音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■アナリーゼ講座 ワルトシュタイン■ 案内の続き

2008-01-31 21:05:04 | ■私のアナリーゼ講座■
■アナリーゼ講座 ワルトシュタイン ■案内の続き
             08・1・31


★3月2日のカワイ表参道での「アナリーゼ講座」
         ~ベートーヴェン・ワルトシュタイン~

この案内が、カワイ表参道のホームページに掲載されています。

http://shop.kawai.co.jp/omotesando/

どうぞ、ご覧ください。
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■アナリーゼ講座のお知らせ ■~ワルトシュタイン~

2008-01-30 21:26:29 | ■私のアナリーゼ講座■
■アナリーゼ講座のお知らせ ■
        ~ベートーヴェン・ワルトシュタイン~
                       08・1・30
              
★カワイ表参道2Fのコンサートサロン「パウゼ」で、

3月2日午後1時半から4時まで、アナリーゼ講座を開催いたします。

今回は、≪ベートーヴェンのピアノソナタとは 

 ~ワルトシュタイン・ソナタをアナリーゼする~≫ です。


★ベートーヴェン(1770~1827)の32のピアノソナタのうち、

ソナタ21番(Op.53)通称ワルトシュタインは、

1803年から翌年にかけて作曲されました。

ベートーヴェン中期の傑作であるこの曲を、徹底的に

アナリーゼすることにより、全ソナタ32曲を理解する

足掛かりが得られます。


★冒頭の、魂を鼓舞するような和音連打のテーマが、

第2楽章、第3楽章では、縦横無尽に展開されていきます。

その技法、過程を丁寧に、分かりやすく解説したします。


★ピアニストの方は即、演奏に活かすことができ、

ピアノをお教えになっている方には、教えるヒントが

たくさん見出される、と思います。

また、ソルフェージュの教材として、

このソナタをどのように使うか、についても

詳しくお話いたします。
 
 
★ピアノを学習されている方は、これまで、

感性に頼るだけの奏法では「なにか物足りないな!」と

お思いになったことはございませんか。

アナリーゼで、曲の骨格、構成を分析することにより、

細部と全体像がはじめて把握できます。

そして、より演奏し易くなります。

訴えかける演奏となることが可能です。

音楽愛好家の方は、聴くポイントをつかむことにより、

聴く楽しみが、より深まることでしょう。
 

※【なお、楽譜は必ずご持参ください】


★お申込、お問合せは「カワイ表参道・アナリーゼ講座」係

 受講料:3000円

 電話03・3409・2511

 FAX 03・3409・2598 

 お申込み期限は、2月28日です。    


▼▲▽△▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲▽△▼▲
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■ ブラームス、シャコンヌ、12音技法 ■

2008-01-27 16:11:55 | ■私のアナリーゼ講座■
■■ ブラームス、シャコンヌ、12音技法 ■■
                   08.1.27


