかに結び付けていくか、そのカギは、
 この6番 Prelude & Fugaを読み解くことにあります。
 ≪ベーレンライター版「平均律第1巻」楽譜の添付解説(中村洋子)≫の
 P4~P6『5番、6番で「調性とは何か」という問いを投げ掛けている』を、
 併せてお読み下さい。


■「平均律クラヴィーア曲集第1巻 第6番 d-Moll 」プレリュード
 平均律1巻1~6番セットの総仕上げとなるプレリュードです。
 ここで5番プレリュードとの関連性を精査することにより、平均律1巻
 の大構想が浮かび上がってきます。右手上声で絶え間なく動く
 「三連符」によって描かれる緊迫した対位法。
 24、25小節目から流れ出た滝の水が、ほとばしる奔流となって
 下っていく、見事な「半音階」。この「半音階」も、平均律1巻を揺るぎなき
 ものにする横の支柱といえます。  

■「平均律クラヴィーア曲集第1巻 第6番 d-Moll 」フーガ
 1小節目冒頭の主題( Subject )は「レ、ミ、ファ」の短三度で始まります。
 Bachの「序文」に則る鮮やかなフーガの開始です。この「レ、ミ、ファ」は、
 7番 Es-Dur の幕開けとも重なる重要なモティーフです。
 この冒頭主題( Subject)と次に続く応答( Answer)により、完全な
 「全音階」が見事に形成されていきます。平均律1巻は、「全音階」、
 「半音階 」、「長三度」、「短三度」によって形成される、広大無辺な
 球体なのです。

 

 


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講師: 作曲家  中村 洋子
                           東京芸術大学作曲科卒。

・2008~15年、「インヴェンション・アナリーゼ講座」全15回を、東京で開催。
 「平均律クラヴィーア曲集1、2巻アナリーゼ講座」全48回を、東京で開催。
  自作品「Suite Nr.1~6 für Violoncello無伴奏チェロ組曲第1~6番」、
  10 Duette fur 2Violoncelli チェロ二重奏のための10の曲集」の楽譜を、
                ベルリン、リース&エアラー社 (Ries & Erler Berlin) より出版。

  「Regenbogen-Cellotrios 虹のチェロ三重奏曲集」、
  「Zehn Phantasien fϋr Celloquartett(Band1,Nr.1-5)
     チェロ四重奏のための10のファンタジー(第1巻、1~5番)」をドイツ・
     ドルトムントのハウケハック社  Musikverlag Hauke Hack  Dortmund
       から出版。

・2014年、自作品「Suite Nr. 1~6 für Violoncello
       無伴奏チェロ組曲第1~6番」のSACDを、Wolfgang Boettcher
       ヴォルフガング・ベッチャー演奏で発表
              (disk UNION : GDRL 1001/1002)
                      「レコード芸術特選盤」

・2016年、ブログ「音楽の大福帳」を書籍化した
  ≪クラシックの真実は大作曲家の自筆譜 にあり!≫
    ~バッハ、ショパンの自筆譜をアナリーゼすれば、曲の構造、
          演奏法までも 分かる~ (DU BOOKS社)を出版。

・2016年、ベーレンライター出版社(Bärenreiter-Verlag)が刊行した
 バッハ「ゴルトベルク変奏曲」Urtext原典版の「序文」の日本語訳と
 「訳者による注釈」を担当。

    CD『 Mars 夏日星』(ギター二重奏&ギター独奏)を発表。
     (アカデミアミュージック、銀座・山野楽器2Fで販売中)

・2017年「チェロ四重奏のための10のファンタジー(第2巻、6~10番)」を、
  ドイツ・ドルトムントのハウケハック社
                                  Musikverlag Hauke Hack
Dortmund から出版。

・2017年、ベーレンライター出版(Bärenreiter-Verlag)刊行のバッハ
   平均律クラヴィーア曲集第1巻」Urtext原典版の
     ≪「前書き」日本語訳≫
     ≪「前書き」に対する訳者(中村洋子)注釈≫
     ≪バッハ自身が書いた「序文」の日本語訳≫
     ≪バッハ「序文」について訳者(中村洋子)による、
                     詳細な解釈と解説≫を担当。

 

 

※copyright © Yoko Nakamura    
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■チャイコフスキー「四季」の真正な楽譜の見分け方、 その2■

2018-09-11 18:15:43 | ■私のアナリーゼ講座■

■チャイコフスキー「四季」の真正な楽譜の見分け方、 その2■
~「10月ー秋の歌」は、「6月―舟歌」と直結、それがチャイコフスキーの作曲法~
              2018.9.11 中村洋子

 


  

★9月11日は二百二十日。

立春から数えて220日目です。

9月に入ってからこの10日間、何と災害の多かったことでしょう。

4日の21号台風(チェービー/Jebi)襲来、6日の北海道胆振大震災。

被害に遭われた方々に、心よりお見舞い申し上げます。

この秋が穏やかであることを、心から願います。


★≪月々に月見る月は多けれど
          月見る月はこの月の月≫ よみ人しらず

十五夜は9月25日、まだ先ですが、高い空にかかる月を

静かに眺めたいと思います。


★前回に続き、

Tchaikovsky チャイコフスキー(1840-1893)の、

「四季」の真正楽譜についてです。

今回は、「10月ー秋の歌」です。


★この春、クラリネット奏者の Wenzel Fuchs

ヴェンツェル・フックス(1963- )
さんの、

「Mozart クラリネット協奏曲 K.622」
演奏会に出かけました。

名演奏でした。

リッカルド・ミナーシ指揮のザルツブルク・モーツァルテウム

管弦楽団も、
素晴らしく、久しぶりに Mozart を堪能しました。


★その時のアンコールが、この「四季ー10月」でした。

ピアノ独奏曲を、クラリネットで演奏する是非はともかく、

この曲が類稀な旋律の美しさに、溢れていることは、

間違いありません。

 

 


★しかし、Tchaikovsky チャイコフスキーの自筆譜に基づく

真正な楽譜と、巷間で流布しています実用譜との差異には、

驚かざるを得ません。

この曲の命でもある旋律が、ほとんど全曲にわたって、

ズタズタにされている、と言っても過言ではありません。

 
★例えば、Tchaikovskyの自筆譜は、冒頭こうなっています。





有名な実用譜では、こうなっています。



 

