音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■ Bach  Sinfonia Nr.12 は、限りなく優しい抱擁の歌 ■

2011-12-28 12:37:41 | ■私のアナリーゼ講座■

■ Bach  Sinfonia Nr.12 は、限りなく優しい抱擁の歌 ■
                                            2011.12.28     中村洋子

 

 

★クリスマスも過ぎ、もうすぐお正月です。

クリスマス前の23日に、 「 横浜みなとみらい 」 で開催しました、

Bach バッハ  「 Invention Nr.12 インヴェンション 12番 」 の、

内容について、少し、ご報告いたします。


★「 Sinfonia Nr.12 シンフォニア 12番 」 の、

和声の骨組みを、私が要約し、

それを実際に、ピアノで演奏いたしました。

なんと、そこに現れたのは、Johann Pachelbel 

ヨハン・パッヘルベル(1653年~1706=没年は諸説あり)でした

Pachelbel の音楽が、出現したのです


★Pachelbel は、 Bach 一家と親しく、 

J. S. Bach の姉の、Juditha (1680~1686) や、

兄の John Christoph(1671~1721) の、

Taufpate  ( 洗礼時の代父 ) を、務めるほどの間柄でした。


★Juditha の没年で、お分かりになるように、
 
当時は、幼児が無事に成長することは、困難な時代でした。

Pachelbel 自身も、1681年10月に結婚しましたが、

2年後、妻と幼い息子を、ペストで失います。

そして、1684年にJ. S. Bach と同じように、再婚します。


★ Bach の時代は、常に、死と隣り合わせだったのです。

Pachelbel の、優しい音楽、

暖かく、限りなく包み込むような音楽は、

そのような背景と、無縁ではないでしょう。

 

 


★Johann Sebastian Bach  バッハ  ( 1685~1750 ) は、

あらゆる感情を、その音楽に、内包していますが、

“ 無限抱擁 ” のような一面を、Pachelbel から、

受け継いでいるのは、間違いありません。
 

★ Edwin Fischer エドウィン・フィッシャー (1886 ~ 1960) は、

この 「 Sinfonia Nr.12 シンフォニア 12番 」 の校訂楽譜で、

脚注に 「 この曲は、zwei Auffassung 二つの解釈が可能である 」

と、書いています。


一つは、≪ mehr wiegende , zarte 

直訳=さらに揺らすように、柔らかく ≫

つまり、≪ 揺り籠をそっとゆらすように、柔らかく ≫、

もう一つは、≪energische tumultuarische 

直訳=エネルギッシュに騒々しいまでに ≫

つまり、≪ エネルギッシュに、楽しくはしゃぎまわるように ≫ です。


★この 「 wiegende  」 という言葉ですが、 「 Wiegenlied 」 となりますと、

 「 子守歌 」 になります。

お母さんが、やさしく赤ちゃんをあやしながら、うたう歌ですが、

私は、この 「 Wiegenlied 」  の 「 母子 」 は、

「 マリア と 幼子キリスト 」 のイメージを、色濃く宿していると思います。 


ブラームス Johannes Brahms (1833~1897) 晩年の傑作、

「 Drei Intermezzi  三つの間奏曲 」  (1892年 作曲 ) も、

Bach や Pachelbel を源流とする 「 Wiegenlied 子守歌 」 

といえます。


★この  「 Drei Intermezzi  三つの間奏曲 」 は、 Brahms が、

詩人 Herder  ( 1744~1803 ) の、「Stimmen der Völker 諸民族の声」

から、インスピレーションを得て、作曲したようですが、

「Drei  Wiegenlieder meiner Schmerzen 、 

Three lulabies for my suffering = 苦悩への三つの子守歌 」 が、

Brahms の心境に、最も近かったことでしょう。


★日本の少女が、子守りに出され、

主人の赤ちゃんを背中におぶって、

つらい労働を嘆きながら歌う 「 子守唄 」 とは、異質の世界です。

 


クリスマスを前に、 Edwin Fischer の卓越した解釈により、

 「 Sinfonia Nr.12 」 の、限りなく優しい

抱擁の歌を、ご一緒に経験できましたことは、

本当の、喜びでした。

このようなところに、 Bach の真髄が、現れるのです。

 
★また、当ブログをお読みになり、遠方からはるばる、

講座に、おいで頂いた方が、お二人も、いらっしゃったり、

さらには、表参道での12番講座に出席された方もたくさん、

再度、お聴きに来て頂きました。

この講座は、絶えず、変化しますので、

前回より、さらに充実した内容となり、

決して期待を裏切らないと、自負いたします。

 


