音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■ Furtwängler フルトヴェングラーの バッハ Bach 観 ■

2014-04-25 19:52:41 | ■ 感動のCD、論文、追憶等■

■  Furtwängler フルトヴェングラーの バッハ Bach 観 ■
       ~ 東京 disk Union に、私の CDコーナーが出来ました ~
                         2014.4.25       中村洋子






★東京の ≪ disk UNION  ディスクユニオン・お茶の水クラシック館 ≫

http://diskunion.net/shop/ct/ocha_classic に、

私の 『 Suiten fur Violoncello solo 無伴奏チェロ組曲 1 ~ 6番 』 の

CD を並べたコーナーが、出来ました。

店内で CDもかけていただき、とても好評だそうです。


★disk Union の ≪  新宿クラシック館 ≫、 
http://diskunion.net/shop/ct/shinjuku_classic

disk Union ≪  吉祥寺ジャズ&クラシック館 ≫ でも、
http://diskunion.net/shop/ct/kichijyouji_jazzandclassic

これら CD を、取り扱って頂いております。

お近くにお寄りの際は、どうぞ、ご覧下さい。

 



★このところ、 Wilhelm Furtwängler ヴィルヘルム・フルトヴェングラー

(1886 - 1954) の、著作集を、読んでいます。

日本でも、新潮文庫から 『 音と言葉 』 という題で、

翻訳が、出版されています。


★しかしながら、その訳は、いつものことですが、

「 クラシック音楽 」 を、理解されていない方の訳のようですので、

その日本語を読んで、 Furtwängler の言いたいことが、

果たして、伝わるかどうか大いに疑問です。

逆に、誤って理解されてしまう危険性すらあります。


★この著作  「 TON UND WORT  」  Aufsätze und Vorträge 
                    1918 bis 1954

        Mit 10 Abbildungen und Notenbeispielen  
            F. A. BROCHHAUS・WIESBADEN  1954      
                  「 音と言葉 」 論文 と 講演集 1918~54年
       10の 図版 と 譜例 付き  

      WIESBADEN の BROCHHAUS出版 1954年   は、
  
Bach 、Beethoven、Brahms、Richard Wagner (1813~1883)

Anton Bruckner(1824~1896)、Paul Hindemith (1895 - 1963)

などの作曲家についての、彼の考え方が書かれていますので、

座右の書として、じっくりと読んでいきたいと、思います。


★特に、 Wilhelm Furtwängler フルトヴェングラーが、

Bach について、どう書いているか、その章を真っ先に読んでみました。









★  Bach             1951

  Bachs Musik ist wohl diejenige  Musik, die - seit ihrer
Wiederentdeckung Anfang des 19. Jahrhunderts - in
der Schätzung der Menschen die geringsten Schwankungen
durchgemacht hat. Bach ist auch heute wie ehemals der Heilige, der,
allen anderen unerreichbar,über Wolken thront.

[ 私の試訳] : Bach の音楽は、19世紀初めに再発見されて以来、
揺るぐことのない最高の評価を、受けている。
Bachは今日、かつての聖人のように、
他の作曲家が、全く到達しえない、
遥か雲の上の高みに、存在するのです。


★ ≪ 19世紀初めに再発見され ≫ と、あるのは、

1829年、Felix Mendelssohn フェリックス・メンデルスゾーン

(1809 - 1847) が、Bach 死後初めて、

1727年の初演から約百年後に、

≪ Matthäus-Passionマタイ受難曲 ≫ を演奏したことを、

指しているのでしょう。

ただ、Bach の死後からその間まで、

Bach が全く忘れ去られていた訳では、ありませんが。


■ちなみに、新潮社訳は、
バッハの音楽は、十九世紀初期において再発見せられて以来、
人々の評価において、最も動揺することの少なかった音楽であります。
バッハは今日においても、以前と同じく、他のいかなる作曲家も
希求しえない、
雲上に位するところの楽聖であります。

                    ーとなっています。








★続いて、 ( 私の試訳 )
それには、たくさんの理由があります。
第一に、Bach の音楽は、驚くべきことに、
melody、 harmony、 rhythm の三つの要素が、
 ( どれかが一つ突出する、ということではなく )
常に、相互に完璧に、作用し合っているのです。
完全にバランスがとれた、微動だにしない安定性を保っている、
という性格です。


★先週、カワイ表参道で平均律第二巻 14番のアナリーゼ講座を

開催しましたが、 この 14番 Prelude は、

メロディーの美しさに、心を奪われ勝ちですが、

Debussy すら予見させる harmony の凄さ、

fuga における、 rhythm の対比が示す緊密な構成力、

それらがどれだけ、この曲を揺るぎないものにしていることか、

勉強すればするほど、感動いたします。

Furtwängler の言葉が、心から、納得できるのです。


★彼は、 Bach バッハが countepoint 対位法 の大家

であるから、素晴らしいとは決して、言っていません。

ここが、肝心なところです。

 

★講座で毎回、ご説明していますように、

Bach バッハ の countepoint 対位法 は、

melody、 harmony、 rhythm の三つの要素を、

総合し、束ね、その上に “ 君臨 ” しているのです。

 

★Albert Schweitzer アルベルト・シュヴァイツァー

(1875 - 1965)が、著書で指摘していますように、

どんな作曲家の作品でも、 countepoint 対位法 が

どのように、張り巡らされているかによって、

その価値が、定まります。

countepoint 対位法 は、存在して当たり前、

言わずもがなの前提である、ということを、

 Furtwängler は、自覚して文章を書いているのです。

 


■新潮社訳:
≪それにはいろいろ多くの理由もあげられるでありましょう。
まず第一に、バッハの音楽は静けさに充ちた制作のたしかさを
持っていることです。と言うのはそれ自体の中に完全な調和を
保ったメロディーとハーモニーとリズム的要素の統一された
格調をなしていることで、いつもくり返し驚嘆せずにはいられません。







