音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■30日(水)の平均律・アナリーゼ講座は延期です■

2011-03-25 21:03:02 | ■私のアナリーゼ講座■

■3月30日(水)の平均律クラヴィーア・アナリーゼ講座は延期です■

                       2011.3.25   中村洋子

 

 

 

★3月 11日午後 2時 46分の 「 東日本大地震 」 から、二週間たちました。

福島第 1原発の事故は、残念ながら、一向に沈静化せず、

事態は、悪化の一途を辿っているようです。

余震もまだ、終息しておりません。

また、3月末というのに、真冬並みの寒さが続いております。

地震に被災された方々の、お苦しみは、いかばかりでしょう。

 

30日( 水 )に、予定しておりました

カワイ表参道 「 パウゼ 」 での、

「 平均律クラヴィーア第 1巻 12番 へ短調 」

「アナリーゼ講座」は、延期となりました。

 

★この 12番 へ短調は、平均律全 24曲の、ちょうど真ん中の曲です。

明るいよろこびに満ちた  1番 ハ長調と、お互いに、

見つめ合っているような、深い悲しみをたたえた曲です。

★12番 前奏曲 1小節目の 4分音符 「 F G As 」 の、

短 3度 上行形のモティーフは、

1番 ハ長調のフーガのテーマ冒頭の、8分音符  「 C D E 」 の、

長 3度 上行形のモティーフと、対を成しているのです。

 

★講座にご予約されていらっしゃった皆さま、どうぞ、

この 1番と 12番を、ゆっくり噛み締めながら、

続けて、両曲を弾いてみてください。

 

今日の日本のような、厳しく、悲しい毎日に、

対峙しうる音楽は、バッハです。

 

★12番を弾いた後に、もう一度、 1番を弾いてみましょう。

きっと、人類が生存している限り、灯し続けられる 「 希望 」 が、

湧き上がってくることでしょう

★今月は、「 イタリア協奏曲 」、 「 ワルトシュタイン・ソナタ 」 、

「 平均律クラヴィーア第 1巻 12番 へ短調 」 の3 講座が、

延期となりました。

将来の再開に向け、この宝物のような 三曲を、

さらに、深く勉強しております。

その一端を、このブログでも、少しずつ、お伝えしたいと、

思います。

 

★作曲家としては、 「 無伴奏チェロ組曲 全 6曲 」 の完成を、

急いでおります。

出来上がりましたページから、どんどん、ベルリンの、

Wolfgang Boettcher   ベッチャー先生のもとに、

送付しております。

 

★ベッチャー先生は、3月 31日、ドイツの  Frankenthal

フランケンタールで、お姉さまのピアニスト Ursula Trede-Boettcher  

ウルズラ トレーデ ベッチャーさんと、

私の 「 チェロとピアノのための二重奏作品 」

「  Erntelied-Variationen fur Cello und Klavier  」 を、

4月3 日には、Mannheim  マンハイムで

私の 「 Solo Cello Suite No.1 」

「 無伴奏チェロ組曲 1番 」 を、演奏してくださいます。

 

★どちらの曲も、美しい日本自然から、

インスピレーションを得て、作曲したものです。

この時期に、演奏されることは、ドイツで、きっと、

深い共感をもって、聴いていただけることと、思います。

 

 

                    (紅梅の花びら、ヒヤシンス、馬酔木、牡丹の芽)

 ▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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■イタリア協奏曲のアナリーゼ講座の中止につきまして■

2011-03-21 23:37:32 | ■私のアナリーゼ講座■

 

■イタリア協奏曲のアナリーゼ講座の中止につきまして■

                            2011.3.21 中村洋子

 

 

 

★本日は、バッハのお誕生日です。

日本で、このような、悲しいお誕生日を迎えるとは、

夢にも、思いませんでした。

本日に予定しておりました、カワイ表参道 「パウゼ」 での、

バッハ 「 イタリア協奏曲 」 アナリーゼ講座は、

延期させていただきました。

 

★また、27日に予定しておりました、

上大岡での 「ベートーヴェン・ヴァルトシュタインソナタ 」

アナリーゼ講座も、延期させていただきます。

 

★3月11日に起きました、福島沖を震源とします 

「 東日本大震災 」 から、10日がたちました。

なかなか、希望の見えない毎日です。

犠牲者の皆様には、言葉もございません。

心よりお悔やみ申し上げます。

 

★また、福島第1原発での、津波による冷却装置の破壊がもたらした、

放射性物質の拡散も、予断が許しません。

場合によれば、日本に壊滅的な被害を及ぼしかねません。

本当に、憂慮されます。

 