★ブラームス(1833~1897)の交響曲第4番 OP.98 の4楽章

アレグロ・エネルジコ・エ・アパッショナートは、

わずか8小節のテーマを提示した後、それを30回も繰り返しています。

それは、「シャコンヌ」という形式になっています。

シャコンヌは、バッハ「無伴奏ヴァイオリン・パルティータ」で有名です。

シャコンヌとは、バロック時代のゆっくりとしたテンポの

3拍子の舞曲で、数小節のとても短いテーマを、

何度も何度も変化させながら、繰り返します。



★この4楽章は、あまりに素晴らしい作品ですので、

さっと聴いただけでは、「シャコンヌ」であることに、

気付かれない方も多いかもしれません。


★この曲は、1884年(51歳の時)に1、2楽章が書かれ、

翌年に完成されました。

ドビュッシー、ラヴェルは、ブラームスを勉強し尽くしています。

私は、この4楽章を聴くたびに、

「これは、ラヴェルのボレロだ!!!」と、いつも思います。

皆さんは、どうお感じになりますか。


★ある程度円熟し、自信をもった作曲家は、

ごく限られた狭い枠の中で、自分の技法によって、

どこまで豊かな作曲が可能になるか、

それを試したくなるものです。

この4楽章から、そういう意味合いが感じ取れます。


★また、この「OP.98」という番号も、極めて重要です。

たびたび、ブログで書いておりますが、ブラームス晩年の

ピアノ小品集は、これ以降の「op.100番台」です。

ブラームスが、20世紀に向けて、新しい扉を開いた

画期的な楽章が、この「4楽章」といえます。


★4楽章を作曲した際、ブラームスの親しい友人で

後に、彼の伝記を書いたカルベックも理解できず、

「交響曲の終楽章にこれを置くのはどうか?」、

「これは独奏曲として、終楽章を差し替えたら」と薦めたそうです。


★このシャコンヌは、大きな意味で、変奏曲の一つといえます。

通常、変奏曲は、もっと自由にテーマを変奏させますが、

シャコンヌは、テーマを全く変化させずに、繰り返します。

変奏曲の極致ともいえます。

繰り返すだけでは、音楽になりませんので、

そこに何を加えるかが、とても重要です。

極めて伝統的で、古い形式である「シャコンヌ」が、

この「4楽章」においては、私には大変に新しく思えます。

なぜ、「新しい」のでしょうか。


★シェーンベルクは、この「ブラームスの変奏」という技法に着目し、

それを彼の「12音技法」の理論体系の根幹、としたのだと思います。

12音技法というのは、1オクターブの中にある12個の音を、

全部、“消費”するまで、 

その中のどんな音も使わない、という約束で成り立っています。

12のすべての音は、中心音にも、主音にも、属音になりえません。

その結果、調性というものが、感じられなくなります。


★しかし、テーマをいつも同じように演奏していては飽きられます。

そこで、シェーンベルクが考案したのが、

バッハの作品でよく使われる

テーマの「反行」、「逆行」、「反行の逆行」です。

テーマも含めて、この4種類の音列によって、

音楽を構成するということになります。

その拡大形、縮小形も用いながら、

縦横に展開していくことになります。


★その展開方法は、お気付きのように、「対位法」に依ります。

シェーンベルクは、このバッハからの大影響は当然のこととし、

さらに、「変奏、対位法の技術的」なものは、

ブラームスに、多くを負っています。


★以前、お話いたしましたように「小品」という形式は、

シェーンベルクから弟子のヴェーベルンへと引き継がれ、

ヴェーベルンの極端に微小な、切り詰めた小品の

アイデアの源泉となって行くのです。

現代音楽によく見られるように、

思いつきで音を置いていったのではなく、

ヴェーベルンの小品は、師シェーンベルクの作品と同様、

どの一つの音を抜いても、音楽が瞬時に、瓦解してしまうほど、

緊密な音の世界となっています。


★さらに、ヴェーベルンの影響は、

ブーレーズの「トータルセリエリスム」へと流れていきます。

この件は、また別の機会にお話いたします。


★ラヴェルは、意識したかどうかは別として、

ブラームス交響曲第4番「4楽章」に、匹敵する曲を

自分でも「書いてみたい」、「書ける」と思ったのでしょう。

それが「ボレロ」です。


★交響曲第4番の演奏は、素晴らしいものがたくさんありますが、

たまたま、最近聴きました セルジュ・チェリビダッケ指揮の

ベルリンフィルハーモニーの演奏に感動しました。

第二次大戦が終わって間もない、1946年11月のモノラル録音です。


★ブラームスのピアノ作品を弾いたり、聴いたりされる方は、

スコアを見ながら、この4楽章をお聴きになりますと、

ピアノの音色を作っていくうえで、とても参考になると思います。

ピアノを弾くのだから、ピアノ曲しか聴かないのではなく、

幅広く勉強なさいますと、

ピアノ曲も、より深く理解でき、より良い演奏になると思います。



▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲










































































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■ ラヴェルに対する誤解 その3 歌曲とピアノ作品のつながり ■

2008-01-19 23:02:44 | ■私のアナリーゼ講座■
■ラヴェルに対する誤解 その3 歌曲とピアノ作品のつながり■

≪ラヴェルの音楽は冷たくありません≫、の続きです。

ラヴェル、ドビュッシーは、主にピアノ作品の作曲家、

あるいは、大変に手の込んだ美しいオーケストラ曲、

室内楽の作曲家というイメージが、強いようです。

実は、ラヴェルと師のフォーレ、それにドビュッシーの3人は、

歌曲の作曲家でもあるのです。

シューマンにとっての歌曲と同じくらい、重要な位置を

この3人の作曲家にとって、歌曲が占めています。


★私たち日本人が、フランス語にあまり慣れ親しんでいないせいか、

シューベルト、シューマンの歌曲ほどは、

このフランスの3人の歌曲は聴かれていないようです。


★ピアニストとして、3人の作品を演奏したいと思われる場合、

是非、歌曲をたくさん聴いてください。

もちろん、声楽家と演奏する機会があれば、最高です。


★なぜ、歌曲を聴く必要があるのでしょうか?