★次の部分( 私の試訳 )
この調和は、Bach のどんなごく小さな曲にも、必ずみられるのです。
(逆に)小さな部分が、連続して成り立っているような作品(大曲)でも、
同じように、調和に満ちているのです。

Bachが、生命に対してもっていた確固たる感情は、
微動だにしない揺るぎないものでした。それが、彼の音楽に対し、
その個性を超えて、音楽の真の本当の意味を与えているのです。

この部分で、 Furtwänglerの言わんとすることは、

次のようなことではないかと、私は思います。

Furtwänglerの生まれた19世紀後半は、ヴィルティオーゾ時代、

つまり、
各々の音楽家が、「 個性 」を競い合っていた時代だった、

という背景を、前提にしたうえで、

≪ Bach バッハ の音楽は、「 個性 」 という小さな “ 容器 ” を

超越したところに存在する、
真の意味での、最高の音楽である ≫

というのが、私の感想です。


■新潮社訳:
≪どんな小さなバッハの作品の中にも行き渡っている、
あの精細な均衡、あらゆる個々の細部の配置の不断の沈静、
そしてもうはじめから「それ自身の中にも静止」して動かぬ
静かな感情によって結び合わされています。
-これこそ、バッハの生命感をくっきり性格づけるものであり、
ーバッハの音楽に真の意味において超個人的な色彩を与えるものです≫







★あの素晴らしい Beethoven や Brahms、 Wagner を

演奏した Furtwängler が、

Pablo Casals カザルス(1876~1973) と同様に、

Bach を、至上無二の作曲家ととらえているのは、

当然と言えば当然ですが、

やはり、心に刻むべき言葉である、と思います。


★それでこそ、彼の素晴らしい Beethoven 、Mozart、 Brahms、

Schumann ・・・ の演奏があったのでしょう。


★しかし、 Bach を偶像のように奉るのではなく、

 Wohltemperirte Clavier 平均律クラヴィーア曲集などの、

≪ 自筆譜 ≫ を読み込むことから、

 Bach が、自分の音楽を、家族やお弟子さんによりよく、

理解してもらえるよう、腐心して、

時には、ユーモアも感じさせる人であった・・・、

そういう点も、学んでいきたいと、思います。


★ Furtwängler の Bach については、今後、重要なところを、

ブログで時々、採り上げていきたいと、思います。

 



 

★私の作品の CD 「 無伴奏チェロ組曲 4、 5、 6番 」

Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、

全国の主要CDショップや amazon でも、ご注文できます







※copyright © Yoko Nakamura    
             All Rights Reserved
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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■Chopinは、平均律 1 巻 18番を学び尽くして「幻想ポロネーズ」を完成■

2014-04-19 11:54:34 | ■私のアナリーゼ講座■

■Chopinは、平均律 1 巻 18番を学び尽くして「幻想ポロネーズ」を完成■
   ショパンが見た 平均律クラヴィーア曲集 アナリーゼ講座
        
1 平均律 第 1 18番 gis-Moll

                2014.4.19  中村洋子






 

★Bach の 「 平均律クラヴィーア曲集 1巻 18番 」  Preludeは、

わずか 29小節です。

一見、単純な 「 3声 」 に見えるため、侮ったように

「 3声のインヴェンション 」 と、あっさり片付けている解説書が、

流布しているようです。



★しかし、そうではありません。

そのような解説書は、「 インヴェンション 」 も、

理解していないといえます。



★通常ですと、 17番が 変イ長調  As-Dur であるため、

18番は 「 変イ短調  as-Moll 」 となるはずです。

しかし、バッハは、 異名同音調である 「 嬰ト短調 ( gis-Moll ) 」 と、

しました。

なぜ、バッハがそのようにしたのでしょうか?








★それを、徹底的に考え抜き、自分の作品に反映させたのが、

Frederic  Chopin ショパン (1810~1849) なのです。

Chopin が、18番 Prelude に書き込んだごくわずかな Fingering が、

この曲を理解するうえで、極めて重要なカギとなります。



★ ショパンの 「 幻想ポロネーズ POLONAISE-FANTASIE Opus.61 」

(1845~46 )  は、

「 As-Dur 」  の調号をもつ曲ですが、 17小節目で早くも、

異名同音同主短調の「 gis-Moll 」 に、転調します。こ

れは、≪ バッハの手法 ≫ です。

ョパンは、実に 1年半もの長い期間をかけて、

この曲を、作っています。






平均律 1巻の 17、 18番 は、motif を共有し、


お互いに “ 見つめ合って ” います 。

そして、この曲が目指していくのは、

最後の、感動的な 「 24番 h-Moll 」 なのです。 

「 幻想ポロネーズ 」 も、 132小節目から、 

「 h-Moll 」 に、転調しています。

ショパンは、18番から ≪ 調の関係 ≫ だけでなく、

和声についても深く学び、

それをさらに発展させた “ バッハ由来の和声 ” を、

見事に 「 幻想ポロネーズ 」 に、散りばめています。真

のショパンを演奏する “ 近道 ” は、バッハを、学ぶことです。





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■日  時 : 2014年 5月 12日 (月) 午前 10 時 00分 ~12 時 30分

■会  場 : カワイ ミュージックスクール みなとみらい        

      横浜市西区みなとみらい4-7-1 M.M.MID.SQUARE 3F

      ( みなとみらい駅『 出口 1番 』出て、目の前の高層ビル 3F )

会 費 :  要予約   Tel.045-261-7323 横浜事務所


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■ 講師 :   作曲家  中村 洋子  Yoko Nakamura

 東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。

日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。

 2003 ~ 05年:アリオン音楽財団 ≪東京の夏音楽祭≫で新作を発表。

 07年:自作品 「 Suite Nr.1 für Violoncello
        無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 などをチェロの巨匠
        Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー氏が演奏した
     CD 『 W.Boettcher Plays JAPAN
                         ヴォルフガング・ベッチャー日本を弾く 』 を発表。


