音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■Bachが自ら付した装飾音は、重大なモティーフを示している■

2016-11-22 00:03:11 | ■ 感動のCD、論文、追憶等■

■Bachが自ら付した装飾音は、重大なモティーフを示している■
 ~BrahmsとClaraの往復書簡でも、Bachの装飾音に言及~
 ~イタリア協奏曲第3楽章・アナリーゼ講座のお知らせ~
        2016.11.21  中村洋子

 



★11月18日は、 KAWAI 金沢で

Bach「Italienisches Konzert イタリア協奏曲」第2楽章・アナリーゼ講座

を開催しました。


右手による上声部旋律は、第2楽章の4小節目から始まりますが、

その冒頭音「a²」に Mordent モルデントが付されて、

「a² g² a²」となります

その「a² g² a²」が、いかに重要な motif モティーフであるか、

装飾音で書かれていても、決して看過できない重要 motifであることを、

第1楽章との関連からも併せて、ご説明しました。


★ここ数日、楽しみながら

 Johannes Brahms ブラームス (1833-1897)と、

Clara Schumann クラーラ・シューマン(1819-1896)との往復書簡集

『クララ・シューマン ヨハネス・ブラームス 友情の書簡』
           B・リッツマン編、 原田光子編訳 みすず書房 を、  

読んでいましたところ、1855年8月20日の Brahmsの手紙に、

装飾音についての彼の考えが、書かれていました。

≪僕はもともと、Bachのモルデントや顫音(せんおん=Trillerのこと)は、

装飾音符として扱わず、また、レッジェーロ風でなく

(特にレッジェローが適する個所のほかは)、

昔の力の弱いクラヴィーアで必要だったように、

むしろ装飾音符を強調すべきだと考えています≫

 



★1833年生まれのBrahmsが、20歳の時の1853年9月30日、

初めて Robert Schumann ロベルト・シューマン (1810-1856)に会い、

作品を見てもらいました。


★Brahmsの考えは、22歳のBrahmsの考えですが、それは、

私が第2楽章の4小節目のモルデントについて、書きましたことと、

同じことを言っていると言えます。


★私風に解釈しますと、

≪Bachの Mordent モルデントや Triller トリラーは、

その記号が付いた音を、ただ軽やかに飾り立てるためのものではなく、

実は、その装飾音や Triller によって作り出される音、即ち、

イタリア協奏曲第2楽章では、単音としての「a²」ではなく、

Mordent モルデントにより形成される「a² g² a²」こそ、

motif モティーフを形成する大切な音であり、強調すべきである≫

ということになり、私もそう思います。


★ちなみに、イタリア協奏曲第2楽章7小節目は、

上声2拍目の「b¹ a¹ g¹」の真ん中の音「a¹」に Triller が付いています。

これによって、まさにこの「b¹ a¹ g¹」が、

いかに重要な motif モティーフであることかを、思い知らされるのです。  


★なぜ重要であるのか、については、前回および前々回の当ブログで、

説明しています。

Bachは、無駄な装飾音は一つも書いていません。

何故、Bachがそこに装飾音を記入したかを考えることが、

演奏の第一歩となるのです。

 

 


★また、この書簡集では、Brahmsがこの時期、

どのような楽譜を所持していたか、

演奏会などで、どういう曲を弾いたかが、明確に、

伝わってきます。

これは素晴らしい記録といえます。


★例えば、1855年11月25日のClara宛手紙では、

Friedemann Bach ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハ(1710年-1784)の

二台のピアノのソナタを、買いました≫と、書いています。


★同じ手紙で、Brahmsが以前にClaraと論じ合った

「BachのTriller トリラーの後に、補助音を付けるべきか」についての、

Brahmsの考えとして、Carl Philipp Emanuel Bach

カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ(1714-1788)の著書の一節を、

書き写して送っています。


★1855年12月11日の手紙では、友人の家で弾いた曲について、

≪Bachのフーガを弾いた≫と、書いてあります。

また、1856年2月5日には、≪友人の誕生日に、 Emanuel Bach の

Violin Sonata を弾いた≫とあります。


★1859年1月27日Brahmsは、Gewandhausorchester Leipzig

ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団でのコンサートで、

自分の Piano Concerto第1番二短調を演奏しましたが、

拍手はわずか二、三人しかなかったそうです。


★また、≪ライプツィヒの教会で「Bachの Weihnachts-Oratorium

クリスマス・オラトリオの第二部を聴いたが、平凡な演奏だった≫

とも書いています。

 

 


