音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■■ ブラームスのクラリネットトリオ ■■

2007-12-24 16:28:44 | ★旧・私のアナリーゼ講座
2007/10/3(水)

★ブラームス晩年の「ピアノ小品集」を、理解するためには、

「クラリネットトリオ・Op.114」(1891年作曲、翌年出版)を、勉強する必要があります。

なぜなら、晩年のピアノ小品集は、Op.116、117、118、119だからです。

ちなみに、Op.115は、クラリネット五重奏曲、

Op.120は、クラリネットソナタ第一番、第二番です。

ピアノ小品集は、クラリネットの室内楽作品に囲まれて、作曲されています。


★まずは、演奏を聴き、つぎに楽譜を参照してください。

ブラームス独特の、3度音程、4度音程を学ぶことができ、

その音色は、ピアノ演奏に応用することができます。

音程につきましては、ベートーベンの影響が、とても強く出ていますが、

それを突き抜け、ブラームスでしかない世界に到達しています。


★余談ですが、ブラームスの3度の関係の転調は、

シューベルト、シューマンから受け継がれています。

彼らは、ベートーベンの「ワルトシュタイン」ソナタから、

その手法を学んだように、私には思われます。


★クラリネットソナタや、五重奏曲は、比較的、耳にする機会が多いと思います。

しかし、それに匹敵する傑作「クラリネットトリオ」は、あまり演奏されません。

なぜでしょうか。

これは、ピアノを伴った三重奏曲の難しさにあります。

ヴァイオリン、チェロ、ピアノの三重奏曲も、同様に

ピッチの問題を含め、非常に難しい編成です。

名手3人が弾いても、なかなか円満には行きません。

ヴァイオリンの代わりに、クラリネットが入るクラリネットトリオは、

クラリネットが、ヴァイオリンと比較して、音が柔らかく、

音量バランスの問題があるため、ますます演奏困難になります。

超一流の3人でないと、とても音楽になりません。


★「トリオOp.114」の愛聴盤は、≪BRILLIANT CLASSICS 93156≫です。

クラリネット=カール・ライスター、チェロ=ヴォルフガング・ベッチャー、

ピアノ=フェレンツ・ボーグナー、による極め付けの名演奏です。

この夏、銀座・山野楽器で、この輸入版CDを発見しました。

後日「素晴らしい演奏のCDです、贈呈するのでもっと、仕入れてください。」と

お店の方に、お願いしておきました。

きょう、山野楽器に行きましたところ、BRILLIANT CLASSICS のコーナーに、

この三重奏が置いてあるだけでなく、室内楽やクラリネットのコーナーにも、

並べられており、とても嬉しくなりました。


★輸入版ですので、簡単には手に入らないと思いますが、

山野楽器で入手できます(宣伝する訳ではありませんが・・・)。

このシリーズで、私の愛聴盤は、テレサ・ベルガンサの「スペイン歌曲名唱集」、

シューベルト「室内楽曲集」、モーツァルト「室内楽作品集」、

ブラームス「室内楽作品集」です。

ベルガンサ以外は、ベッチャー先生もお弾きになっています。


★来週末、ベッチャー先生が私の作品を録音されました「CD」が、出来上がります。

≪ベッチャー、日本を弾く  Wolfgang Boettcher Plays Japan≫です。

ここまで、漕ぎ着けるのに、大変な苦労がありました。

しかし、いろいろな方のお手伝いで、素晴らしいCDに仕上がりました。

マスタリングも、奇跡的に最高の技術をお持ちの方に、お願いすることができました。

彼は、ピアティゴルスキーが、50年前に残したドボルザーク「チェロ協奏曲」を、

リマスタリングで“きょう録音した”かのように、蘇らせるなど、

世界的にその実績が知られた方です。

NYのスタジオに残されていたテープは、いまにも切れそうな状態だったそうです。

人類の遺産のような素晴らしい演奏が、彼の手によって再び命をとりもどしました。

(ピアティゴルスキーは、知る人ぞ知るチェロの巨匠、フルトベングラー時代の

ベルリンフィルで、首席チェリストを務めたこともある伝説的な存在です)


★ベッチャー先生のCD≪ベッチャー、日本を弾く≫も、彼の渾身の努力で、

音質の調整などを、最高の状態に仕上げていただきました。

CD-Rからの製作でしたが、溜息の出るような素晴らしい音質を引き出し、

CD製作そのものも芸術作品となりました。

チェロの神様が手を差し伸べてくださったのでしょう。

このCDについては、また、ご案内いたします。



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