音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■「 シンフォニア 3番 」に現れる 「 半音階進行 」 ■

2011-01-27 01:29:29 | ■私のアナリーゼ講座■

 ■「 シンフォニア 3番 」に現れる 「 半音階進行 」 ■
                   2011.1.27 中村洋子

 


★1月27日は、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト

 ( 1756年1月27日 - 1791年12月5日 )の、お誕生日です。


★明28日は、横浜みなとみらい・カワイで、

「 インヴェンション & シンフォニア 3番 」 の、

アナリーゼ講座を、開きます。


★「 シンフォニア 3番 」 は、25日に表参道講座で、

お話しました 「 平均律10番 ホ短調 フーガ 」 と、

大変、深い関係にあります。

1週間の間に、両方を学ぶ機会が得られたことにより、

新たに、ハッと気づくものがあり、私にとって、

とても、幸運でした。


★この「 平均律10番 フーガ 」 は、

「 2声 」 で、大変に、短いのですが、

平均律 1巻のなかで、最もドラマティックな内容をもち、

≪「 半音階進行 」 が、ここから明確に姿を表している ≫、

という意味で、大変に、重要な曲です。


★バッハが、このフーガで追及したことの一つは、

「 全音階進行 」 と 「 半音階進行 」 の対比です。


★「 シンフォニア 3番 ニ長調 」 は、一見すると、

常に、全音階で進行しているように、みえます。


★しかし、エドウィン・フィッシャーの 「 校訂版 」 で、

詳しく、フィンガリングを検討しますと、

その中に隠されている、重要な 「 半音階 」 について、

彼が、喚起を促しているのが、よく分かります。


★一例を挙げますと、

3小節目バスの最後の音 H から → 4小節目・第1拍目の Ais。

2拍目最後の Aから → 3拍目の Gis。

4拍目最後の Gから → 5小節目の第 1拍目 Fis。

これらを繋げますと、「 H Ais A Gis G Fis 」

という半音階が、見事に、浮かび上がってきます。


★それを、フィッシャーは、「 1 - 2、( 2 ) - 3、1-( 2 ) 」

という、フィンガリングを、指定しています。

(  )について、フィッシャーは、

フィンガリングを、指定していませんが、

「 2指 」 であると、思われます。


★これにより、この半音階をどのように弾けばいいか、

という、示唆が、得られるのです。


★この半音階があってこそ、 「 全音階進行 」 や、

テーマのなかに、含まれる  「 6度の跳躍進行 」 が、

生き生きと、輝いてくるのです。

その点について、詳しく講座でお話いたします。

 

                                            ( 草の花、木の実 )

▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

 

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■第11回 平均律・アナリーゼ講座は、2月18日 ( 金 ) です■

2011-01-25 17:38:16 | ■私のアナリーゼ講座■

 ■第11回 平均律・アナリーゼ講座は、2月18日 ( 金 ) です■

             2011.1.25     中村洋子

 

★本日は、カワイ・表参道での、

ことし初めての 「 平均律・アナリーゼ講座 」 でした。

いつもながら、皆さまの熱気のなかで、

私自身、納得のいく講座となりました。             

 

★モーツァルトが、クリスチャン・バッハなど、

大バッハの息子たちから、多くのことを、

学んだことは、よく、知られていますが、

モーツァルトの作品を、凝視しますと、

まぎれもなく、大バッハ=セバスチャン・バッハ、

その人が、現れてくるのです。

本日は、その関係を、十分に、

お伝えできたと、思います。

 

★次回は、2月18日 ( 金 )、

平均律 1 巻 11番の 前奏曲とフーガです。

 =================================

● 中村洋子「バッハ 平均律クラヴィーア曲集 アナリーゼ講座」

▼第 11回  第 1巻 第 11番  ヘ長調 前奏曲 と フーガ
≪ Brahms の“ Invention ”である「Walzer fur Klavier Op.39」と、
平均律 11番との深い関係 ≫

日時:2011年 2月 18日(金) 午前 10時 ~ 12時 30分
会場:カワイ表参道  2F コンサートサロン・パウゼ
会費:3,000円  ( 要予約 )  Tel.03-3409-1958 

 