 08年:CD 『 龍笛 & ピアノのためのデュオ 』
    CD 『 星の林に月の船 』 ( ソプラノとギター ) を発表。


 08~09年: 「 Open seminar on Bach Inventionen und Sinfonien
                  Analysis  インヴェンション・アナリーゼ講座 」
                    全 15回を、 KAWAI 表参道で開催。


 09年: 「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

         「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲第 3番 」が、
           W.Boettcher 氏により、Mannheim ドイツ・マンハイム で、
           初演される。

 

10~12年: 「 Open seminar on Bach Wohltemperirte Clavier Ⅰ
                  Analysis 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 アナリーゼ講座 」
                全 24回を、 KAWAI 表参道で開催。

 

10年: CD 『 Suite Nr.3 & 2 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 3番、2番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。

 

     「 Regenbogen-Cellotrios  虹のチェロ三重奏曲集 」 を、
             ドイツ・ドルトムントのハウケハック社
      Musikverlag Hauke Hack Dortmund から出版。

 

11年: 「 10 Duette für 2 Violoncelli
                         チェロ二重奏のための 10の曲集 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

 

12年: 「 Zehn Phantasien für Celloquartett (Band 1,Nr.1-5)
    チェロ四重奏のための 10のファンタジー (第 1巻、1~5番)」を、
      Musikverlag Hauke Hack  Dortmund 社から出版。

 

13年: CD 『 Suite Nr.4 & 5 & 6 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 4、5、6番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。

 

         「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

        スイス、ドイツ、トルコ、フランス、チリ、イタリアの音楽祭で、
    自作品が演奏される。

 ★上記の楽譜とCDは
「 カワイ・表参道 」 http://shop.kawai.co.jp/omotesando/  

「アカデミア・ミュージック 」 https://www.academia-music.com/ で
 販売中。



 

★私の作品の CD 「 無伴奏チェロ組曲 4、 5、 6番 」

Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、

全国の主要CDショップや amazon でも、ご注文できます

 

 

 


※copyright © Yoko Nakamura    
             All Rights Reserved
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■ 平均律 2巻前奏曲になぜ、Binary form(二部構成)が多いのか ■

2014-04-17 15:47:03 | ■私のアナリーゼ講座■

平均律 2巻前奏曲になぜ、Binary form(二部構成)が多いのか ■

      中村洋子 Bach 平均律 第 2巻・アナリーゼ講座
第 12回 第 15番 G-Dur BWV884 Prelude & Fuga

               2014.4.17 中村洋子


 

 

★15番 G-Durは、14番 fis-Moll の深い悲嘆に満ちた世界から

一変し、
さわやかな五月の朝に、生きる喜びを歌うような、

清々しい曲となっています。



★この15番のPreludeは、

前半を繰り返して2回弾き、後半も同様に2回弾く、

Binary form バイナリーフォーム(二部構成)の形式です。

第一部と第二部は、ほぼ同じ旋律を使いながら、

主調(ト長調)と 属調(ニ長調)の関係になっています。

このような例は、Französische Suite フランス組曲の

最初の曲である Allemande にもよく見られ、

特に4番 Es-Durとよく似ています。



★ちなみに、平均律 2巻の Prelude には、

Binary form の曲が 10曲ありますが、

平均律 1巻では 24番のみです。








Bach 晩年の平均律 2巻では、

それ以前によく見られた、多彩な転調や技巧的な多声部は、

次第に影をひそめ、

逆に、
厳しく限定された世界へと沈潜し、

その結果、より大きな自由の世界へ飛翔したともいえます

Bach がなぜ、Binary form に戻ったのか、

この形式がBach にとって、どういう位置付けだったのか、

分かりやすく、お話いたします。

15番 Fugaも、一見しますと 「 三声 」の単純で、

無邪気な曲に見えますが、

その Prelude の Binary form という視点から見ますと、

恐ろしいまでの、深い内容となっています。

Brahms の友人でもあった Julius Rontgen

ユリウス・レントゲン(1855~1932)の校訂版から、

その深さと演奏法を、知ることができます







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■日  時 :  2014年 5月29日(木) 午前 10時 ~ 12時 30分

■会  場 :  カワイ表参道  2F コンサートサロン・パウゼ

■会  費 :    要予約   Tel.03-3409-1958

■ 講師 :   作曲家  中村 洋子  Yoko Nakamura

 東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。

日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。

 2003 ~ 05年:アリオン音楽財団 ≪東京の夏音楽祭≫で新作を発表。

 07年:自作品 「 Suite Nr.1 für Violoncello
        無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 などをチェロの巨匠
        Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー氏が演奏した
     CD 『 W.Boettcher Plays JAPAN
                         ヴォルフガング・ベッチャー日本を弾く 』 を発表。


 08年:CD 『 龍笛 & ピアノのためのデュオ 』
    CD 『 星の林に月の船 』 ( ソプラノとギター ) を発表。


 08~09年: 「 Open seminar on Bach Inventionen und Sinfonien
                  Analysis  インヴェンション・アナリーゼ講座 」
                    全 15回を、 KAWAI 表参道で開催。


 09年: 「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

         「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲第 3番 」が、
           W.Boettcher 氏により、Mannheim ドイツ・マンハイム で、
           初演される。

 

10~12年: 「 Open seminar on Bach Wohltemperirte Clavier Ⅰ
                  Analysis 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 アナリーゼ講座 」
                全 24回を、 KAWAI 表参道で開催。

 

10年: CD 『 Suite Nr.3 & 2 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 3番、2番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。

 

     「 Regenbogen-Cellotrios  虹のチェロ三重奏曲集 」 を、
             ドイツ・ドルトムントのハウケハック社
      Musikverlag Hauke Hack Dortmund から出版。

 

11年: 「 10 Duette für 2 Violoncelli
                         チェロ二重奏のための 10の曲集 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

 

12年: 「 Zehn Phantasien für Celloquartett (Band 1,Nr.1-5)
    チェロ四重奏のための 10のファンタジー (第 1巻、1~5番)」を、
      Musikverlag Hauke Hack  Dortmund 社から出版。

