音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■平均律1巻1番 Preludeの冒頭第1小節目には、バス声部が不在■

2015-10-27 00:02:16 | ■私のアナリーゼ講座■

■平均律1巻1番 Preludeの冒頭第1小節目には、バス声部が不在■
   ~ KAWAI 名古屋「平均律1巻1番アナリーゼ講座」~
               2015.10.27  中村洋子

 

 


★Bachの 「Manuscript Autograph  自筆譜」を勉強しますと、

「曲の構造」、「どのように演奏すべきか」が、

すべて表現されていることに、気付きます。

つまり、≪記譜≫により、それらが説明されているのです。


★あとは、個人がそれをどのように解き明かすか、

ということになります。

例えば、平均律1巻1番 Preludeの「1小節目」を見ますと、

音の出現順序は「 c¹  e¹  g¹  c²  e²  g¹  c²  e² 」です。


現在の実用譜はほとんど、大譜表であるため、

バス記号(ヘ音記号)上に、「 c¹  e¹ 」が記譜されています。

ト音記号上には、「 g¹  c²  e²  g¹  c²  e² 」が記譜されています


★こうしますと、2分音符の「c¹」は、≪バス声部≫の音に

なってしまいます。

符点4分音符と4分音符がタイで結ばれた「e¹」は、

一見、≪テノール声部≫のように見えます。

しかし、 Bachの「Manuscript Autograph  自筆譜」は、違います。

 

 


2分音符の「c¹」は、バス記号上に記譜されています。

「e¹」は、ソプラノ譜表上に、記譜されています。

即ち、この「e¹」はテノール声部ではないのです。


★それでは「c¹」は、どの声部なのでしょうか?

これは、≪テノール声部≫なのです。

何と、この冒頭第1小節目には、バス声部が不在なのです。


★では、どこからバス声部が登場するのでしょうか。

この点が、この曲の肝心要、要諦なのです。

講座で詳しく、ご説明いたします。


答えを言いますと、10小節目の「d」音で、

やっと、バスが出現するのです。

1小節目~9小節目までは、バスがありません。

四声が出揃うのは、10小節目以降となりますので、

この曲を弾く際には、声部構成を明確に提示した演奏を、

目指すべきです。


★しかし、テノール、バスを特定できたとしても、

その上声を、大雑把なソプラノとアルトに分離するだけでは、

単調な演奏となるでしょう

 

 


平均律1巻1番の Fuga C-Durも、神秘に満ちた曲です。

アルト声部の「c¹」から始まる Subject 主題は、

「 c¹ 」から 「 d¹  e¹  f¹ 」と、しっかりとした足取りで、

音の階段、音階を登っていきます。


★続く2小節目後半から始まる Answer 応答 の冒頭音は「g¹」です。

これも、「g¹」から「 a¹  h¹  c²」と、音の階梯を

朝日が昇っていくように、上昇します。


★1小節目の Subject「 c¹ d¹  e¹  f¹ 」と、

この Answer を合わせますと、

何と、「C-Dur」の音階「 c¹ d¹  e¹  f¹  g¹  a¹  h¹  c²」に、

なるではありませんか。

これは、この曲の最終27小節目の上声

「 c²  d²  e²  f²  g²  a²  h²  c³ 」に対応し、

互いに呼応します。

 

 

★しかし、驚きはそれだけではありません。

2小節目アルト声部の2拍目からは、

「 a¹  g¹  f¹ e¹  f¹ e¹ d¹  c¹  d¹  c¹  h  a」ですが、

これを要約しますと、

「 a¹  g¹  f¹ e¹  d¹   c¹  h  a 」となります。

「a-Moll」 の下行自然短音階なのです。


★同じように、4小節目上声にも、

「  g¹ a¹   h¹   c²  d²  e²  fis²   g² 」、

つまり、「G-Dur」上行音階が隠れています


★「a-Moll」 は、主調「C-Dur」の平行短調です。

「G-Dur」は、主調「C-Dur」の属調です。

どちらも「C-Dur」の最も緊密な近親調です。


★「C-Dur」という王者のような音階が、

右大臣、左大臣を従えて、しずしずと厳かに

登場します。

 