                                       ※copyright © Yoko Nakamura
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■インヴェンション第 13番 で、対位法を自然に、苦痛なく身につける■

2011-12-24 23:19:49 | ■私のアナリーゼ講座■

■インヴェンション第 13番 で、対位法を自然に、苦痛なく身につける■
     ~ 横浜・第13回インヴェンション講座のお知らせ ~
                     2011.12.24   中村洋子

★「 KAWAI 横浜みなとみらい 」 での 、

「 Bach ・インヴェンション講座 」 も、あと 3回と、なりました。


★「Invention インヴェンション 13番 」 は、

8番ヘ長調と並び、最も、有名な曲です。

どなたも、どこかで耳にしたことがある、

この名曲を基に、バッハの「 対位法 」とは、

何であるかを、分かりやすく、お話します。


★「 対位法 」  ( counterpoint :英語 ) という語は、

point counter point ( 点対点 ) という語を、

起源にして、生まれた楽語です。

日本語の 「 法 」 という語がもっている、

いかめしいイメージではなく、

音楽を、楽しむための、単なる技法にすぎないのです


★「 point 」は、音符を意味します。

和音を、どのように繋いでいくかが、「 和声法 」ですが、

「 対位法 」 は主に、 「 音の流れの横の線 」 のための、

≪ 概念 ≫ です。


★点 ( 音符 ) と 点( 音符 ) の関係、

例えば、二声部で、下声に ド、上声に ミがあり、

次に、下声に ソ、上声に シ、さらにその後、

下に ラ、上に ド・・・というように、音楽が進行するにつれ、

その ≪ 下声の  ド ソ ラ、 上声の ミ シ ド ≫ という

「 関係 」が、横の線として「 モティーフ 」 や

「 旋律 」になっていく、

それが、≪ counterpoint ≫ なのです。


★カノンやフーガは、その ≪ counterpoint ≫ を、

豊かに、発展させた様式です。

フーガなどを、楽しむためには、前に出てきた 「 旋律 」 や 、

「 モティーフ 」 を記憶し、

その展開を、理解する必要があるため、

ある程度、音楽的素養が、必要であるとはいえます。


★この「 対位法 」に、入口でつまずき、

それを、乗り越えられず、

結果的に、「 インヴェンション 」を敬遠し、

Bach 嫌いになってしまう方が、非常に、多いのです。

 

 

★あるいは、≪ counterpoint ≫ を教える側が、

さも、難解な教義であるかのように、

もったいぶって、理解不能な翻訳語を多用して、

“ 解説もどき ”をするため、

受け手のほうが、拒否反応を起してしまうのかも、

しれません。

それは、結局のところ、教える側が、

≪ 対位法 ≫ を、よく理解していないからでしょう。

どんなことに対してでも、いえることですが、

初心者に、分かりやすく教えることができないのは、

教える側が、よく理解していないからです。


★この講座では、どうやって、苦痛なく、

 ≪ counterpoint 対位法 ≫ に親しみ、

自然に、知らないうちに 

≪ counterpoint ≫ を身につけていくか、

演奏に、どのように関連付けるか、

それを、お話します。


★また、 「 シンフォニア 13番 」 で、対位法の拡大形、

縮小形、反行形などの技法を、具体的に見てみます。


★バッハの、最高の演奏家であった Albert Schweitzer

アルベルト・シュヴァイツァー (1875~1965)は、

著書で次のようなことを、指摘しています。

≪子どもに限らず、大人でも、インヴェンションを、

つまり、対位法を学びさえすれば、

本物の芸術と偽物とを、区別できる能力が、

自然に、養われる。

そして、それは、終生、消え去らないのである ≫。

 

★ ≪ counterpoint ≫ を理解することは、

≪ Bach の豊饒な音楽の世界 ≫ への扉を、

開く鍵なのです。

Bach のみならず西洋音楽全般への鍵でもあるのです。

そして、汲めども尽きぬ、音楽と共に生きる喜びが、

生まれるのです。

■ 講師 : 中村洋子

■ 日  時 :2012年 1月23日(月)午前 10時 ~ 12時 30分

■ 会  場 : カワイミュージックスクール みなとみらい        

    横浜市西区みなとみらい4-7-1 M.M.MID.SQUARE 3F

    (みなとみらい駅『 出口 1番 』 出て目の前の高層ビル3F)