 

13年: CD 『 Suite Nr.4 & 5 & 6 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 4、5、6番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。

 

         「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

        スイス、ドイツ、トルコ、フランス、チリ、イタリアの音楽祭で、
    自作品が演奏される。

 ★上記の楽譜とCDは
「 カワイ・表参道 」 http://shop.kawai.co.jp/omotesando/  

「アカデミア・ミュージック 」 https://www.academia-music.com/ で
 販売中。



 

★私の作品の CD 「 無伴奏チェロ組曲 4、 5、 6番 」

Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、

全国の主要CDショップや amazon でも、ご注文できます

 

 


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■Röntgen の平均律校訂版からは、 “詩” がにじみ出る■

2014-04-15 22:07:40 | ■私のアナリーゼ講座■

■Röntgen の平均律校訂版からは、 “詩” がにじみ出る■
~平均律二巻14番 Fuga冒頭の不思議な Fingering の意味 ~
                                 2014.4.15    中村洋子


 


★Bach 「 Wohltemperirte Clavier 平均律クラヴィーア曲集 」 の、

素晴らしい校訂版作者として、当ブログで、

たびたび登場します

Julius Röntgen ユリウス・レントゲン (1855~1932)について、

どんな人であったか、簡単に、ご紹介いたします。


★『 ブラームス回顧録集 ② ブラームスは語る 』 (音楽の友社)

に、いくつかの人となりが分かるエピソードが、書かれています。

この本は、 「 ERINNERUNGEN AN JOHANNES BRAHMS 」
by Richard Heuberger
「 KLÄNGE UM BRAHMS, Erinnerungen: Ⅲ.Hochklang 」
by Richard Fellinger を、訳したものです。


★Richard Heuberger リヒャルト・ホイベルガーの著作には、

Johannes Brahms ブラームス (1833~1897) の死の前年1896年、

当時 41歳前後であった Röntgen との交流が、記録されています。

音楽の才能に溢れ、誠実な人柄であったことが、うかがわれます。







1896年2月3日、Brahmsは、音楽家協会で、ピアニストの
Julius Röntgen ユリウス・レントゲン を紹介した。
彼は「X線レントゲン」の一族であり、音楽一家クレンゲルの親戚だという。
≪室内電話など考えられなかった時代に、レントゲン家には電話線が引かれていた。ピアニストの Röntgen は天才少年でした。作曲も即興演奏も素晴らしく、見事なフーガをいとも簡単に作ってしまいました。モーリッツ・ハウプトマンが高く評価している、ライプチヒのコンサートマスター、 Röntgen さんの息子です≫

★2月5日、Röntgen が「変奏曲とフーガ」を作曲したことについて、
Brahmsは≪どこのどいつか知らんが、「ヘンデル変奏曲」の真似をして、変奏曲を作るなんて、理解できんよ。生意気な奴だ≫と、冗談めかして、暖かく、からかっている様子が、書かれています。


★2月16日、Brahmsは Röntgen のフーガについて、言及している。
≪あれこそフーガ、最高だ。それに引きかえ、ダルベールのフーガは何だ。
俗悪の極み、くずじゃないか≫

★3月24日、グリーグのコンサートを、≪Brahmsと一緒に、お気に入りのRöntgenも聴いていた≫

★11月12日、≪夜はメシュール(声楽家)とRöntgen のコンサート。
午前中、Röntgen がBrahmsに会うと、Brahmsはご機嫌ななめだったそうだ。
Röntgen が、メシュールとSchubert の「白鳥の歌」を、まとめて演奏するといったからだ。これは、まとまった歌曲集ではない、というのがBrahmsの持論。だから、全曲を一度に演奏するなんて「バカのすること」と、突っ込まれたのだ。
Röntgen が「シュトックハウゼンもそうしました」と反論すると、巨匠はこう言ったそうだ。「まああいつは、僕の言うことなんか聞かないからね。いつも駄目だと言っているのに。どうしてもやりたいのなら、構わないけどさ!」

わざわざ、若い Röntgen のコンサートについて、意見をいい、

聴きに行くことからも、Brahmsが、彼に対して、

非常に注目して、評価していことが分かります。








★17日のカワイ表参道 ・ アナリーゼ講座では、

「 平均律第二巻 」 14番 fis-Moll を、勉強しますが、

Röntgen 校訂版を詳しく見ますと、Bach 先生の親切な自筆譜を、

さらにより丁寧に、レッスンして頂いたような気が、しました。


★例えば、 Fuga 冒頭の「subject」には、、下記のように、

cis1 と d2、 そして、fis2 に 「 2 」 の Fingering が、

記されています。

これは、弾きやすい指使いとは、決していえません。







★何故、 「 2 」 を付けたのか、

≪ 弾き難さを強調する ≫ ことにより、

この三つの音を、明確に、意識に焼き付けるという効果を、

狙ったと、思います。


この三つの音をつなぎますと、このように、なります。

驚くべきことに、

4小節から始まる Answer  ( 応答 or 答唱 ) の、

反行形 contrary motion が、現れてきたのです。






★これは、単なる偶然ではありません。

この二つの重要な motif が、その後どう展開されていくか・・・、

講座で、詳しくお話いたします。




★私は、Bartók Béla  バルトーク (1881~1945) 校訂の

 Wohltemperirte Clavier 平均律クラヴィーア曲集について、

その素晴らしさと同時に、厳しさが、前面に出てきているように、

思います。


★一方、Röntgen の校訂版は、

実に明確に、曲の構造が分かると同時に、 “ 詩 ” があるのです。

“ poem ” が、にじみ出てきます。







★Röntgen と Pablo Casals パブロ・カザルス(1876~1973) との、

交友は、よく知られていますが、Casalsは、

「 Röntgen 、エマニュエル・ムーア、ドナルド・トーヴェイは、

まだ世に認められていないが、大変に、優れた作曲家だ。

必ず、彼らの時代が来る 」 と、

「 鳥の歌 」 ジュリアン・ロイド・ウェッバー編 ちくま文庫で、

書いています。


★Sir Donald  Tovey,ドナルド・フランシス・トーヴィー( 1875 - 1940)
  (born July 17, 1875, Eton, Berkshire, Eng.—died July 10, 1940, Edinburgh, Scot.), English pianist and composer, known particularly for his works of musical scholarship.
Tovey studied the piano and counterpoint and graduated from the University of Oxford in 1898. Between 1900 and 1902 he gave recitals of his works in London, Berlin, and Vienna. In 1903 he played his Piano Concerto in London, and between 1906 and 1912 he organized concerts of chamber music at Chelsea. Besides the Piano Concerto his compositions include two string quartets, the opera The Bride of Dionysus (first produced in 1929), and a cello concerto ...
                     Written by The Editors of The Encyclopædia Britannica