その楽譜に、更にお節介な編集者が手を入れ、

このようになっている楽譜もありました







★それでは、Tchaikovskyの真正楽譜と巷間の実用譜との違いは、

どこにあるのでしょうか。

まず、自筆譜では、1小節目と3小節目の上声

2拍目2分音符と4分音符に、「スラー」は付いていません。

 





★よくある改竄譜は、1、3小節目2拍目から「 slur スラー 」を

加えている
ばかりか、2拍目2分音符に tenuto テヌートやア

クセントを、書き加え、
華やかに見えます。

一見しますと、親切そうです。

さらに、2小節目3拍目には、Tchaikovsky が書いていない、

アルペッジョまで追加されています。







★その上、お節介な編集者は、1小節目2拍目の上声開始音「f²」の

2分音符のさらに前、つまり、1拍目の4分音符から「 slur スラー 」

始めている版すら、存在します。






★この編集者は、よほどChopinがお気に入りだったのか、

あるいは、見当違いのChopinかぶれだったのでしょう。

Chopinのフレージングにつきましては私の著作

「クラシックの真実は大作曲家の自筆譜にあり!」の148ページから

183ページにかけての≪Chapter5≫

・ショパン・ナショナルエディション「エキエル版」は、
                          本当に原典版か?

・ChopinのPolonaise ~ Fantasie幻想ポロネーズを、
                         自筆譜から読み込む

・作曲家の「自筆譜」について
                      ーーーーーで、
    
詳しく解説しておりますので、じっくりとお読み下さい。

 




★しかし、Tchaikovsky チャイコフスキーは、

Chopinではありません。

二人は全く別の個性をもった大作曲家です。

旋律の構築法が、両者は180度異なりますので、

このChopinかぶれの編集者のように、1拍目から「slur スラー」を、

掛けますと、Tchaikovskyの音楽にはなりません。


ただただ弱弱しい≪ムード音楽≫に堕するのです

勿論、Chopinも弱弱しいムード音楽ではなく、強靭な、

Robert Schumann ロベルト・シューマン(1810-1856)に

言わせますと、
≪大砲≫のような音楽です。

 

 


★それでは、Tchaikovsky はなぜ1、3小節目の2拍目2分音符と、

4拍目4分音符に「 slur スラー 」を書かなかったのでしょうか?


前回ブログ「四季ー6月 舟歌」をもう一度、お読み下さい。

チャイコフスキー 自筆譜は、冒頭上声旋律が始まる2、3、4小節を、

このように記譜しています。






巷間流布の実用譜は、こうなっています。






★両者がどのように違うのか、前回ブログでもご説明しました。

「10月ー秋の歌」でも、事情は似ています。

改竄版は、チャイコフスキーのスラーを記入した後、

さらにその上に、重たく厚ぼったい黒雲のような「スラー」を、

1~3小節にかけて、括りにしています。


よほど1小節目の「f²」 「e²」音が、作曲家が意図した通りに

単独で独立することが、怖いのでしょう。







曖昧模糊とした情緒の霧の中に、この「f²」 「e²」音を

埋め込みたいようです。







★しかし、チャイコフスキーはこの「f²」 「e²」音を、

一括したスラーに従属した音として、作曲していません。

丁度、「6月―舟歌」の冒頭2小節目「d¹-e¹-fis¹」のモティーフが、

3小節目「g¹ a¹ b¹ c² d² g² fis² g²」から、

独立しているのと同じです。







★「6月―舟歌」4小節目1拍目の2分音符「d²」が、

どのスラーからも独立して、単独で配置されているのも、

「10月ー秋の歌」の3小節目1拍目の「b¹」音が、単独で置かれている

のと、全く同じです。






★ここでもう、お気づきになられた方もおいでになるでしょう。

「6月―舟歌」と「10月―秋の歌」の冒頭旋律の構築法が、

極めて類似していること

これは、この曲に限らず、チャイコフスキーの個性でもあります。


オーケストラ作品や室内楽に共通した、あのうねるように力強く、

情緒を揺さ振るような、旋律の作り方です。

 

 


★この12曲から成る「The Seasonsー四季」は、Bach平均律の

緻密かつ壮大、宇宙的規模をもつ世界とは、比べるべくもありませんが、

構造は、Bachを踏襲しています。

つまり、「6月―舟歌」の冒頭「d¹-e¹-fis¹」は、

拡大反行形として「10月ー秋の歌」の「f²-e²-d²」に、展開していきます。


★このようにして、12曲を1曲として、まとめていくのです。







これは、作曲の基本ともいえます。

この基本は、Bach平均律クラヴィーア曲集で、盤石の礎として、

確立されました。


チャイコフスキーは、「10月ー秋の歌」冒頭の「f²」 「e²」を、

一つの長く括られた、大きなフレーズに従属する音として、

考えていなかったのです。


★「10月ー秋の歌」の調性「d-Moll」は、平均律では、第6番です。

必然か偶然か、

≪ベーレンライター出版(Bärenreiter-Verlag)刊
Bach平均律クラヴィーア曲集第1巻」Urtext原典版≫に添付、
『Bachが自ら書いた「序文」についての
              中村洋子による詳細な解釈と解説』

の4~7ページで、この「d-e-fis」の長3度と、

「d-e-f」の短3度についても、
詳しく論じています。
https://www.academia-music.com/products/detail/159893


★「d-e-fis」の長3度については、9月22日のアカデミアミュージック

「平均律第1巻 5番」アナリーゼ講座で、







「d-e-f」の短3度については、11月17日の平均律講座でも、

お話いたします。





平均律1巻「6番プレリュード d-Moll」の冒頭1小節目を、

和声要約しますと、

「10月ー秋の歌」と、なにやら和声が大変よく似ているのは、

気のせいでしょうか?

 

 

★なお、25、29小節目上声 3拍目の3連符 3番目の音は、

「♯」の付いた「his¹」が正しく、「スラー」も、

このように1拍ずつ分割されています




 

以下のように、流布版の「♮」がついた「h¹」は、

正しくありません。

 

 

 

 







※copyright © Yoko Nakamura    
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▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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■チャイコフスキー「四季」の真正な楽譜の見分け方■

2018-08-23 15:55:53 | ■私のアナリーゼ講座■

■チャイコフスキー「四季」の真正な楽譜の見分け方■
~流布している改竄校訂版では、曲の真の姿に到達できません~
 ~四季「6月 舟歌」の冒頭は、なぜ二つのスラーと単音?~


          2018.8.23   中村洋子

 

 

 

 

★アポロン、ギリシア神話の詩と音楽を司る太陽神、

アポロンの4頭立て日輪馬車が、轟音をたてて疾走していくような

「平均律1巻5番 D-Dur フーガ」。

光り輝くSubject 主題です。

この太陽のような主題は、どこから来て、どこへ行くのか?