★平均律「 第 11番 へ長調 前奏曲 」は、

「 インヴェンション 12番 イ長調 」と、密接な関係にあります。

両方とも 8分の 12拍子ですが、これを、

平坦な 4拍子とみるべきでは、ありません。

その解釈を、演奏にどのように生かすか、

詳しく、ご説明します。

★11番フーガは、舞曲の性格を宿しています。

その 3拍子のリズムと、モティーフを基に、ブラームスは、

有名な「Walzer fur Klavier Op.39」の 15番を、

作曲しています。

その類似に、きっと驚かれることでしょう。

今回は、15番の独奏版を取り上げます。

 

★この講座で、これから時々、ブラームスを取り上げます。

彼の曲を少し聴くだけで、すぐにブラームスと分かります。

何故分かるのか?

その独特な“ブラームストーン”を、構成している要素が、

実は、バッハそのものなのです。

===========================

● 今後のスケジュール
第 12回 3月 30日(水) 第 12番 へ短調 前奏曲&フーガ
     午前10時~12時30分 
 

■ 講師:作曲家 中村 洋子
東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。
2003年~ 05年:アリオン音楽財団《東京の夏音楽祭》で新作を発表。
07年:自作品「無伴奏チェロ組曲第 1番」などをチェロの巨匠W.ベッチャー氏が演奏したCD『 W.ベッチャー日本を弾く 』を発表。
08年:CD「龍笛&ピアノのためのデュオ」、
       CD  ソプラノとギターの「 星の林に月の船 」を発表。
08~09年:「 バッハのインヴェンション・アナリーゼ講座 」全15回          を開催。
09年10月:「 無伴奏チェロ組曲第 2番 」が、W.ベッチャー氏により、        ドイツ・マンハイムで初演される。
10年:「 無伴奏チェロ組曲第 1番 」が、ベルリンの
       リース&エルラー社 Ries &Erler Berlin から出版される。
     : CD『 無伴奏チェロ組曲第3番、2番 』 W.ベッチャー演奏を
        発表。
     :「 レーゲンボーゲン・チェロトリオス( 虹のチェロ三重奏曲集)」が
    、ドイツ・ドルトムントのハウケハック社Musikverlag Hauke    Hack社から出版される。
        スイス、ドイツ、トルコの音楽祭で、自作品が演奏される。

                                 ( 白梅 )
                               
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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■平均律 1巻 10番ホ短調と、チャイコフスキーとの意外な関連性■

2011-01-24 20:00:54 | ■私のアナリーゼ講座■

 ■平均律 1巻 10番ホ短調と、チャイコフスキーとの意外な関連性■
            2011.1.24  中村洋子

 


★蝋梅の、透き通った香りに、

紅梅の妖艶な香りが、混じり合ってきました。

もうすぐ、春の訪れです。


★平均律 1巻 10番 ホ短調・前奏曲の初稿は、

「 Wilhelm Friedemann Bach のためのクラヴィーア小曲集 」

(フレーデマン・小曲集)に、収録されています。

平均律 1巻 10番は 41小節でできていますが、

この初稿は、ほぼ半分の 23小節で、打ち切られています。


★決定稿である 「 平均律 」 の、前奏曲の前半は、

非和声音で飾られた、ソプラノの旋律が、

まるで、紅梅の香りがまとわりつくように、

綿々と、歌われます。


★それに対し、初稿では、

上声は、 1拍目と 3拍目に、 8分音符の 3和音が、

装飾されることなく、単独で、

ポツリポツリと、置かれるだけです。

初々しいのですが、

素っ気なく、聴こえないこともないのです。

これは、おそらく、バッハが息子やお弟子さんの教育用に、

この初稿を用いて、どのように旋律を装飾するかを、

レッスンしたのだと、私は思います。


★決定稿の 平均律 10番前奏曲は、

バッハによる、“ 模範解答 ”、非常に美しい解答である、

といってよいでしょう。

明日のアナリーゼ講座では、非和声音のいくつかについて、

分かりやすくご説明し、バッハがそれを、どのように使い、

どう演奏したらよいか、お話します。

 