この3人の作曲家のメロディーの節回しが、

フランス語の発声によって、発想されている面が多いからです。

特に、感情が高まったところ、クライマックスの部分で

それが多く見受けられます。


★3人のピアノ作品の旋律を分析しますと、大雑把にいって

①フランス語で抑揚をつけると、そのまま歌になるのではないか、

と思われるような旋律の作り方

②旋律を器楽的に展開、発展させていく方法

③あくまで、ピアノの技巧的なパッセージとしての旋律・・・

の3つに分けられるようです。


★3人の歌曲を知ることで、

特に①のフランス語的な旋律の特徴を、理解することにより、

ピアノで、メロディーをどのように歌わせたらいいか、

実に参考になります。

たくさん歌を聴き込んでいく、あるいは、弾き込んでいきますと、

ピアノのメロディーが、フランス語に聴こえることがあるのです。


★これは、ドイツ歌曲、シューベルトの歌曲でも同様です。

歌曲のなかで、ある「単語」に付けられているメロディーが、

ピアノ作品でも、そっくりそのまま、

使われているのを、発見しました。

私は、いつもその単語をイメージしながら、ピアノを弾いています。

シューベルトの悲しい気持ちを表す「単語」のメロディーが、

ピアノ作品でもいわば、“核のメロディー”として

出現しているのです。

これに気付き、知っていれば、

どれだけピアノの演奏が、深まることでしょうか。

ブラームスにも、同じような例がたくさんあります。


★私の作曲家としての直感ですが、彼らは作曲する際は、

言葉を意識せずに、器楽曲のメロディーを作っているはずです。

しかし、歌曲を書き続けている作曲家にとっては、

言葉のもつ力は、大変に大きいものがあり、

意識せずに、滲み出てくるようです。


★ラヴェルと師のフォーレは、一生涯、歌曲を書き続けていました。

二人とも、晩年の歌曲が、最大の傑作であるように思われます。

フォーレは、76歳(1921年)のとき、

若い詩人ミルモンの詩集に曲をつけ、詩集と同じ

「幻想の水平線」という名前の歌曲(全4曲)を発表しました。

そして、1924年に79歳で没しました。

海への憧れ、生きていることの素晴らしさを讃えた歌曲集です。

私は、フォーレの作品のなかで、この歌曲集が最も好きです。

好きというよりは、フォーレが最後に到達した世界を

畏敬の念をもって味わっています。


★ラヴェルの文字通り最後の作品は、

「ドゥルシネア姫に思いを寄せるドンキホーテ」(全3曲)です。

ラヴェルは、自らの母への思慕を、ドンキホーテに託し、

「オー、マダム」と歌い上げています。

マダム(MADAM)とは、ドゥルシネア姫でもあり、また、

彼の理想の女性である「母」を、重ね合わせているのです。

フランス語で、海の「ラ・メール」は、母の「ラ・メール」を

連想させることは、有名ですが、

フォーレもラヴェルも、その長い苦闘の作曲家生活の最後に、

母の許に帰って行ったのかもしれません。

二人は、生涯の最後に、人生と音楽へのお別れとして、

一見単純ですが、美しく、おそろしいほど深い境地に達した

歌曲集を残したのです。


★皆様も、歌曲を聴くことを、勉強や重荷と思わず、

楽しみとして、これらを聴いてみてください。

こんな美しい曲を書いた作曲家のピアノ作品を、

“冷たく無表情に”弾くことは、とても出来なくなります。


★私は、ジェラール・スゼーの演奏を愛聴しております。



▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲











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■ロギールさんの和紙 

2008-01-11 00:15:57 | ■楽しいやら、悲しいやら色々なお話■
■ロギールさんの和紙 

              08・1・11

高知の山里から、素晴らしい手漉きの和紙が届きました。

「檮原(梼原)」という町からです。

梼原は「ゆすはら」と読みます。

あまりおなじみのない名前かもしれません。