★ぶり返した酷暑の中で勉強を続けていきますと、不思議に、

スルスルと、解答が 「Manuscript Autograph 自筆譜」から、

流れ出してきました。

この剛毅な音楽を弾く楽しさ、学ぶ楽しさに、浸っております。

その解答は、9月22日の「第5回平均律第1巻 第5番 D-Dur
            プレリュードとフーガアナリーゼ講座」で、
https://www.academia-music.com/news/59

詳しく、お話いたします。

 

 


★BACHを勉強しつつ、Tchaikovsky チャイコフスキー(1840-1893)の

「四季」も、勉強しています。

夏の季節の曲も、ロシアの冷涼な風が吹いているようで、

一抹の涼を、感じることができます。

曲の「題名」について、私はロシア語が分かりませんので、

2011年出版の「Edition Jurgenson」で、ロシア語の英訳を見ますと、

≪The Seasons Twelve Character Tableau For Piano
   シーズンズ ピアノによる12の絵画的描写≫と、なっています。


★春夏秋冬の「四季」ではなく、

12ヵ月個々の描写と言ってもいいのかもしれません。

「 Jurgenson 」版は、失われた「4月」以外、残りの11ヵ月分の曲の、

作曲家自筆ファクシミリと、その自筆譜に則った実用譜の両方が、

掲載されていますので、現在、最も信頼できる楽譜の一つと言えます。
https://www.academia-music.com/products/detail/161511



★有名な6月「舟歌 June Barcarole」の冒頭、自筆譜1段目は、

1~4小節間が、このように書かれています。





右手のフレーズでは、2小節目の「d¹ e¹ fis¹」に、スラーが一つ





3小節目の 「g¹ a¹b¹c² d² g² fis² g²」に、スラーが一つ。





4小節目の冒頭音の二分音符「d²」には、スラーが付いていません。

皆さまお手持ちの楽譜は、どうなっているでしょうか?

もし、これが2小節目から4小節目にかけて、一気に一つのスラーが

掛けられていますと、その楽譜は、残念ながらTchaikovsky本人が

意図した音楽とは違い、「真正な」楽譜ではないと言えるでしょう。

 

 

10小節目3拍目から12小節目も、Tchaikovskyは、このように記譜。

 

 

従来多く見られる校訂版の楽譜は、これもまた、一つのスラーで

一つのフレーズに、くくってしまっています。



 

2小節目3拍目から4小節目冒頭までの「上声」を、

一つのスラー、一つのフレーズで括る校訂版では、

10小節目3段目から12小節目冒頭までも、

同様に一つのスラー、一つのフレーズで大雑把に括っています。

この個所だけでなく、

この種の校訂版とTchaikovsky自筆譜との「齟齬」は、

自筆譜の現存する11曲分すべてについて、無数にありますので、

是非、じっくり見比べてください。

 

 


★Tchaikovsky自筆譜に則る「真正」な楽譜と、そうでないものとの

最も手っ取り早い見分け方が、あります。

「6月 June Barcarole」1曲前の「5月 May White Nights」の

67小節目を、お手持ちの楽譜で見て下さい。


Tchaikovskyは、冒頭音にはっきりと「♯」を付けています。

 

 


多くの校訂版では、「♮」が付いた「e」音になっています。

これは正しくありません。

 

 


★この5月は、全曲にわたって薄い鉛筆のような色で、

追加した臨時記号やアクセント等が見られ、丁寧に

推敲されたように見受けられます。


★このため、67小節目冒頭音は、「e♮」ではなく、自筆譜通りに

「e♯」=「eis」が、正しいでしょう。

この音が「eis」の楽譜は、信頼できるでしょう。


★お話を、「6月 June Barcarole」に戻します。

2小節目3拍目から4小節目冒頭にかけての「上声」を、

自筆譜通りにするのと、一つのスラーで括るのとでは、

どのような違いが起きるのでしょうか?

 

 


★このように一つのスラーで括りますと、

Tchaikovskyが書いていない「dolce」という発想記号とも、相まって、

弱くピアノ(p)で、静かにやさしくスーッと、なだらかに弾く、

というメッセージが発せられます。

ところが、Tchaikovskyが記したスラーですと、

 

 

様相がかなり変わってきます。

2小節目冒頭から3小節目3拍目にかけて、和声は「g-Moll ト短調」の

主和音です。

 

 

★そうしますと、「d¹ e¹ fis¹ g¹」の「d¹」音と「g¹」は、和声音。

この二つの和声音を結ぶ「e¹」と「fis¹」は、経過音passing noteになります。

 

 

★その場合、経過音二つはさんだ和声音「d¹」「g¹」は、

途切れさせず、一つのスラーで括るほうが常識的です。

しかし、Tchaikovskyは、そうはしません。

3小節目冒頭音の「g¹」から、また新しくスラーを始めています。


 

 


★本来、滑らかに進むはずの「d¹ e¹ fis¹ g¹」を、「d¹ e¹ fis¹」で一旦、

切断することにより、3小節目冒頭の「g¹」が、なだらかな音階の流れの中の、

一つの音に過ぎないのではなく、新しいスラーの始まり音として、

何か「特別」な音に、格上げされます。

 

 

★同様に、3小節目上声最後の音「g²」から、4小節目冒頭音「d²」を、

スラーでそのままつないでいくのは、十分可能であるのに、

Tchaikovskyは、3小節目でスラーを閉じてしまいます。

これにより、4小節目冒頭の2分音符「d²」音も、「特別」な音として、

認識されます。

 

 

★これを、2小節目3拍目から4小節目冒頭まで一つのスラーで括りますと、

4小節目冒頭は、なだらかなフレーズの単なる最終音となってしまいます。

Tchaikovskyは、そうしませんでした。

 

 

ここで、二つの「特別な音」が、Tchaikovskyのフレージングによって、

現出します、「g¹」音と「d²」音です。

 





★もう、お気づきでしょう、1小節目を見てみましょう。

一見、左手のみの単純な前奏に聴こえるのですが、

そうではないのです。

大作曲家は、無駄な音を書きません。

そして、無意味な前奏も書かないのです。

 


 

★この「G-d」音が、

 

3小節目冒頭「g¹」音と4小節目冒頭「d²」音、

この二つの「特別な音」と、谺(こだま)し、カノンとなり、

全100小節の「June Barcarole」の核となる「motif モティーフ」

であることを、高らかに宣言しているのです。


 

★そして、この「G-d」音は、どこから来ているのか?