会 費 :3,000円 ( 要予約 ) Tel.045-261-7323 横浜事務所
                     Tel.045-227-1051 みなとみらい直通

 

■講師:作曲家 中村 洋子


東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。
2003年~ 05年:アリオン音楽財団《東京の夏音楽祭》で新作を発表。

07年:自作品「無伴奏チェロ組曲第 1番」などをチェロの巨匠W.ベッチャー氏が演奏したCD『 W.ベッチャー日本を弾く』を発表。

08年:CD「龍笛&ピアノのためのデュオ」、CD  ソプラノとギターの「 星の林に月の船 」を発表。

08~09年 :「 バッハのインヴェンション・アナリーゼ講座 」全15回を開催。

09年10月:「 無伴奏チェロ組曲 第 2番 」が、W.ベッチャー氏により、
ドイツ・マンハイムで初演される。

10年:「 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 が、ベルリンのリース&エアラー社
 Ries &Erler Berlin から出版される。

CD 『 無伴奏チェロ組曲 第 3番、 2番 』  W.ベッチャー演奏を発表。

「 レーゲンボーゲン・チェロトリオス( 虹のチェロ三重奏曲集)」 が、
ドイツ・ドルトムントのハウケハック社Musikverlag Hauke Hack社から出版される。
スイス、ドイツ、トルコの音楽祭で、自作品が演奏される。

10年 1月より:バッハ・平均律クラヴィーア曲集第 1巻の全曲アナリーゼ講座を、
カワイ表参道で開催中。

2011年 4月 : 「 10 Duette fur 2 Violoncelli  チェロ二重奏のための 10の曲集 」が、 ドイツの 「 Ries &Erler  Berlin 、リース&エアラー社 」 から出版される。

●上記の楽譜とCDは、「 カワイ・表参道 」 http://shop.kawai.co.jp/omotesando/

「 アカデミア・ミュージック 」

 https://www.academia-music.com/ で、販売中。


■第 14回 2012年  2/20 (月)  第14番 午前10:00~ 12:30

■第 15回 2012年  3/18 (日)  第15番 午後  2:00~ 4:30

 

               ※copyright © Yoko Nakamura

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■明日は、「インヴェンション第 12番・アナリーゼ講座 」 ■

2011-12-22 20:39:26 | ■私のアナリーゼ講座■

■明日は、「インヴェンション第 12番・アナリーゼ講座 」 ■
    ~Fischer は Fingering で、すべてを解明

                  2011.12.22     中村洋子

 

 

★明日 12月 22日は、「 KAWAI  みなとみらい横浜 」 での

「 第 12回 インヴェンション・アナリーゼ講座 」 です。


★昨日、 KAWAI 表参道での 「 アナリーゼ教室 」 で、 Bach の

「 Concerto nach Italienischen Gusto イタリア協奏曲 」 を、

生存中の初版譜 ( 1735年 ) で、勉強した直後ですので、

「 Inventio und Sinfonia  インヴェンションとシンフォニア 」 Nr.12 と、

「 Concerto nach Italienischen Gusto 」 との記譜の違いが、否が応でも、

クローズアップされ、 Bach の意図がくっきりと、見えてきました。


★「 Concerto nach Italienischen Gusto 」 には、

「 forte  」、「 piano 」、 「 slur スラー 」、

「 staccato スタッカート 」 などの指示が、

細かく、書き込まれています。

例えば、第 1楽章 43、 44、 45 小節や、

第 3楽章 59、 60、 61、 62、 63 小節に 「 slur スラー 」 を書き込み、

≪ 旋律をレガートで弾くように ≫ と、 Bach は指示しています。

しかし、  「 Inventionen & Sinfonien 」 では、

そのような 「 slur スラー 」 は、ほんのわずか、見られるだけです。


★何故、両者はこのように違うのでしょうか・・・?