 

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■バッハ 平均律 第1巻 1番 C-Dur Prelude& Fuga アナリーゼ講座

・日時 :  2015年 10月 28日(水) 10:00 ~ 12:30

・会場 :  カワイ名古屋2F コンサートサロン「ブーレ」

・予約: Tel 052-962-3939

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■講師 :   作曲家  中村 洋子  Yoko Nakamura

      東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。
     日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。

          2003 ~ 05年:アリオン音楽財団 ≪東京の夏音楽祭≫で新作を発表。

          07年:自作品 「 Suite Nr.1 für Violoncello
         無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 などをチェロの巨匠
         Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー氏が演奏した
    CD 『 W.Boettcher Plays JAPAN
                         ヴォルフガング・ベッチャー日本を弾く 』 を発表。

          08年: CD 『 龍笛 & ピアノのためのデュオ 』
        CD 『 星の林に月の船 』 ( ソプラノとギター ) を発表。

          08~09年: 「 Open seminar on Bach Inventionen und Sinfonien
                  Analysis  インヴェンション・アナリーゼ講座 」
                    全 15回を、 KAWAI 表参道で開催。

          09年: 「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」の楽譜を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」  から出版。
 
         10~12年: 「 Open seminar on Bach Wohltemperirte Clavier Ⅰ
                  Analysis 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 アナリーゼ講座 」
                    全 24回を、 KAWAI 表参道で開催。

          10年: CD 『 Suite Nr.3 & 2 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 3番、2番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。
       「 Regenbogen-Cellotrios  虹のチェロ三重奏曲集 」の楽譜を、
             ドイツ・ドルトムントのハウケハック社
       Musikverlag Hauke Hack Dortmund から出版。

          11年: 「 10 Duette für 2 Violoncelli
                         チェロ二重奏のための 10の曲集 」の楽譜を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

          12年: 「 Zehn Phantasien für Celloquartett (Band 1,Nr.1-5)
      チェロ四重奏のための 10のファンタジー (第 1巻、1~5番)」の楽譜を、
      Musikverlag Hauke Hack  Dortmund 社から出版。

          13年: CD 『 Suite Nr.4 & 5 & 6 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 4、5、6番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。
         「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」の楽譜を、
      ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

          14年:「 Suite Nr.2、4、5、6 für Violoncello
        無伴奏チェロ組曲 第 2、4、5、6番 」 の楽譜を、
       ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

           SACD 『 Suite Nr.1、2、3、4、5、6 für Violoncello
                            無伴奏チェロ組曲 第 1, 2, 3, 4, 5, 6番 』 を、
     「disk UNION 」社から、≪GOLDEN RULE≫ レーベルで発表。

            スイス、ドイツ、トルコ、フランス、チリ、イタリアの音楽祭で、
      自作品が演奏される。

         ★上記の 楽譜 & CDは、
「 カワイ・表参道 」 http://shop.kawai.co.jp/omotesando/ 
「アカデミア・ミュージック 」         https://www.academia-music.com/academia/s.php?mode=list&author=Nakamura,Y.&gname=%A5%C1%A5%A7%A5%ED
 https://www.academia-music.com/                           で販売中。

        ★私の作品の  SACD 「 無伴奏チェロ組曲 第 1 ~ 6番 」
   Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、
  disk Union や全国のCDショップ、ネットショップで、購入できます。
http://blog-shinjuku-classic.diskunion.net/Entry/2208/

 

 

※copyright © Yoko Nakamura    
             All Rights Reserved
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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■西洋音楽の基盤・平均律1巻1番 Preludeは何故、「不完全小節」のように記譜したか■

2015-10-26 16:43:05 | ■私のアナリーゼ講座■

■西洋音楽の基盤・平均律1巻1番 Preludeは何故、「不完全小節」のように記譜したか■
   ~ KAWAI 名古屋「平均律1巻1番アナリーゼ講座」~
                  2015.10.26   中村洋子

 