「5月 May White Nights 白夜」最後の2小節87、88小節目に

由来するのです。





★これこそ、Bach的手法と言っていいでしょう。

楽譜は「真正」に近いものを選択しませんと、

何年勉強しましても、真実に辿り着けません。


 

 


★2011年 Jurgenson版は、各月の冒頭に掲げられている

epigram エピグラム(短い詩)は、ロシア語のみですが、

もう一つの、お薦め楽譜 、Edition Schottショット版
Tschaikowsky
     Die Jahreszeiten Edition Schott ED 20094

には、
Die Jahreszeiten -The Seasons-

ドイツ語と英語に、epigram エピグラムが訳されていますので、

これも、お薦めいたします。


★ロシア語が読めませんので、このドイツ語訳や英訳が適切かどうか、

断言できませんが、少なくとも頭を捻ってしまう日本語訳よりは、

優れていると、思います。

Jahreszeiten をそのまま英語にしますと「Years Times」=The Seasons

なのでしょうね。

 

★このように、考えを巡らしていきますと、

思考は、≪平均律第1巻≫に、戻っていきます。

やはり、すべてはBachに。

 




 


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■「指の練習曲」どころか、完璧な「四声体和声」の前奏曲、フランス風序曲のフーガ■

2018-08-04 20:21:03 | ■私のアナリーゼ講座■

■「指の練習曲」どころか、完璧な「四声体和声」の前奏曲、
                      フランス風序曲のフーガ■

 ~平均律1巻「第5番 D-Dur」 アナリーゼ講座のご案内~
               2018.8.4 中村洋子

 

         (百日紅の蕾)


★万物が焼け焦げるような、炎暑が止みません。

時々伺いますレストランに、木の枝が素敵に生けられていました。

たわわに実をつけているかのような枝です。

「何の実かしら」と、お尋ねしましたら、

「実ではないのです、百日紅(さるすべり)の蕾ですよ」。


★透き通るように赤い百日紅の花は、夏空の青と好対照で、

いかにも「夏の花」ですが、

咲く前の蕾を愛でる審美眼に、脱帽しました。

決まり切ったイメージにとらわれず、

自分の目で見、自分で「美」を発見するのは、

音楽の勉強も同じでしょう。


★7月21日のアナリーゼ、「平均律1巻第4番 cis-Moll」は、

大曲でした。

≪蝶(てふ)の舌やゼンマイに似る暑さかな≫              
                       芥川龍之介

蝶の舌のように、暑さで目が回ってしまいます。

 

 


★次回アナリーゼ講座のお知らせです。
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第5回「平均律第1巻アナリーゼ講座」第5番D-Dur 
                  
Prelude & Fuga
           2018年9月22日(土)

・5番プレリュードの根底に、厳然として存在するバッハの音楽の源泉
・フーガは蓄積したエネルギーを大空に発散し、
                新しい幕開けとなるフランス風序曲

■昨年出版しました≪「ベーレンライター版平均律第1巻楽譜」
添付解説≫、
P2~8の「バッハ序文」の解釈(中村洋子)で、
この5番プレリュードについて、
詳しく解説しております。
https://www.academia-music.com/products/detail/159893


"5番プレリュードは指の練習曲"とする浅薄な解説書もございますが、
それは論外としましても、ここで現れる絶え間ない16分音符と、
それを支えるバスの8分音符は、何を意味するのでしょうか。

■「クラヴィーアユーブング第2巻・フランス風序曲」と、
「同第4巻・ゴルトベルク変奏曲第16変奏」、そして、
この「平均律第1巻5番フーガ」は、ともに≪フランス風序曲≫の性格を
宿しています。上記私の解説書P31~32[注28]をお読み下さい。
オーケストラ作品のような、生命力溢れ、豪華な光り輝く音楽です。

 

 

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■プレリュード:

このプレリュードは「指の練習曲」どころか、
完璧な「四声体和声」
によって
書かれています。
その「四声体」は、何を根幹としてバッハの心から湧き上がってきた
のか、その源泉を具体的に、分かりやすくお話いたします。

■ フーガ:

4番 cis-Moll フーガのもつ、大海の波がうねるような圧倒的な
エネルギーを
真正面に受け止め、跳ね返し、新しい幕開けとする
フーガです。

このフランス風序曲により、広大無辺の世界が眼前に広がります。
この5番フーガは、「10番 e-Moll フーガ」と直結していく意外性
をも秘めています。
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★「Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲」第16変奏は、

豪華な「G-Dur(ト長調)」のフランス風序曲と、フーガです。

では、その前の第15変奏はどうでしょうか?


★「Goldberg-Variationen」30曲中、わずか3曲しかない

「g-Moll (ト短調)」です。

それ以外は、すべて「G-Dur(ト長調)」です。

イエスの受難をも想起させるような、沈痛にして、物問いたげな

「第15変奏」の後に、「第16変奏」1~15小節の、

喜びが炸裂するような、フランス風序曲

と、16~47小節のフーガが、

続きます。


★この「第15変奏」と「第16変奏」との関係が、

「平均律1巻第4番 cis-Moll」と、

「平均律1巻第5番 D-Dur」


との間にも、見られます。


★「第15変奏」と「平均律1巻第5番 D-Dur フーガ」を、

見比べますと、大変よく似ていることが、一目で分かります。

ここに、Bachの作曲の構築法が、よく現れています。

講座で、それをお話いたします。
https://www.academia-music.com/news/59

 

 


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■平均律1巻4番 Fuga での、マジックのような類稀なBachの作曲技法■

2018-07-20 16:43:11 | ■私のアナリーゼ講座■

■平均律1巻4番 Fuga での、マジックのような類稀なBachの作曲技法■
     ~平均律1巻4番アナリーゼ講座~
             2018.7.20  中村洋子

 

