音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■Chopin の Piano Concerto No.2は、平均律2巻16番を学び尽して生まれた ■

2014-05-30 20:37:35 | ■私のアナリーゼ講座■

Chopin の Piano Concerto No.2は、平均律2巻16番を学び尽して生まれた

    第 13回 Bach 平均律 2巻 アナリーゼ講座
            第 16番 g-Moll  Prelude & Fuga

                             2014.5.30    中村洋子

 

 

★平均律 第 2巻 16番  Prelude g-Moll の冒頭 1小節目のバスは、

「 G 」の「 全音符保続音( オルガンポイント )」です。

15番 Prelude G-Dur 冒頭 1小節目の、

バス「 g 」の「 全音符保続音 」と、一対の屏風のように似ています。

 

★しかし、曲想は 15番が羽のように軽やかであるのに対し、

16番は、フランス風付点音符の rhythm をもち、

荘重で、悠揚迫らざる曲です。

ここで、Bach は珍しく「 Largo 」と指定しています

この冒頭の主要 motif が、どう展開されていくか、

それをどう演奏に活かすか、詳しくお話いたします。

 

15番 Fuga の、明るく幸せに満ちた1小節目 Subject 主題頭部の

「 d2 - h1 (レーシ) 」は、

16番 Fuga では、厳しい「 d1 - b (レーシ♭)」へと、

変容しています。

 

 

 

 

16番  Prelude の「 全音符保続音( オルガンポイント )」が、

Fuga では、8分音符による、6回の repeated notes となり

急き立てられ、背中をぐいぐい押されていくような、

緊迫感に満ちた曲へと、変貌しています。

 

★この 16番 を学び尽し、

名作 Piano Concerto 第2番 Op.21 を作曲したのが、

まだ19歳だった Chopin なのです

この Piano Concerto 第2番との関連も、ご説明いたします。

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■ 日  時 :   2014年 7月 3日(木)午前 10時 ~ 12時 30分

■ 会  場 :  カワイ表参道  2F コンサートサロン・パウゼ

■ 予 約  :    Tel. 03- 3409- 1958

 

 

---------------------------------------------------------------

■ 講師 :   作曲家  中村 洋子  Yoko Nakamura

 東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。
日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。

 2003 ~ 05年:アリオン音楽財団 ≪東京の夏音楽祭≫で新作を発表。

 07年:自作品 「 Suite Nr.1 für Violoncello
        無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 などをチェロの巨匠
        Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー氏が演奏した
     CD 『 W.Boettcher Plays JAPAN
                         ヴォルフガング・ベッチャー日本を弾く 』 を発表。

 08年:CD 『 龍笛 & ピアノのためのデュオ 』
    CD 『 星の林に月の船 』 ( ソプラノとギター ) を発表。

 08~09年: 「 Open seminar on Bach Inventionen und Sinfonien
                  Analysis  インヴェンション・アナリーゼ講座 」
                    全 15回を、 KAWAI 表参道で開催。

 09年: 「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

         「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲第 3番 」が、
           W.Boettcher 氏により、Mannheim ドイツ・マンハイム で、
           初演される。

 

10~12年: 「 Open seminar on Bach Wohltemperirte Clavier Ⅰ
                  Analysis 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 アナリーゼ講座 」
                全 24回を、 KAWAI 表参道で開催。

 

10年: CD 『 Suite Nr.3 & 2 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 3番、2番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。

 

     「 Regenbogen-Cellotrios  虹のチェロ三重奏曲集 」 を、
             ドイツ・ドルトムントのハウケハック社
      Musikverlag Hauke Hack Dortmund から出版。

 

11年: 「 10 Duette für 2 Violoncelli
                         チェロ二重奏のための 10の曲集 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

 

12年: 「 Zehn Phantasien für Celloquartett (Band 1,Nr.1-5)
    チェロ四重奏のための 10のファンタジー (第 1巻、1~5番)」を、
      Musikverlag Hauke Hack  Dortmund 社から出版。

 

13年: CD 『 Suite Nr.4 & 5 & 6 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 4、5、6番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。

 

         「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

 

      スイス、ドイツ、トルコ、フランス、チリ、イタリアの音楽祭で、
    自作品が演奏される。

 

 ★上記の 楽譜 & CDは「 カワイ・表参道 」 http://shop.kawai.co.jp/omotesando/  

 「アカデミア・ミュージック 」 https://www.academia-music.com/ で販売中

 




 

 ★私の作品の CD 「 無伴奏チェロ組曲 4、 5、 6番 」

  Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、

   全国の主要 CDショップや amazon でも、ご注文できます。

 ★ disk Union クラシック館で、第1 ~ 6番を購入できます。

 

 

 

    ※copyright © Yoko Nakamura    
                All Rights Reserved
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

 

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■掛留音をつかうことで、「音階」を見事に浮上させる Bachの手法 ■

2014-05-26 01:41:50 | ■私のアナリーゼ講座■

■掛留音をつかうことで、「音階」を見事に浮上させる Bachの手法 ■
         ~ 29日の平均律第 2巻 15番 G-Dur アナリーゼ講座 ~

                                 2014.5.26   中村洋子

 

 


★5月22日、Germany ドイツ北西部の街 Oelde ( エルデ ) で、

知人のピアニストにより、私のピアノ独奏曲を 4曲、

ドイツ初演していただきました。

「 大成功でした、なんと沢山の感激の言葉を承った事でしょう…!」

という連絡が、入ってきました。

この演奏会につきましては、後日、ご報告いたします。


★「 Musikverlag  Ries & Erler  Berlin  リース&エアラー社 」 から、

出版されます、私の 「 Suite für Violoncello solo Nr.2

無伴奏チェロ組曲 第 2番 」 の、最終校訂がやっと終わりました。

3回にわたり、綿密に細部を詰めました。

休む間もなく、

「 Suite für Violoncello solo Nr.4 無伴奏チェロ組曲 第 4番 」 の、

校訂に、取り組んでいます。

 

 


