音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■ Brahms の掛留音(非和声音)も、Bach由来■

2015-07-22 18:45:38 | ■私のアナリーゼ講座■

Brahms の掛留音(非和声音)も、Bach由来
~ 第11回 金沢 Invention・アナリーゼ講座 11番 g-Moll ~

           2015.7.22   中村洋子

 

 

★インヴェンションは、第1番 C-Dur から昇りつめ、

9番 f-Moll で頂点に達します。

そして、10番 G-Dur は、その後の世界をあたかも眺望するかのような、

明るく晴れやかな曲です。


★11番 g-Mollは、10番と対を成す曲ですが、

いずれも1番 C-Dur の大きな翼の下にあるのです。

一曲ずつ、単独で向かい合うのでは、

Bach が意図した構想、音楽の真の姿には、触れることができません。


沈痛な曲想の「Inventio11番 g-Moll」の主題は、

実はあの明るく、喜びに満ちた「10番 G-Dur」 から

導き出されています。 


★1、2小節に奏される一番目の対主題の「半音階」は、

紛れも無く 「9番 f-Moll」 と呼応しています。

Inventio全15曲のなかで、この11番の果たしている意味について、

分かり易くお話します。

 

 

★「Sinfonia 11」も同様に、Sinfonia 1~10番までを、

総合している曲ですが、近代的で「斬新な和声」が次々と繰り出されます。

それを、ピアノの音で実際に聴いていただき、

「耳と、頭と、心」で、体験して下さい。

テンポやエクスプレッション、ディナーミクなどの奏法と直接、

関係してきます。

 

★この11番のメランコリックな世界を深く愛したのが、

Brahms ブラームスです。

「Drei Intermezzi 間奏曲Op.117-2」を例に、

Brahms と Bach の「非和声音」、特に今回は、

「掛留音(suspention)」をご説明します。

 

日本語に翻訳された和声用語の難解さに惑わされるのは、

本当につまらなく、時間の無駄であると思います。

無味乾燥な教科書で覚えようとしても、理解不可能です。

Bach や Brahms の本物の作品を通して、

「非和声音」を分かりやすく噛み砕いてご説明いたしますので、

自然に身につくことでしょう。

 

 

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■日  時 :  2015年 26日( 午前 1012 30

■会  場 :  カワイ金沢ショップ 金沢市南町5-9 
             ( 尾山神社前 南町バス停より徒歩3分)

■予  約 :  Tel.076-262-8236 金沢ショップ

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■講師 :   作曲家  中村 洋子  Yoko Nakamura

     東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。
     日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。

         2003 ~ 05年:アリオン音楽財団 ≪東京の夏音楽祭≫で新作を発表。

         07年:自作品 「 Suite Nr.1 für Violoncello
         無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 などをチェロの巨匠
         Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー氏が演奏した
    CD 『 W.Boettcher Plays JAPAN
                         ヴォルフガング・ベッチャー日本を弾く 』 を発表。

         08年: CD 『 龍笛 & ピアノのためのデュオ 』
        CD 『 星の林に月の船 』 ( ソプラノとギター ) を発表。

         08~09年: 「 Open seminar on Bach Inventionen und Sinfonien
                  Analysis  インヴェンション・アナリーゼ講座 」
                    全 15回を、 KAWAI 表参道で開催。

         09年: 「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」の楽譜を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」  から出版。
 
         10~12年: 「 Open seminar on Bach Wohltemperirte Clavier Ⅰ
                  Analysis 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 アナリーゼ講座 」
                    全 24回を、 KAWAI 表参道で開催。

         10年: CD 『 Suite Nr.3 & 2 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 3番、2番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。
       「 Regenbogen-Cellotrios  虹のチェロ三重奏曲集 」の楽譜を、
             ドイツ・ドルトムントのハウケハック社
       Musikverlag Hauke Hack Dortmund から出版。

         11年: 「 10 Duette für 2 Violoncelli
                         チェロ二重奏のための 10の曲集 」の楽譜を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

         12年: 「 Zehn Phantasien für Celloquartett (Band 1,Nr.1-5)
      チェロ四重奏のための 10のファンタジー (第 1巻、1~5番)」の楽譜を、
      Musikverlag Hauke Hack  Dortmund 社から出版。

         13年: CD 『 Suite Nr.4 & 5 & 6 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 4、5、6番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。
         「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」の楽譜を、
      ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