 


★西日本の大水害、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。

21日(土)は、アカデミアミュージック主催の

「平均律第1巻4番プレリュード&フーガ」アナリーゼ講座です。


★私は講座のたびに、Bachの自筆譜をあらためて、書き写します。

東京、横浜、名古屋、そして再び東京です。

書き写すたびに、新たな発見と感動が生まれます。


★アカデミアミュージックでの講座は、

Bärenreiterベーレンライター版「平均律1巻楽譜」に添付の

≪Bach「序文」の訳と解釈≫を仕上げてから、始まりましたので、

その≪訳と解釈≫の成果を基礎にして、新たに書き写しますと、

"バッハ先生、そうだったのですね!、いままで気が付きませんでした"

と叫びそうになる、新発見の連続です。

 

 


★極度に凝縮され、底知れない深さを湛える

Praeludium1(1番プレリュード)」

(Bach自筆譜では、3ページから始まります)から、

4、5、6、7ページを経て、9ページの「Praeludium 4」 の

≪gis¹ fis¹ e¹ dis¹ e¹ cis¹≫に、どのように至ったのか。

 

 

この類稀な主題は、どこから来て、どこへ行くのか。

これにつきましては"驚きの発見" をしました。

それは、平均律だけでなく、

「Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲」の根幹をなす、

音楽設計にも通じます。

「Bachの思想」といってもいいでしょう。


★Bachが絶えず自分に問いかけ、それを音楽で表していったのでしょう。

この涙が頬を伝うような「motif モティーフ」に至るための、

Bachの音楽的思索について、講座で詳しく丁寧にご説明いたします。



龍の髭に、薄紫のそれはそれは小さい花が付いています。

これから半年かけ、まんまるの実に育てていくのですね。

冬枯れの庭に、艶々とした真っ青な実を見つけるのは、心が躍ります。

真夏に咲き誇る、華やかな花々の陰に隠れるように咲く、

龍の髭の花は、可憐です。

 

                                                (龍の髭)


Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー先生の

Duo Recital の録音を、お姉様のUrsula Trede

ウルズラ・トレーデ先生が、Mannheimから、送ってくださいました。

ご夫君のDr.Tredeさんが、ご趣味で描かれた絵、

ご自宅のお庭の絵のコピーも同封されていました。

タイトルは「Frühlingserwachen (春の目覚め)」。

冬が厳しいドイツの春は、さぞ美しいことでしょう。

 

 


★Trede先生のピアノのリズムの素晴らしいこと。

「本物!」と、唸りました。

Boettcher ベッチャー先生とTrede先生は、かれこれ10年ほど、

私の作品を、ことあるごとに演奏し続けて下さっています。

「幸せ」な作曲家ですね。



★21日の「平均律第1巻4番アナリーゼ講座」の関連ですが、

私の「Bärenreiterベーレンライター平均律第1巻楽譜」添付の解説で、

17~23ページにかけて、この「4番cis-Moll」 の 「Fuga」 について、

詳しく書いておりますので、是非お読み下さい。

http://www.academia-music.com/products/detail/159893

 


★この解説の20~21ページに書きました「4番 Fuga」の、

40、41、42小節の和声について、少し、書いてみましょう。


Fuga の41小節目は、Bachの自筆譜に書かれたページですと、

見開き10ページの左側5段目右端に、記譜されています。

現代の記譜法で書き写しますと、こうなります。

 

 

40小節目と41小節目1~2拍目にかけては、「gis-Moll 嬰ト短調」でしょう。

 

 

41小節目2拍目冒頭音までは、「gis-Moll」に聴こえるのですが

 

 

★その直後、バスの音が奏される瞬間、「gis-Moll」から転調します。

「a音」は、「gis-Moll」の音階音には存在しません。

「gis-Moll」でしたら、「ais音」です。

 

 

このため、この「a音」が出現した瞬間、一条の光が差すかのように、

「E-Dur ホ短調」に、転調するのです。

 

 


★さあ、「Bachマジック」です!、

Bachの類稀な作曲技法を、私はそう呼びます。

「E-Dur」の「主和音Ⅰ」であれば、例えば、こういう旋律がつきます。

実に、明解です。

 

 

★しかし、Bachは41小節目上声最後の音を、「e²」にしないで、

「h¹」に戻ってしまいます。

 

 

★そうです、ここで形成された和音は、「E-Dur」の「Ⅲ」の和音です。

 

 

★「E-Dur」は、この4番 Fuga の主調「cis-Moll」の平行調です。

「E-Dur」の主和音は、もちろん「長三和音」です。

さきほどご説明しましたように、もしここで「E-Dur」の主和音に転調しますと、

単純、明解なのですが、そうしますと、それまでの深い嘆きや悲しみが、

糸の切れた風船のように、軽やかにどこかへ飛んでいってしまいます。

Bachは、ここで「E-Dur」の主和音、即ち「長三和音」を配置せず、

「E-Dur」でありながら、「短三和音」である「Ⅲ」の和音を、

主和音の代わりとして配置し、緩衝材としたのです。

 

 


★続く42小節目1拍目は、「E-Dur」の「Ⅳ₇」の和音、

明るさが増します。

42小節目2拍目から43小節目1拍目は、「H-Dur」。

更に更に光度が、上がっていきます。

 

 

★この個所を、和声要約してみましたので、

どうぞ、ピアノまたは身近な楽器で音を出して下さい。

 

 

★講座では、平均律第1巻と平均律第2巻の関係、

「フーガの技法」や、「フランス組曲」のお話もする予定です。

Tchaikovsky チャイコフスキー(1840-1893)も、

登場いたしますので、4時間では足りないくらいです。


★猛暑が続きますが、ご参加される皆さまと

お会いするのを、楽しみにしております。

 

 

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■「Bach自筆譜」を解読する際の注意点について■~名古屋アナリーゼ講座最終回のお知らせ~

2018-06-19 19:40:51 | ■私のアナリーゼ講座■

■「Bach自筆譜」を解読する際の注意点について■
~Bach時代のルールを覚えれば、容易に読み取れます~
   ~名古屋アナリーゼ講座最終回のお知らせ~
           2018.6.19   中村洋子

 

 

★大阪での地震、かなり被害が出ています。

被害に遭われた皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。


6月21日は「夏至」です。

夏至の頃の、暮れそうで暮れない夕方、

一日が長く感じられ、好きな季節です。

日が長いということは、それだけ夜が短いのですね。

≪短夜のあけゆく水の匂かな≫
              久保田万太郎(1889-1963)