5月 29日 の カワイ表参道 「 平均律第 2巻 アナリーゼ講座 」 は、

≪ 15番 G-Dur ≫ です。

この 15番は、平均律第 2巻の頂点ともいうべき

悲嘆に満ちた ≪ 14番  fis-Moll ≫ と、

峻厳で重厚な ≪ 16番  g-Moll  ≫ とに、挟まれ、

可憐で無邪気、一見  “  谷間の百合  ”  のようにみえる曲です。


★しかし、 Furtwängler の ≪ Matthäus-Passionマタイ受難曲 ≫ を、

勉強したいまとなりますと、

「 なんと深く、恐ろしい曲であることでしょう!」 と、

溜息が、出てきます。

 

 


★講座では、まず、≪ Matthäus-Passionマタイ受難曲 ≫ の第 1曲の、

「 バスの上行音階 」 の意味について、ご説明したします。

その後、この上行音階と、15番との関連を、お示しします。


★具体的には例えば、15番 Fuga の 62小節 2拍目 「 D 」 から、

65小節の 「 d2 」 まで、 3オクターブにわたる ≪ 上行音階 ≫ が、

突如、 32分音符で出現します。

 

 

あたかも、 Fuga 終結部の華やかな cadenza カデンツァのように、

見えますが、それだけでは、ありません。

実に、重い役割を担っているのです。


★このパッセージは、とても一筋縄では、いきません。

Bach がなぜ、青天の霹靂のように、ここに cadenza のような音階を、

わざわざ、もってきたのでしょうか?

それを解明するのが、先ほどの ≪ Matthäus-Passion マタイ受難曲 ≫

での、「 バスの上行音階 」 なのです。


★≪ Matthäus-Passion ≫ 冒頭 6小節目のバス、

「 E ~ c1 」  まで、オクターブを 6度超えた 13度の音程を、

駆け上っていきます。

講座では、この上行音階のもつ深い意味、15番との関連を、

徹底的に、お話いたします。 


★この 15番 Fuga で現れる、極めて特徴的な 「 非和声音 」 が、

≪ suspention 掛留音 ≫ です。

例えば、16~22小節は、上声ソプラノ声部各小節の 第 1拍目は、

すべて、 tie タイ によって、前の小節から suspention で、

結ばれています。


★なかでも、 35 ~38小節は、冒頭の音が 2度づつ下行し、

これが、音階の一部となります

 

 


★もし、 ≪ suspention 掛留音 ≫ でないとしますと、

このように、なります

 

 


Bach はなぜ、≪ suspention 掛留音 ≫ を、

つかったのでしょうか?

 suspention 掛留音のような 「 非和声音 」 から、

「 本来の和声音 」 へと進行することを、 「 解決する 」  といいます。

≪ suspention 掛留音 ≫ をつかうことは、

その 「 解決 」 を、小節第 1拍目で、すべて 「 遅らせる 」 

ことになります。


「 遅らせる 」  ということは、  “ 気をもたせる ”

ということです。

即ち、 tie タイ で引き伸ばされることにより、

これらの小節に含まれている ≪ 大きな音階構造 ≫ が、

浮かび上がってくるのです。

音階を強調している、ということなのです。

奥深い Bach の技法です。

 

 

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■ 平均律 第 2巻 アナリーゼ講座

第 12回 第 15番 G-Dur BWV884 Prelude & Fuga

~平均律 2巻前奏曲になぜ、Binary form(二部構成)が多いのか~

■ 日  時 :  2014年 5月29日(木) 午前 10時 ~ 12時 30分

■ 会  場 :  カワイ表参道  2F コンサートサロン・パウゼ

■ 要予約   :   Tel.03-3409-1958

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■ 講師 :   作曲家  中村 洋子  Yoko Nakamura

 東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。
日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。

 2003 ~ 05年:アリオン音楽財団 ≪東京の夏音楽祭≫で新作を発表。

 07年:自作品 「 Suite Nr.1 für Violoncello
        無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 などをチェロの巨匠
        Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー氏が演奏した
     CD 『 W.Boettcher Plays JAPAN
                         ヴォルフガング・ベッチャー日本を弾く 』 を発表。

 08年:CD 『 龍笛 & ピアノのためのデュオ 』
    CD 『 星の林に月の船 』 ( ソプラノとギター ) を発表。

 08~09年: 「 Open seminar on Bach Inventionen und Sinfonien
                  Analysis  インヴェンション・アナリーゼ講座 」
                    全 15回を、 KAWAI 表参道で開催。

 09年: 「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

         「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲第 3番 」が、
           W.Boettcher 氏により、Mannheim ドイツ・マンハイム で、
           初演される。

 

10~12年: 「 Open seminar on Bach Wohltemperirte Clavier Ⅰ
                  Analysis 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 アナリーゼ講座 」
                全 24回を、 KAWAI 表参道で開催。

 

10年: CD 『 Suite Nr.3 & 2 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 3番、2番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。

 

     「 Regenbogen-Cellotrios  虹のチェロ三重奏曲集 」 を、
             ドイツ・ドルトムントのハウケハック社
      Musikverlag Hauke Hack Dortmund から出版。

 

11年: 「 10 Duette für 2 Violoncelli
                         チェロ二重奏のための 10の曲集 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

 

12年: 「 Zehn Phantasien für Celloquartett (Band 1,Nr.1-5)
    チェロ四重奏のための 10のファンタジー (第 1巻、1~5番)」を、
      Musikverlag Hauke Hack  Dortmund 社から出版。

 

13年: CD 『 Suite Nr.4 & 5 & 6 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 4、5、6番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。

 

         「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

 

      スイス、ドイツ、トルコ、フランス、チリ、イタリアの音楽祭で、
    自作品が演奏される。

 

 ★上記の 楽譜 & CDは「 カワイ・表参道 」 http://shop.kawai.co.jp/omotesando/  

 「アカデミア・ミュージック 」 https://www.academia-music.com/ で販売中

 




 

 ★私の作品の CD 「 無伴奏チェロ組曲 4、 5、 6番 」

  Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、

   全国の主要 CDショップや amazon でも、ご注文できます。

 ★ disk Union クラシック館で、第1 ~ 6番を購入できます。

 