Toveyは、 ≪BACH'S THE ART OF FUGUE and A COMPANION TO

THE ART OF FUGUE≫ で有名ですが、

2013年にDOVERから復刊されました。







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● アナリーゼ講座

■日  時 :  2014年  4月 17日(木) 午前 10時 ~ 12時 30分

 ■会  場 :  カワイ表参道  2F コンサートサロン・パウゼ

 ■予  約:     Tel.03-3409-1958

■ 講師 :   作曲家  中村 洋子  Yoko Nakamura

 東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。

日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。

 2003 ~ 05年:アリオン音楽財団 ≪東京の夏音楽祭≫で新作を発表。

 07年:自作品 「 Suite Nr.1 für Violoncello
        無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 などをチェロの巨匠
        Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー氏が演奏した
     CD 『 W.Boettcher Plays JAPAN
                         ヴォルフガング・ベッチャー日本を弾く 』 を発表。

 08年:CD 『 龍笛 & ピアノのためのデュオ 』
    CD 『 星の林に月の船 』 ( ソプラノとギター ) を発表。

 08~09年: 「 Open seminar on Bach Inventionen und Sinfonien
                  Analysis  インヴェンション・アナリーゼ講座 」
                    全 15回を、 KAWAI 表参道で開催。

 09年: 「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

         「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲第 3番 」が、
           W.Boettcher 氏により、Mannheim ドイツ・マンハイム で、
           初演される。

 

10~12年: 「 Open seminar on Bach Wohltemperirte Clavier Ⅰ
                  Analysis 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 アナリーゼ講座 」
                全 24回を、 KAWAI 表参道で開催。

 

10年: CD 『 Suite Nr.3 & 2 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 3番、2番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。

 

     「 Regenbogen-Cellotrios  虹のチェロ三重奏曲集 」 を、
             ドイツ・ドルトムントのハウケハック社
      Musikverlag Hauke Hack Dortmund から出版。

 

11年: 「 10 Duette für 2 Violoncelli
                         チェロ二重奏のための 10の曲集 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

 

12年: 「 Zehn Phantasien für Celloquartett (Band 1,Nr.1-5)
    チェロ四重奏のための 10のファンタジー (第 1巻、1~5番)」を、
      Musikverlag Hauke Hack  Dortmund 社から出版。

 

13年: CD 『 Suite Nr.4 & 5 & 6 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 4、5、6番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。

 

         「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

 

       スイス、ドイツ、トルコ、フランス、チリ、イタリアの音楽祭で、
    自作品が演奏される。

  



 

★私の作品の CD 「 無伴奏チェロ組曲 4、 5、 6番 」

Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、

全国の主要CDショップや amazon でも、ご注文できます

 

 


※copyright © Yoko Nakamura    
             All Rights Reserved
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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■平均律第二巻14番の異例な Fuga こそ、 Fuga の究極の姿■

2014-04-12 16:09:01 | ■私のアナリーゼ講座■

■平均律第二巻14番の異例な Fuga こそ、 Fuga の究極の姿■
~第二巻14番と第一巻24番は、motif など通点が多く双子の関係~
             2014.4.12  中村洋子


 