★しばらく、このブログを中断しておりましたが、

これからも、また、書き続けてまいりたいと、思います。

 

 

  

 ▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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■シューマンの“ インヴェンション ”が、「 子供のためのアルバム 」■

2011-03-03 23:59:06 | ■私のアナリーゼ講座■

■シューマンの“ インヴェンション ”が、「 子供のためのアルバム 」■
                          2011.3.3 中村洋子

 

 


★ 前回のブログで、触れましたように、Schumann シューマンの、

「 Album fur die Jugent 子供のためのアルバム 」 Op.68 は、

バッハ「 Inventionen インヴェンション 」 に、

匹敵するような、素晴らしい  「 形式と内容 」 をもっています。


第 1番の 「 Melodie = メロディー 」  をもとに、

次々と、曲が紡ぎだされていくのです。

「 インヴェンション 」  と、同じ構造です。

 1小節目の曲頭「 E 」から始まる、上声のフレーズは、

一般に使われている  「 実用譜 」  では、

2小節目の最後の音  「 G 」 で、閉じています。


★ しかし、自筆譜を見ますと、 「 G 」 を、

軽やかに飛び越え、 2小節目と 3小節目との間の、

小節線に向かって、たなびくように、伸びています。


★ その後、3小節目の 第 1音は、この曲の前半の頂点である、

1オクターブ高い  「 G 」  から、また新しくフレーズを、

始めています。

 

 


★ これは、なにを意味しているのでしょうか?

この上声を、実際に歌ってみますと、

答えは、簡単に得られます。


★ 最初のフレーズが終わった 2小節目と、次のフレーズが始まる

3小節目の間で、 ≪ ブレスをしてはいけない ≫

ということ、なのです。

 

2小節目 最後の「 G 」では、フレーズを閉じずに、

その後、 ほんの一瞬、 声をひそめ、

1オクターブ高い、 3小節目 1拍目の 「  G  」 へ、

≪ 跳躍しなさい ≫ 、 ということになります。


★ 私は、この曲をピアノの弾いていますと、

あの大歌手  Lotte Lehmann ロッテ・レーマンの声が、

本当に、聴こえてくるような気がします。

なぜ、この曲の題が  「 Melodie = メロディー 」  なのか、

実に、よく、分かるのです。

 

 


≪ 歌うように弾きなさい ≫  というのは、

言うは易し、実際は難しいのです。

シューマンの歌曲を、深く勉強しますと、

この 4小節の弾き方が、ようやく、分かってくるのです。

シューマンという天才の曲は、小さく単純そうに見えても、

決して、侮ることのできない、一筋縄ではいかないのです。

それが、天才の曲という、ことでもあるのです。


★このフレーズでの、記譜の仕方について、

「 単なる偶然で、筆が滑っただけではないか 」  と、

思われる方も、いらっしゃるかもしれません。

 

 


★しかし、似たような例として、シューマンの

歌曲集 「 Dichterliebe 詩人の恋 」 Op.48 ,

第 1番 「 美しき五月に 」  が、あります。


★ 曲頭、ピアノの開始音  「 Cis 」 から、

当然、フレーズが始まるはずなのですが、

フレーズの線は、その前、つまり、曲の始まる前から、

たなびくように、描かれており、

「 Cis 」 の上空を、あたかも浮遊するように、流れていきます。

これは、ピアニストにこの曲は 「 Cis 」 から始まるのではなく、

ピアノで、音を出す前から、

「 美しい五月 」 の音楽が始まっている、

その音楽を、心で奏でてから、弾き始めなさい、

という指示です。


★ そうしますと、この  「 Cis 」 を、

どのような音色、タッチで弾くべきか、

自ずと、分かってきます。

 

 


「 子供のためのアルバム 」 の、

第 1番 「 Melodie = メロディー 」 の自筆譜からは、

このほかにも、たくさんの発見があります。

それが、第 10番「 楽しき農夫 」 に、

どのように、つながっていくのか、

「 楽しき農夫 」 下声のフレーズを、

シューマンが、どのようにとらえて、作曲したか・・・、

それについては、3月7日  「 横浜みなとみらい・カワイ 」 での

「 第  4回 インヴェンション・アナリーゼ講座 」  で、

詳しく、お話いたします。

 

 (名古屋・ 亀末広:お干菓子「ひな祭り」、万作、土佐ミズキ花芽、紅梅 )

▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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■ 山本英明さん偲ぶ会と、3月の講座日程 ■

2011-03-01 17:03:25 | ■私のアナリーゼ講座■

 ■ 山本英明さん偲ぶ会と、3月の講座日程 ■
                      2011.3.1 中村洋子

 

 