 

 ※copyright © Yoko Nakamura    
             All Rights Reserved
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■ Furtwänglerの、記念碑的な Matthäus-Passionマタイ受難曲 の名演■

2014-05-21 02:02:11 | ■ 感動のCD、論文、追憶等■

■ Furtwänglerの、記念碑的な Matthäus-Passionマタイ受難曲 の名演■
~Bach の音楽的思考が、スケルトンのように明確に分かる演奏~
      ~27日の 平均律 第2巻 アナリーゼ講座は、15番 G-Dur~
            2014.5.21     中村洋子

 

 

 


★「 Musikverlag  Ries & Erler  Berlin  リース&エアラー社 」 から、

近く出版されます、私の 「 Suite für Violoncello solo Nr.2

無伴奏チェロ組曲 第 2番 」 の校訂作業が、ほぼ終わりましたが、

引き続き、「 Suite für Violoncello solo Nr.4

無伴奏チェロ組曲 第 4番 」 の校訂が始まり、忙しい毎日です。


★忙しい時にこそ、ついつい、違うことに手を伸ばしてしまいます。

このところ、ブログで書いております Wilhelm Furtwangler 

ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(1886~1954)の、

作曲作品も、「  Ries & Erler  Berlin  リース&エアラー社 」から、

出版されています。

その Furtwängler が亡くなる直前、1954年に録音しました、

≪ Matthäus-Passionマタイ受難曲 ≫ を、聴き始めてしまいました。


★この演奏は、一部が割愛されていますが、

聴き出しますと、もう止められません。

3回も、繰り返して聴いてしまいました。

 

 


★ Furtwängler につきましては、≪  神秘的 で偉大な指揮者 ≫、

というイメージが、いまだにはびこり、

そのように思い込んでいらっしゃる方も多いと、思います。


★今回、≪ Matthäus-Passionマタイ受難曲 ≫ の直筆ファクシミリを、

見ながら、 Furtwängler の指揮を聴きますと、

5月 3日の当ブログ

 http://blog.goo.ne.jp/nybach-yoko/d/20140503 で、

書きました ≪ unbeirrbarorganischen 揺るぎない有機性≫

という意味が、疑念を差し挟む余地が全くないほど、

ヒシヒシと、伝わってきます。

その具体的な意味を、再度、貼り付けますと、

≪ 譬えて言いますと、一つの煉瓦から、巨大なピラミッドを、

どのように構築していくか、ということです。

最少の motif モティーフを、 countepoint 対位法 、harmony という

クラシック音楽の 「 根幹の設計図 」 に基づき、

少しづつ発展させ、組み合わせ、巨大な宇宙の構築にまで、

発展させる方法論のこと ≫ なのです。


★つまり、 Furtwängler の指揮で、≪ Matthäus-Passionマタイ受難曲 ≫

の構造が、これ以上ないほど明確に現れてくる、

 Bach の音楽的思考が、まるでスケルトンのように分かってくる、

のです。

ということは、聴いていて、とても分かりやすい、

という意味です

 

 


Furtwängler に対する “ 神秘的 ” という形容詞は、

この ≪ unbeirrbarorganischen 確固たる、有機的な ≫ という

キーワードを、「 格調 」 と訳した新潮社文庫のように、

勉強不足で、 Bach の音楽を読み取ることのできない人が、

その理解力不足を糊塗するための、形容詞なのでしょう。

決して、神秘的ではなく、 ≪ 明快 ≫ そのものの音楽なのです。


★私が、どうして Furtwängler の演奏を、

読み取ることができるようになったのかを、考えますと、

いろいろな要素が、挙げられます。


「 無伴奏チェロ組曲 」 を六曲書き、 Bach の世界に半歩でも、

近づきたいと、努力したことや、

「 Inventio & Sinfonia インヴェンション & シンフォニア 」 の、

「 アナリーゼ講座 」 を開催し、そこで、 Edwin Fischer

エドウィン・フィッシャー(1886~1960) の校訂版を、徹底的に学び、

 Bach の構築性を、教えられたこと


★残念ながら、Edwin Fischer の平均律校訂版はありませんので、

それに匹敵するであろう、Bartók Béla  バルトーク (1881~1945) や、

Julius Röntgen ユリウス・レントゲン (1855~1932)の、

平均律クラヴィーア曲集1、2巻校訂版を、学ぶことにより、

 Bach の音楽の構造をどう解析するか、その方法論を学んだこと。

 
★さらに、 Furtwängler の作曲した曲を、彼自身の指揮で、

聴いたことも、大変に勉強になりました。

そこに、彼の曲の構造を、演奏にどのように結びつけているかが、

実によく表れており、その手法が、読み取れました。

 

 


★ Edwin Fischer と Furtwängler は、

Beethoven Piano Concerto No.5 の歴史的名演など、

数多く共演し、真に理解し合う仲でした。

Edwin Fischer が録音した 「 平均律クラヴィーア曲集 」 は、

「 Bible 聖書である 」 と、Wolfgang  Boettcher 先生が、

常々、話されています。


Furtwängler の≪ Matthäus-Passionマタイ受難曲 ≫ が、

一点の曇りもなく、分かりやすい演奏であるのは、上記の理由からです。

日本で広まっている 「 神秘的でデモーニッシュな指揮者 」 という

Furtwängler 像は、彼の実体とは、大きくかけ離れていると、

私には、思えます。

 

 