4月 17日 ( 木 )は、カワイ表参道 で、

「 平均律 第 2巻 第14番 fis-Moll BWV883 Prelude & Fuga 」 の、

アナリーゼ講座を、開催いたします。

これまでの 平均律 第 2巻のアナリーゼでは、 分析する曲を、

その前の曲から、どのように紡ぎ出されてきているか、

それを探る手法が、主でした。


★特に、この第 14番 fis-Moll には、それ以前の曲が、

この曲を目指して、滔々と流れ込み、

ここで仰ぎ見るような頂点を、迎えます。

そのことは、これまで何度も、ご説明してきました。


★しかし、今回は少し、勉強方法を変えてみました。

14番以降の 15、16番などの曲から逆に、14番を俯瞰する形で、

分析してみました

私の講座をお聴きになった方のアンケートで、 「 目からウロコでした 」 と、

お書きになる方が、多いのですが、

逆に見るこの方法は、私にとって 「 目からウロコ 」 でした。


平均律第二巻 Preludeは、 「 Binary form 」  ( 二部構成 ) の曲が、

全 24曲中に、 10曲もあります。

15番 G-Dur の Prelude は、  「 Binary form 」 です。

そして、この 14番の Prelude は、  「 Binary form 」 ではありませんが、

全く  「 Binary form 」 とは、無縁ではないと思います。


★第二巻 14番 Prelude は、三部構成の曲です。

その第一、第二部は、 15番のような  「 Binary form 」  の曲における、

第一部と第二部との関係と、よく似ています。

14番の第一部冒頭は、主調の 「 fis-Moll 」 で始まりますが、

第二部は、その属調  「 cis-Moll 」 で、始まります。

15番も同様に、主調と属調の関係です。




★その部分を見ていました時、私はふっと、

平均律第一巻 24番  h-Moll  が、

第一巻で唯一の  「 Binary form 」 の曲であることを、思い出しました。

そこで、 24番の楽譜を詳細に、再点検してみました。


24番  h-Moll  から見ますと、第二巻14番  fis-Moll  は、

h-Moll の属調です。

逆に、 fis-Moll  から見ますと、 h-Moll  は、下属調となります。

Related Key 近親調なのです。


★実に、驚くべきことなのですが、

第一巻 24番と第二巻 14番について、使われている 「 motif 」 を

調べますと、
同一であったり、酷似しているものが、

多く、見受けられるのです。

さらに、両方の Prelude が、室内楽の性格を有していることも、

よく似ています。

双子の関係である、ともいえるのです


14番の Fuga も、大変に個性的です。

70小節の、膨大な長さに加え、

“ 宇宙というものに形があるならば、こんな形なのかしら ” と、

思わせるほど、 「 秩序 」 、 「 調和 」 、 「 緊密さ 」 に、

満ち満ちています。

「 主題 」 は、Subject と Answer を全部数えましても、

わずか 10回しか、出てきません。

「 ストレッタ 」 すら、無いのです。


10回しか出てこない 「 主題 」 の ≪ 調 ≫ は、

≪ 主調 ≫、 ≪ 属調 ≫、 ≪ 下属調 ≫  に限られています。

Bach ならば、いくらでも 「 調 」 を変幻自在に操り、

多彩な転調や、技巧的で華やかな多声部を、

いかようにでも、展開できるのですが、

この14番では、意図的にほとんど、

≪ 主調 ≫、 ≪ 属調 ≫、 ≪ 下属調 ≫ という

狭い世界に、閉じ込めているのです。


「 Study Fuga 」 あるいは 「 Fugue d'école 」 と呼ばれる、

形が整った Fuga は、 Fuga を勉強するための、

≪ 模範的雛型 ≫ として、

Bach より後の時代に、作られたものですが、

14番 Fuga は、それとは大きく大きくかけ離れています。

 「 Study Fuga 」 を、金科玉条とする人にとっては、

眼をむくような、異例中の異例な 「 Fuga 」 と、いえます。


★しかし、この ≪ 異例の Fuga ≫  こそが、

countepoint 対位法 の華であり、

Fuga の、究極の姿であるのかもしれません


Bach 晩年の平均律第二巻では、それ以前に見られた、

多彩な転調や技巧的な多声部は、影をひそめ、

逆に、厳しく制限された世界へと沈潜し、その結果、

より大きな自由の世界へと、飛翔したともいえます。

その奥深い構造、魅力について、

講座で、詳しくお話いたします。







★余談ですが、岩波書店の「 図書 」 2014年 4月号で、

作家の 「 赤川次郎 」 さんが、立派な随筆をお書きになっています。

≪ 知性が人を人間にする ≫ という題名、

共感するところが多く、あります。


★冒頭で、日本のマスコミの人権意識の低さを指摘した後、
アウシュビッツ収容所の体験を、語っておられます。
赤川さんは、二回訪問されたそうですが、

現地に住む日本人ガイドが、「どの国も、学校が生徒を連れて見学に来る中、日本だけは見学者が減り続けている」と、懸念を語っていた。
若いうちにこそ、「負の遺産」に直接触れる経験をすべきだと思うが、
しかし、そのためにはまず、歴史を学ぶことが大前提である。
                           (略)
大学生の四割以上が「読書時間ゼロ」、ネット上で「自分に都合のいい」書き込みだけを見て、分かった気になる。--
「反知性」ですらない、知への無関心。これこそ独裁者にとっては理想的な若者たちだろう。
最近、インタビューに来た大学生たちに「若いうちにいい芸術に触れてね」と話すと、「でも、コンサートとか高いから・・・。五千円あったら、好きな歌手のライブに行く」という答えだった。

 人間として成長し、成熟するために必要な「学ぶ」という感覚が失われていることに、愕然とした。感動することを知らずに育つことは恐ろしい。
ヘイトスピーチのデモなどに熱狂する人々を見ていると、「興奮」を「感動」ととり違えているとしか思えない。周囲とお互いに興奮をあおり立てることは、自己の内面に湧き出す感動とは全く、別のものだ。
              (略)
人が人を力で支配する。
その快感こそが、世界で戦争が絶えない原因である。いま日本でも、権力をかさに着た様々な暴力が、広がりつつある。・・・止めなければならない。




 ★余談ついでにもう一つ、「図書」の同じ号に、

ピアニスト・随筆家の方が、随筆をお書きになっていました。

そこで、首を傾げざるを得ないような記述が、ありました。


★随筆では、 「 佐村河内事件 」 についての所感を、書かれています。

所感の内容についてはさておき、問題なのは、

クラシック音楽の基本的な理解について、

以下のように、書かれていることです。


ドミソ、シレソ、ドファラという主要三和音にもとづく「調性音楽」が、
確立されたのは、ハイドンやモーツァルトの時代である。シューマンや
ショパンなどロマン派の時代にだんだん崩れて、十九世紀半ば、
ワーグナーの出現によって破壊され、フランス近代のドビュッシーによって
引導を渡された。新垣氏のいう「現代音楽」が始まるのは、二十世紀初頭、
シェーンベルクに代表される新ヴィーン楽派によって調性のない音楽が作曲され、十二音技法という新たなシステムが考案されてからである。それからは、偶然性の音楽とか図形楽譜とかミュージック・コンクレートとかコンピューター音楽とか・・・・・・革新的な実験をすすめるあまり、一般大衆をどんどんおきざりにしてしまった。


