■ ベーゼンドルファー物語の続き、 その2 ■
2006/8/11(金)
★2006/3/29 「ベーゼンドルファー」物語 その1の続きです
ピアノの命である「響板」は、厚さ約1cm 、幅約10cmのスプルースの板を並べて貼り合わせます。
木目は鍵盤と直角ではなく、鍵盤右側・高音部から低音部へと斜めに綺麗に流れています。
ピアノの外周のケース(箱)は、二通りの造り方があります。
大多数のピアノが採用している方式は、次のようです。
ブナやカエデ(厚さ3mm弱、幅40cm、長さはピアノ外周分)の板を、
何枚か貼り合わせて積層板をつくります。
一枚一枚の薄い板は、ちょうど大根のカツラ剥きと同じような方法で作ります。
これを大きな力でボディーの形に湾曲させてケースとします。
小さいピアノの場合、厚さ18mm前後、フルコンサートでは厚さが50mmになり、かなり重量があります。
この重い積層板で、内側の軽い響板を囲む形となります。
また、弦の張力を支える構造材としての役割も担っています。
★しかし、ベーゼンドルファーは、全く異なる考え方です。
ケースを響板と同じように“楽器”として響かせるため、響板と同じ素材のスプルースでケースを造ります。
積層板ではなく、厚みのある木材の内側に細かい切れ込みを縦にたくさん入れ、
圧力を加えることなく、自在に曲面をつくり出します。
ピアノの裏側を下から見上げますと、建物の柱のような10センチ角の木材が、井桁状に組まれています。
この素材も響板と同じスプルースです。
寸分の隙間なく交差させています。
この支柱が弦の大きな張力を支え、さらに音の通り道としての機能も合わせもちます。
ピアノ全体が共鳴箱となります。
この結果、面白い実験ができます。
オルゴールをケースの上に置くと、あら不思議!オルゴールの音が大きく美しく鳴り響きます。
支柱の上に置いても同じです。響板の上ではもちろんのことです。
ピアノ全体がオルゴールの小さな音を共鳴させているのです。
ピアノ全体が共鳴箱となっている証明です。
また、例えばC-E-G(ド-ミ-ソ)のダンパーを抑えておいて、ピアノのボディーのどこかを
コツンと叩きますと、ドミソの音が出てきます。
★パイプオルガンのフルストップの音まで出すことが可能です。
まず、ダンパーペダルを踏んだ状態にします。
そうすると、止音装置であるダンパーが上がったままの状態となり、響きがいつまでも続きます。
例えば、倍音列に沿って、最低音部からC-C-G-C-E-G-C-E-Gと最高音部まで、
順に弾いていきます。
すると、どうでしょう!!
荘厳なオルガンのような響きが鳴り渡ります。
豊かな音が洪水のように、ピアノの黒い箱からいつまでも溢れ出てきます。
弦楽の響き、ホルンや木管の響きまで聴こえてきます。
初めて体験された方は、感動されます。
これは、ピアノの中で音が巡り回り、走り回ることで、音が干渉し合い、いろいろの音が出てくるためです。
ベーゼンドルファー(セミコン以上)には、通常のピアノより低いエクステンディドキーが付いています。
これはもともと、大ピアニスト・ブゾーニ(1866~1925)の要求で付けられるようになったそうです。
ブゾーニは、バッハのオルガン曲「パッサカリア ハ短調BWV582」をピアノ編曲するために、
通常の最低音Aより低い音が必要だったのです。
★弦の強大な張力(約20トン)を支えている主役は、鋳鉄製の「フレーム」です。
19世紀半ばに、この鋳鉄フレームが誕生したことで、ピアノの音量が飛躍的に大きくなりました。
ベーゼンドルファーのフレームは、製造後に約半年の間、寝かせます。
直後に組み込みますと、わずかですが歪が発生し、ピアノ全体の力のバランスに影響が出てくるそうです。
このフレームは、約4週間かけ、吹き付けては研磨する、という手作業を、女性の手で5~6回繰り返します。
この丹念な仕上げこそがベーゼンドルファーの美意識の表れです。
かつて、チェンバロの蓋などに美しい装飾を施したり、絵画を描いた名残かもしれません。
ピアノの蓋を開けますと、まず、ブロンズ色の美しいフレームが目に飛び込んできます。
気品に満ち、明るく、節度ある美しさです。
スポットライトがフレームに当たりますと、ブロンズ色が新たな生命を得たかのごとく、
宝石のように光り輝き始めます。
その下にある響板の淡い黄色との対比も見事です。
いい音楽が立ち昇ってきそうな予感がいたします。
ヴァイオリンなど弦楽器の肌色ともこの上なく調和し、室内楽に、オーケストラに溶け込みます。
★ 余談ながら、バルトークは晩年、インペリアルの中古を使っていたそうです。
▼▲▽△▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲▽△▼▲