★一例を挙げます・・・

≪ Matthäus-Passionマタイ受難曲 ≫ の冒頭の合唱と orchestra の

『 Kommt, ihr Töchter, helft mir klagen 』 で現れる、

「 バスのオクターブにわたる音階上行形 」 には、

≪ Matthäus-Passionマタイ受難曲 ≫ の構造を、解くカギがあるー

といっていいほど、重要な部分です。

 Furtwängler の指揮から、その重要性が、余すところなく、

伝わってくるのです。


★「 平均律第 1巻 」 が1722年 完成、

そのエッセンスを凝縮した 「 Inventionen und Sinfonien 

インヴェンションとシンフォニア 」  ( 初心者用の曲ではありません ) が、

1723年 完成、≪ Matthäus-Passionマタイ受難曲 ≫ の初演が、

1727年です。

この 3曲が 1720年代に完成していますが、それらを共通して、

読み解くカギが、平均律第 1巻の 「 序文 」 にあると、

言い切れます。


★それにつきましては、24回にわたった 「 平均律アナリーゼ講座 」 で、

既に、詳しくご説明いたしましたが、

≪ 調性をどう解釈するか ≫ という問いへの、解答が、

 「 序文 」 にあり、それの具体例がまさに、

「 バスのオクターブにわたる音階上行形 」 なのです。


★自著で書かれていますように、

Furtwängler にとっても、 Bach は至上の作曲家です。

そして、≪ Matthäus-Passionマタイ受難曲 ≫ の指揮で、

“ これが、私の Bach です ” と、言っています。

思わず、膝を叩きたくなるような、音階の演奏。

 

 


5月 29日の 「 平均律第 2巻 アナリーゼ講座 」 は、

15番 ト長調 G-Dur です。

平均律第 2巻は、≪ Matthäus-Passionマタイ受難曲 ≫ 初演から、

10年後の 1739年に、London Manuscript が、残っています。


★その10年間で、 Bach の調性への取り組みが、さらに、

深まり、「 平均律第 1巻 」 や、≪ Matthäus-Passionマタイ受難曲 ≫

とは違う世界を、形成しています。

15番 G-Dur は、独自配列の Bartók版 ( 全 2巻 ) では、

「 第 1巻の冒頭の曲 」 でもあるのです。


このことは、 Bartók が Bach を、どのように、分析していたか、

ということの答えに、なるでしょう

講座で、この点について、詳しくお話いたします。


★音楽の演奏は、年々進化していくように、思われる方が、

多いかもしれませんが、

昔の時代の演奏が、時代遅れでは全くありません。

 Bach をバロック音楽の中に位置付け、

≪ バロックというタガを嵌める ≫ のは、滑稽であると、

いうべきでしょう。

 

 

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         ● 中村洋子 平均律 第 2巻  アナリーゼ講座

■ 第 12回 第 15番 G-Dur BWV884 Prelude & Fuga

 ~ 平均律 2巻 前奏曲になぜ、Binary form(二部構成)が多いのか~

■ 日  時 :  2014年 5月 29日(木) 午前 10時 ~ 12時 30分

■ 会  場 :  カワイ表参道  2F コンサートサロン・パウゼ

■ 予  約  :     Tel. 03 - 3409 - 1958

 

 

 

※copyright © Yoko Nakamura    
             All Rights Reserved
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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■19番の対位法 を素直に応用したのが 、Beethoven のピアノソナタ Op.110■

2014-05-16 01:38:20 | ■私のアナリーゼ講座■

■19番の対位法 を素直に応用したのが 、Beethoven のピアノソナタ Op.101 ■
~第19回 Chopin が見た「平均律アナリーゼ講座」は、第1巻 第 19番 A-Dur ~

~ TOBEL版「 無伴奏チェロ組曲 」は、Casalsのレッスン内容を記載~
           2014.5.16      中村洋子







★5月12日に開催しました KAWAI 「 みなとみらい 」  での、

Chopin が見た 「 平均律アナリーゼ講座 」 は、以前に、

表参道で開催しました第 1巻の講座内容と比べ、

り一層、深い内容になっていることに、

自分でも、驚いています。

それは、現在、表参道で 「 平均律クラヴィーア曲集 第 2巻」 の、

アナリーゼ講座を続けており、その第 2巻の研究成果が、

反映されているからです。


★Bach の勉強を続けることは、

 “ 果てしなく、終わることがない旅である ”

と言うことができると、思います。

もし、あるところで、歩みを止めてしまいますと、

そこで、自分の音楽も終わる、ということなのかもしれません。


★毎日毎日、 Bach を演奏し、日ごと新しい発見をしたであろう

Pablo Casals パブロ・カザルス(1876~1973) は、遂に、

自身の手になる ≪  Bach 無伴奏チェロ組曲校訂版 ≫ を、

作りませんでした。


★そのようなお話を、講座でいたしましたところ、

感想用紙に、「 カザルス版はあるようです 」 と、書かれた方が

いらっしゃいました。

 

 


★それは、 Rudolf von Tobel が編集した 「 Johann Sebastian Bach

6 Suites a Violoncello  Solo senza Basso  Bwv 1007-1012 」

According to intepretations of Pablo Casals edited with commentary

by Rudolf von Tobel   Carus-Verlag, Stuttgart - CV24.062

を、指されているのでしょう。


Casalsは、1952~65年まで、スイスの Zermatt ツェルマットで、

チェロの master classes マスタークラスを開催しました。

そこで、助手を務めていた Rudolf von Tobel  (1903-1995) が、

Casals の教授内容を、記録していました。

Casals が生徒に対し、よく言っていた 「 シンプルで自然に弾きなさい 」、

「 低いポジションを保ったほうが、よりいい音になる 」、

「 開放弦を使うことを避けないで 」 などの教えを、

注釈として加えた楽譜を、Tobel が作りました。


★Tobel によりますと、

Casalsは、友人のチェリストや編集者から、

何度も何度も、Casals版 「 無伴奏チェロ組曲 」 を作るよう、

薦められたそうです

しかし、Casalsにとって、それは幾つかの理由で、

不可能な仕事のようであった、そうです。


第一に、彼は生涯を通して、絶えず、

よりよい Bach 解釈を、求め続けていた。

第二に、チェリストが、Casals の Fingering を理解しない

のではないかと、危惧していた。

その Fingering の目的は、多数あるがなかんずく、

最高の relaxation リラクゼーションを目指すことにある。

しかし、それは批判を浴びる結果になるであろうと、彼は思っていた。

第三に、 Bach が要求する、無数にある accents アクセントや、

nuances ニュアンスを書き記すことは、ほとんど不可能であると、

Casalsは、信じていた。


そのような理由で、Casalsは、自身の版を創りませんでした。

Bach を、毎日勉強し、追及すると、解釈は留まるものではなく、

絶えず、変わっていくものなのです。

真摯な探求者であればあるほど、≪これが決定的解釈である≫、

というものを、打ち出せなくなるのです。

 

