音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■平均律 1巻 13番を吸収したベートーヴェンから、「 テレーゼ 」が誕生■

2011-06-19 13:34:33 | ■私のアナリーゼ講座■

 

■平均律 1巻 13番を吸収し尽くしたベートーヴェンから、「 テレーゼ 」が誕生■
                                  2011.6.19    中村洋子

 

 


★開催中の「 バッハ・平均律クラヴィーア・全曲アナリーゼ講座 」では、

既に、「 cis moll prelude & fuga  4番 嬰ハ短調 前奏曲 & フーガ 」  と、

Beethoven ベートーヴェン(1770~ 1827)の ピアノソナタ 14番 嬰ハ短調

Op.27-2 「 月光 」 Piano Sonata No.14  Op.27 - 2  cis-moll  との、

深い関連性を、お話いたしました。


Frédéric  Chopin ショパン (1809~1849) は、

「 Etudes エテュ―ド 全 2巻 」 を、

Johann Sebastian Bach  バッハ  ( 1685~1750 ) の

「 Das Wohltemperirte Clavier 平均律クラヴィーア曲集 」 を、

下敷きとして、作曲しました。


★同様に、 ≪ ベートーヴェン ピアノソナタ全 32曲 ≫  は、

すべて、バッハの作品が、根幹にあることは、明白です。


★特に、Beethoven: Piano Sonata No. 24  " À Thérèse " 

ベートーヴェン:ピアノソナタ 24番 Op.78

「 テレーゼ 」 Fis dur 嬰ヘ長調 は、

バッハの 「 平均律 第 1巻 13番 Fis dur 嬰ヘ長調 」 の、

豊かな “変奏” である、 といえます。

 

★それは、ベートーヴェンが、若い時から、バッハを学び続け、

バッハが血肉化していたため、自然ににじみ出たものでしょう。

“ バッハが、自然ににじみ出ている・・・ ”

これは、クラシック音楽が傑作であるための、

必要条件である、ともいえます。

 

 


★どなたが、ご覧になりましても、 13番 fuga フーガ 主題の冒頭、

「 Cis 嬰ハ音 」 と 「 Fis 嬰へ音 」 とによって形作られる

「 完全 4度 」 と、

ベートーヴェン・ピアノソナタ  24番 「 テレーゼ 」 の、

第 1小節目 冒頭の 「 Cis  嬰ハ音 」  と  「 Fis  嬰へ音 」  とによる、

「 完全 4度 」  が、酷似していることは、すぐに、分かります。


★しかし、ここで、最も重要なことは、平均律 13番 フーガで、

多用されている  ≪ repeated note ≫  ( 同じ音を連続して演奏する ) を、

ベートーヴェンが、どのように  ≪ 応用 ≫  したか、です。


★具体的に例を挙げますと、 Fuga フーガ 7小節目の

ソプラノ 16分音符 Ais - Cis - Cis - Ais の中の、

「  Cis - Cis  」が、 ≪ repeated note ≫ です。


★ベートーヴェン 「 テレーゼ 」の 第1楽章 18小節目 上声の、

1拍目 Cisis - H - Ais - Cisis 、 2拍目 Cisis - H - Ais - Cisis  のうち、

1拍目最後と、2拍目最初の Cisis - Cisis が、

 ≪ repeated note ≫ です。


★さらに、詳しく見ますと、 「テレーゼ」   1小節目 一番最後の音

Gis  と  2小節目冒頭の Gis も、 ≪ repeated note ≫  です。

テレーゼの18小節目の  ≪ repeated note ≫ は、実は 、

1小節目から、導き出されている、ということが、分かります。

 

 


★これを、どう演奏するかは、

Artur Schnabel アルトゥール・シュナーベル (1882~1951) と、

Claudio Arrau  クラウディオ・アラウ (1903~1991) の校訂した

「 ベートーヴェン・ピアノソナタ全集 」  の、

Fingering フィンガリングが、大きな示唆を、与えてくれています。


Edwin Fischer エドウィン・フィッシャー  ( 1886~1960 ) が、

 「 Sinfonia シンフォニア 15番 」 で示した、

 ≪ repeated note ≫ のフィンガリングも、大いに参考となります。


★6月 21日( 火 )に開催します、

表参道・カワイでの  「 第 13回平均律・アナリーゼ講座 」  で、

それらの点を、詳しく、ご説明いたします。

 

                                         ※copyright ©Yoko Nakamura

                               ( ヘビイチゴ トマトの花、シロツメクサ )

▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

 

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ■ Schott社のHpが、私の作品 ... | トップ | ■ BRAHMS Intermezzos Op.1... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

■私のアナリーゼ講座■」カテゴリの最新記事