音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■ ブラームス・トーンの源流を探る「シューベルト・アナリーゼ講座」 ■

2007-12-24 16:20:50 | ★旧・私のアナリーゼ講座
2007/4/20(金)

★4月15日に開きました「シューベルト・アナリーゼ講座」は、満員となり、

受講生の皆さまから“とてもいい内容”という評価をいただきました。

前回の「ブラームス講座」で、私が説明いたしました“ブラームス・トーン”の源流が、

「シューベルトの音楽」の中の「どこにあるか」、それを探る講座でした。


★「シューベルト」から、「シューベルトを発見した」シューマン、さらに

シューマンから、「シューベルトの宝を引き継いだ」ブラームスへと、

「19世紀のウィーン」は、まさに、音楽の本流が滔々と流れ続けた町でした。

バッハ、ベートーベン、モーツァルト、ブラームスと大作曲家は、

幼少の頃から英才教育を受けていますが、父親や、兄を師とすることが多く、

シューベルトのように、幼児期からサリエーリのような

超一流の音楽家に、師事していませんでした。


★シューベルトは、「3度の関係の転調」を、創造しましたが、

多様性に富む3度の関係を、詳細に研究しますと、分厚い大論文が書けるほどです。

シューベルトがもし、論文を書くような人でしたら、超一流の理論家となっていたことでしょう。

しかし、彼はそれを説明なしに、続々と自作品に投入したため、

それを一般に理解してもらうのには、大変な時間を要しました。

あるいは、現在でも理解されていないかもしれません。


★もし、私がシューベルトの同時代人で、彼の即興曲の楽譜を見ましたら、

「この転調は、あちこちに飛んで、混乱している。

もう少し整理して、書き直せば、さらによい曲になる」と、思ったかもしれません。


★しかし、シューマンやブラームスなどの天才は、「3度の転調」の原理を、きちんと理解し、

黙って、自分の曲の中に、それを取り込んでいったのです。

ふんだんに取り込んでいったのです。

シューベルトが、“確信犯”のように、この転調を使えたのは、

彼が“サリエーリから古典音楽をすべて吸収した”、という自信があったためです。

迷わず、彼独自の転調を繰り出していったのです。

すべて古典を勉強した、という自信があれば、

大胆に新しい試みに、乗り出すことができるのです。

古典の中に隠れている小さな萌芽を、つまみ上げ、

それを発展させていった、ともいえるかもしれません。

その意味では、シューマンなどが、シューベルトから“養分”を引き出していったのと同様です。

晩年の即興曲には、見事なバッハの痕跡も見受けられます。


★シューベルトから、音楽の養分を吸い尽くしたのは、シューマン、ブラームス、

そして、シェーンベルクにつながるウィーンの音楽家だけではありません。

ポーランドから、ウィーンを経て、パリに向かった「ショパン」も、

シューベルトから、別な鉱脈を探し当てています。


★シューベルトは、膨大な舞曲を書き、それをエクササイズにして、

「即興曲」という、新たな世界に辿り着きました。

ショパンも、同様に、ワルツやマズルカの舞曲を実験曲とし、

それをバラードやソナタなどの、大規模な作品に結実させています。

また、シューベルトの創造した「即興曲」という形式を

ショパンは、そのまま使って書いております。


★ショパンは、「シューベルト的転調」の領域には、ほとんど踏み込みませんでした。

一見、ショパンの和声や転調は新しそうですが、実は古典的で、

分かりやすいドミナント進行の和声による転調を、多用しています。

ショパンの人気の秘密は、ここにあるのです。

結局、ショパンは、舞曲集という「様式」を、継承していきました。


★また、シューベルトは、「ユニゾン」のもつ偉大な効果を、発見しました。

例えば、1818年(21歳)作曲のD625「ヘ短調ソナタ」第3楽章アレグロのユニゾンは、

ショパンの「第2番ソナタ」の終楽章に現れるユニゾンに、強い影響を与えた、と

ヴィルヘルム・ケンプが「Shubert's Hidden Treasures」で指摘しています。


★その後、即興曲やワルツなどの形式と精神は、フランスの「フォーレ」にも受け継がれ、

フォーレの弟子の「ラヴェル」を通し、フランス音楽のなかで、大輪の花を咲かせるのです。

7月22日(日)の第10回アナリーゼ講座は、このショパンについて、お話いたします。


■ 閑 話


★休憩時間に、いつもお話しておりますピープルツリーのドライフルーツを3種、

おやつとして、皆さんと一緒にいただきました。

マンゴー、バナナ、パイナップルで、

「とても美味しい」と喜んでいただけました。

パイナップルは、輪切りにしてあり、押し花にしたヒマワリのようです。

バナナは、見かけは固そうですが、淡い甘さで柔らかい噛み心地。

(一般のバナナスライスは、油で揚げ、防腐剤や加糖処理されていますが、

ピープルツリーの製品は、スライスして天日で干しただけです)

甘酸っぱいマンゴーが美味しいのは、言わずもがなです。

太陽を一杯浴びた無農薬フルーツが、直接、産地から運ばれるため、

中間搾取がなく、生産者と消費者の両方にメリットが大きく、

生産者のお子さんが、その収入で学校に行けると思いますと、

二重にうれしい気持ちです。



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