それを、考えていた時、ハタと気付きました。


Ries & Erler 社から出版されました、

私の 「 Suite Nr.1 für Violoncello 」 と 「 10 Duette  für Violoncelli 」

との違いと、そっくりなのです。

 

 


「 Suite Nr.1  für Violoncello 」 は、

Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー先生が、

渾身の力を込め、Fingering、  Articulation、  Bowing など

「 Spieltechn. Einrichtung 演奏テクニックの手引き 」 を、

書き込んで下さいました。

誰が弾いても、悩むことなく、容易に演奏に入っていくことができます。


★ 「 10 Duette  für Violoncelli 」 につきましても、

Boettcher先生は当初、 「 Spieltechn. Einrichtung 」 を、

書き込む予定でしたが、途中で、

「 I changed my mind 」 と、おっしゃり、

「 演奏者やその先生が、各々で考えて弾くべきである 」 、

ということになりました。


Bach の 「 Concerto nach  Italienischen Gusto 」 は、

「 対位法の粋 」 を極めた曲で、 Bachが自信をもって、

世に問うた曲です。

第 2楽章では、装飾音について、

通常のように 「 装飾記号 」 を多用せず、

音符でわざわざ、細かく書き込んでいる、と言っていいほどです。

≪ これ以外の装飾法は、認めません ≫ ということです。


★一方、 「 Inventionen & Sinfonien 」 は、 

「 作曲の手引き 」 としての性格を、色濃くもっていますので、

各人が、思考し、十人十色の解決法を見出すべきだと、

Bach は、考えたのでしょう。

 

 


★このような考え方を解く、重要なカギが、

 Edwin Fischer エドウィン・フィッシャー (1886 ~ 1960) の、

「 Inventionen & Sinfonien 」 に対する ≪ Fingering ≫ に、

隠されているのです。


Fischer  の ≪ Fingering ≫ の凄さの 1例を挙げます。

「 Sinfonia  Nr.12 」 の 2小節目 上声 1拍目 は、

「 h1  e1  cis2  e1  」 、 2拍目は 「 d2  e1  e2 」 ですが、

1拍目の 「 cis2 」  「 3指 」、 2拍目の  「 d2  」  「 4指 」、   

「 e2 」  「 5指 」 を、指定しています。

ここは、おそらく、誰が弾いても  3、 4、 5 の指で弾くであろう、

ごく当たり前の運指で、通常ならば、

書き込む必要が、全くないものです。


さらに、 2小節目の上声 4拍目の 「  cis2  dis2  e2 fis2 」 では、

「 e2 」 にのみ 「 1指 」 を、指定しています。

この音も、ほぼ 100%  「 1指 」 で、弾きます。


つまり、≪ Fischer  の  Fingering ≫ は、

わざわざ、必要ないと思われる運指を、

意図的に、書き込んでいるのです。

通常の楽譜の運指は “ 曲を弾き易くする、難しいパッセージを、

楽にクリアするためのヒント ” として、記入されていますが、

 Fischer は、対極的です。

≪ Fischer の Fingering は、 『 指使い 』 ではないのです ≫


Fischer  は、この 4つの音に対する運指により、

≪ Sinfonia  Nr. 12 を解くカギが、ここにある ≫ と、

丁寧に、教えているのです。


Bach の自筆譜を見ますと、

2段目は 5小節目から 9小節目の 2拍目まで、終わっています。

9小節目が、真っ二つに切断され、

3段目は、 9小節目の 3拍目から、

13小節目までが、レイアウトされています。


なぜ、 Bach はこのように、変則的な記譜をしたのでしょうか?

それに対する、見事な見事な解答が、

≪ Fischer  の  Fingering ≫ なのです。

この点につきましては、

アナリーゼ講座で、詳しくお話いたします。 

 

■講座のご案内:

http://blog.goo.ne.jp/nybach-yoko/d/20111123


  
 

 

                                       ※copyright © Yoko Nakamura
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■ Boettcher先生による、無伴奏チェロ組曲の CD録音は、完璧でした ■

2011-12-20 18:36:11 | ■私の作品について■

■ Boettcher先生による、無伴奏チェロ組曲の CD録音は、完璧でした ■
                         2011.12.20     中村洋子

 

 


