■ Furtwängler フルトヴェングラーの バッハ Bach 観 ■
~ 東京 disk Union に、私の CDコーナーが出来ました ~
2014.4.25 中村洋子
★東京の ≪ disk UNION ディスクユニオン・お茶の水クラシック館 ≫
http://diskunion.net/shop/ct/ocha_classic に、
私の 『 Suiten fur Violoncello solo 無伴奏チェロ組曲 1 ~ 6番 』 の
CD を並べたコーナーが、出来ました。
店内で CDもかけていただき、とても好評だそうです。
★disk Union の ≪ 新宿クラシック館 ≫、
http://diskunion.net/shop/ct/shinjuku_classic
disk Union ≪ 吉祥寺ジャズ&クラシック館 ≫ でも、
http://diskunion.net/shop/ct/kichijyouji_jazzandclassic
これら CD を、取り扱って頂いております。
お近くにお寄りの際は、どうぞ、ご覧下さい。
★このところ、 Wilhelm Furtwängler ヴィルヘルム・フルトヴェングラー
(1886 - 1954) の、著作集を、読んでいます。
日本でも、新潮文庫から 『 音と言葉 』 という題で、
翻訳が、出版されています。
★しかしながら、その訳は、いつものことですが、
「 クラシック音楽 」 を、理解されていない方の訳のようですので、
その日本語を読んで、 Furtwängler の言いたいことが、
果たして、伝わるかどうか大いに疑問です。
逆に、誤って理解されてしまう危険性すらあります。
★この著作 「 TON UND WORT 」 Aufsätze und Vorträge
1918 bis 1954
Mit 10 Abbildungen und Notenbeispielen
F. A. BROCHHAUS・WIESBADEN 1954
「 音と言葉 」 論文 と 講演集 1918~54年
10の 図版 と 譜例 付き
WIESBADEN の BROCHHAUS出版 1954年 は、
Bach 、Beethoven、Brahms、Richard Wagner (1813~1883)
Anton Bruckner(1824~1896)、Paul Hindemith (1895 - 1963)
などの作曲家についての、彼の考え方が書かれていますので、
座右の書として、じっくりと読んでいきたいと、思います。
★特に、 Wilhelm Furtwängler フルトヴェングラーが、
Bach について、どう書いているか、その章を真っ先に読んでみました。
★ Bach 1951
Bachs Musik ist wohl diejenige Musik, die - seit ihrer
Wiederentdeckung Anfang des 19. Jahrhunderts - in
der Schätzung der Menschen die geringsten Schwankungen
durchgemacht hat. Bach ist auch heute wie ehemals der Heilige, der,
allen anderen unerreichbar,über Wolken thront.
[ 私の試訳] : Bach の音楽は、19世紀初めに再発見されて以来、
揺るぐことのない最高の評価を、受けている。
Bachは今日、かつての聖人のように、
他の作曲家が、全く到達しえない、
遥か雲の上の高みに、存在するのです。
★ ≪ 19世紀初めに再発見され ≫ と、あるのは、
1829年、Felix Mendelssohn フェリックス・メンデルスゾーン
(1809 - 1847) が、Bach 死後初めて、
1727年の初演から約百年後に、
≪ Matthäus-Passionマタイ受難曲 ≫ を演奏したことを、
指しているのでしょう。
ただ、Bach の死後からその間まで、
Bach が全く忘れ去られていた訳では、ありませんが。
■ちなみに、新潮社訳は、
バッハの音楽は、十九世紀初期において再発見せられて以来、
人々の評価において、最も動揺することの少なかった音楽であります。
バッハは今日においても、以前と同じく、他のいかなる作曲家も
希求しえない、雲上に位するところの楽聖であります。
ーとなっています。
★続いて、 ( 私の試訳 )
それには、たくさんの理由があります。
第一に、Bach の音楽は、驚くべきことに、
melody、 harmony、 rhythm の三つの要素が、
( どれかが一つ突出する、ということではなく )