★一例を挙げますと、前奏曲 10番の

 1小節目の和声音 「 E 」 を、

「 E   Fis  E  Dis  E  」と、装飾しています。

この 「 Fis と Dis 」が、

「 刺繍音 」 と言われる、非和声音です。

フランス語の  「 broderie 」 の、直訳のようです。

英語では 「 auxiliary note  =  補助的な音 」 、

ドイツ語では 「 Nebennote  =  隣接音 」 または、

「 Hilfsnote  = 補助音 」 とでも訳せます。

楽語の訳は、的をえないものも多いのですが、

この 「 刺繍音 」 は、的確な訳であると思います。


★和声音 「 E 」 を、布地に譬えますと、

上の 「 Fis 」 と、下の 「 Dis 」 を、

刺繍針で、縫うイメージです。

このため、1小節目は、この  “ 刺繍針 ”  で、

アタックを付けずに、レガートで弾くような、

演奏法が、妥当です。


★しかし、後の小節では、この刺繍音本来の演奏法と、

曲想とが、一致していないところが、あります。

なぜ、バッハはそのように作曲したのか?

それを、講座で解説いたします。


★10番のフーガは、平均律で、唯一の 「 2声 」 フーガです。

テーマ 1拍目の、主和音の跳躍進行と、2拍目、3拍目の半音階進行を、

気持ちよく、 “ 弾き飛ばす ” ように、

演奏したい誘惑に、かられ方もいらっしゃると思いますが、

そのように弾きますと、潤いのない、

カサカサとした曲に、なってしまいます。


★このフーガの和声進行を、ジックリと眺め、骨格を研究しますと、

チャイコフスキーの 「 交響曲 6番 悲愴 」の、

和音進行が、浮かび上がってきます。

 


★最も、ロシア的、チャイコフスキー的と言われる

「 和音 」 の源泉が、実は、 「 バッハ 」 にあったのです。

明日は、ピアノで、その部分の音を出しながら、

耳と理論とで、実感し、納得していただきたい、と思います。


★また、モーツァルトのピアノソナタ KV310 の、

「 自筆譜 」 を見ますと、

左手の 「 repeated note 」 の和音を、

モーツァルトは、多声部で、感じていることが、

よく、分かります。

2小節目の 「  A  H  D  E  」 の和音を、現在の実用譜では、

ただの 「 一塊の音 」 のように、記譜しています。


★しかし、モーツァルトは、「 A 」と 「 H D 」
 
「  E  」 の、少なくとも 「 3声 」 で、

捉えられるように、親切に、記譜しています。

これが、何を意味するのか?

バッハの平均律と、どう関連しているのでしょうか。


★モーツァルトも、チャイコフスキーも、

バッハなくしては、彼らの作品が、

生み出されなかった、という、

ごく当たり前の、結論に行き当ります。

                       ( 紅梅、仏さま、お月さま )

▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

 

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■バルトーク校訂の素晴らしい モーツァルト・ピアノソナタ  KV310■

2011-01-23 23:10:29 | ■私のアナリーゼ講座■

  ■バルトーク校訂の素晴らしい モーツァルト・ピアノソナタ  KV310■
                          2011.1.23    中村洋子

 


★昨日、モーツァルトを勉強するため、

私が考える最良、最短の方法を、

書きましたが、その追加です。


「 エドウィン・フィッシャーの校訂版 」 とともに、

バルトークが校訂しました

「 モーツァルト・ピアノソナタ全集 」 も、

是非、フィッシャー版とともに、学んでください。


★両方を見比べますと、主張していることが、驚くほど似てます。

フィッシャーは、それを  「 フィンガリング 」 により、表現しますが、

バルトークは、 「 ぺダリング 」 で、示唆しています。


★「 バルトーク校訂のモーツァルト 」 に対し、

そのぺダルを踏んでいる長さや、タイミングを見て、

拒否反応を、示された方が、いらっしゃいました。

“ 時代遅れで、使いにくい版なのでは・・・、

もっと新しく、弾き易い、いい楽譜があるのでは・・・ ”

と、思われたのでしょう。


★フィッシャーの大変に弾き難い  「 指使い 」 は、

実際には、 ≪ その指で弾きなさい ≫

という指示ではないのと、同様に、

バルトークのペダル指示は、

≪ そのようにペダルを踏みなさい ≫

という意味では、ない のです。


★そこを理解しませんと、この二人の崇高な校訂版が、

使いにくい、価値の低いものと、誤解されてしまいます。

バッハやモーツァルトの、真の校訂版は、

バッハやモーツァルトに、近い能力の、

大音楽家にしか、出来ないでしょう。


★安易に出版された 「 弾き易い 」 校訂譜が、

たくさんはびこり、本物のフィッシャー版などが、

隅に追いやられているのは、悲しいことです。

 