★万太郎の時代なら、まだ井戸が主流でしたでしょう。

井戸の水の匂い、川の水の匂い、

朝顔市の植木鉢にかかった水の匂い、

水替えを怠った花瓶の水の臭さ・・・。

寒い冬には気付かなかった水の匂いを、

感じられるのがこの季節。


★≪へうへうとして水を味ふ≫
         種田山頭火(1882-1940)

山頭火の行乞行脚の日記を読み進みますと、

行く先々で、その土地その土地のお水を味わっています。

 

 


6月27日(水)の、名古屋カワイ最終講座の勉強をしております。

http://shop.kawai.jp/nagoya/lecture/pdf/lecture20180627_nakamura.pdf

「平均律第1巻8番 Prelude es-Moll 変ホ短調
                   Fuga dis-Moll 嬰二短調」です。

この8番は、「平均律第1巻」全24曲のちょうど3分の1に位置します。

曲の構造は、羅針盤の矢印が真っ直ぐに24番を指し示しています。


★先月5月26日、東京で開催しましたアナリーゼ講座は、

「平均律第1巻3番 Cis-Dur 嬰ハ長調」でした。

私が翻訳しました

「Bärenreiterベーレンライター平均律第1巻楽譜」添付解説書の

10ページに、平均律1巻における、Bachの推敲過程の記述があります。

A1からA4まで4段階に進化しており、「3番 Cis-Dur」は、

A2段階といえるでしょう、1732年ごろです。

Bachは、10年前の1722年の稿から、

3番 Cis-Dur 嬰ハ長調と、24番h-Moll ロ短調との関連性を深め、

緊密にするための「推敲、加筆」を加え続けたことを、

ご説明しました。


★「3番 Cis-Dur 嬰ハ長調」の伏線が、どのように

「8番 Prelude es-Moll 変ホ短調 Fuga dis-Moll 嬰二短調」に、

受け継がれていくのでしょうか。

Bachは平均律第1巻を20年以上にわたって、磨きに磨いています。


全24曲は、6曲1セットの計4セットであり、また、

8曲1セットの計3セットでもあるのです。

今回の講座の「8番」は、8曲1セットの最初の8曲の頂点となる、

「8番」です。

この8番の、大きな方向指示器も「24番」を示しています。

このことをご理解されますと、演奏がより美しく、容易になり、

鑑賞も一層深まります。

この点が、「平均律第1巻」を読み解くカギとなっていきます。

講座で、詳しくお話いたします。

 

 


★名古屋での最終講座となりますので、皆さまがBachの音楽を、

より深く理解できますよう、

Bachの 「Manuscript Autograph  自筆譜 」facsimile を、

どのように読み解いていくべきか、具体的にご説明いたします。

Bachの「自筆譜」こそが、Bach理解への最善にして、

一番の近道です。


★「平均律第1巻」は、ほぼ上声を「ソプラノ譜表」で、

下声を「バス譜表で(ヘ音記号)」で、記譜しています。

しかし、Bachはいつも独奏鍵盤楽器の作品を、

このように記譜していた訳ではありません。

 

 


★例えば、「クラヴィーアユーブング第4巻 Vierter Teil der Klavierübung」

通称≪Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲≫初版譜

(自筆譜は行方不明)は、基本的には、上声(右手)は「ト音記号」、

下声(左手)は「バス記号(ヘ音記号)」を、使っています。

下声が高い音域の場合、「アルト記号」や「ト音記号」を使います。

現代の大譜表と同じです。

 

 


★「クラヴィーアユーブング第2巻 Zweiter Teil der Klavierübung」

通称≪Italienisches Konzert イタリア協奏曲≫も、

下声は音域により、「バス記号」と「アルト記号」を使い分け、

上声はいつも、≪ト音記号≫です。

 

 

★「平均律第1巻」も上声(右手)部分の記譜が、

「ト音記号」でも、十分に可能であったはずですが、

Bachは何故、≪ソプラノ記号≫の記譜にしたのでしょうか?

 

 


★前述「8番」の 「Manuscript Autograph  自筆譜 」facsimileを、

ご覧になって、調号が「9つ」も付いているのに、驚かれた方も

いらっしゃることでしょう。

「es-Moll 変ホ短調」は通常、「6つ」の調号のはずです。

 

 

9つもありますのは、「es des ces」が、

各々「es¹ es² des¹ des² ces¹ ces²」の位置に、

調号内で、2つづつ記入されているからです。

 

 

有名なイタリア協奏曲も、初版譜(自筆譜は行方不明)を、

「F-Dur」ですから、調号は「♭一つ」のはずです。

しかし、よく見ますと、左手バス声部に、「♭が二つ」付いています。

 

 

これは、五線の範囲内 +「上第1間」と「下第1間」の範囲内に、

調号を書き込むという、当時の習慣に則っているのです。

 



★それを知り、そのルールに慣れてしまえば、

何も驚くことはありません。

 

 

★例えば、「13番 Fis-Dur 嬰へ短調」の調号は、

「♯6つ」のはずですが、「♯が9つ」も書かれています。

この場合、ヘ音記号の調号は、下第1間まで書き込まれています。

 

 


★Bachの 「Manuscript Autograph自筆譜 」facsimile を見た時の、

調号の違和感は、これで解決です。


★次に、慣れていただきたいのは、

Bachの時代、「ダブルシャープ」はまだ一般化されていなかったことです。

例えば、 8番 Fuga の5小節最後の音は、現代の記譜では、

「gisis¹ 1点嬰ト音」ですが、

 

 

Bachはこのように記譜しています。

 

 

★下声最後の音には、ダブルシャープでなく、

「♯」が付されています。

これは、調号により既に「♯」が付されている「gis¹」音に、

更に臨時記号の「♯」が付き、その結果、

「ソ」のダブルシャープ、即ち、「1点嬰ト音、gisis¹」を

意味することとなるからです。

 

 


★更に、6、7小節目の「Manuscript Autograph自筆譜 」facsimile を

見てみましょう。

 

 

当該音に①、②、③・・・と番号を付けて説明します。

この2小節を、現代の記譜法で写譜しますとこうなります。

 

 