★この書簡集の一部を読みました感想は、

Brahmsは、1853年(20歳)の頃から、1859年(26歳)の間に、

第一級の作曲家として飛躍しました。

大Bachはもちろんのこと、息子のFriedemann Bachや、

Emanuel Bachの作品を怠りなく、研究し尽している、

ということです。


★この本は、戦争中の訳とは思えないほど立派な訳ですが、

少し残念な点もあります。

手紙の冒頭にはいつも、「Lieber Johannes」、「Liebe Clara」と

書かれていますが、そこを「愛するヨハネス」、「愛するクララ」と

訳されています。

Lieber や Liebeは、恋愛関係にあるのではなく、

ごく一般的に、親しい人に対する呼びかけで、

英語の「dear」に近く、訳としては「親愛なる」ぐらいが、

妥当と、思われます。

「愛するヨハネス」、「愛するClara」と書かれますと、

特別な恋愛関係と、誤解されしまう恐れがあると思います


★書簡集を読みながら、そのようなことを考えていましたが、

イタリア協奏曲第2楽章4小節目の「a²」につけられた

「Mordent モルデント」の motif モティーフが、実は、

第3楽章でも、さらに重要な役割を果たしているのです。

「Italienisches Konzert イタリア協奏曲」第3楽章・アナリーゼ講座は、

12月16日(金)に、開催いたします。

 

 

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■中村洋子 Bach《イタリア協奏曲・第3楽章》アナリーゼ講座
  ~生命力のみなぎった第3楽章の音階は、 ピアノでどう弾くべきか・・・~

●日  時 :  12月16日(金)  午前10時~12時30分
●会  場 :  カワイ金沢ショップ 金沢市南町5-9 
      (尾山神社前 南町バス停より徒歩3分 有料駐車場をご利用下さい)
●予 約 :  Tel.076-262-8236 金沢ショップ

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★「Italienisches Konzert イタリア協奏曲」3楽章は、生命力と喜びに満ち溢れた楽章です。Edwin Fischer エドウィン・フィッシャーは、3楽章の 3、4小節ソプラノのモティーフについて、「Bach のOrgelbüchlein オルゲルビュッヒライン≪ In dir ist Freude! あなたの中に、喜びがある! ≫BWV615の主題から来ている」 と、注釈しています。        
   
★それに続く下声のF-Dur音階は、あたかもギリシア神話のアポロンが日輪めがけて天空を駆け登るかのような迫力です。Bachが生涯追及したことは、「音階」をどう harmonaize 和声付けし、それを楽曲の中心に据えるかという課題でした。その美しい解答は、≪平均律第1巻1番フーガ≫のC-Dur音階、≪Matthäus-Passionマタイ受難曲≫ 第1曲目のe-Moll音階に見られます。このF-Dur音階も、それに勝るとも劣らないエネルギーを蓄えています。  
                                             

★≪ In dir ist Freude! あなたの中に、喜びがある! ≫は、1715~6年にかけて、作曲されているようです。「Italienisches Konzert イタリア協奏曲」出版の、約20年前です。

★「イタリア協奏曲」は、Bach が何歳の時の作品か? と問われた時、きっと、若々しい青年期の作品であろうと、答える方が多いと思います。横溢した生命力と、音楽の楽しみに満ち溢れているからです。音楽の初心者にとっても、この曲は親しみやすく、ある意味で、取り組みやすい、シンプルな曲というイメージさえ、抱かれます。
                 
★しかし、「イタリア協奏曲・第1、2楽章」講座で、一見明快な第1楽章が、実に精緻な counterpoint 対位法と、Bach後期の複雑な和声によって作曲されていることを、勉強いたしました。イタリア協奏曲は、何十年もの周到な勉強と準備、熟成を経て初めて、1735年に花開いたのです。Bach はそういう作曲家です。古い作品の断片を、寄せ集めたのではないのです。 
                                                       

★第3楽章の1、2小節上声、それに続く下声の scale音階についても、Fischer は「the scales full of fire、first in the treble、then in the bass 火のような音階、最初はソプラノ、次いで、バスで」としています。 この意味は、どういうことでしょうか。上記1、2小節の音階と、3、4小節の「In dir ist Freude」のモティーフから成る主題を「as if Bach's high trumpets were rejoicing at the theme」 とも記しています。つまり、トランペットが歓喜の歌を高らかに鳴り響かせるように弾きなさい、と指示しています。  
                           
★講座では、これらのことを、分かりやすく、ご説明します。真珠のネックレスのように、ただ美しく、粒を揃えて弾くべきではないということは、Bach の作曲意図からして自明の理です。

 

 


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■講師: 作曲家  中村 洋子

東京芸術大学作曲科卒。
・2008~09年、「インヴェンション・アナリーゼ講座」全15回を、東京で開催。

・2010~15年、「平均律クラヴィーア曲集1、2巻アナリーゼ講座」全48回を、東京で開催。
 自作品「Suite Nr.1~6 fur Violoncello無伴奏チェロ組曲第1~6番」、
 「10 Duette fur 2Violoncelli
チェロ二重奏のための10の曲集」の楽譜を、ベルリン、
   リース&エアラー社 (Ries & Erler Berlin) より出版。

・2014年、自作品「Suite Nr. 1~6 fur Violoncello無伴奏チェロ組曲第1~6番」の
    SACDを、Wolfgang Boettcher
ヴォルフガング・ベッチャー演奏で発表
   (disk UNION : GDRL 1001/1002)。

・2016年、ブログ「音楽の大福帳」を書籍化した
   ≪クラシックの真実は大作曲家の「自筆譜」にあり!≫

   ~バッハ、ショパンの自筆譜をアナリーゼすれば、曲の構造、演奏法までも分かる~
                                                                         (DU BOOKS社)を出版。