★例えて言えば、このフィッシャー版やバルトーク版は、

最高級の、スポーツカーのようなもので、

ドライバーに対し、非常に高い操縦能力と知性を、

求めているのと、同じです。

逆に、この版が、ピアニストを選ぶのかもしれません。

 


★バルトーク版の KV 310 は、

28小節目 から 30小節目  1拍目までの  「 バス音 」  に、

小さく、 「 テヌート 」  が付されています。

このテヌートにより、このソナタの重要な、

「 2度のモティーフ 」  が、浮かび上がってきます。


★また、39小節目の 3拍目から 4拍目の間に、

バルトーク版は、上声、下声ともに、

ごく小さな縦線を、わざわざ書き込んでいます。

3拍目でフレーズが終わり、 4拍目から新しく始まる、

ということを、この縦線で、示しているのです。

その結果、 39小節目の 4拍目から、

40小節目の 1拍目にかけ、

同じ  「 2度のモティーフ 」  が、浮かび上がります。


★大作曲家バルトークによる、

モーツァルトという場を借りた、創作物としての、

英知に溢れる、校訂版です。


★バッハの平均律 1巻 10番前奏曲 3小節目の、

1拍目「 Dis 、E 」、 2拍目 「 Fis、E 」  「 G、Fis 」 に、

バッハ自身が、 「 スラー 」  を書き込んでいます。

このスラーが、何を意味するのか?

もし、スラーがなければ、

どのように意味が、変わってくるのか。


★モーツァルトは、彼の天才で、

このスラーを、どのように自分のものとして、

吸収したか・・・。

これを、25日のアナリーゼ講座で、お話いたします。

 

 

              ( 蝋梅、紅梅、お地蔵さま、狛犬?  )

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■モーツァルト・ピアノ作品の音階は、真珠のように粒を揃えて弾くものか?■

2011-01-22 18:27:24 | ■私のアナリーゼ講座■

■モーツァルト・ピアノ作品の音階は、真珠のように粒を揃えて弾くものか?■
                                      2011.1.22 中村洋子


★ 1月 25日 ( 火 ) に、開催します、

「 第 10回 平均律・アナリーゼ講座 」 のために、

モーツァルト・ピアノソナタ KV 310 イ短調 を、勉強中です。


★その方法は、≪ モーツァルトの自筆譜 ≫ を読み込み、

≪ エドウィン・フィッシャー校訂 「 モーツァルトソナタ全集 」 ≫ の、

フィンガリング から、フィッシャーの解釈を探り、

≪ ヴィルヘルム・ケンプの演奏 ≫ を、CD で聴くことです。

私にとって、これがモーツァルトに近づくための、

最短にして、最良の勉強法です。


★巷間  「 モーツァルト弾き 」  と、称されるピアニストの、

演奏を聴きますと、まるで真珠のネックレスのように、

粒を揃えて、艶々と音階を弾き、

全体を、当り障りのない小奇麗さに、整えている、

という印象が、私にはあります。


★実際、ピアノのレッスンでも、とにかく、

「 音の粒を揃えて、優美に弾く 」  ことを主眼に、

練習されている方も、多いかもしれません。


★しかし、バッハを勉強した目で、

モーツァルトの作品を、眺めますと、

決して、「 優美で、中庸な 」 音楽ではないのです。


★その証拠が、自筆譜やフィッシャーの校訂版楽譜、

さらに、ケンプの演奏から、見事に、浮かび上がってきます。


★「 モーツァルト弾き 」 のピアニストに、

欠けているものは、何か?