①の「gis¹」に付いた「♮」は、5小節目の「gisis¹」を、

元の調号の音「gis」に戻します、という意味の「♮」です。

ですから、①の音は「gis¹ 1点嬰ト音」になります。


★②は、自筆譜では「♯」が付いていますが、

これは、5小節目の「gisis¹」と同じく、調号の音「fis¹」に、

更に「♯」が付きますので、「fisisi¹ 1点嬰ヘ音」と、なります。

③は、自筆譜では「♮」が付いていますが、

これは、6小節目の②で、「fisis¹」のダブルシャープであったのを、

元々の調号音「fis¹」に戻すという意味です。

現代の記譜に書きましたように、「fis¹ 1点嬰へ音」です。


★④も同様に、「cicis² 2点重嬰ハ音」です。

これらのルールを、呑み込んでしまえば、

Bachの 「Manuscript Autograph  自筆譜 」facsimile は、

容易に読譜できるようになるだけでなく、

その作品に対する、理解を促す膨大な情報を与えてくれます。


★もう一つ、重要な現代譜との相違点です。

臨時記号は、現代譜では「1小節間、その効力を失わず、有効」

ですが、 Bach時代は「その音のみ有効」です。

これにも、ご注意ください。


★なお、8番 Fuga 3小節目冒頭の「付点」につきまして、

私の著作「クラシックの真実は大作曲家の自筆譜にあり!」
http://diskunion.net/dubooks/ct/detail/1006948955


25ページ「音楽的で、イマジネーションをかきたてる自筆譜」

是非、お読み下さい。

 

 


★これらに慣れてしまいますと、「Bachの自筆譜」を通して、

Bach先生自らが、約300年後のいま、皆さまの家のドアを"トントン"と

ノックして、直接、訪ねて来てくださいます

誤謬や偏見、虚栄心に満ちた校訂者、学者先生の手を借りることなく、

Bach先生から直接、親切で暖かいレッスンを受けることが出来るのです。

こんな幸せはございませんね。

 

 


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■「平均律1巻」第3番「Cis-Dur」、調号に♯が7つも付いている異様性■

2018-05-31 22:45:56 | ■私のアナリーゼ講座■

■「平均律1巻」第3番「Cis-Dur」、調号に♯が7つも付いている異様性■

~「Cis-Dur」にした理由は、後世三人の天才作曲家の作品から分かります~

    ~次回「第4回平均律1巻アナリーゼ講座」のご案内~

                    2018.5.31  中村洋子

 

 

 
★5月26日は、第3回「平均律1巻アナリーゼ講座」でした。

会場は満員で、遠方からはるばるお出で下さいました方も、

たくさん、いらっしゃいました。

4時間の長丁場でしたが、大変に充実した講座となりました。


★まず「平均律1巻」第3番Prelude & Fuga のご説明を、

各1時間以上当てました。


★その後、何故、この曲が「Cis-Dur」、

つまり≪♯が7つも付いている調号≫

一見、"異様な調性"
でなくては、ならなかったのか?

異名同音調の「Des-Dur」にすれば、≪♭が5つの調号≫で、

もっとスッキリと記譜でき、演奏も容易であるのに、

Bachは何故、あえて≪♯7つの調号≫にこだわったのか?

という、どなたでも抱かれる疑問に対し、

絶対に、≪♯が7つの調号≫でなくてはならなかった理由を、

詳しくご説明いたしました。


★また、この3番≪♯が7つの調号≫の謎を徹底的に分析した、

三人の天才作曲家、

Beethoven ベートーヴェン(1770-1827)と

Frederic Chopin ショパン(1810-1849)

 Maurice Ravel モーリス・ラヴェル(1875-1937) が、

その勉強と分析の成果として、音楽史上に残る傑作を産み出したことも

分かりやすくお話いたしました。

 

 


★「Cis-Dur」がいかに異様であり、「Des-Dur」ならば、

当時の常識でも通用する調性であったことを、

少し、ご説明いたします。


★3番は、「Cis-Dur」(嬰ハ長調)の Prelude & Fugaです。

≪♯が7つの調号≫ということは、

音階「ド レ ミ ファ ソ ラ シ ド」の、すべての音に、

「♯」が付いている調、ということになります。

これだけでも、驚きです。

 

 

★「Cis-Dur」の主音「嬰ハ音」は、「Des-Dur」の主音「変ニ音」と、

異名同音です。

 

 

★「Des-Dur」(変ニ長調)の調性を見てみましょう。

「♭」が5つの調号で、「レ ミ ソ ラ シ」に「♭」が付きますが、

「ファ」と「ド」に「♭」は、ありません。

 

 

★異名同音調は、英語では「enharmonic key」、

異名同音の調号は「enharmonic key-signature」です。

 

 

 

 


★「Cis-Dur 嬰ハ長調」 Prelude & Fugaを、

異名同音調の「Des-Dur」に、書き換えてみます。

 

 

★何の問題もないばかりか、むしろ弾きやすく、馴染みやすくなります。

更に言いますと、例えば「C-Dur ハ長調」ならば、

「ファ♯」がたくさん出てきます。

「C-Dur ハ長調」が、属調「G-Dur ト長調」に転調することは、

ごく普通のことですが、その際、属調の導音は「ファ♯」です。

 

 

★これが「Cis-Dur 嬰ハ長調」ならば、

どういうことが起きるでしょうか?

属調「Gis-Dur」の導音が、「重嬰へ音」即ち、「fisis X」、

ダブルシャープという、当時ほとんど使われることのなかった、

臨時記号が頻繁に出現することになります。

 

 


Bachの「Manuscript Autograph 自筆譜」でも、

現在のダブルシャープ記号は使われておらず、

「ファ」に、臨時記号「♯」を記しています。

これは、そもそも調号の「ファ♯」に、さらに「♯」を付け加える、

即ち、ダブルシャープということになります


★Bachの「Manuscript Autograph自筆譜」を、勉強される方は、

このダブルシャープには、気を付けてお読みください。

 

 


★なおかつ、Bachの記譜で臨時記号は「1音」のみ有効で、

現在のように、「1小節」有効ではありませんので、

1小節に「ファ♯」が、何度も出てくることになります。

それらは、すべて「ファ・ダブルシャープ」を意味します。

 

 


★これほど面倒な調を選ばずとも、「Des-Dur」で記譜すれば、

調号は「♭5つ」で、属調「As-Dur」の導音は「G」ですから、

調号「Ges」を、「♮」で「G」に戻すだけですので、

弾く人は、何のストレスも感じないでしょう。


★何故、バッハが「Cis-Dur 嬰ハ長調」にしたか?