2006/8/11(金)
★2006/3/29 「ベーゼンドルファー」物語 その1の続きです
ピアノの命である「響板」は、厚さ約1cm 、幅約10cmのスプルースの板を並べて貼り合わせます。
木目は鍵盤と直角ではなく、鍵盤右側・高音部から低音部へと斜めに綺麗に流れています。
ピアノの外周のケース(箱)は、二通りの造り方があります。
大多数のピアノが採用している方式は、次のようです。
ブナやカエデ(厚さ3mm弱、幅40cm、長さはピアノ外周分)の板を、
何枚か貼り合わせて積層板をつくります。
一枚一枚の薄い板は、ちょうど大根のカツラ剥きと同じような方法で作ります。
これを大きな力でボディーの形に湾曲させてケースとします。
小さいピアノの場合、厚さ18mm前後、フルコンサートでは厚さが50mmになり、かなり重量があります。
この重い積層板で、内側の軽い響板を囲む形となります。
また、弦の張力を支える構造材としての役割も担っています。
★しかし、ベーゼンドルファーは、全く異なる考え方です。
ケースを響板と同じように“楽器”として響かせるため、響板と同じ素材のスプルースでケースを造ります。
積層板ではなく、厚みのある木材の内側に細かい切れ込みを縦にたくさん入れ、
圧力を加えることなく、自在に曲面をつくり出します。
ピアノの裏側を下から見上げますと、建物の柱のような10センチ角の木材が、井桁状に組まれています。
この素材も響板と同じスプルースです。
寸分の隙間なく交差させています。
この支柱が弦の大きな張力を支え、さらに音の通り道としての機能も合わせもちます。
ピアノ全体が共鳴箱となります。
この結果、面白い実験ができます。
オルゴールをケースの上に置くと、あら不思議!オルゴールの音が大きく美しく鳴り響きます。
支柱の上に置いても同じです。響板の上ではもちろんのことです。
ピアノ全体がオルゴールの小さな音を共鳴させているのです。
ピアノ全体が共鳴箱となっている証明です。
また、例えばC-E-G(ド-ミ-ソ)のダンパーを抑えておいて、ピアノのボディーのどこかを
コツンと叩きますと、ドミソの音が出てきます。
★パイプオルガンのフルストップの音まで出すことが可能です。
まず、ダンパーペダルを踏んだ状態にします。
そうすると、止音装置であるダンパーが上がったままの状態となり、響きがいつまでも続きます。
例えば、倍音列に沿って、最低音部からC-C-G-C-E-G-C-E-Gと最高音部まで、
順に弾いていきます。
すると、どうでしょう!!
荘厳なオルガンのような響きが鳴り渡ります。
豊かな音が洪水のように、ピアノの黒い箱からいつまでも溢れ出てきます。
弦楽の響き、ホルンや木管の響きまで聴こえてきます。
初めて体験された方は、感動されます。
これは、ピアノの中で音が巡り回り、走り回ることで、音が干渉し合い、いろいろの音が出てくるためです。
ベーゼンドルファー(セミコン以上)には、通常のピアノより低いエクステンディドキーが付いています。
これはもともと、大ピアニスト・ブゾーニ(1866~1925)の要求で付けられるようになったそうです。
ブゾーニは、バッハのオルガン曲「パッサカリア ハ短調BWV582」をピアノ編曲するために、
通常の最低音Aより低い音が必要だったのです。
★弦の強大な張力(約20トン)を支えている主役は、鋳鉄製の「フレーム」です。
19世紀半ばに、この鋳鉄フレームが誕生したことで、ピアノの音量が飛躍的に大きくなりました。
ベーゼンドルファーのフレームは、製造後に約半年の間、寝かせます。
直後に組み込みますと、わずかですが歪が発生し、ピアノ全体の力のバランスに影響が出てくるそうです。
このフレームは、約4週間かけ、吹き付けては研磨する、という手作業を、女性の手で5~6回繰り返します。
この丹念な仕上げこそがベーゼンドルファーの美意識の表れです。
かつて、チェンバロの蓋などに美しい装飾を施したり、絵画を描いた名残かもしれません。
ピアノの蓋を開けますと、まず、ブロンズ色の美しいフレームが目に飛び込んできます。
気品に満ち、明るく、節度ある美しさです。
スポットライトがフレームに当たりますと、ブロンズ色が新たな生命を得たかのごとく、
宝石のように光り輝き始めます。
その下にある響板の淡い黄色との対比も見事です。
いい音楽が立ち昇ってきそうな予感がいたします。
ヴァイオリンなど弦楽器の肌色ともこの上なく調和し、室内楽に、オーケストラに溶け込みます。
★ 余談ながら、バルトークは晩年、インペリアルの中古を使っていたそうです。
▼▲▽△▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲▽△▼▲