Cello チェロの Wolfgang Boettcher  ベッチャー先生を、

お招きしての、CD録音が、終わりました

金沢市の隣町・津幡町にある 「 Cygnus Hall シグナスホール 」 で、

私の 「 Suiten für Violoncello solo 

無伴奏チェロ組曲  4、 5、 6番 」  を、

最高の演奏で録音していただき、ベルリンに帰国されました。

すべてが、完璧といえる出来でした。


★先生と一緒に過ごしましたこの10日間、音楽、詩、哲学など、

幅広い領域にわたり、さまざまなお話をいたしました。

折に触れ、少しづつ、このブログでご紹介したいと、思います。

 

 


「 すべての音楽の根源は、Johann Sebastian Bach

 バッハ  ( 1685~1750 ) にある 」 と、先生もおっしゃっていました。

Franz Schubert (1797~1828) シューベルトの源泉は、

Beethoven ベートーヴェン (1770~ 1827)。

ベートーヴェンの源は、Franz Joseph Haydn 

フランツ・ヨーゼフ・ハイドン (1732~1809) と、

Wolfgang Amadeus Mozart 

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756~1791)。

そしてその源は、 Bach  バッハ 」 。


Bach  バッハ  の 「 Johannes-Passion  ヨハネ受難曲 」 が、

色濃く、ベートーヴェンのさまざまな作品に、

反映されていることも、教えていただき、

大変に、勉強になりました。


Mozart モーツァルトは、

Bach ・ Wohltemperirte Clavier 平均律クラヴィーア曲集  の一部を、

「 5 Fugues from The Well-Tempered Clavier, K. 405

平均律からの 5つのフーガ K.405 」 など、弦楽四重奏に編曲しており、

「 それらを演奏した 」 と、おっしゃっていました。


★ Bach  バッハ が、イタリアの巨匠たちの協奏曲を、

Klavier 鍵盤楽器のソロ用に、編曲して、

自分のものとしたのと同様に、

Mozart モーツァルトも、同じことをしていたのです。

 

 


Edwin Fischer  エドウィン・フィッシャー (1886 ~ 1960) については、

ご自分からお話をなされ、 「 彼の Wohltemperirte Clavier

平均律クラヴィーア曲集の演奏は、ピアニストのバイブルである。

あるピアニストもそう言っています、よく聴いておきなさい 」 。


私が 「 Edwin Fischer エドウィン・フィッシャー の

fingering フィンガリングには、曲の構造や、

アナリーゼが、すべて含まれている 」 と、話しますと、

「 まさに、その通り 」 というご返事。


先生の名器 ≪ Matteo Goffriller ≫  には、

≪ fecit Venetiis  1722 ≫ ( ヴェネチアで 1722年製作 :ラテン語 )

という銘文が、貼られています。

この 「 1722年 」 は、まさに、Bach バッハの 「 Wohltemperirte Clavier

平均律クラヴィーア曲集 第1巻 」 の序文が、書かれた年です。

なにか、啓示のような年です。

 

 


録音も、 ≪ Takashi Sakurai 桜井卓 、 Kazuie Sugimoto 杉本一家 ≫

というお二人、日本最高の Maestro にお願いすることが、できました。

渾身の努力を、傾けていただきました。

さぞ、秀逸な録音になっていることでしょう。

いまから、CDの完成がとても待ち遠しいです。

この春には、お聴きいただけると思います。

 


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■Boettcher ベッチャー先生来日、順調に進む録音準備■

2011-12-11 23:11:13 | ■私の作品について■

■ Boettcher  ベッチャー先生来日、順調に進む録音準備 ■
                        2011.12.11   中村洋子

 

 

★Wolfgang Boettcher  ベッチャー先生が、9日夕、

チェロを背に無事、成田空港に到着されました。

長旅にもかかわらず、お元気一杯の様子、安心いたしました。


先生は、 “ いい音楽を創りたい ” 、それ以外、全く眼中になく、

翌朝から、早速、私の無伴奏チェロ組曲 4、5、6番について、

真剣勝負のような、ディスカッションが始まりました。


★来日前、ベルリンから送られてきました Fax には、

「 I will show you the result of my study for your Suites 」 と、

書かれていました。

意気込みが、伝わってくるお手紙でした。


★やはり、驚くほど、弾き込まれていました。

自負されたとおりです。

知人の、誕生祝いハウスコンサートで、

もう既に、一部を演奏されてきたそうです。


昨日は、リハーサルといっていいほどの、

素晴らしい演奏を聴きながら、細部の解釈について、

順調に、詰めが進みました。

目の前で、世界最高の名器 Goffriller ゴフリラ-が奏でられ、

豊かで奥深く、どこか慎み深い趣があるその響きに、

体が、包み込まれました。

至福の時間です。

 