         14年:「 Suite Nr.2、4、5、6 für Violoncello
        無伴奏チェロ組曲 第 2、4、5、6番 」 の楽譜を、
       ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

          SACD 『 Suite Nr.1、2、3、4、5、6 für Violoncello
                            無伴奏チェロ組曲 第 1, 2, 3, 4, 5, 6番 』 を、
     「disk UNION 」社から、≪GOLDEN RULE≫ レーベルで発表。

           スイス、ドイツ、トルコ、フランス、チリ、イタリアの音楽祭で、
      自作品が演奏される。

        ★上記の 楽譜 & CDは、
「 カワイ・表参道 」 http://shop.kawai.co.jp/omotesando/ 
「アカデミア・ミュージック 」         https://www.academia-music.com/academia/s.php?mode=list&author=Nakamura,Y.&gname=%A5%C1%A5%A7%A5%ED
 https://www.academia-music.com/                           で販売中。

       ★私の作品の  SACD 「 無伴奏チェロ組曲 第 1 ~ 6番 」
   Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、
  disk Union や全国のCDショップ、ネットショップで、購入できます。
http://blog-shinjuku-classic.diskunion.net/Entry/2208/

 

 


※copyright © Yoko Nakamura    
             All Rights Reserved
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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■Sinfonia10番冒頭から始まる美しいカノン、変哲もない bassに隠された主和音■

2015-07-19 21:02:02 | ■私のアナリーゼ講座■

■Sinfonia10番冒頭から始まる美しいカノン、変哲もない bassに隠された主和音■
 ~ KAWAI 金沢第10回 Inventionアナリーゼ講座 10番 G-Dur~
              2015.7.19   中村洋子

 

 

★7月14日の KAWAI 表参道「平均律第2巻アナリーゼ講座」最終会で、

7年かけて続けてきましたBach の 「Invention & Sinfonia」全15曲、

「Wohltemperirte ClavierⅠ、 Ⅱ 平均律クラヴィーア曲集 1、 2巻」

全48曲のアナリーゼ講座が終了しました。


★それ以外にもBach の作品は、「Italienisches Konzert

イタリア協奏曲」3回、 「Franzosische Suites フランス組曲」3回、

名曲集3回も、アナリーゼ講座を開きました。

 
★熱心な皆さまに支えられ、完結しましたことを感謝申し上げます。

受講生のお一人のブログにも、書いていただき、嬉しく存じます。
http://glennmie.blog.so-net.ne.jp/2015-07-17

 

 


7月22日は、 KAWAI 金沢で第10回「 Inventionアナリーゼ講座」です。

今回も、 Invention & Sinfonia 10番 G-Dur の詳しい解説とともに、

・「 Fuga の alteration 変応」とは何か。
・「 Franzosische Suite Nr.5 フランス組曲 5番 との関連性」
・「 Suite fur Violoncello solo Nr.4 無伴奏チェロ組曲第4番との関連性」
・「Sinfonia Nr.10 の初稿である Klavierbüchlein の Fantasia Nr.5 が、
              Sinfonia Nr.10とどう異なりそれは何故なのか」

 などを、分かりやすくご説明いたします。


★それらすべてのことは、机上の論理ではなく、Bach をどう弾くかに、

直結しなければ意味がありません。


Invention 10番 G-Dur の1小節目冒頭を、見てみましょう。

上声に「 Subject 主題」があります。

その開始音「 g¹  h¹  d² 」は、G-Dur の 「tonic 主和音」の

音を形成すると同時に、この曲の大切な motif モティーフ でもあるのです。

 

 


★それがどのように展開されていくかについて、講座でお話しますが、

ここでは、この motif モティーフ が Sinfonia Nr.10 で、

どう発展しているかについて、少し、ご説明いたします。


Sinfonia Nr.10の冒頭1、2小節の下声部をまず、見てましょう。

四分音符で「G  H  G  c  d  D  G」と、奏されていきます。


ここは何の変哲もない bass バス の音と、とらえがちです。

実は、この7つの音のうち、1、2番目そして5番目の音を、

繋ぎますと、先ほどの主和音「 g¹  h¹  d² 」の2オクターブ下の

「G H  d」となります。

 

 


この三つの音以外の音を、さらに見てみます。

3、4番目の音が「G  c」です。

この「G  c」は、G-Dur の主音から「下属音」になるという

大切な進行なのです。

 

 

★もう少し詳しく見ますと、

6、7番目の「D G」は、「属音」から「主音」になるという、

これまた、大切な進行です

 

 