★上記の記述に、明確な誤りが多々ございますので、指摘します。

クラシック音楽に対する、誤った理解を与えてしまいますので、

あえて、列挙いたします。


「 調性音楽の確立 」という場合の「 確立 」という語は、

かなり漠然とした概念で、確立というならば、少なくとも、

Bach 以前に、遡ります。

決して、≪ハイドンやモーツァルトの時代≫では、ありません。

調性音楽の確立はともかく、「 調性音楽を完成 」 させ、

その崩壊まで内包し、見据えていたのが Bach であることは、

厳然たる事実です。

私のこれまでのブログを、お読みいただいている皆さまは、

よく、お分かりでしょう。

これは、個人の感想云々ではありません。


Richard Wagner リヒャルト・ワーグナー(1813~1883) も、

実に、豊かで分かりやすい 「 調性音楽 」 なのです。

Claude  Debussy  クロード・ドビュッシー (1862~1918) は、

 「 調性音楽 」 の極致である、美しい音楽を創作しました。

Debussy は、深く読み込みませんと、

ただのムード音楽になってしまうことは、
当ブログで、

指摘済みのことです。


Debussy や Maurice Ravel モーリス・ラヴェル

(1875~1937)が、
同時代の “ 印象派風ムード音楽 ” と異なり、

歴史の審判を経て、生き残っているのは、

Bach の確立した調性原則に、揺るぎなく立脚しているからです。




≪ シェーンベルクに代表される新ヴィーン楽派によって調性のない音楽が作曲され、十二音技法という新たなシステムが考案されてからである ≫

おそらく、シェーンベルクの作曲技法を、ほとんど理解されていないようです。

シェーンベルクの作曲技法の土台は、

Johannes Brahms ブラームス (1833~1897)に、あります。

そして、シェーンベルクの、いわゆる 「 12音技法 」 は、

Bach の  「 countepoint 対位法 」  の技法を、極限まで拡大したうえで、

どう創作するか、という作曲法です。

ですから、これは 機能和声の機能=function から、大きく離れますが、

厳然たる   「 countepoint 対位法 」  に基づいて書かれており、

調性から完全に離脱しているとは、いえないのです

ときどき、考えるのですが、どのように調性から逃れようとしても、

例えば、オクターブを12に分割した音を、ピアノで奏している限り、

調性は、厳然と浮かび上がってくるものなのです。


楽器を離れて、偶然性に身を委ねるならば、そこには、

harmony 和声も 、countepoint 対位法 も、存在しないでしょう。

荒涼たる、知の敗北の世界でしょう。

赤川次郎さんが先ほどの文章で、危惧している事態と、

共通点があると、思います。








★もっと細かいことですが、

≪ ドミソ、 シレソ、 ドファラ という主要三和音 ≫ と、

書かれていますが、

ドミソは、 C-Dur  の主和音の 基本形、

シレソ は、C-Dur の属和音の 第 1転回形、

ドファラは、C-Dur の下属和音の 第 2転回形です。



★筆者は、おそらく  「 C-Dur の主和音、属和音、下属和音 」 を、

ドミソ、シレソ、ドファラと、されたのでしょうが、

なぜ、基本形と転回形をごちゃまぜにしているのか、

「 調 」 を設定しないで 「 音名 」 のみを書きましても、

何調の、どういう機能和声であるかが、確定できません。

ドミソは、 F-Dur の属和音でもあり、 G-Dur の下属和音でもあり、

いかようにも、解釈できます。

「 和声 」 の基本を、ほとんど理解されていないようです。

 

★「 岩波書店 」という日本を代表する出版社、

文化的、知的権威の象徴のような出版社が発行する、

「 図書 」 という雑誌。

そこに、赤川さんのような素晴らしい、

批評精神に満ちた随筆が、掲載される一方、

その隣
りに、基本的な誤りが多過ぎる文章が、

普通の顔をして、並んでいる

いまほど、立派な肩書、経歴、宣伝、レッテルに、

眼を眩ませられることなく、その真贋を、

自分の眼で、全身全霊で確かめる必要に、

迫られている時代は、
ないのかもしれません。


 

 

 

 

 -------------------------------------------------------

■日  時 :  2014年  4月 17日(木) 午前 10時 ~ 12時 30分

 ■会  場 :  カワイ表参道  2F コンサートサロン・パウゼ

 ■予  約:     Tel.03-3409-1958

■ 講師 :   作曲家  中村 洋子  Yoko Nakamura

 東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。
日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。

 2003 ~ 05年:アリオン音楽財団 ≪東京の夏音楽祭≫で新作を発表。

 07年:自作品 「 Suite Nr.1 für Violoncello
        無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 などをチェロの巨匠
        Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー氏が演奏した
     CD 『 W.Boettcher Plays JAPAN
                         ヴォルフガング・ベッチャー日本を弾く 』 を発表。

 08年:CD 『 龍笛 & ピアノのためのデュオ 』
    CD 『 星の林に月の船 』 ( ソプラノとギター ) を発表。

 08~09年: 「 Open seminar on Bach Inventionen und Sinfonien
                  Analysis  インヴェンション・アナリーゼ講座 」
                    全 15回を、 KAWAI 表参道で開催。

 09年: 「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

         「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲第 3番 」が、
           W.Boettcher 氏により、Mannheim ドイツ・マンハイム で、
           初演される。

 

10~12年: 「 Open seminar on Bach Wohltemperirte Clavier Ⅰ
                  Analysis 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 アナリーゼ講座 」
                全 24回を、 KAWAI 表参道で開催。

 

10年: CD 『 Suite Nr.3 & 2 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 3番、2番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。

 

     「 Regenbogen-Cellotrios  虹のチェロ三重奏曲集 」 を、
             ドイツ・ドルトムントのハウケハック社
      Musikverlag Hauke Hack Dortmund から出版。

 

11年: 「 10 Duette für 2 Violoncelli
                         チェロ二重奏のための 10の曲集 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

 

12年: 「 Zehn Phantasien für Celloquartett (Band 1,Nr.1-5)
    チェロ四重奏のための 10のファンタジー (第 1巻、1~5番)」を、
      Musikverlag Hauke Hack  Dortmund 社から出版。

 

13年: CD 『 Suite Nr.4 & 5 & 6 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 4、5、6番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。

 

         「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

 

       スイス、ドイツ、トルコ、フランス、チリ、イタリアの音楽祭で、
    自作品が演奏される。

 




 