 


★無伴奏チェロ組曲 4番の、2曲目に、 

 「 con brio 」 と、指定した部分が、あります。

私は、   = 100 を、想定していましたが、

ベッチャー先生は、 「 It's MaestroTempo ! !!」 と、おっしゃり、

見事に、    = 120 で演奏されました。

   = 100 は、1分間に が、100回演奏される早さです。

   = 120 は、それよりかなり、速くなります


★さらに、ベートーヴェンのある 1節をさっと、弾かれました。

非常に、説得力のある    = 120 のテンポでした。


先生の解説によりますと、

 Maestro ヨーロッパの本物の奏者にとって、

「 con brio 」 という記号は、日本の楽典の教科書に、

書かれてあるように、「 活き活きとした表情で 」 という 、

「 発想記号 」 の意味だけでなく、ある 「 テンポ 」 が、

密接不可分なものとして、刻み込まれている、そうです。

その 「 テンポ 」 は、奏者にとって異なりますが、

Boettcher  ベッチャー先生の場合は、120のようです。


★このような解説は、ヨーロッパ音楽の本流を体現されている、

先生のような方からしか、学べません。

 

 


さらに、無伴奏チェロ組曲 4番の 3曲目、

3拍子部分の 3拍目に記した、 「 tenuto 」 の 4分音符について、

Wagnerの 「 Rheingold  ラインの黄金 」 に、

同じ 「 tenuto 」 の用例がありますと、チェロで弾き、

声を出して、歌ってくださいました。

音楽史の大きな流れに、身を浸しているような、心地よさでした。


★途中で弓を、 Kittel キッテル に替えて演奏なさいました。

この Kittel は、メニューインやハイフェッツも、使っていた弓です。

力強く,お腹の底から響く音でした。

弓による音質の違いも、体験できました。

Kittel はドイツ人ですが、ロシア・ペテルブルクで製作していたそうです。

チェロは Goffriller ゴフリラー、すべて世界最高の、

音楽家、楽器、弓の組み合わせ。


★このように、録音前のディスカッションは、私にとって、

最高の授業でもあり、順調に進んでいます。

 


                                       ※copyright © Yoko Nakamura
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■「Academia News 12月号」で、「10 Duette fur Violoncelli」が、売れ筋と紹介■

2011-12-05 23:39:33 | ■私の作品について■

■「Academia News 12月号」で、「10 Duette für Violoncelli」が、売れ筋と紹介■
                             2011.12.5  中村洋子

 

 

★十二月が始まってもう、1週間近くなります。

今週の9日、ベルリンから、Wolfgang Boettcher 

ヴォルフガング・ベッチャー先生が、二年ぶりに、来日されます。

私の作品 「 無伴奏チェロ組曲 4、5、6番 」 の、録音のためです。

録音は、13日から始まりますが、その日までは、

曲の解釈や演奏法について、濃厚で、綿密なディスカッションを、

繰り広げることになります。

その準備などで、忙しい毎日です。


★3月11日の東日本大震災の直前に、最後の校訂を終えました、

私の 「 10 Duette für Violoncelli  チェロ二重奏のための10の曲集 」 は、

Berlin  の Ries&Erler 社から、4月に出版され、欧州で好評のようです。

また、国内では、輸入楽譜 「 アカデミア ・ミュージック 」 社の、

「 Academia News アカデミア・ニュース 」 2011/12月号で、

「 2011年のおすすめ商品 」 欄に、「 売れ筋楽譜 」 として、紹介されています。

「 チェロ 」 のコーナーで、 Pablo Casals パブロ・カザルス(1876~1973) の、

作曲作品の次に、記されています。

https://www.academia-music.com/

https://www.academia-music.com/academia/search.php?mode=detail&id=1501678989&title_type=score

 