 


次回  「 KAWAI 横浜みなとみらい 」 での、

Chopinが見た 「 Bach 平均律アナリーゼ講座 」 は、

平均律 第 1巻  「 第 19番 A-Dur イ長調 」 です。


19番の prelude は、三つの主題をもつ

「 triple counterpoint 三重対位法 」 ですが、

見方を変えますと、半音階と四度跳躍音程から成る 「 対主題 Ⅰ 」 と、

掛留音 suspention を特徴とする 「 対主題 Ⅱ 」 を従えた、

「 Fuga 」 と、みることもできます。


★ Bach は、平均律第 1巻 の 7番 Es-Dur prelude でも、

重厚なフーガを展開しましたが、この19番は、高度な技法を用いながら、

なんとも軽やかで、優美。

無垢な子供が口ずさむ、歌のようです。

 

 


この素晴らしい技法を、自家薬籠のものとしたのが、Beethoven です。

講座では、「 Klaviersonate  Op. 101  A-Dur 」  の自筆譜を参照しながら、

彼が、 Bach  から学びとったものを、お話いたします。


19番フーガ fuga の主題は、4度音程での zigzgging subject 

ジグザグ進行です。

Beethoven は、この 「 四度音程 」 の意味を、

「 ピアノソナタ  31番 Op. 110 」 で、解明しています。

 
★「 四度音程 」 の意味、とは ?

≪ 四度が 「 調性 」 のなかで、どのような役割を果たしているか ≫

ということです。


★Prelude には、ショパンの書き込みはありません。

Fuga には、主題の冒頭に 「 × 印 」  を記入していますが、

3小節目の上声部分にのみ、 「 □ 印 」  が記入されています。

この 「 □ 印 」  は、次の 20番 Fugaで多用されています。

なぜ一ヶ所だけ 「 □ 印 」  を記入したのか、

Chopinの深い意図を、探ります。

 

 

--------------------------------------------------------
■ 講 師:  中村 洋子
■日  時 : 2014年 6月 16日 (月) 午前 10 時 00分 ~ 12 時 30分
■会  場 : KAWAI ミュージックスクール みなとみらい       
        横浜市西区みなとみらい4-7-1 M.M.MID.SQUARE 3F
      ( みなとみらい駅 『 出口 1番 』 出て、目の前の高層ビル3F )
■予約 : Tel.045-261-7323 横浜事務所
      Tel.045-227-1051 みなとみらい直通

------------------------------------------------------------------

■ 講師 :   作曲家  中村 洋子  Yoko Nakamura

 東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。

日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。

 2003 ~ 05年:アリオン音楽財団 ≪東京の夏音楽祭≫で新作を発表。

 07年:自作品 「 Suite Nr.1 für Violoncello
        無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 などをチェロの巨匠
        Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー氏が演奏した
     CD 『 W.Boettcher Plays JAPAN
                         ヴォルフガング・ベッチャー日本を弾く 』 を発表。


 08年:CD 『 龍笛 & ピアノのためのデュオ 』
    CD 『 星の林に月の船 』 ( ソプラノとギター ) を発表。


 08~09年: 「 Open seminar on Bach Inventionen und Sinfonien
                  Analysis  インヴェンション・アナリーゼ講座 」
                    全 15回を、 KAWAI 表参道で開催。


 09年: 「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

         「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲第 3番 」が、
           W.Boettcher 氏により、Mannheim ドイツ・マンハイム で、
           初演される。

 

10~12年: 「 Open seminar on Bach Wohltemperirte Clavier Ⅰ
                  Analysis 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 アナリーゼ講座 」
                全 24回を、 KAWAI 表参道で開催。

 

10年: CD 『 Suite Nr.3 & 2 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 3番、2番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。

 

     「 Regenbogen-Cellotrios  虹のチェロ三重奏曲集 」 を、
             ドイツ・ドルトムントのハウケハック社
      Musikverlag Hauke Hack Dortmund から出版。

 

11年: 「 10 Duette für 2 Violoncelli
                         チェロ二重奏のための 10の曲集 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

 

12年: 「 Zehn Phantasien für Celloquartett (Band 1,Nr.1-5)
    チェロ四重奏のための 10のファンタジー (第 1巻、1~5番)」を、
      Musikverlag Hauke Hack  Dortmund 社から出版。

 

13年: CD 『 Suite Nr.4 & 5 & 6 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 4、5、6番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。

 

         「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

        スイス、ドイツ、トルコ、フランス、チリ、イタリアの音楽祭で、
    自作品が演奏される。

 ★上記の楽譜とCDは
「 カワイ・表参道 」 http://shop.kawai.co.jp/omotesando/  

「アカデミア・ミュージック 」 https://www.academia-music.com/ で
 販売中。



 

★私の作品の CD 「 無伴奏チェロ組曲 4、 5、 6番 」

Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、

全国の主要CDショップや amazon でも、ご注文できます。

disk Union クラシック館で、第1~6番を購入できます。

 

 


※copyright © Yoko Nakamura    
             All Rights Reserved
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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■5月12日の Chopin が見た平均律アナリーゼ講座は、18番と 「幻想ポロネーズ」■

2014-05-09 23:42:20 | ■私のアナリーゼ講座■

■5月12日の Chopin が見た平均律アナリーゼ講座は、18番と 「幻想ポロネーズ」■
~ 私の「Suite für Violoncello Solo Nr.2 」 の出版作業が、大詰め ~
               2014.5.9    中村洋子