楽典には、三拍子は「強 弱 弱」の拍子と定義され、実際に、

そのように弾くことを強いるレッスンもあります。

しかし、この左手下声の、

1、2、5番目の主和音による motif モティーフ と、

3、4番目の4度上行 motif モティーフ 、

そして、6、7番目の同じく4度上行 motif モティーフ を、

一度、分離して弾いてみてください。


★素晴らしく音楽的な bass バス が、浮かび上がってくることでしょう。

そして、3番目の「G」は、4番目の音、即ち2小節目1拍目の「c」に対する、

アウフタクトになります。

同様に、6番目の「D」は3小節目1拍目の「G」に対する、

アウフタクトです。

実に、音楽的な構造、骨格が炙り出されてきます。


★今度は1小節目上声 Subject 主題を見てみましょう。


このように「g¹ h¹ d²」という、 Invention Nr.10 冒頭の三つの音の

 motif モティーフ が、拡大形として浮上してきます。


Sinfonia Nr.10の1小節目冒頭上声に、「g¹ h¹ d²」があり、

下声は2小節にわたって「G H d」が奏され、

お互いがカノンの関係にあります。


これが、本当のBach の生きた 「counterpoint 対位法」です。

その先、どう発展していくかについては、

それを聴く人が分かるよう、どう説得力をもって演奏すべきか、

講座でご説明いたします。

 

 

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■ 中村洋子・ Invention アナリーゼ講座

第10回 「Invention & Sinfonia 第10番 ト長調  G-Dur」

■日  時 :  2015年 7月22日(水) 午前 10時 ~ 12時 30分

■会  場 :   カワイ金沢ショップ 金沢市南町5-9 
             ( 尾山神社前 南町バス停より徒歩3分)

■予  約 :   Tel.076-262-8236 金沢ショップ

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■講師 :   作曲家  中村 洋子  Yoko Nakamura

     東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。
     日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。

         2003 ~ 05年:アリオン音楽財団 ≪東京の夏音楽祭≫で新作を発表。

         07年:自作品 「 Suite Nr.1 für Violoncello
         無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 などをチェロの巨匠
         Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー氏が演奏した
    CD 『 W.Boettcher Plays JAPAN
                         ヴォルフガング・ベッチャー日本を弾く 』 を発表。

         08年: CD 『 龍笛 & ピアノのためのデュオ 』
        CD 『 星の林に月の船 』 ( ソプラノとギター ) を発表。

         08~09年: 「 Open seminar on Bach Inventionen und Sinfonien
                  Analysis  インヴェンション・アナリーゼ講座 」
                    全 15回を、 KAWAI 表参道で開催。

         09年: 「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」の楽譜を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」  から出版。
 
         10~12年: 「 Open seminar on Bach Wohltemperirte Clavier Ⅰ
                  Analysis 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 アナリーゼ講座 」
                    全 24回を、 KAWAI 表参道で開催。

         10年: CD 『 Suite Nr.3 & 2 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 3番、2番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。
       「 Regenbogen-Cellotrios  虹のチェロ三重奏曲集 」の楽譜を、
             ドイツ・ドルトムントのハウケハック社
       Musikverlag Hauke Hack Dortmund から出版。

         11年: 「 10 Duette für 2 Violoncelli
                         チェロ二重奏のための 10の曲集 」の楽譜を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

         12年: 「 Zehn Phantasien für Celloquartett (Band 1,Nr.1-5)
      チェロ四重奏のための 10のファンタジー (第 1巻、1~5番)」の楽譜を、
      Musikverlag Hauke Hack  Dortmund 社から出版。

         13年: CD 『 Suite Nr.4 & 5 & 6 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 4、5、6番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。
         「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」の楽譜を、
      ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

         14年:「 Suite Nr.2、4、5、6 für Violoncello
        無伴奏チェロ組曲 第 2、4、5、6番 」 の楽譜を、
       ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

          SACD 『 Suite Nr.1、2、3、4、5、6 für Violoncello
                            無伴奏チェロ組曲 第 1, 2, 3, 4, 5, 6番 』 を、
     「disk UNION 」社から、≪GOLDEN RULE≫ レーベルで発表。

           スイス、ドイツ、トルコ、フランス、チリ、イタリアの音楽祭で、
      自作品が演奏される。

        ★上記の 楽譜 & CDは、
「 カワイ・表参道 」 http://shop.kawai.co.jp/omotesando/ 
「アカデミア・ミュージック 」         https://www.academia-music.com/academia/s.php?mode=list&author=Nakamura,Y.&gname=%A5%C1%A5%A7%A5%ED
 https://www.academia-music.com/                           で販売中。