・2016年、ドイツのベーレンライター出版社(Barenreiter-Verlag)が刊行した
   バッハ「ゴルトベルク変奏曲」
Urtext原典版の「序文」の日本語訳と
   「訳者による注釈」を担当。

   CD「Mars 夏日星」(ギター独奏&ギター二重奏、斎藤明子&尾尻雅弘)を発表。

★SACD「無伴奏チェロ組曲 第1~6番」Wolfgang Boettcher
       ヴォルフガング・ベッチャー演奏や、「Mars 夏日星」は、
    disk Union や 全国のCDショップ、ネットショップで、購入できます。
       http://blog-shinjuku-classic.diskunion.net/Entry/2208/

 

 


※copyright © Yoko Nakamura    
             All Rights Reserved
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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■超新星のような、爆発的エネルギーを秘めたイタリア協奏曲第2楽章冒頭■

2016-11-16 23:50:42 | ■私のアナリーゼ講座■

■超新星のような、爆発的エネルギーを秘めた第2楽章冒頭■
~Fauré のPiano Trio Op.120 の源泉もイタリア協奏曲~
~ KAWAI 金沢「イタリア協奏曲第2楽章・アナリーゼ講座」~

             2016.11.16  中村洋子

 


★先日、東邦音楽大学で若い人とお話することができ、

Bach平均律第1巻1番の Preludeもただ機械的に

ゼクエンツ(同型反復)の連続として弾くのではなく、

Bachが自筆譜で指し示しているように、どうしたら生きた音楽として

演奏できるかをお話しました。

学生の皆さんからは、「楽譜ってあのように見るのですね」。

「面白かった、楽しかった」、「とても勉強になった」などの

感想をいただきました。


★来年1月東京での≪Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲≫

後期アナリーゼ講座の案内が、「東京六大学ピアノ連盟」 の

「お知らせ」欄に掲載されたそうです。
http://rokuren.com/for-members/

ピアノが、音楽が大好きな
◾慶応義塾ピアノソサィエティー
◾明治大学ピアノの会 KLAVIER
◾立教大学PIANOの会
◾上智大学ピアノの会
◾ 東京大学ピアノの会
◾早稲田大学ピアノの会 
   の学生さんが集まって作られている組織です。

現在の日本は、音楽が満ち溢れているように見えますが、

実は、本当の美しい、真の音楽を聴き、学ぶ機会が以外にも、

非常に少ないと言わざるを得ません。


音楽の専門家を目指すのではなく、毎日の生活の中で、

音楽がある喜び、楽しみをもとうとされている、若い方々にも是非、

≪Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲≫アナリーゼ講座を、

聴いていただきたいものです。

≪Goldberg-Variationen≫により、Bachへの、

さらにはクラシック音楽の豊かな世界がさらに広がるからです。

その結果、ご自分で良い作品、良い演奏家を識別できる力が

養われるのです。

 

 


★18日(金)は KAWAI 金沢で、

「Italienisches Konzert イタリア協奏曲」

第2楽章のアナリーゼ講座を、開催いたします。


★「イタリア協奏曲」講座は既に、東京と名古屋で開きましたが、

「Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲」前半15曲の、

アナリーゼ講座を開催しました後に、

「イタリア協奏曲」を勉強しますと、これまでとは、

全く違う曲を見ているのではないかと思うほど、

新しい相貌を見せてくれますことに、つくづく驚かされます。


★ Pablo Casals パブロ・カザルス(1876-1973)が、

生涯死ぬまで、毎日Bachを演奏し、勉強し続けたことの意味が、

ようやく、分かってきたような気がします。


イタリア協奏曲第2楽章は、最初の1段が5小節で記譜されています。

冒頭1~3小節目は、左手のパートだけで右手は休んでいます。

4小節目から、切々とした“violinの歌”が奏されます。


★どこかで思い出しませんか?

前回ブログで書きました

Gabriel Fauré ガブリエル・フォーレ
(1845-1924)の

ピアノトリオOp.120の、
第1楽章冒頭部分に

大変よく似ています



イタリア協奏曲第2楽章は「d-Moll 二短調」。

第1楽章は「F-Dur ヘ長調」、

第2楽章はその平行調である「d-Moll 二短調」。

第3楽章は、1楽章と同じ「F-Dur ヘ長調」です。


★それに対し、Fauré のピアノトリオ1楽章は「d-Moll 二短調」、

第2楽章はその平行調である「F-Dur ヘ長調」、

第3楽章は1楽章と同じ「d-Moll 二短調」です。

調性の配置も大変によく似ていますね。

 




★イタリア協奏曲の第2楽章とFauré のトリオ第1楽章は

同じ「d-Moll 二短調」です。

両者のこの関係は、Beethoven の「月光ソナタ」と

Chopinの「プレリュード」との関係と、全く同じです。

クラシック音楽の王道を往くということは、こういうことです。

それがすべて傑作であることは、言うまでもないことです。


★「月光ソナタ」につきましては、私の著書で、

その自筆譜の読み方を、詳しく解説しています。

 