Wolfgang Boettcher  先生は、「 My life は、 Bach  を探究することです」

と、おっしゃっていました。

それは、 Pablo Casals パブロ・カザルス の、生き方そのものでも、

ありました。


私は、街を歩いている最中、耳に入ってくる雑多な音楽について、

無意識で分析してしまうのですが、それらはすべて、

Bach  バッハ  という “ お釈迦様の掌 ” の上にあると、

つくづく、思います。


オクターブを 12の音で分割した 「 音階 」 を使い、

その 「 音階 」 を用いることで 「 発展してきた楽器 」 、

つまり、ピアノなど西洋楽器。

それらを使って曲を演奏する場合、クラシックに限らず、

Pop music、ジャズ、ロックなど、すべての音楽は、

Bach  バッハ  の影響を免れることは、できません。


それらのポップス系音楽のすべては、 Bach  バッハ によって、

開拓され尽くした音楽の “片鱗 ” 、  “ 断片 ”  を、いかにうまく、

利用するか、取り込むかにかかっているのです

たくさんの小さな孫悟空が、觔斗雲 (きんとうん)に乗り、

Bach の掌の上で、飛び跳ね、踊り回っているのです。

 


★ 「 Bach の重力 」 から、逃れるのであれば、

インドネシアのガムランや、日本の古い民謡など、異なった楽器を用い、

異なった音階体系をもったものであれば、可能でしょう。


★しかし、演奏する人たちは、現代文明の中に、

どっぷりと、浸かりながら生きていますので、

西洋音楽の影響、 「 Bach の重力 」 という、“頚木 ( くびき ) ”から、

逃れるのは、難しいことかもしれませんね。

 

 

                                        ※copyright © Yoko Nakamura
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■平均律・アナリーゼ講座で、なぜ、他の作曲家を取り上げるのか?■

2011-12-02 21:20:55 | ■私のアナリーゼ講座■

■平均律・アナリーゼ講座で、なぜ、他の作曲家を取り上げるのか?■
~ ChopinがBachから吸収したものを分析することで、逆にBach理解が深まる~

                       2011.12.2    中村洋子

 

                          ( 万両の実 )


★先日、Roman Polanski  ロマン・ポランスキー監督の

≪ The Ghost writer ゴーストライター ≫  という映画を、見ました。

冒頭のシーンは、氷雨が降りしきる暗い冬の夜、

大型フェリーの甲板に、置き去りにされた無人の車を、

寒々しく、描写するところから始まります。


★この場面の音楽は、Steve Reich スティーブ・ライヒ (1936~)風の、

同一のモティーフを、次々と畳みかける手法に、

金管などの特有の響きを、うまくミックスさせ、商業音楽として、成功していました。

陰鬱な風景に、よく合っていました。

しかし、どこかで聴いたことがあるような音楽でもありました。


★11月29日の Bach 平均律アナリーゼ講座の後、自宅で、

Sergiu Celibidache セルジウ・チェリビダッケ(1912~1996)指揮の

 Anton Bruckner アントン・ブルックナー(1824~1896)、

 Symphony No.3 交響曲 3番(1889) を、聴きました


★やはり、そうでした。

この映画の音楽は、何のことはない、Bruckner Symphony No.3、

第1楽章冒頭の、 “ 巧みな remake ” でした。

 

 


★この映画音楽の作者は、この音楽で賞を得ているようですが、

Celibidache チェリビダッケは、

この Bruckner Symphony No.3 の指揮で、

この交響曲の源泉 は、どこから来ているか?、

さらに、その後の派生作品 (= 映画音楽 ) の、出自までを、

自然に、完璧に炙り出しています。


★Bruckner Symphony No.3 の源泉は、実は、

Bach の 「 Johannes-Passion ヨハネ受難曲 」 です。

Johannes-Passion そのものです。

聴くだけで、それが分かる Celibidache の、

この見事な CDは、特にお薦めです。


★11月29日の 、Bach 平均律アナリーゼ講座の後、

次のような 「 感想 」 を、頂きました。

「 Chopin ショパンの作品はあまり、興味がないのでピンとこないし、

分からない。他の作曲に与えた影響を論ずるよりは、

Bach の作品に絞って、アナリーゼして欲しい 」 という内容です。

 
講座では、平均律 18番が、 Chopin の「 Polonaise - Fantasie

 幻想ポロネーズ  」 に与えた影響、

その影響を Chopin がどのように取り込み、展開 し、

Polonaise - Fantasie  として、結実させたか、

具体的に詳しく、ご説明しました。


Chopin を理解するためには、 Bach  を理解する必要があることは、

何度も、書いております。

しかし、その逆に、 ≪ Bach を理解するためには、

Chopin の勉強も、必要であり、絶対に欠かせない ≫ のです。

 