       ★私の作品の  SACD 「 無伴奏チェロ組曲 第 1 ~ 6番 」
   Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、
  disk Union や全国のCDショップ、ネットショップで、購入できます。
http://blog-shinjuku-classic.diskunion.net/Entry/2208/

 


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■一瞬にして f-Moll を b-Moll に転調する Bach の天才■

2015-07-11 23:52:45 | ■私のアナリーゼ講座■

■一瞬にして f-Moll を b-Moll に転調する Bach の天才■
                      ~平均律第2巻最終アナリーゼ講座 12番 f-Moll ~
                 2015.7.11            中村洋子

 

 


★7月に入り、蝉の声も初めて聞こえてきました。

14日は KAWAI 表参道、22日は KAWAI 金沢で、

アナリーゼ講座を開催いたします。


14日の表参道「Wohltemperirte Clavier Ⅱ

平均律クラヴィーア曲集 第 2巻」  analyze アナリーゼ講座は、

いよいよ、第2巻の最終会となりました。

これまで、Bach の「Manuscript Autograph  自筆譜」が

残っている順に、講座を終え、

その後、 「Manuscript Autograph  自筆譜 」が失われている、

第4番(cis-Moll)、第5番(D-Dur)、第12番(f-Moll) の順に

進めることとし、最後の第12番(f-Moll) となりました。


偶然の一致とはいえ、「 D-Dur 」と「 f-Moll 」は、

主音が「短3度」の関係にあります。

Bach が平均律第1巻で追求した、≪調性を規定する3度≫の関係

もっている二曲(5番と12番)を、最後に扱うことができるのは、

Bach先生の“ご配慮”ともいえます。

 

 


★第5番 D-Dur と 第12番 f-Moll は、互いに好対照の曲です。

イエス生誕の喜びに満ちた明るい5番に対し、

12番は、深い嘆きに沈潜する曲想です。


★特に、12番 には、Bach の典型的な和声 Bach harmony が、

網羅されています

講座では、それらをいくつかの類型に分け、綿密にご説明いたします。


例えば、「ナポリのⅡの和音」は、どの作曲家も使いますが、

Bachが使いますと、なぜかくも美しいのか、

どこが、「Bach的」であるのか・・・ということをご説明します。


★例えば、 12番 Fugaの55小節目2拍目は、

「f-Moll」のⅣから始まりますが、その下声に目を移しますと、

「 B  As  Ges  F 」 の16分音符ですが、

≪f-Moll≫であるならば、この3番目の「Ges」は「G」であるべきはずです。

 

 


★≪f-Moll≫のⅡの和音は、「 G  B  des 」の「減三和音」なのですが、

この根音「G」を半音下げて、「Ges」とすることにより、

「長三和音」となります。


半音下げて「減三和音」を、「長三和音」に変化させることにより、

暗く厳しい「減三和音」が、ほのかに明るく暖かい「長三和音」へと、

性格が一変してしまうのです。

 

 

 


★ここまでは、それほど驚くべき手法でもありませんが、

Bach は次の56小節目で、「 f-Moll ナポリのⅡの和音 」 の

「 Ges  B  des 」 をなんと、 「b-Moll のⅥ」 と読み替えて、

やすやすと、≪b-Moll≫に転調してしまうのです。

 

 

一瞬にして、別世界に運ばれた心地がします。

ここが、 Bach の天才でしょう。


★Bach は、この55小節目の後半の≪f-Moll≫から、

56小節目≪b-Moll≫への転調に、深い思いを込めていたことは、

次のような記譜からも、推察できます。


★ Bachの「Manuscript Autograph  自筆譜 」は残っていませんが、

Bach の意図を色濃く反映して写譜した、と思われる「筆写譜」を

見ますと、ここの転調部分が、視覚的に実に分かりやすく、

レイアウトされています。

 

 


この筆写譜は、1ページ7段で書かれています。

5段目最後に、55小節目を配置し、

55小節の1拍目で、5段目が終わっています。

そして、6段目の冒頭から、この55小節目の後半が始まります。


★もう一度、このページを注意深く眺めますと、

 

 