イタリア協奏曲第2楽章の1~3小節目の左手だけの部分は、

Fauré のトリオ第1楽章の1~2小節目に、相当するでしょう。


★ここで重要なことは、

イタリア協奏曲第2楽章最初の3小節間は、

ごく簡単な伴奏のように見えますが、

実は、その3小節に、この2楽章全部の主要 motif モティーフを、

ほぼ全部含んでいる、と言っても過言ではない重要な部分なのです。


★例えば、1小節目の3拍目から2小節目冒頭にかけての

「g¹ a¹ b¹」の3度の motif モティーフは、

 

 

切々としたviolinのメロディーを髣髴とさせる

5小節目2~3拍目の「g² a² b²」と同じ motif モティーフであり、

1オクターブ上の「canon カノン」ということです。

 

 


★これも、前回ブログで指摘しました、

Fauréの「d← →d」で、両側から締め付けているフレーズと、

全く同じ構造です。

右端、左端から内部に向かって物凄いエネルギーを発して、

フレーズを作っていることになります。


★さらに、2段目は6~9小節目の4小節を記譜していますが、

6小節目2拍目に「g¹ a¹ b¹」が再び、登場します。

 

 

ここを「初版譜」で見ますと、

1小節目の「g¹ a¹ b¹」の、ほぼ真下の位置に、

2段目の「g¹ a¹ b¹」が配置されています。

この絶妙なレイアウトには、感嘆します。


★さらに、次の7小節目では、

今度は、この motif モティーフを逆から読んだ「b¹ a¹ g¹」が、

逆行形として提示されています。

 

 

さらに、この「b¹ a¹ g¹」の真ん中の音「a¹」に

「Triller(独)/trill(英)」が、付けられています。

それにより、「この motif モティーフが大変重要ですよ」と、

Bach先生が親切に、注意喚起しています。


★そして、この2段目最後の9小節目は、

1拍目で「b¹ a¹ g¹」の motif モティーフを配置しています。

 

 

もう一度、2段目をよく見ますと、冒頭の6小節目「g¹ a¹ b¹」と、

9小節目「b¹ a¹ g¹」の両端からやはり、エネルギーを内側に閉じ込め、

そのエネルギーの沸騰点となる7小節目2拍目には、

「Triller」を伴った「b¹ a¹ g¹」があるという、

超新星のような、爆発的エネルギーを秘めています。

 

 


★このように見ていきますと、これだけでも、

このイタリア協奏曲が、物凄い構造で出来ていることが

お分かりであると思います。


★それらを読み解く手掛かりは、Bachが生前に出版した

「初版譜」のFacsimileである、ということが言えます。


★しかし、これでアナリーゼができたという風に、

この三つの motif モティーフのみを、

ことさら際立たせて演奏することは、Bachの意図ではありません。

では、どう演奏したらいいのでしょうか。


Edwin Fischer エドウィン・フィッシャー(1886-1960)の炯眼が、

本当のBachの演奏へと導いてくれるのです。

しかし、その炯眼の読み方を学ぶ必要もあります。

その読み方を知りませんと、

当たり前のところにFingeringが数多く付されていたり、

あえて、弾き難いFingeringを提示しているように見えるため、

敬遠されてしまいます。

それゆえ次第次第に、この歴史的な名校訂版を、

手に取る人が少なくなったのです。


★あえて言いますと、冒頭で書きましたように、

見かけ上のクラシック音楽の繁栄とは裏腹に、

効果だけを狙ったクラシック音楽の本道を外れた演奏が、

大手を振っているのかもしれません。


★講座では、これらのことを踏まえ、

どのように演奏に結びつけるか、

分かりやすくお話しします

 

 

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■中村洋子 Bach《イタリア協奏曲・第2楽章》アナリーゼ講座
      ~美しい旋律に、非和声音が精緻に装飾されている~

●日 時 : 11月18日(金)  午前10時~12時30分
●会 場 :  カワイ金沢ショップ 金沢市南町5-9 
          (尾山神社前 南町バス停より徒歩3分 有料駐車場をご利用下さい)
●予 約 :  Tel.076-262-8236 金沢ショップ


★初版譜の2楽章冒頭に、Bachが珍しく自ら記したテンポ記号≪Andante≫は、どのような深い意味を持つのでしょうか。
Edwin Fischer エドウィン・フィッシャー(1886~1960)は、
彼の校訂版で、この第2楽章について「悲しみから滲み出る嘆きが、
希望へと、そして哀願へと移り変わっていく。
最後に再び、自らの中で嘆きが消え去っていくのである。
この嘆きの歌の多彩なニュアンスは、
言葉では言い尽くせないほどである」と、注釈しています。

★蜘蛛の糸のように精妙に織り込まれた第2楽章の右手旋律は、
≪非和声音≫をたくさん含んでいます。
この右手旋律を、装飾音記号で書き換えることも可能です。


★装飾音記号で書き換えますと、旋律の骨組みが、
むき出しに現れてきます。
この、主に≪和声音≫から成る「骨組み」が、どのように≪非和声音≫で装飾されているのか・・・、
それを理解いたしませんと、右手が絶えず、美しい旋律を
細やかに弾いているだけの「退屈な演奏」になってしまいます。