★先週は、2月23日水曜日、名古屋での

「 第 4回インヴェンション・アナリーゼ講座 」、

25日は、「 山本英明さんを偲ぶ会 」

(  漆宝堂・主宰、 於 : 新宿・龍雲庵  )、

そして、ベルリンの Ries&Erler

リース&エアラー社から、近日出版されます、

「 チェロ二重奏曲集 」  の校訂で、あわただしい一週間でした。


★気がつきましたら、もう、3月

山本英明さんは、“ いつでも、またお会いできる、

気さくに、語りかけていただける ”、

そんな気持ちでいましたが、あらためて、

月並みな表現ですが、残念で悲しいです。


★彼が残しました漆器をあらためて、まとめて拝見いたしますと、

「 隙のない、破綻のない力強さ 」 を、しみじみ感じました。

バッハが同時代、あまり評価、理解されなかったように、

こんなに凄い人を、どこまで、私が理解していたか?と、思いました。

逆に、「 英明さんの評価はこれから 」 、という気持ちがします。

 


★漆宝堂さんのお話で、特に記憶に残ったのは、

「 英明さんの漆器ほど、洗ったとき、水切れの良いものはない 」。

漆宝堂さんの奥様は、いろいろな作家の展示会のたびに、

漆器に美しいお料理を盛り、その後、洗う作業を、

ずっと、なされてきましたが、実感として、

「 最も、水切れがいいのが、山本英明さん 」。

 


★何故、そうなのでしょうか?

「 漆の精製を、愚直にも、太古のままの方法でなさっている 」。

これが、理由でしょう、と漆宝堂さん。

漆の幹を引っ掻いて採られた樹液を、大きな盥に入れ、

真夏の炎天下、汗をかきかき、一日中かき回し、

降り注ぐ太陽の光で、煮詰めるからです。

日本で、山本さん父子と、佐川泰正さんだけが、

質の高い漆を作るためには、欠かせない工程として、

この重労働を、墨守されているようです。

その他の作家は、電熱器という “ 文明 の器具 ” に依存しています。

仕上がった漆器を見ただけでは、 「 太陽による手作りの漆 」 か、

「 文明の利器による、楽をした省力化の漆 」 かは、

全く、分かりません。

 


★外見では分からずとも、その本質的な差は、 「 洗う 」 という、

最も、基本的な日常の作業の上に、歴然と表れるのでしょう。

 


★名古屋の講座では、 「 Invention & Synphonia 4番 」 と、

シューマン 「 子供のためのアルバム 」 について、お話しました。

日本では、シューマンの 「 子供の情景 」 は ≪ 大人の曲 ≫、

「 子供のためのアルバム 」 は、  ≪ 子供の練習用曲 ≫ と、

まことしやかに、捉える風潮があります。

 


★シューマンが、長女マリーちゃん 7歳の誕生日のために、

作曲したという経緯から、 “ 子供向き ” と、

決めつけるのは、どうでしょうか。

シューマンは、子供に最上のものを与えようと、作曲しましたが、

何度にもわたる推敲や、曲の骨格、構造を見ますと、

バッハの「 Invention 」 と実に、多くの共通点があることに、

いまさらながら、気付かされます。

 


★大作曲家は、作曲するときの創作態度として、

子供用、大人用とに、区別はしていません。

子供用だからと手抜いたり、区別することは、できないのです。

作品番号を付けている、ということは、渾身の作ということです。

 


★この点につきましては、3月7日に、

カワイ横浜「 みなとみらい 」 で開催いたします、

「 第 4回インヴェンション・アナリーゼ講座  」  で、

また、詳しく解説いたします。

 


3月は、以下の予定で、講座を開催いたします。

・3月7日   ( 月 ) 10時~12時半 カワイ・横浜みなとみらい
            
≪ Invention & Synphonia 4番 へ長調 ≫ 
                      ℡ 045-261-7323
・3月 21日 ( 月/祝 ) 14時~16時半 カワイ・表参道 「 パウゼ 」
            
≪ バッハ・イタリア協奏曲 ≫
                      ℡ 03-3409-1958 
・3月 27日 ( 月 ) 9時 40分~ 12時 10分 上大岡「港南ひまわりの郷」

           ≪ ベートーヴェンソナタ・ワルトシュタイン ≫
                      ℡ 045-842-4661
・3月 30日 ( 水 )  10時~12時半 カワイ・表参道 「 パウゼ 」
                    
≪ 平均律第 1巻 12番 ヘ短調 ≫
                                            ℡ 03-3409-1958

 

 

 ( 山本さんの紅茶盆、重箱、お椀、漆クロめ作業、漆塗りの準備、

                              福寿草、水鉢)
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

 

 

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