それは、モーツァルトの精緻な 「 対位法 」 への、

理解力の不足です。

対位法 へのアプローチが欠けている ため、

のっぺらぼうで、平板な音楽 に、なってしまうのです。


★この「対位法なし」のモーツァルトは、

ムード音楽に、近付いてしまう危険性があります。

 

 

★自筆譜を見ますと、例えば、

1楽章の左手部分は、1小節目から 5小節目冒頭の和音までが、

「 テノール譜表 」 で、記譜されています。

それ以降は、「 バス記号 」 を使って、記譜しています。


★9小節目から、再び、テノール譜表に戻り、

14小節目の2拍目から、バス記号が、使われます。


★モーツァルトのピアノ作品は、ト音記号とバス記号による、

いわゆる 「 大譜表 」 で記譜されていると、

思われている方も、いらっしゃるかもしれませんが、

この有名な曲の、始まりだけでも、

こんなに音部記号が、めまぐるしく変化しています。


★これは、“  加線を使わずに記譜するための、合理的な方法で、

それに意味を見出すことは、無意味である ” 、

という考えもあるかとは、思いますが、

素直に、≪ テノール譜表のところは、テノール声部 ≫、

≪ バス譜表は、バス声部 ≫ と、考えますと、

“ 左手はテノールとバスの 2声部で、作曲している ”  と、

納得が、いきます。

 


★その箇所も含めて、ケンプの演奏を聴きますと、

モーツァルトの室内楽や、交響曲と同様に、

多声部の豊かな音楽と意識して、弾いているのが、

よく、分かります。


★さらに、E ・フィッシャーの、フィンガリングを見ますと、

右手 1小節目冒頭の、Disを 2指、

Eを 1指、としています。

その後、3回続く E音の 1個目を 3指 、

3個目を 5指と指定し、

4拍目の C 、 A の A音のみ 2指と、しています。


★その理由については、講座で詳しくお話いたしますが、

この指定により、7小節目の右手冒頭 Dis を、

4指にした意味が、明白に理解できます。

要は、7小節目冒頭 Dis音と、

それに続く 2拍目の E音 によってできる 「 Dis  E 」

というモティーフは、冒頭 1小節目の  Dis  E  の、

≪ 拡大形 ≫ なのです。


★3小節目の右手 3拍目と 4拍目の、

「 ミ ファ ミ レ ド シ ラ 」は、

ファを 4指、シを 3指と、フィッシャーは指定しています。


★ここを、じっくり考えますと、

音階に対する、モーツァルトの基本的な考え方が、

はっきりと、分かってくるのです。

しかも、それは、バッハと全く同じ なのです。


★25日の講座では、その点を詳細にご説明するとともに、

バッハの 「 平均律 10番ホ短調 」 の前奏曲とフーガ が、

この 「 KV 310 イ短調 」 に、大河のように、

流れ込んでいることを、お示しします。

 

 

                                               (  おみくじ、仏さま、椿と蠅、紅梅  )
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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■ 中村富十郎さんのご冥福をお祈りいたします ■

2011-01-11 16:14:36 | ■楽しいやら、悲しいやら色々なお話■

■ 中村富十郎さんのご冥福をお祈りいたします ■
                   2011 .1.11 中村洋子

 


★遅くなりましたが、明けまして、おめでとうございます。

冬空に、蝋梅が、芳しい香りを漂わせています。

ことし一年、どうか明るく、平穏な年でありますように。


★年末、年始は、ベッチャー先生に演奏していただきます、

「 無伴奏チェロ組曲 4番 」 と 「 5番 」  の作曲に、

没頭でした。

新年に、先生から頂きましたお手紙によりますと、

ベルリンは、最高気温が 0度、最低がマイナス 15度だそうです。

温暖な日本と異なり、大地は凍てつき、

花も草もない、厳しいドイツの冬。

生きる喜びが湧き上がってくるような、真の音楽が、

生活の中に、なくてはならないのでしょう。

先生は、イスタンブールでの、ブラームスの二重協奏曲、

ハンブルクでの、ドイツ人作曲家のアリベルト・ライマン、

Aribert Reimann ( 1936年~ ) の演奏会を控え、

お忙しいそうです。


★また、3月31日には、ドイツの 「 フランケンタール 」で、

お姉さまのピアニスト、ウルズラ・トレーデ=ベッチャー

Ursula Trede-Boettcherさんと、

私の、チェロとピアノのための二重奏曲、

「 Einleitung, Thema und Variationen ueber

 ein Japanisches " Erntelied " 」

「 日本の収穫の歌による、序奏とテーマ、変奏  」を、

弾いてくださるそうです。

この曲については、

http://blog.goo.ne.jp/nybach-yoko/d/20100620

をご覧ください。

 