檮は、辞書によりますと「切り株」の意です。

しかし、町名は「ゆすのき」という樹木に由来しています。

かつてはこの「ゆすのき」がたくさんあり、町のシンボルでした。

材質が硬く、色も美しいので、箸や耳掻き用に使われ、人気があります。

★高知市から西、宿毛の方へ約30キロ、須崎という漁港に着きます。

ここから、バスで1時間半ほど、山道を北上してやっと到着します。

四万十川源流域で、昔は、高知のチベットともいわれた奥地です。

その先はカルスト台地が広がります。

最近は、「千枚田」という棚田や、風車などで、

観光的に有名になりつつあります。


★谷あいには清流が走り、緑濃い山の中腹に

黒光りする100年以上たった農家があります。

その主が、この和紙を漉いています。

名前はロギールさん、姓はアウテンボーガルト。

日本人ではなく、オランダ出身で、30年ほど前に来日しました。

月明かりで、薪の五右衛門風呂に入るのが大好きな人です。

奥様は千賀子さん。


★ヘラルド・トリビューン紙に包まれた障子紙を取り出します。

その色合い、奥深さに感動します。

白い色では決してありません。

淡い淡い土の色、仄かな仄かな枯葉色。

木、水、太陽、山の恵みが一枚の紙に、凝縮しています。

表面をそっと撫でてみます。

微細な羽毛のような感触。

太陽にかざしますと、柔らかい陽光に体がくるまれるようです。


★この障子紙のお部屋は、世の中の雑音を、

黙って吸収してくれるかのようです。

心が和み、癒され、落ち着いてきます。

和室、障子の真の価値は、

このような素晴らしい和紙を貼って、

初めて分かるのかもしれません。


★紙の原料作りから、最終仕上げまで、すべて

ロギールさんやご家族による、愚直なまでの手作業です。

楮や三椏は、川沿いで有機無農薬栽培します。

皮を剥ぎ、釜の中で石灰を加えて煮上げる工程も、

大昔からの方法そのまま。

手で丹念に叩いて叩いて、皮の繊維を分解する力仕事、

漉き上げた紙の、天日による板干しなど、一切手抜き無し。

紙に粘りを出すために加えるトロロアオイも、有機無農薬栽培です。

これほど伝統的な本物の和紙は、

多分あまり他では、お目にかかれないかもしれません。


★一般的に、手漉き和紙といっても、

電熱器で暖めたステンレス板に、漉いた紙を貼り付け、

簡単に乾かすのが多いようです。

ロギールさんの乾燥は、松の木の一枚板に、漉いた紙を

一枚一枚、丁寧に貼り付け、太陽の光で乾かします。

紙の耐久力がぐんと増します。

大きい松の板は、畳ほどあろうかという大きさ。

いまでは、こうした大きな一枚板は、ほとんど入手できず、

とても貴重だそうです。


★ロギールさんとは、ひょんなことからお知り合いになり、

かれこれ15年以上のお付き合いです。

私の「無伴奏チェロ組曲」などを聴きながら、彼は紙を漉きます。


★今回は、障子用の和紙をお願いしましたが、

私の家には、彼の作品がたくさんあります。

壁と天井の一部は、彼の和紙を貼ってあります。

「袋貼り」という古い技法です。

下地に2回も紙を貼り、

最後に、大きな和紙の端にのみ糊を付け、ふんわりと貼ります。

そのため、糊の付いていないところが、

ふっくらとした風合いを醸し、典雅です。


★彼は、また「行灯」や「灯り」作りの名人です。

山で自生する藤蔓(かずら)を組み合わせ、

それに和紙を貼り合わせます。

和紙から漏れる明かりは、この上なく暖かで、

幻想的ですらあります。

我が家では、この「行灯」がずっと玄関の主役です。


★檮原和紙 かみこや アウテンボーガルト・ロギール&ちかこ

TEL/FAX 0889-68-0355(紙漉き体験民宿かみこや)
       
かみこやブログ http://kamikoyat.exblog.jp/

かみこやのホームページ http://www4.ocn.ne.jp/~kamikoya/


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■ラヴェルに対する誤解 その2、いいピアニストの見分け方■