★Bach は、Alessandro Marcello マルチェッロのオーボエ協奏曲を、
独奏鍵盤作品に編曲しています( Concerto d-Moll BWV974, nach dem Concerto d-Moll fur Oboe, Streicher und Basso continuo von Alessandro Marcello)。
マルチェッロの原曲を、どんなに美しく Bachが装飾し編曲したかを
勉強いたしますと、第2楽章が一気に、分かりやすくなります。

★ピアノで Bach を演奏することの楽しみ、満ち溢れる喜びを
きっと実感できることでしょう。
Marcelloマルチェッロを、Bach編曲で弾く楽しみについても、
お話いたします。

 

 

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■講師:中村洋子プロフィール

 東京芸術大学作曲科卒。
・2008~15年、「インヴェンション・アナリーゼ講座」全15回を、東京で開催。
  「平均律クラヴィーア曲集1、2巻アナリーゼ講座」全48回を、東京で開催。
         自作品「Suite Nr.1~6 für Violoncello無伴奏チェロ組曲第1~6番」、
       「10 Duette fur 2Violoncelli チェロ二重奏のための10の曲集」の楽譜を、
                ベルリン、リース&エアラー社 (Ries & Erler Berlin) より出版。  
      「Regenbogen-Cellotrios 虹のチェロ三重奏曲集」、
   「Zehn Phantasien fϋr Celloquartett(Band1,Nr.1-5) チェロ四重奏のための
   10のファンタジー(第1巻、1~5番)」をドイツ・ドルトムントの
   ハウケハック社  Musikverlag Hauke Hack  Dortmund から出版。

・2014年、自作品「Suite Nr. 1~6 für Violoncello
       無伴奏チェロ組曲第1~6番」のSACDを、Wolfgang Boettcher
       ヴォルフガング・ベッチャー演奏で発表
                disk UNION : GDRL 1001/1002)

・2016年、ブログ「音楽の大福帳」を書籍化した
  ≪クラシックの真実は大作曲家の自筆譜 にあり!≫
   ~バッハ、ショパンの自筆譜をアナリーゼすれば、曲の構造、
          演奏法までも 分かる~ (DU BOOKS社)を出版。

・2016年、ベーレンライター出版社(Barenreiter-Verlag)が刊行した
  バッハ「ゴルトベルク変奏曲」Urtext原典版の「序文」の日本語訳と
  「訳者による注釈」を担当。

 

 

※copyright © Yoko Nakamura    
             All Rights Reserved
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■フォーレ最晩年の「ピアノ三重奏」、Trio George Sandoの名演■

2016-11-13 23:23:20 | ■ 感動のCD、論文、追憶等■


■フォーレ最晩年の「ピアノ三重奏」、Trio George Sandoの名演■
~11月18日、カワイ金沢でイタリア協奏曲第2楽章・アナリーゼ講座~
            2016.11.13   中村洋子

 

 


★先週11月7日は、東邦音楽大学での公開講座でした。

Bach「Wohltemperirte Clavier 平均律クラヴィーア曲集」、

「Inventionen und Sinfonien インヴェンションとシンフォニア」、

「Clavierbüchlein für Anna Magdalena Bach
           アンナ・マグダレーナ・バッハのクラヴィア小曲集」、

それに、Beethoven ベートーヴェン(1770-1827)の

「Piano Sonata No. 14  Cis-Moll Op. 27-2, "Moonlight"
                    嬰ハ短調 月光」 などについて、

参加者の皆さまに、「Manuscript Autograph 自筆譜」facsimile を、

見て頂きながら、お話をいたしました。


★実用譜のみでの演奏と、

自筆譜によって得られるものを活かした演奏が、どのように違うか、

実際にピアノの音で体験していただきました。


実用譜のみによる演奏を“お茶漬け”のように、

サラサラした演奏と名付け、一方、

自筆譜を基にした演奏、つまり、

各 motif モティーフががっちりと手を結び、引っ張り合う途方もない力で

構成されている演奏を、“杵で搗いた、グーンとよく伸びるお餅”に譬え、

解説しました。


★参加者のお一人が「私の演奏はお茶漬けね・・・」と、

おっしゃっていたようです。

自筆譜facsimileをお見せした時の、若い方々のキラキラと輝く目が

印象的でした。

余談ですが、最近の若い世代は、

お茶漬けをほとんど、召し上がらないそうです。

お餅も、機械搗きはギューとは伸びず、

比喩としては分かりづらかったかもしれません。

時代を感じます。


11月18日は、KAWAI金沢で、

「Italienisches Konzert イタリア協奏曲」の、

第4回目アナリーゼ講座です。

今回は、第2楽章を勉強いたします。

 

 


★その準備で忙しいのですが、逆にいい演奏のCDを聴きたくなります。

銀座「山野楽器」のクラシックCDフロアーに、

「女性作曲家コーナー」があります。

私の「無伴奏チェロ組曲全6曲」
 (Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏)や、
http://blog.goo.ne.jp/nybach-yoko/e/90dba19dc2add7098619b7d971f74fb7