 ★私の作品の CD 「 無伴奏チェロ組曲 4、 5、 6番 」

  Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、

   全国の主要CDショップや amazon でも、ご注文できます。

 ★上記の 楽譜 & CDは「 カワイ・表参道 」 http://shop.kawai.co.jp/omotesando/  

 「アカデミア・ミュージック 」 https://www.academia-music.com/ で販売中

 

 



 

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■Mozart Piansonata B-Dur KV.333の自筆譜を、Bartókはどう見たか■

2014-04-02 18:02:03 | ■私のアナリーゼ講座■

■Mozart Piansonata B-Dur KV.333の自筆譜を、Bartókはどう見たか■
                           2014.4.2      中村洋子

 

 

★4月に入りました。

柳の新芽が、春風にやさしくそよいでいます。

1日から、消費税が3%上がり、8%になってしまいました。

これを契機に、社会全体が大きく変化していくような、

漠然とした、予感がします。


★前々回ブログで、Edwin Fischer エドウィン・フィッシャーが、

天才ジョグラーのエンリコ・ラステッリの技を見て、

Mozart に思いをはせたことを、書きました。

久しぶりに、 Mozartの Klaviersonate B-Dur  KV.333 の、

≪ 自筆譜 ≫ を、Edwin Fischer 版 と、

 Bartók Béla  バルトーク (1881~1945) 版を、

手掛かりに、読み込んでみました。


★いままで、あまり気に留めていませんでしたが、

Bartók版は、第 1楽章 冒頭 4小節の左手部分を、

Mozart はすべて、八分音符で記譜していますのに、

下記の様に、1小節目の二つの b  ( 変ロ音 ) を、

付点四分音符と四分音符に、変更していました。





★同様に、2小節目の 二つの c1 ( 一点ハ音 ) を、

付点四分音符と、四分音符で記し、

3小節目の二つの  f  ( へ音 ) を、付点四分音符と四分音符にし、

4小節目 も二つの b  ( 変ロ音 ) を、付点四分音符と四分音符に、

変えて、記譜しています。









★その理由について、私は以前は、ぺダルの効果を狙ったためと、

思っていました。

しかし、 Mozart の自筆譜を読みますと、

Mozart は下記のような、
記譜をしています。




★左手の一見、とても簡単な分散和音とみられる

この部分は、実は、二声部に分割されていることが、

分かってくるのです。

バスとテノール声部ではなく、

テノールとアルト声部、といえるでしょう。


★この Sonata の冒頭は、右手が担当するソプラノと、

左手が担当する内声のアルト、テノールの下声部から成り、

バスはお休みしている、
ということになります。

そうしますと、これは、ピアノ用の曲としての発想ではなく、

室内楽あるいは、Orchestra の曲として、

発想された曲となります。


★つまり、Bartókは、そこまで読み解き、

自分の校訂版を、作っているのです。

この考え方は、 4月 17日 ( 木 )に、カワイ表参道で開催します、

「 平均律第 2巻 第14番 fis-Moll 」  のアナリーゼ講座で

お話しする予定の、

≪ 独奏鍵盤作品を弾く場合、どのような楽器を想定し、

音色やエクスプレッションを、どう設定するか ≫ という

Thema テーマ と、重なってきます。










★Edwin Fischer 版に目を移しますと、そこには、

驚くべき大量の Fingering が、記されています。

一楽章冒頭のアウフタクトを含む 4小節で、

Fingering が付けられていないのは、

3小節目左手最後の三つの八分音符   f  -  c1  -  es1  と、

四小節目の、左手最後の三つの八分音符   b  -  d1  -  f1  のみです。

それ以降も、ほとんど全部の音符に Fingering が、

びっしりと、書き込まれています。









★Fischer版 、 Bartók版ともに、

曲頭の右手 g2  ( 二点ト音 ) に、 「 5 」 の指を、

指定しています。

これは、彼らが Mozart の counterpoint 対位法を、

どのように、捉えていたかを解く、カギとなります。


★Fischer は、 g2 - f2 - es2 - d2 - c2 

( ソ ファ ミ♭ レ ド ) に、「
 5  4  3  2 1 」  と、

Fingering を、書き込んでいます。

これは、 easy to play のための指使いでないことは、明白です。


★そして、冒頭の左手開始音楽である  b - d1 - f1  ( シ♭ レ ファ ) に、

Fischer は、 「  5  3  1 」  の Fingering を指定。

B-Dur でありながら、右手では  「  ソ ファ ミ♭ レ ド 」  の、

5度下行順次進行 motif モティーフ 。

左手は、主和音を形成する   「  シ♭  レ  ファ  」  の、

5度上行跳躍進行。


★鮮やかな、 countepoint 対位法で、曲そのものが、

始まっていくのです。

二人の天才は、それを Fingering で見事に教えているのです。








★現在、この二つの校訂版は、需要が減ったため、

かなり入手しずらくなっています。

つまり、演奏する側に、それを読み解く力がもう、

無くなっているため、購入しようとする人が減り、

その結果、このような金字塔のような Edition が、

忘れ去られようと、しています。


★Fischerが、この Mozart Sonataの countepoint 対位法を、

解明し尽したエディションを、成したうえで、

天才ジョグラー・ラステッリの演技について、

≪ 彼は地上のすべての重力を克服していました ≫ と書いた、

その重みを、感じるべきです。

Fischer は、 countepoint 対位法 の構造を、

完全に踏まえたうえで、

重力を克服したような、真に軽やかな演奏を、

目指したのかもしれません。


★現代の Mozart Piano 演奏の多くは、軽く心地よい、

聴き知ったメロディーが、

指先で、ころころと転がされるだけです。

countepoint 対位法 の構造に、立脚しているとは、

言い難い演奏が、多いのです。

一種のムード音楽的な演奏、ともいえます。

 




 

  ★私の作品の CD 「 無伴奏チェロ組曲 4、 5、 6番 」

Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、

全国の主要CDショップや amazon でも、ご注文できます

 

 



※copyright © Yoko Nakamura    
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