2008-01-03 23:59:00 | ■私のアナリーゼ講座■
     08.1.3

★穏やかな年明けとなりました。

年末年始は、作曲で忙しく、賀状を書く余裕がなく、失礼いたしました。


★前回、ラヴェルに対して「2つの誤解」があることをお話いたしました。

今回は、“作風がスイス時計のように精緻で正確だが、

冷たく、暖かみに欠ける”というもう一つの誤解について、

ご説明いたします。


★ラヴェルが自演した「ソナチネ」第1楽章を、例にとります。

「ソナチネ」は、初心者用のクーラウやクレメンティの

「ソナチネアルバム」のイメージが強く、

容易に弾ける曲、と思われがちです。

しかし、ラヴェルに限っては、見かけは簡単でも、

最高度の音楽性を、要求されるかもしれません。


★少々、脱線しますが、ラヴェルなら「水の戯れ」、

ドビュッシーなら「花火」しか弾かないピアニストは、

果たしてこの二人の作曲家を、本当に理解しているか疑問です。

「花火」は、前奏曲集1巻、2巻を通して、一番最後の曲です。

この曲に、ドビュッシーは「カデンツァ」の意味を与えています。


★前奏曲集1巻の第1曲は、「デルフォイの舞姫たち」で、

前奏曲集全体にとって、とても大切な曲です。

ドビュッシーは、この曲の自演をロールピアノで録音しています。

「デルフォイの舞姫たち」は、見かけはとても簡単そうですが、

ラヴェルの「ソナチネ」と同様に、勉強してもし尽くせないほど

奥深いものがあります。


★バッハの平均律第1巻の1番が、

1、2巻全48曲を束ねる肝心要の曲である、のと同じです。

ドビュッシーは、それを意識し、

「デルフォイの舞姫たち」と平均律一番とは、

類似点がたくさんあります。

それについては、別の機会にお話いたします。



★「花火」しか弾かないピアニストは、それに気付かないのでしょうから、

よいピアニストであるための、最初の関門を通り抜けられないのです。


★「ソナチネ」第1楽章では、第1テーマ(全3楽章にわたって展開される)が、

冒頭の3小節で、提示されます。

そして、3小節目の「第2上拍」から、5小節目の2拍目頭まで、

「確保」として、もう一度、奏されます。

その「確保」は、スビト ピアニシモで、密やかに奏され、さらに、

第5小節の第2上拍から、第7小節の最後まで、こんどは、

「推移」の開始部分として、第1テーマが3回目の反復を行います。


★1回目、2回目の反復は「ファ→ド」へと

完全4度の下行であるのに対し、

3回目の反復(第5小節目の第2推移)は、

「ファ→ド」まで、完全5度上行します。

ラヴェルの自演は、3回目の反復をメゾフォルテで弾いています。

憧れに満ちたような、聴く人に、熱い思いを感じ取らせる名演です。


★ですから、この冒頭部分を聴くだけで、

そのピアニストの質が分かる、ともいえそうです。

ご自分で演奏なさる場合でも、

この「3回目」をどう弾き分けるか、

重要なポイントとなります。


★展開部の56小節は、tres espressif

(とても表情豊かに)となっており、

先程の、第1テーマの「確保」のメロディーが展開されます。

ただし、メロディーの冒頭で、ド♯の倚音(いおん)が付加され、

アクセントも付け、ラヴェルは、とても情熱的に表現しております。


★さらに第7小節では、passione(情熱的)という表示があります。

ラヴェルが自分の曲に、この表示を使うのは、極めて珍しいことです。


★このように見てまいりますと、この第1楽章だけでも、

ラヴェルの心の動きそのもののような、

豊かな感情が脈打っているのです。

“作風がスイス時計のように精緻で正確だが、

冷たく、暖かみに欠ける”という評価は、

全くの誤解である、といえます。


★誰かがそのように書き、孫引きが孫引きを呼んだのでしょう

逆に、第1楽章を冷たく、小役人風に

小器用に弾いている演奏でしたら、

第2楽章まで聴く必要はないかもしれません。


★余談ですが、ヤマハが出版しております

<デュラン社オリジナル版>には、第2楽章に誤植があります。

68小節の右手の冒頭装飾音「シ・ナチュラル、レ・ナチュラル」を、

ヤマハ版では、「シ♯、レ♯」にしています。

デュラン社の本来の楽譜では、この部分の印刷が少々かすれています。

それを、ヤマハは、誤って“訂正”したのかもしれません。

お気を付けください。

(私のヤマハ版は1999年版ですので、現在は訂正済みかもしれませんが)。


▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲
























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