常に、相互に完璧に、作用し合っているのです。
完全にバランスがとれた、微動だにしない安定性を保っている、
という性格です。
★先週、カワイ表参道で平均律第二巻 14番のアナリーゼ講座を
開催しましたが、 この 14番 Prelude は、
メロディーの美しさに、心を奪われ勝ちですが、
Debussy すら予見させる harmony の凄さ、
fuga における、 rhythm の対比が示す緊密な構成力、
それらがどれだけ、この曲を揺るぎないものにしていることか、
勉強すればするほど、感動いたします。
Furtwängler の言葉が、心から、納得できるのです。
★彼は、 Bach バッハが countepoint 対位法 の大家
であるから、素晴らしいとは決して、言っていません。
ここが、肝心なところです。
★講座で毎回、ご説明していますように、
Bach バッハ の countepoint 対位法 は、
melody、 harmony、 rhythm の三つの要素を、
総合し、束ね、その上に “ 君臨 ” しているのです。
★Albert Schweitzer アルベルト・シュヴァイツァー
(1875 - 1965)が、著書で指摘していますように、
どんな作曲家の作品でも、 countepoint 対位法 が
どのように、張り巡らされているかによって、
その価値が、定まります。
countepoint 対位法 は、存在して当たり前、
言わずもがなの前提である、ということを、
Furtwängler は、自覚して文章を書いているのです。
■新潮社訳:
≪それにはいろいろ多くの理由もあげられるでありましょう。
まず第一に、バッハの音楽は静けさに充ちた制作のたしかさを
持っていることです。と言うのはそれ自体の中に完全な調和を
保ったメロディーとハーモニーとリズム的要素の統一された
格調をなしていることで、いつもくり返し驚嘆せずにはいられません。
★次の部分( 私の試訳 )
この調和は、Bach のどんなごく小さな曲にも、必ずみられるのです。
(逆に)小さな部分が、連続して成り立っているような作品(大曲)でも、
同じように、調和に満ちているのです。
Bachが、生命に対してもっていた確固たる感情は、
微動だにしない揺るぎないものでした。それが、彼の音楽に対し、
その個性を超えて、音楽の真の本当の意味を与えているのです。
この部分で、 Furtwänglerの言わんとすることは、
次のようなことではないかと、私は思います。
Furtwänglerの生まれた19世紀後半は、ヴィルティオーゾ時代、
つまり、各々の音楽家が、「 個性 」を競い合っていた時代だった、
という背景を、前提にしたうえで、
≪ Bach バッハ の音楽は、「 個性 」 という小さな “ 容器 ” を
超越したところに存在する、真の意味での、最高の音楽である ≫
というのが、私の感想です。
■新潮社訳:
≪どんな小さなバッハの作品の中にも行き渡っている、
あの精細な均衡、あらゆる個々の細部の配置の不断の沈静、
そしてもうはじめから「それ自身の中にも静止」して動かぬ
静かな感情によって結び合わされています。
-これこそ、バッハの生命感をくっきり性格づけるものであり、
ーバッハの音楽に真の意味において超個人的な色彩を与えるものです≫
★あの素晴らしい Beethoven や Brahms、 Wagner を
演奏した Furtwängler が、
Pablo Casals カザルス(1876~1973) と同様に、
Bach を、至上無二の作曲家ととらえているのは、
当然と言えば当然ですが、
やはり、心に刻むべき言葉である、と思います。
★それでこそ、彼の素晴らしい Beethoven 、Mozart、 Brahms、
Schumann ・・・ の演奏があったのでしょう。
★しかし、 Bach を偶像のように奉るのではなく、
Wohltemperirte Clavier 平均律クラヴィーア曲集などの、
≪ 自筆譜 ≫ を読み込むことから、
Bach が、自分の音楽を、家族やお弟子さんによりよく、
理解してもらえるよう、腐心して、
時には、ユーモアも感じさせる人であった・・・、
そういう点も、学んでいきたいと、思います。
★ Furtwängler の Bach については、今後、重要なところを、
ブログで時々、採り上げていきたいと、思います。
★私の作品の CD 「 無伴奏チェロ組曲 4、 5、 6番 」
Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、
全国の主要CDショップや amazon でも、ご注文できます
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