■「ラヴェルのお薦めピアノ作品」の余談■
08.2.21
★「ラヴェルのお薦めピアノ作品」(08.2.18)で、
34歳の作品「ハイドンの名によるメヌエット」は、
ハイドン「HAYDN」のスペリングを、
音に当て嵌めてメロディーをつくり、
曲に折り込んでいることをご紹介しました。
★そのことについての、サン=サーンスから
フォーレへの手紙が、残っております。
サン=サーンスは、フォーレより10歳年上で、師弟関係でしたが、
生涯を通じて、尊敬しあう友人でもありました。
サン=サーンスは、名前を織り込む作曲には
懐疑的で、好意的ではなかったようです。
以下は、「ラヴェル-生涯と作品-」
ロジャー・ニコル著 渋谷和邦訳 泰流社
からの要約です。
★<音楽雑誌S・I・Mの創刊者エコルシェヴィユ氏が、
ハイドン没後100年を祝い、音符でHAYDNの名前を表した曲を
たくさんの作曲家に依頼した。
サン=サーンスは、フォーレに
「エコルシェヴィユ氏は、ハイドンを記念したい、と言っている。
それは好ましいことです。
しかし、音符に名前を当て嵌めた曲を求めています。
(HAYDNは、ロ、イ、ニ、ニ、トと割り振っている)
私は、エ氏に“はたして、YとNがニとトを意味することが可能か、
立証してみせてくれ”と、問い合わせた。
同じことを君にも尋ねてみたい。
しかし、こういう馬鹿げたことに、かかわりでもしたら、
厄介なことになるかもしれない。
ドイツ音楽界に、物笑いの種をまくことになるからです」>
★結局、フォーレも、サン=サーンスと同様、作曲せず、
求めに応じて作曲したのは、ラヴェル、ドビュッシー、
ダンディー、ヴィドール、アーン、デュカなどだったそうです。
★ラヴェルは、前回のブログで書きましたように、
HAYDNの音を、逆行形も使って美しく散りばめ、
わずか54小節ですが、見事な「小宇宙」を創造しました。
★数個の音から成る同一テーマを、素材にして、
何人かの作曲家が、それぞれ作曲することは、
各々の個性が現われ、大変に興味深いものです。
HAYDNについては、デュカとドビュッシーの作品も
とても優れています。
★案外、サン=サーンスとフォーレは、
そのように比較されることを、嫌ったのかもしれません。
さらに、当時の長老であったサン=サーンスは、
“若僧”で、前衛の最たる存在だったドビュッシーやラヴェルと
同じテーマで書くことなど、
プライドが許さなかったのかもしれません。
また、自分ひとりが書かないのでなく、
フォーレにも同調を求めた、ともとれます。
テーマに必然性がない訳ですから、一種の遊びとして
割り切らないと、作曲できません。
★このように、名前を織り込んむ作曲は、最近でも見受けられます。
1976年、指揮者「パウル・ザッハー」の満70歳の誕生日を記念し、
チェリストのロストロポービッチが、ベリオ、ルトスワフスキ、
ホリガー、デュティーユ、ブーレーズなど12人の作曲家に呼び掛け、
「SACHER」の名前を、「変ホ、イ、ハ、ロ、ホ、ニ」という
音にして、曲を作るよう依頼しました。
それらは、技巧的にみて大変、興味深い曲集となっています。
★その曲集は「12 HOMMAGE A PAUL SACHER POUR VIOLONCELLE」
というCDで発売されています。
POLYDOR ECM NEW SERIES POCC-1025/6。
ザッハーは、「バーゼル室内管弦楽団」や、
バーゼルの「スコラ・カントルム」の創設者でもあり、
大変な財力を持っていた人で、
多くの現代作曲家の初演を支援しています。
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲
08.2.21
★「ラヴェルのお薦めピアノ作品」(08.2.18)で、
34歳の作品「ハイドンの名によるメヌエット」は、
ハイドン「HAYDN」のスペリングを、
音に当て嵌めてメロディーをつくり、
曲に折り込んでいることをご紹介しました。
★そのことについての、サン=サーンスから
フォーレへの手紙が、残っております。
サン=サーンスは、フォーレより10歳年上で、師弟関係でしたが、
生涯を通じて、尊敬しあう友人でもありました。
サン=サーンスは、名前を織り込む作曲には
懐疑的で、好意的ではなかったようです。
以下は、「ラヴェル-生涯と作品-」
ロジャー・ニコル著 渋谷和邦訳 泰流社
からの要約です。
★<音楽雑誌S・I・Mの創刊者エコルシェヴィユ氏が、
ハイドン没後100年を祝い、音符でHAYDNの名前を表した曲を
たくさんの作曲家に依頼した。
サン=サーンスは、フォーレに
「エコルシェヴィユ氏は、ハイドンを記念したい、と言っている。
それは好ましいことです。
しかし、音符に名前を当て嵌めた曲を求めています。
(HAYDNは、ロ、イ、ニ、ニ、トと割り振っている)
私は、エ氏に“はたして、YとNがニとトを意味することが可能か、
立証してみせてくれ”と、問い合わせた。
同じことを君にも尋ねてみたい。
しかし、こういう馬鹿げたことに、かかわりでもしたら、
厄介なことになるかもしれない。
ドイツ音楽界に、物笑いの種をまくことになるからです」>
★結局、フォーレも、サン=サーンスと同様、作曲せず、
求めに応じて作曲したのは、ラヴェル、ドビュッシー、
ダンディー、ヴィドール、アーン、デュカなどだったそうです。
★ラヴェルは、前回のブログで書きましたように、
HAYDNの音を、逆行形も使って美しく散りばめ、
わずか54小節ですが、見事な「小宇宙」を創造しました。
★数個の音から成る同一テーマを、素材にして、
何人かの作曲家が、それぞれ作曲することは、
各々の個性が現われ、大変に興味深いものです。
HAYDNについては、デュカとドビュッシーの作品も
とても優れています。
★案外、サン=サーンスとフォーレは、
そのように比較されることを、嫌ったのかもしれません。
さらに、当時の長老であったサン=サーンスは、
“若僧”で、前衛の最たる存在だったドビュッシーやラヴェルと
同じテーマで書くことなど、
プライドが許さなかったのかもしれません。
また、自分ひとりが書かないのでなく、
フォーレにも同調を求めた、ともとれます。
テーマに必然性がない訳ですから、一種の遊びとして
割り切らないと、作曲できません。
★このように、名前を織り込んむ作曲は、最近でも見受けられます。
1976年、指揮者「パウル・ザッハー」の満70歳の誕生日を記念し、
チェリストのロストロポービッチが、ベリオ、ルトスワフスキ、
ホリガー、デュティーユ、ブーレーズなど12人の作曲家に呼び掛け、
「SACHER」の名前を、「変ホ、イ、ハ、ロ、ホ、ニ」という
音にして、曲を作るよう依頼しました。
それらは、技巧的にみて大変、興味深い曲集となっています。
★その曲集は「12 HOMMAGE A PAUL SACHER POUR VIOLONCELLE」
というCDで発売されています。
POLYDOR ECM NEW SERIES POCC-1025/6。
ザッハーは、「バーゼル室内管弦楽団」や、
バーゼルの「スコラ・カントルム」の創設者でもあり、
大変な財力を持っていた人で、
多くの現代作曲家の初演を支援しています。
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