★五月になりました。

街も山も川も人も、新緑と薫風に包まれています。

美しい日本を、実感します。


★私の 「 Suite für Violoncello Solo Nr.2 無伴奏チェロ組曲 第 2番 」

の、
出版作業が、大詰めを迎えています。
 
Berlin の ≪ Ries & Erler リース&エアラー(エルラー) ≫ 社では、いま

Editor エディターの Thomas Schwalbe トマス シュヴァルベ さんが、

編集作業を、精力的になさって下さっています。


★「 第 2番 」 の、CD録音をして頂きました

Prof. Wolfgang Boettcher 
ヴォルフガング・ベッチャー先生が、

bowing ボウイングと fingering
フィンガリングなどの、

書き込み  Spieltechn.Einrichtung を、
私の手書譜に、

詳細に、書き込んで下さいました。

それを基に、cellist チェリストでもある、 Schwalbe さんが、

入念に、土台となる “ 楽譜 ” を作ります。


その “ 素楽譜 ” を、作曲家、演奏者、編集者の三者で、

何度も何度も見直し、各々が描いていたニュアンスや、

表情、速度などの細かい点で、

齟齬があれば直ぐに、三者で協議します。

少しづつ、最善の楽譜に仕上げていく作業が続いています。

そのためには、避けて通れない、長時間の、

とても疲れる作業です。

しかし、心地よい疲労でもあり、

共同作業の楽しさを、
味わっています。






★≪ Ries & Erler リース&エアラー ≫ 社は、

最近、このブログで、取り上げています、

 Wilhelm Furtwängler ヴィルヘルム・フルトヴェングラー

(1886 - 1954
)の、
作曲した作品も、出版しています。


★私の 「 Suite für Violoncello  Solo  Nr. 1、3

 無伴奏チェロ組曲  1、3番 」、

「 チェロ二重奏 10 Duette für  2 Violoncelli  」 も、既に、

≪ Ries & Erler ≫ 社から出ており、 「 Nr.2 」 で、

4冊目となります。


★また、5月 22日には、ドイツで私の Piano Solo

ピアノ独奏曲 4作品を、

演奏して頂く事になり、先月まで、その推敲で忙しい毎日でした


★作曲家の、何度にもわたる 「 推敲 」 、

その結果としての作品の 「 改訂 」 、

そして、その作品が出版されます際の、

更なる 「 改訂 」 などにつきましては、

避けて通れない問題として、Chopin を例に、

当ブログでも、よく取り上げています。







5月12日 ( 月 ) には、 KAWAI 横浜 「 みなとみらい 」 で、

Chopin が見た 「 Bach 平均律第1巻 アナリーゼ講座 」 を、

開催します。

今回は、 「 18番 gis-Moll 」 です。


★KAWAI 表参道で、この曲を取り上げました時は、

Chopinが所持し、書き込みをしていた

「 Das Wohltemperirte Clavier Ⅰ」 の、

ファクシミリ楽譜は、まだ、出版されていませんでした。

★今回、 Chopin の書き込んだ Fingering や記号を検討しましたところ、

表参道でのアナリーゼ講座で、

私の分析を基にして、お話しました事と、同様な見方を、

Chopin もしているように感じられ、嬉しくなりました。


★一例を挙げますと、18番前奏曲 Praeludium 

10小節目 bassバス声部、
1拍目 付点四分音符  「 gis 」 は、

続く 16分音符  「 gis 」 と、
tie タイで、結ばれています

その後、さらに、16分音符の  「 gis - fis - eis - dis - cisis 」 が、

続きます。

その 「 fis - eis 」 に、 Chopin は鉛筆で Fingering を、

書き込んでいます。


数字が小さく、読み難いのですが、 「 3、 3 」 と、

「 3 」 が、 2回続くように見えます。

その 「 3、 3 」 の数字の上を覆うような格好で、

半円形の丸カッコが、描かれています。

この 「 3 」 の指を、ずらしながら弾いたのかもしれません









★明らかに、この 「 fis - eis 」 は、続く 11小節め右手上声、

付点四分音符 「 fis1-eis1 」 ( 1点嬰ヘ音、1点嬰ホ音 ) と、

対応しています。

10小節目の 「 fis - eis 」 から見ますと、

11小節目の 「 fis1-eis1 」 は、拡大カノン Kanon

ともいえます。


Chopinが、そこに注目しましたのは、

間違いないと思われるのですが、
それだけでは、ありません。

この 2音が、10小節目の 1小節前の 9小節目左手内声 Tenor声部、

第 1拍 「 gis 」 に付けました Fingering の 「 3 」 と、

共に考えますと、

Chopinがこの曲をどうとらえ、彼の作品に “ 劇的に ” 、

取り入れて行ったかが、解ってくるのです。


★12日の講座では、その点につきまして、詳しくお話し、

それと Chopinの 「 Polonaise-Fantasie Op.61 幻想ポロネーズ 」

との、
関連についても、分かりやすく、

ご説明いたします。





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■ショパンが見た 「 平均律クラヴィーア曲集 」 ・アナリーゼ講座
    第 18回 平均律  第 1巻  18番 「 gis-Moll 」
●Chopinは、平均律1巻18番を学び尽くして 「幻想ポロネーズ」 を完成
         ~ 最終曲 24番に向けて、歩み始める18番 ~
■日  時 : 2014年 5月 12日 (月)午前 10 時 00分 ~ 12 時 30分
■会  場 :  カワイミュージックスクールみなとみらい        
          横浜市西区みなとみらい4-7-1 M.M.MID.SQUARE 3F
         ( みなとみらい駅『出口 1番』出て目の前の高層ビル 3F )
■予約         Tel.045-261-7323 横浜事務所

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★Bach の 「 平均律クラヴィーア曲集 1巻 18番 」  Preludeは、わずか 29小節です。
一見、単純な 「 3声 」 に見えるため、侮ったように 「 3声のインヴェンション 」 と、
あっさり片付けている解説書が、流布しているようです。
しかし、そうではありません。そのような解説書は、「 インヴェンション 」 も、
理解していないといえます。

★通常ですと、 17番が 変イ長調  As-Dur であるため、18番は 「 変イ短調  as-Moll 」
となるはずです。しかし、バッハは、 異名同音調である 「 嬰ト短調 ( gis-Moll ) 」 と、
しました。 なぜ、バッハがそのようにしたのでしょうか?