★音楽が、生活に欠かせない国の作曲家  「  J. S. バッハ  」 の、

「 インヴェンション 1番・アナリーゼ講座 」 の、

追加講座を、昨日、「 横浜みなとみらい 」 で、

開催しました。

愛知、山梨、群馬、長野など、遠くからも、

わざわざ、たくさんの方が、駆けつけてくださいました。

心から、お礼申し上げます。


★「 インヴェンション 1番 」 は、バッハが精魂込めて、

作曲した、見かけの可愛らしさとは裏腹に、とても、

“ 恐ろしい曲 ” であり、 ≪ 調性とは何か ≫ という、

西洋音楽の根幹を成す、問いに対する、

真正面からの ≪ 解答 ≫ と、いうことができます。

それにつきましては、講座で十分に、ご説明しました。


★さらに、それと同時に、実にユーモアに溢れた曲でもあります。

 1小節目のテーマ 「 ド レ ミ ファ レ ミ ド 」を、

お持ちの楽譜を、天地を逆にして、眺めてください。

それを、ト音記号で、左から読みますと、

「 ラ ソ ファ ミ ソ ファ ラ 」と、なることに、

お気付きでしょうか。


★この 「 ラ ソ ファ ミ ソ ファ ラ 」 が、

3小節目に、そのままの形で、現れてくるのです。

 「 ド レ ミ ファ レ ミ ド 」の ≪ 反行形 ≫ が、

 「 ラ ソ ファ ミ ソ ファ ラ 」 なのです。

反行形を、くどくど言葉で説明するまでもなく、

このひっくり返し作業で、一気に、

反行形がどういうものであるか、分かってしまうのです。


★バッハの息子たちが、びっくりして、

目を丸くしている光景が、目に浮かぶようです。

インヴェンションは、「 作曲の手引き 」 である、

ということが、これからも、納得できることでしょう。


★この 1番は、大きく 3部分に分かれます。

その第 3部の 15小節目の上声が、

 「 ラ ソ ファ ミ ソ ファ ラ 」 で,、始まり、

その後の 19小節目の上声が、

 「 ド レ ミ ファ レ ミ ド 」で、始まるのは、

偶然では、ないのです。


★ 1月は、あと 2回、アナリーゼ講座を開催します。

早々に、訂正で申し訳ございませんが、

カワイ・表参道で、 1月 25日( 火 )に開きます、

≪  第 10回 平均律アナリーゼ講座  ≫  の、お知らせが、

音楽誌 「 ぶらあぼ 1月号 」 P128に、掲載されていますが、

開始時間が、記載の「 10:30 」ではなく、

「 10:00 」が、正しい時間です。

どうぞ、よろしくお願いいたします。


★このアナリーゼ講座のご案内は、

http://blog.goo.ne.jp/nybach-yoko/e/31fe893e38ee391e7f63f49ff5c9ad4f

を、ご覧ください。


★ 1月 3日に、歌舞伎俳優の ≪ 中村富十郎 ≫ さんが、

ご逝去されました、享年81歳。

生前に何度か、楽屋にお邪魔したり、

お食事を、ご一緒したりして、

その素晴らしいお人柄に、触れることができました。


★特に、心に残こるお話は、

ジャン・コクトーが、来日された折、

富十郎さんの舞踊を見て、非常に感動されたというお話、

そして、私に、張りのある艶やかなお声で、

「 ジャンコクトーの本を、読みたいのですが、

“  中村先生!!!  ”   いいご本がありましたら、

是非、教えてください 」 と、目を少年のように、

輝かせて、おっしゃっていたことです。

この問いは、逆に、私が試されたのかもしれません。


★富十郎さんは、謙虚で向学心と好奇心に、

満ち満ちた、本物の芸術家であった、と思います。

私の 「 無伴奏チェロ組曲 3番 」 の、最終楽章は、

富十郎さんの舞踊が、インスピレーションの源でした。


「 紅葉狩り 」 の中で、貴公子を籠絡した美女が、

突如、鬼女に変身するときの、富十郎さんの、

天井を突き破るような、大音声と、

生命が噴き上げてくるような、舞い。

その瞬間、神性が宿っていたのでしょう。

踊りとは、本来このようなものを指すと、

思いました。


★ご冥福を、お祈りいたします。

 

        ( 干柿&千両&柿の落葉 佐川泰正さんの漆器、蝋梅、菫 )
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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