ギター作品「Mars 夏日星」(斎藤明子、尾尻雅弘演奏)も、

http://blog.goo.ne.jp/nybach-yoko/e/1e78896e6562f681fa405d88fb1fae60


置いていただいております。

 

★そのコーナーで求めましたCDがいま、お気に入りで、

何度も聴いております。

「RAVEL  FAURE  BONIS」 Trio avec piano / Trio George Sando
      ラヴェル フォーレ メル・ボニス 近代フランスのピアノ三重奏作品」
                トリオ / ジョルジュ・サンド
                                                                        (ZZT 120101)



★このうちMel Bonis メル・ボニス(1858-1937)の小品二曲:

「Soir Op.76」、「Matin Op.76」 (1907年)が、大変に美しく、

気に入りました。


★この Bonis ボニスの作品を挟んで、最初の曲は、

 Maurice Ravel モーリス・ラヴェル(1875-1937)の

「Trio pour piano,violon,violoncelle」Op.76 (1914年)、

そして最後は、 Gabriel Fauré ガブリエル・フォーレ(1845-1924)の、

「Trio pour piano,violon,violoncelle」Op.120 (1923年)です。

この曲は、大変に素晴らしい演奏です。


Fauré後期の作品の演奏につきましては、

どこか“構え”て、サラサラと流れるような、

やや色彩感に乏しい演奏が多いように、見受けられます。

しかし、フォーレ後期の和声は、万華鏡のように、次から次へと、

新鮮で豊かな響きを湛えています。

それを臆することなく、歌っていけばいいと思います。

その点で、このTrio George Sandoの演奏は生命力が溢れ、

優れていると思います。

 

 


★Ravelのトリオは、以前ご紹介しましたように、

Arthur Rubinstein アルトゥール・ルービンシュタイン(1887-1982)、

Piatigorsky ピアティゴルスキー(1903-1976)、

Heifetz ハイフェッツ (1901-1987)による“王道を往く”ような

良い演奏が、数多くあります。


★しかし、Fauré の最後期のこの作品は、なかなか良い演奏には

巡り会いません。

大昔のことですが、NHKの第1放送で、声楽家の故河本喜介先生が、

Fauré 最後期の「 L'horizon chimerique 幻想の水平線 Op. 118」を、

何度か取りあげ、詳しく解説されていたのを思い出します。


★この曲は、誰もが好きになるフォーレの若い頃の作品

「Lydia  リディア Op.4-2」、「Après un rêve 夢のあとに Op.7-1」

などとは異なり、極限まで切り詰めた少ない音で作曲され、

聴く人の胸をかきむしるように迫ってくる・・・、

優しい語り口の名解説が、いまでも耳に残っています。

そして、やはり、この曲の名演奏が少ないと、

河本先生は、嘆いていらっしゃいました。

私はこの曲を、Gérard Souzay ジェラール・スゼー(1918–2004)で、

愛聴しております。

 

 


★このフォーレ「Trio Op.120」の、第1楽章は、d-Moll 二短調で、

書かれています。

最初の2小節はピアノソロで「mezzo p」と指定され、

密やかな「a¹」と「f¹」のトレモロです。




★3小節目から、そのピアノを伴奏として、Celloが「mezzo p」と

「cantando(歌うように)」で、声をひそめるように、

歌い始めます。

そして、このCelloの“歌”は、22小節目まで続きます。


★23小節目からは、同じメロディーをこんどはViolinが

「mezzo p」と「cantando」で同様に、

密やかに歌います。


フォーレの晩年の作品は、「創作力が枯渇した」と、

よく誤解され勝ちですが、決してそうではありません。

全く新しい世界へと踏み出していった、といえます。

内面に尽きぬ火を灯しつつ、遥かかなたを凝視しているような、

静かで美しい世界です。


★この時期、フォーレは、Beethovenと同じように、耳の疾患に

悩まされていたのですが、作品に影響を与えているとは

全く言えないでしょう。


★3~6小節目のCelloの旋律を見ますと、

冒頭の「d」と6小節目の「d」により、この4小節目が、

双方から、あたかも万力によりギュッと締められているような、

イメージが浮かびます。

 




★Celloの旋律から始まる3小節目からは、

Celloの旋律の上方の音域に、さざ波のようなピアノの8分音符が

続きます。




★3小節目Celloは、「d」で始まり、

(d - a - b - g - f - d)を経て、

6小節目の付点2分音符「d」で、4小節から成るフレーズを閉じます。




★3小節目と6小節目の「d」で、両方から強い力がかかり、

圧縮されたようなフレーズです。

お餅のイメージです。




★7、8小節目の2分音符を「1単位」として、

9、10小節目は、それを5度上行で同型反復します。



★12小節目から始まる上行形は、13、14小節目で

半音階上行形となります。

物凄いエネルギーで、15小節目の頂点へと、向かいます。

まさに、お餅をグーンと伸ばしたようです。




★15小節目の頂点から、フォーレは、テノール記号で記譜しています。

それだけ、Celloにとっては高音域である、ということです。




★19小節目から、徐々に静まり、21小節目はバス記号(ヘ音記号)に

復帰します。




★23小節目からは、また、「mezzo p」「cantando」に戻り、

こんとはViolinが、Celloの3小節目からの旋律を引き継ぎます。



 