★それを、徹底的に考え抜き、自分の作品に反映させたのが、Frederic  Chopin ショパン
なのです。Chopin が、18番 Prelude に書き込んだごくわずかな Fingering が、
この曲を理解するうえで、極めて重要なカギとなります。

★ ショパンの 「 幻想ポロネーズ POLONAISE-FANTASIE Opus.61 」(1845~46 ) は、
 「 As-Dur 」  の調号をもつ曲ですが、 17小節目で早くも、異名同音同主短調の
「 gis-Moll 」 に、転調します。これは、≪ バッハの手法 ≫ です。
ショパンは、実に 1年半もの長い期間をかけて、この曲を、作っています。

★平均律 1巻の 17、 18番 は、motif を共有し、お互いに “ 見つめ合って ” います 。
そして、この曲が目指していくのは、最後の、感動的な 「 24番 h-Moll 」 なのです。 
「 幻想ポロネーズ 」 も、 132小節目から、  「 h-Moll 」 に、転調しています。

★ショパンは、18番から調の関係だけでなく、和声についても深く学び、
それをさらに発展させた “ バッハ由来の和声 ” を、見事に 「 幻想ポロネーズ 」 に、
散りばめています。真のショパンを演奏する “ 近道 ” は、バッハを、学ぶことです。








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■講師: 中村 洋子   Yoko Nakamura
東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。
2003 ~ 05年:アリオン音楽財団 ≪東京の夏音楽祭≫で新作を発表。
07年 :自作品 「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 などをチェロの巨匠 Wolfgang Boettcher ヴォルフガン
     グ・ベッチャー氏が演奏した CD 『 W.Boettcher Plays JAPAN ヴォルフガング・ベッチャー日本を弾く 』 を発表。
08年 :CD 『 龍笛 & ピアノのためのデュオ 』CD 『 星の林に月の船 』 ( ソプラノとギター ) を発表。
08~09年:「 Open lecture on Bach Inventionen  und  Sinfonien Analysis インヴェンション・アナリーゼ講座 」
全15回をKAWAI   表参道で開催。
09年:「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」を ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。
      「 Suite Nr.2 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲第 2番 」が、W.Boettcher 氏により、Mannheim ドイツ・マンハイムで、初演される。
10~12年: 「 Open lecture on Bach Wohltemperirte Clavier ⅠAnalysis 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 アナリーゼ講座 」
      全 24回をKAWAI 表参道で開催。
10年:CD 『 Suite Nr.3 & 2 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 3番、2番 』Wolfgang Boettcher 演奏を発表。「 Regenbogen-Cellotrios
虹のチェロ三重奏曲集 」を、ドイツ・ドルトムントのハウケハック社Musikverlag Hauke Hack Dortmund  から出版。
11年:「10 Duette für 2 Violoncelli チェロ二重奏のための 10の曲集 」をベルリン・リース&エアラー社「Ries & Erler Berlin 」から出版。
12年:「Zehn Phantasien für Celloquartett (Band 1,Nr.1-5)  チェロ四重奏のための10のファンタジー(第 1巻、1~5番)」を、Musikverlag
Hauke Hack Dortmund 社から出版。
13年:CD 『 Suite Nr.4 & 5 & 6 fur Violoncello  無伴奏チェロ組曲 第 4、5、6番 』Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。
「 Suite Nr.3 fur Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」 を、ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。
スイス、ドイツ、トルコ、フランス、チリ、イタリアの音楽祭で、自作品が演奏される。

★上記の楽譜とCDは、「カワイ・表参道」http://shop.kawai.co.jp/omotesando/

 「アカデミア・ミュージック 」
https://www.academia-music.com/ で
 販売中。



 

★私の作品の CD 「 無伴奏チェロ組曲 4、 5、 6番 」

Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、

disk Union、全国の主要CDショップや amazon でも、

ご注文できます

 

 


※copyright © Yoko Nakamura    
             All Rights Reserved
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■ フルトヴェングラー「 ヘンデルは バッハ と比べると、恣意的で、気まぐれに見える」■

2014-05-03 00:56:35 | ■ 感動のCD、論文、追憶等■

■ フルトヴェングラー「  ヘンデルは バッハ と比べると、恣意的で、気まぐれに見える」■
   ~ Furtwängler 著 「音と言葉」 より、 BACH 1951 の 訳 No.2~
                    2014.5.3      中村洋子

 




★新緑の眩しい 5月となりました。

先月、Konstantin Lifschitz コンスタンティン・リフシッツ が、

Beethoven  ベートーヴェン(1770~ 1827) の

Violin Sonata ヴァイオリンソナタ No. 4 &10 と、

Brahms ブラームス (1833~1897)の、

Violin Sonata ヴァイオリンソナタ No.1 を、

演奏したコンサートを、聴きました。


★Beethoven の No. 10 を聴いていました時、ふと、

「 このピアニストは、作曲もしている人でしょう 」 と、感じました

綿密な分析に基づいた、評価できる演奏でした。

以前、このブログでご紹介いたしましたが、

Furtwänglerフルトヴェングラーは、

指揮者であるとともに、作曲家でもありました。


Pablo Casals パブロ・カザルス(1876~1973) も、多くの作品を残し、

 Wilhelm Kempff  ヴィルヘルム・ケンプ ( 1895~1991) 、

Glenn Gould グレン・グールド(1932年 - 1982)も、

同様に、作曲家でもありました。


★指揮者でも、ピアニストでも、チェリストでも、

他のどの分野の演奏家でありましても、超一流の音楽家は、

作曲を学び、作曲もしているのです。

それは、作曲に必要な harmony、 countepoint を使いこなし、

全体を構築する能力を保持している、ということなのです。


★その能力を獲得しなくては、真の演奏家にはなり得ないと、

言えるのかもしれません。






★ Furtwängler フルトヴェングラー ですが、前回に続き、
彼の著作集 「 TON UND WORT  」  「音と言葉」 
        Aufsätze und Vorträge  1918 bis 1954
         Mit 10 Abbildungen und Notenbeispielen  
            F. A. BROCHHAUS・WIESBADEN  1954  の中から
        「 Bach (1951) 」 の続きを、一部ご紹介します。

Bach と同時代の Georg Friedrich Händel 

ヘンデル(1685~1759) と、

Vivaldi ヴィヴァルディ(1678 - 1741)について、

Furtwängler の考え が、書かれています。

★Die Historiker wollen uns manchmal erzählen, daß
selbst ein Reise wie Bach,in seine Zeit gestellt, mit ihr
verglichen und von ihr aus gesehen, das Überlebens-
große,das ihm für uns anhaftet,verliere,Mensch unter
Menschen,Einerーwenn auch immer ein Großerーunter 
den Vielen seiner Zeit würde.