その答えは、前述の三人の天才作曲家、

Beethoven、Chopin、Ravel が創造した曲を、

詳しく分析することから、明確に一点の曇りもなく

分かってきます。

今後の講座でも、逐次取り上げていく予定です。


★講座の前夜は、国立能楽堂で、

私が尊敬します山本東次郎先生の狂言「禰宜山伏」を、

鑑賞いたしました。

本物の芸術に触れることで、心と身体が活き活きとし、

平均律講座の充実につながったように、思います。

次回ブログで、この狂言について少し書く予定にしております。


山本東次郎先生については、私の著作

≪クラシックの真実は大作曲家の「自筆譜」にあり!≫の

251ページ「新春 能狂言 山本東次郎 能 バッハ」を、

ご覧下さい。

 

 

 

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★「平均律第1巻」アナリーゼ講座第4回のご案内です。
https://gigaplus.makeshop.jp/academiamus/pc/news/4_Analyse.pdf
https://www.academia-music.com/news/33

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~ 第4回 平均律第1巻第4番 cis-Moll プレリュードとフーガ ~
●講座内容   4番 cis-Moll は、1巻全24曲の中での最初の頂点
         第1巻全24曲は、6曲1セットを土台として構成されていく大宇宙
●日時     平成30年7月21日(土) 14:00~18:00 ※途中休憩あり
●会場     エッサム本社ビル 4階 こだまホール
●定員     70名 ※定員になり次第、締め切らせていただきます。

第4回のお申込みは、6月1日10:10より受付いたします

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★2017年に出版しました《ベーレンライター平均律第1巻楽譜》添付解説
(Bachが自ら書いた『序文』の詳細な分析と解説、前書きの翻訳と注釈)
のP2~8で、詳しく解説しましたように、この最初の6曲セットは、1、2番と
5、6番が両方からあらん限りの力で押し合っているイメージです。
その真ん中の曲が、3番Cis-Dur、4番cia-Mollなのです。

★この4番フーガは、5声部で114小節にわたる大規模なフーガです。
最後は"嘆きの湖"に沈み込むかのように、深く、豊かで荘重な歌で終わります。
その後、弾けるように、5番D-Durの「フランス風序曲」風のプレリュードが
始まります。 この構成をどこかで記憶されていませんか?
そうです!、「Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲」全30曲の前半最後の
15番から16番への転換です。受難を象徴するような沈痛な15番g-Mollの後、
後半冒頭の16番は、豪華で陽光に満ちたフランス風序曲のG-Durでした。この
「ゴルトベルク変奏曲」の15番と16番との関係を、平均律第1巻の4番と5番に
見ることができるのです。Bachはこの4番にどんな意味を込めたか、詳しく
ご説明いたします。

■プレリュード
33小節目の属音「Gis」から主音「cis¹」に一気に11度音程を駆け上る音階は、
「Matthäus-Passionマタイ受難曲」第1曲目のバスの音階と共通しています。
(私の著書≪クラシックの真実は大作曲家の自筆譜にあり!≫のP314参照)
Bachは、このエネルギーを1小節目からどのように蓄え、この音階まで発展
させたのでしょうか?

■フーガ
プレリュードの巨大なエネルギーが、わずか五つの音で形成されている
「主題」へと、滔々と流れ込みます。この「主題」は、3種類の「対主題」を
従え、順々に発展させ、渾然一体、大河の様相を呈します。大地を揺るがす
ようなオルガンの響きも髣髴とさせ、第1番から4番までを登りつめてきたその
頂点であることを実感させます。

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■講師: 作曲家  中村 洋子
                           東京芸術大学作曲科卒。

・2008~15年、「インヴェンション・アナリーゼ講座」全15回を、東京で開催。
 「平均律クラヴィーア曲集1、2巻アナリーゼ講座」全48回を、東京で開催。
  自作品「Suite Nr.1~6 für Violoncello無伴奏チェロ組曲第1~6番」、
  10 Duette fur 2Violoncelli チェロ二重奏のための10の曲集」の楽譜を、
                ベルリン、リース&エアラー社 (Ries & Erler Berlin) より出版。

  「Regenbogen-Cellotrios 虹のチェロ三重奏曲集」、
  「Zehn Phantasien fϋr Celloquartett(Band1,Nr.1-5)
     チェロ四重奏のための10のファンタジー(第1巻、1~5番)」をドイツ・
     ドルトムントのハウケハック社  Musikverlag Hauke Hack  Dortmund
       から出版。

・2014年、自作品「Suite Nr. 1~6 für Violoncello
       無伴奏チェロ組曲第1~6番」のSACDを、Wolfgang Boettcher
       ヴォルフガング・ベッチャー演奏で発表
              (disk UNION : GDRL 1001/1002)
                      「レコード芸術特選盤」

・2016年、ブログ「音楽の大福帳」を書籍化した
  ≪クラシックの真実は大作曲家の自筆譜 にあり!≫
    ~バッハ、ショパンの自筆譜をアナリーゼすれば、曲の構造、
            演奏法までも 分かる~ (DU BOOKS社)を出版。

・2016年、ベーレンライター出版社(Bärenreiter-Verlag)が刊行した
 バッハ「ゴルトベルク変奏曲」Urtext原典版の「序文」の日本語訳と
 「訳者による注釈」を担当。

    CD『 Mars 夏日星』(ギター二重奏&ギター独奏)を発表。
     (アカデミアミュージック、銀座・山野楽器2Fで販売中)

・2017年「チェロ四重奏のための10のファンタジー(第2巻、6~10番)」を、
  ドイツ・ドルトムントのハウケハック社 Musikverlag Hauke Hack Dortmund
  から出版。

・2017年、ベーレンライター出版(Bärenreiter-Verlag)刊行のバッハ
   平均律クラヴィーア曲集第1巻」Urtext原典版の
     ≪「前書き」日本語訳≫
     ≪「前書き」に対する訳者(中村洋子)注釈≫
     ≪バッハ自身が書いた「序文」の日本語訳≫
     ≪バッハ「序文」について訳者(中村洋子)による、
                       詳細な解釈と解説≫を担当。

 

 


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