★以前は、Fauré の楽譜は選択肢が限られていましたが、

現在、この「Trio pour piano,violon,violoncelle」Op.120

の楽譜につきましては、

ベーレンライターの楽譜がベストと、思います。

https://www.academia-music.com/academia/search.php?mode=detail&id=1501647965







私はいつも、古い録音をご紹介していますが、

それは、古いものに良い演奏があるという、単純な理由に過ぎません。

しかし、このCDを録音した女性奏者のトリオ「George Sand」のように、

現代でも、素晴らしい奏者は当然、いらっしゃいます。


古い録音でいまでも残っているのは、淘汰された結果、

良い演奏のゆえに残った、ということです。

現代でも、コマーシャリズムに毒されていない演奏家を、

じっくりと探しますと、

このような素晴らしい演奏に巡り会うことができる、とも言えます。


★このCDは、解説も分かりやすいいい解説です。

 

 

※copyright © Yoko Nakamura    
             All Rights Reserved
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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■第2期「Goldberg-Variationenゴルトベルク変奏曲」アナリーゼ講座のお知らせ■

2016-11-05 02:51:41 | ■私のアナリーゼ講座■

■第2期「ゴルトベルク変奏曲」アナリーゼ講座のお知らせ■
~豪華なフランス風序曲の16変奏、イタリアの陽光が降り注ぐ17変奏 ~
             2016.11.5   中村洋子

 

 

★立冬を前に、秋の日は釣瓶落としです。

気が付きますと、

もう夕暮れになっています。


★前回のブログで

「Clavierbüchlein für Anna Magdalena Bach

アンナ・マグダレーナ・バッハのクラヴィーア小曲集」について、

お話いたしましたが、

この曲集は、Johann Sebastian Bach バッハ (1685-1750)が、

妻Anna Magdalena Bach (1701-1760) と一緒に、

作っていった音楽帳です。


Bachは1704年、最初の妻のMaria Barbara

マリア・バルバラ(1684-1720) と結婚しました。

彼女は、Bachの「またいとこ」で7人の子供を産みましたが、

4人は幼くして亡くなっています。


1720年5月下旬Bachは仕えていたケーテンのレオポルド侯爵と

一緒に、有名な温泉保養地・カルルスバートへと旅立ちます。

カルルスバートはケーテンから南に約210キロ、

皇帝や著名な貴族が各地から集い、それぞれがお抱えの楽長や

楽団員を引き連れ、華やかな演奏会がさかんに催されます。

レオポルド侯爵はきっと、

“私には、こんな素晴らしいカペルマイスター

(宮廷楽長)がいますよ”と自慢し、

Bachの演奏を、皆さんに披露したことでしょう。

 

 


★しかし、Bachが7月上旬、ようやくケーテンの我が家に戻ると、

出迎えたのは、

思いもかけない「愛する妻Maria Barbaraの死・・・」。

むごい知らせでした。

Bachを送り出した時、あんなに元気だったマリア、

まだ36歳でした。

既に、埋葬まで終わってしまっていました。

残されていた子供は、長男フリーデマンが11歳、

二男エマヌエルが6歳でした。

その衝撃は、いかばかりか・・・。


どんな病気で、なぜそんなにも急に亡くなったのか、

記録は残っていないそうです。

唯一「レオポルド侯爵陛下のカペルマイスター、

Johann Sebastian Bach氏の妻埋葬」という

記録が教会にあるのみだそうです。


★マリアの死から約1年半後、Bachは1721年12月3日、

二度目の妻となるAnna Magdalena Wilcke

アンナ・マグダレーナ・ヴィルケと、結婚しました。

当時、彼女は20歳でした。

Anna Magdalenaは、宮廷ソプラノ歌手として既に、

認められた存在でした。

途方もない天才バッハを心から愛し、尊敬して結婚したのでしょう。


★面白いエピソードが残っています。

Bachはこの結婚パーティーのために、素晴らしいワインをたくさん、

年収の五分の一以上のお金を、注ぎ込んで購入しました。

Bachの喜びがうかがい知れます。

 

 


★“Bachは紙代を惜しんで、楽譜の余白に書き込んだ”という

学者の説がおかしく思えます。

豪放で度量の大きな人です。


★結婚の翌1722年からBachとAnnaは、共同作業で、

「Notenbüchlein für Anna Magdalena Bach

アンナ・マグダレーナ・バッハのための音楽帳」

を作り始めましたが、残念ながら全部は残っていません。


★「Clavierbüchlein für Anna Magdalena Bach

アンナ・マグダレーナ・バッハのクラヴィーア小曲集」は、

1725年から始まり、Bachの息子たちも加わって、

1740年すぎまで
書き続けられました


★この「Clavierbüchlein für Anna Magdalena Bach」は、

パルティータの1、2番や、ペッツォルトの短いメヌエットも1曲

として数えるという、やや乱暴な数え方では、

40数曲になります。


★その26番に当たる曲が「Goldberg-Variationen 

ゴルトベルク変奏曲」の
主題である「Ariaアリア」です。

これは、Anna が写譜しています。

Bachの自筆譜は残っていませんが、Bachの生前出版である、

「 Clavierübung クラヴィーアユーブング4巻 

Goldberg-Variationen」 の
初版譜と比較しますと、

若干、レイアウトも異なり、ここからも

たくさんの発見があります。

 