 

(私の試訳)
歴史家はときどき、次のように主張しています。
バッハの時代にまでさかのぼって見てみると、確かに、
バッハはその時代の作曲家の中で、偉大な一人ではあるものの、
重要な作曲家の一人に過ぎないようにみえる。
過大に、評価され過ぎているようです。
彼にも欠点が有り、それゆえ、その偉大さは少し、
差し引くべきでしょう。

 
(新潮社訳)
音楽史家はよく我々に、バッハのような巨人も彼の時代に置いて見、
その時代と比較し、その時代から眺めてみると、我々にとって
彼の背光をなしていると思われる超人的な偉大さは失われてしまう、
ーそしてバッハも多くの人間の中の人間であり、-たとえ偉大である
ことにおいては相違ないとしても、-彼の時代を構成していた多くの
作曲家の一人であった、ということになる、と説き伏せようとします。



★Das Gegenteil scheint mir der Fall.
Nie wird uns die stauenswerte Überlegenheit Bachscher Musik klarer,
nie ist der Unterscheid dessen,was nachweisbar aus seiner Hand kommt,
gegenüber den Werken der anderen mehr mit Händen zu greifen,
als wenn man ihn mit Schöpfen seiner Zeit und Umgebung vergleich,
etwa Vivaldi,von dem er viel übernommen und bearbeitet hat.

 

(私の試訳)
この歴史家の Bach に対する考え方は、私の Bach 観とは、
全く正反対のようです。
Bach バッハの、正真正銘の作品であると証明できる作品は、
Bach と同時代だった多くの作曲家の作品と比べ、 驚くべき価値があり、
卓越したものである、ということは明白である。
Bach  バッハが多大な影響を受け、そして、その作品の編曲もしている
Vivaldi ヴィヴァルディも、そうした同時代の Schöpfen (creaters)
の一人ではあります。


(新潮社訳)
が私にはそれはまさしく反対であったと思われます。
すなわち彼を彼の時代の周囲の作曲家、例えばヴィヴァルディ、
-バッハは彼から多くの素材を取り入れ、また多くの編曲を
試みているのですが、-そういう人たちと比較してみると、
その時ほど、バッハの音楽の驚くべき優越さがはっきりし、
バッハの手になると推定される作品と、
他の人による作品と、他の人による作曲との対立する相違が
一目瞭然としてくることはありません。









★Selbst das strahlende Musizieren des großen Händel wirkt
seltsam willkürlich,seltsam launisch neben der stillen,
unbeirrbarorganischen  Konsequenz Bachschen Musikdenkens.

(私の試訳)
偉大なヘンデルの、輝くばかりの素晴しい音楽ですら、
バッハの揺らぎようのない有機性、徹底した音楽思考に比べますと、
不思議に、恣意的で、気まぐれに見えます。

(新潮社訳)
あの偉大なヘンデルの輝かしい作曲すら、静かな、不動にして
迷うことを知らぬバッハの作曲的思惟の格調のそばに置いてみると、
おかしいほど恣意的に思われ、ひどく気まぐれなものに
みえてくるのはふしぎです。


偉大な Händel  ヘンデルの偉大さを、誰よりも知っていたのは、

Furtwängler だったと、思います。

その Furtwängler が、≪ Bach  バッハ  と比べると、

Händel  ヘンデルは、恣意的で、気まぐれに見えます≫と、

言い切っています。

その言葉の重さに、感動いたします。


≪unbeirrbarorganischen≫  は、

英語の ≪ unwavering organic ≫ に対応し、

≪ 揺らぎようのない有機性 ≫、という意味です。

具体的には、 ≪ 譬えて言いますと、一つの煉瓦から、巨大なピラミッドを、

どのように構築していくか、ということです。

最少の motif モティーフを、 countepoint 対位法 、harmony という

クラシック音楽の 「 根幹の設計図 」 に基づき、

少しづつ発展させ、組み合わせ、巨大な宇宙の構築にまで、

発展させる方法論のことを、指します。≫










★残念ながら、この新潮社訳は、大切なキーワードである

≪unbeirrbarorganischen≫ を、「 格調 」 と訳しています。

結局、クラシック音楽がどういうものか、理解されていないため、

≪unbeirrbarorganischen≫ という語の、

意味と重要さを把握できず、

「 格調 」 という曖昧模糊とした、

明らかに、誤った言葉に置き換えてしまっています。


★これと同様のことは、現在の日本人のクラシック演奏にも、

当てはまる場合が、多いようです。

演奏する曲の、徹底的な分析をしないまま、

あるいは、分析することができないため、

つまり、設計図なしで、一種のムード音楽的に演奏する

“ 格調高き ” 演奏が、かなり多いように、見受けられます。


★また、最近のピアノなどの鍵盤楽器、弦楽器の演奏会で、

Bach  バッハの曲を取り上げることが、

激減しているように思えるのは、気のせいでしょうか。

正面から、 Bach  バッハに “ 挑む ” ということを、

避けているようにも、見受けられます。

残念なことです。

 



 

★私の作品の CD 「 無伴奏チェロ組曲 4、 5、 6番 」

Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、

disk Union、全国の主要CDショップや amazon でも、

ご注文できます

 


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