最上段の1段目冒頭の上声は、

「 g¹ as¹ b¹」 の16分音符で、始まっています。

これは、55小節目2拍目の下声「 B As Ges 」と、

見事に対応しています。


★さらに、視線を4段目冒頭に移しますと、

43小節目1拍目「 b  as  g 」が、同様に対応しているのが

分かります。

この「筆写譜」は、Bachの自筆譜を忠実に写したとみて、

間違いないでしょう。

これだけのレイアウトは、やはり Bach によるものでしょう。

 

 

★1段目の24小節目は、「 g¹ as¹ b¹」で、

2回目は「 b  as  g 」というように、

「g¹」であったり「g」であった音が、

3回目の55小節目2拍目では、「♭」が付されて「Ges」に

なっています。


★即ち、同型反復3回目に変化させる、という原則にも

則っています。

いかに55小節目2拍目が、この曲中で重要な位置を占めているか、

よく分かる例です。


★そして、その「ソ ラ シ」の三つの音から成る motif モティーフを、

 Julius Röntgen ユリウス・レントゲン (1855~1932)が、

彼の校訂版でどのように扱っているか、それを見ますと、

Röntgen の着眼点の深さに圧倒されます。

講座で、解説いたします。

 

 

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●中村洋子・平均律第2巻・アナリーゼ講座
       
第24回     第 12 番  f-Moll  BWV881  Prelude & Fuga

■日  時 :  2015年 7月14日(火) 午前 10時 ~ 12時 30分
■会  場 :  カワイ表参道  2F コンサートサロン・パウゼ
■予  約  :    Tel.03-3409-1958

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■講師 :   作曲家  中村 洋子  Yoko Nakamura

     東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。
     日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。

         2003 ~ 05年:アリオン音楽財団 ≪東京の夏音楽祭≫で新作を発表。

         07年:自作品 「 Suite Nr.1 für Violoncello
         無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 などをチェロの巨匠
         Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー氏が演奏した
    CD 『 W.Boettcher Plays JAPAN
                         ヴォルフガング・ベッチャー日本を弾く 』 を発表。

         08年: CD 『 龍笛 & ピアノのためのデュオ 』
        CD 『 星の林に月の船 』 ( ソプラノとギター ) を発表。

         08~09年: 「 Open seminar on Bach Inventionen und Sinfonien
                  Analysis  インヴェンション・アナリーゼ講座 」
                    全 15回を、 KAWAI 表参道で開催。

         09年: 「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」の楽譜を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」  から出版。
 
         10~12年: 「 Open seminar on Bach Wohltemperirte Clavier Ⅰ
                  Analysis 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 アナリーゼ講座 」
                    全 24回を、 KAWAI 表参道で開催。

         10年: CD 『 Suite Nr.3 & 2 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 3番、2番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。
       「 Regenbogen-Cellotrios  虹のチェロ三重奏曲集 」の楽譜を、
             ドイツ・ドルトムントのハウケハック社
       Musikverlag Hauke Hack Dortmund から出版。

         11年: 「 10 Duette für 2 Violoncelli
                         チェロ二重奏のための 10の曲集 」の楽譜を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

         12年: 「 Zehn Phantasien für Celloquartett (Band 1,Nr.1-5)
      チェロ四重奏のための 10のファンタジー (第 1巻、1~5番)」の楽譜を、
      Musikverlag Hauke Hack  Dortmund 社から出版。

         13年: CD 『 Suite Nr.4 & 5 & 6 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 4、5、6番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。
         「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」の楽譜を、
      ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

         14年:「 Suite Nr.2、4、5、6 für Violoncello
        無伴奏チェロ組曲 第 2、4、5、6番 」 の楽譜を、
       ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

          SACD 『 Suite Nr.1、2、3、4、5、6 für Violoncello
                            無伴奏チェロ組曲 第 1, 2, 3, 4, 5, 6番 』 を、
     「disk UNION 」社から、≪GOLDEN RULE≫ レーベルで発表。

           スイス、ドイツ、トルコ、フランス、チリ、イタリアの音楽祭で、
      自作品が演奏される。

        ★上記の 楽譜 & CDは、
「 カワイ・表参道 」 http://shop.kawai.co.jp/omotesando/ 
「アカデミア・ミュージック 」         https://www.academia-music.com/academia/s.php?mode=list&author=Nakamura,Y.&gname=%A5%C1%A5%A7%A5%ED
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       ★私の作品の  SACD 「 無伴奏チェロ組曲 第 1 ~ 6番 」
   Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、
  disk Union や全国のCDショップ、ネットショップで、購入できます。
http://blog-shinjuku-classic.diskunion.net/Entry/2208/

 

 


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