 


Bach  バッハ の音楽は、例えてみますと、どの断面を切り取っても、

密度の濃い、宝石のようなさまざまな要素で、満ち満ちています。

後世のBeethoven ベートーヴェン(1770~ 1827) や、

Frédéric  Chopin ショパン (1810~1849) は、

そのうちの 「 一つの要素 」 を切り取り、大きく大きく育て、

大輪の花として、薔薇や芙蓉の花のように、美しく咲かせる、

という営為に、成功した作曲家です。


Bach  バッハ を何気なく見るだけでは、

見過ごしてしまうような 「 要素 」 に、スポットライトを当て、

拡大し、誰にでも、分かりやすくしたのが Beethoven であり、

Chopin ショパン である、という言い方も、可能です。

それゆえ、幅広く愛され、これからも永遠に愛され続けることでしょう。


★ Bach  バッハ の ≪ 豊かな複雑さ ≫ を、一瞬にして理解し、

味わうことができるのは、現代でも至難なことかもしれません。

その為にも、 Bach 以降の作曲家の作品から、

 Bach の 「 要素 」 を、一つ一つ逆照射し、解剖する必要があるのです。

それにより、≪ Bachのより深い理解 ≫ へと、

一歩一歩、近づくことができるのです。


★同様に、 Chopin 以降の 「 Prélude 前奏曲 」 も、

Chopin の影響を、強く受けていますので、それらを分析することで、

逆に、 Chopin の独自性など、理解が一層深まるのです。

 

 


Claude  Debussy  クロード・ドビュッシー (1862~1918)、

Maurice Ravel モーリス・ラヴェル(1875~1937)、

Gabriel Fauré ガブリエル・フォーレ(1845~1924) など、

フランスの大作曲家を、理解するうえでも、

 Chopin 研究は、不可欠です。

なぜなら、 Chopin の大きな影響なくしては、

生まれ出なかった作曲家、といえるからです。


Chopin  が、地中海のマジョルカ島で、

「 Préludes Op.28  24の前奏曲集 」 を、

完成させた際、大事に持参してきたのは、 Bach の

「 Wohltemperirte Clavier 平均律クラヴィーア曲集 」 です。

また、 Chopinは、演奏会が近づくと、2週間ほど閉じこもり、

Bach ばかり弾いていた、という逸話も残っています。

 

★私は、“ 世紀のChopin弾き ” と称された、大ピアニスト

Arthur Rubinstein アルトゥール・ルービンシュタイン(1887~1982) も、

自宅では、 Bach を弾いていたと思います。

 Bach を弾けば、 Chopin のすべてが、そこにあるからです。

「 ピアノが上手くなりたいのならば、 Bach を毎日弾くことである 」 という、

彼の言葉も、残されています。

同じことは、 Chopin も言っています。


★ Pablo Casals パブロ・カザルス(1876~1973) は、

11歳で、チェロを手にする前、

教会オルガニストだった父親から、ピアノを習いましたが、

その父親は、Bach の平均律クラヴィーア曲集よりも、

Beethoven のピアノソナタや Chopin のピアノ曲を、

尊敬していたと、 「 Conversations avec Pable Casals

 カザルスとの対話 」 に、書かれています。

面白いですね。

 

 


★ Bach  バッハ の存命中、Telemann テーレマン(1681~1767) は、

世俗的な表現を用いれば、「 Bachより格が上 」 で、

遥かに高い評価を受けていたことは、有名な話です。

それは Chopin 同様、覚えやすい要素を、

 Bachに比べると、平易に、展開したからです。

一般の人にも、分かりやすい音楽だったからです。


Bach が亡くなった 1750年で、時間を止め、

その後の作曲家には興味がない、知りたくないというのは、

 Bach を本当に学ぶことには、ならないでしょう。

そのような、演奏家も見受けられます。

 

★Mozart や Beethoven 、 Chopin 、 Schumann 、

Brahms、Bartók  の作品を学ぶことは、

Bach の高みへと到達するための、ステップ、階段なのです。

一段一段と、じっくり踏みしめ、登っていくことで、

やっと Bach が、見えてきます 。

ご自分の分析で、ご自分の手で、

Bach をつかむことができるようになる、それが、

私の講座の、目標でもあります。

 


                                   ※copyright © Yoko Nakamura
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