 


★暫くお休みしていました

Goldberg-Variationenゴルトベルク変奏曲」

アナリーゼ講座の第2期が、来年2017年1月から、始まります。

第2期は、「Goldberg-Variationen」全30曲の後半第16曲から、

始まります。


★第2期からご参加されます方にも、無理なくご理解いただけますよう、

毎回、第1期の復習を行います。

また、講座の時間も2時間半(休憩含む)だったのものを、

3時間に拡大します。


1月21日(土)は、第16、17、18変奏とともに、

主題Aria、第1~3変奏の復習をいたします。

 

 

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作曲家 ・中村洋子 によるアナリーゼ講座
      「Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲」
                  第 1回 変奏曲 第 16 、17 、18 番

■日時  : 201 7年 1月 21 日(土)  13:30~16 :30
■会場  : 文京シビックホール 多目的室 (地下 1階)
■受講料 : 3, 000円(税込)
■定員   : 100名

お問い合わせ・お申込み 
アカデミア・ミュージック(株)企画部
TEL: 03-3813-6757

 

https://www.academia-music.com/academia/m.php/20161026-0

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★バッハの音楽はなぜ美しく、私たちの心をとらえて離さないのか・・・
人類の宝「ゴルトベルク変奏曲」が、どういう構造で成り立っているか、
一見、単純に見えながら、複雑に絡み合っているその「和声」と対位法を
ピアノで実際に音を出しながら、詳しく分かりやすくご説明いたします。

第6回(第2期第1回)の講座では、
・豪華なフランス風序曲とフーガの第16変奏
・イタリアの陽光が燦々と降り注ぐ第17変奏
・第9変奏から導かれ、第22変奏にバトンを渡す第18変奏
             の3つの変奏曲を掘り下げていきます。

★本講座は、初版譜ファクシミリ(Fuzeau出版社)を基にして進めます。

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★ 第 2期第 1回は、第 16 、17 、18 変奏の三曲です。

前半 15 曲は、嘆きの底に沈潜するかような第 15 変奏で、
締めくられました。

★第16変奏は、再び生命が息を吹き返し爆発するかのような、
喜びに満ちた
G-Dur上行音階で始まります。
フランス風序曲の形式です。
この形式は、
クラヴィーアユーブング1、2、3巻から第16変奏に向けて
周到に準備されてきました。

★緊迫感に満ちた第15、16変奏の後は、ユーモラスな
「3度のジグザク進行」を伴った
第17変奏です。
このジグザグ進行は、第16変奏のフーガから発展したモティーフですが、

源泉は、ヴィヴァルディの協奏曲や、スカルラッティのソナタに
遡ることができます。
イタリアの陽光が燦々と降り注ぎます。

★第18変奏は、6度のカノンです。
ソプラノ声部は、アルト声部を2分音符の長さだけ遅れて
追走します。
この二声 を支えるバス声部に、
第16、17変奏の要素が投影されます。

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■講師:中村洋子プロフィール

 東京芸術大学作曲科卒。
・2008~15年、「インヴェンション・アナリーゼ講座」全15回を、東京で開催。
  「平均律クラヴィーア曲集1、2巻アナリーゼ講座」全48回を、東京で開催。
         自作品「Suite Nr.1~6 für Violoncello無伴奏チェロ組曲第1~6番」、
       「10 Duette fur 2Violoncelli チェロ二重奏のための10の曲集」の楽譜を、
                ベルリン、リース&エアラー社 (Ries & Erler Berlin) より出版。  
      「Regenbogen-Cellotrios 虹のチェロ三重奏曲集」、
   「Zehn Phantasien fϋr Celloquartett(Band1,Nr.1-5) チェロ四重奏のための
   10の
ファンタジー(第1巻、1~5番)」をドイツ・ドルトムントの
   ハウケハック社 
Musikverlag Hauke Hack  Dortmund から出版。

・2014年、自作品「Suite Nr. 1~6 für Violoncello
       無伴奏チェロ組曲第1~6番」の
SACDを、Wolfgang Boettcher 
       ヴォルフガング・ベッチャー演奏で発表
 
                disk UNION : GDRL 1001/1002)

・2016年、ブログ「音楽の大福帳」を書籍化した
  ≪クラシックの真実は大作曲家の
自筆譜 にあり!≫
   ~バッハ、ショパンの自筆譜をアナリーゼすれば、曲の構造、
          
演奏法までも 分かる~ (DU BOOKS社)を出版。

・2016年、ベーレンライター出版社(Barenreiter-Verlag)が刊行した
  バッハ「ゴルトベルク変奏曲」
Urtext原典版の「序文」の日本語訳と
  「訳者による注釈」を担当。

 

 


※copyright © Yoko Nakamura    
             All Rights Reserved
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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