★木枯らしが吹き始めました。

昨夜は十三夜、冷涼とした夜空に皓皓たる月。

秋ですね。


★2010年1月に KAWAI 表参道で、

2012年4月に KAWAI 横浜で、

「Wohltemperirte ClavierⅠ平均律クラヴィーア曲集 第1巻」第1番の、

analyzeアナリーゼ講座を、開催いたしました。


★3回目の平均律クラヴィーア曲集アナリーゼ講座を、

今週の28日(水)、 KAWAI 名古屋で開きます。


★2010年は最初の講座、

それを追いかける形で横浜では、Chopin 所有の平均律楽譜に記された、

Chopin自身の書き込みを分析することで、

ChopinがBachをどのように理解し、どう演奏していたかを、

探求しました。


★今年夏、表参道で平均律第1、2巻全48曲の講座を終了しました。

最後の曲「第2巻第24番」の講座でお話いたしましたように、

平均律は1、2巻とも24番で終わるのではなく、

もう一度、各巻の1番へと戻る「円環」として作曲されています。

そして、それを総合して1、2巻全48曲が宇宙的規模といえるような

巨大な音楽的世界として、構築されているのです。

 

 


★これまでに全48曲のアナリーゼ講座をしてきました目で、

あらためて平均律第1巻第1番を見ますと、

この曲は、神々しいばかりに輝く曲であるといえます。


★アナリーゼ講座も3回目ですので、前回をなぞって容易に

解説できるという類の曲では、全くありません。

勉強すればするほど、さらに大きな深淵が見えてきます。

それを発見し、分析することがいわば“無上の喜び”、

つまり、音楽をする喜びということができます。


★当ブログで、何度も書きますが、

Pablo Casals パブロ・カザルス(1876~1973) は、毎朝、

Wohltemperirte Clavier 平均律クラヴィーア曲集を弾くことにより、

その“無上の喜び”を、味わっていたのでしょう。

 

★今回の講座では、1番 Prelude & Fugaをじっくり学ぶと同時に、

わずか35小節、一見すると大変単純に見えるこの Preludeは、

その後の西洋クラシック音楽の在り方を、決定するほど重要な、

甚大な影響を及ぼしています。


★Bach以後の大作曲家、 Beethovenベートーヴェン(1770~ 1827)、

Franz  Schubertシューベルト(1797~1828)、

Frederic  Chopin ショパン(1810~1849)の作品に、

「Wohltemperirte Clavier Ⅰ 平均律クラヴィーア曲集 第1巻」 第1番が、

どのように“生きているか”、どう派生しているか

具体的にお話するとともに、ピアノで実際に音として、

聴いていただきます。

 

 


全35小節の Prelude1番のBach「Manuscript Autograph 自筆譜」は、

見開き2ページで、書かれています。

左ページは6段、右ページは5段の途中で終了、残りは余白です。

左ページの2段目、4段目、6段目は一見、

「不完全小節」のように記譜しています。

つまり、一つの小節をわざわざ半分に分断し、

前半と後半を別の段落に、据えています。


★1番 Preludeは、4分の4拍子ですので、

1小節は、四分音符が4つ分の長さです。

2段目最後は7小節目、4段目最後は14小節目、

6段目最後は21小節目ですが、これらは等しく、

2拍目までしか、その段に記されておらず、

残りの3、4拍目は次の段に記譜されています。

大変に、変則的な記譜といえます。


2段目は、4小節目から始まっていますが、

5、6小節を、「反復進行(ゼクエンツ)」の一つの単位としますと、

7、8小節も、「ゼクエンツ」となりますので、

常識的には、7小節目の途中で段落を変えることはありえません。

同じことは、4段目の12、13小節についてもいえます。


Bachの「Manuscript Autograph 自筆譜」を見ますと、

もう一つ、重要なことに気付きます。

34小節目のバス「C」音は、「2分音符二つ」で書かれています。


★「Notenbüchlein für Anna Magdalena Bach

アンナ・マグダレーナ・バッハのためのクラヴィーア小曲集」にも、

この平均律1巻1番 Prelude が、そのまま入っていますが、

アンナが写譜したこの曲も、

バス「C」音は、「2分音符二つ」で書かれています。

 

 


★しかし、旧Wiener Urtext Edition ヴィーン原典版では、

≪全音符一つ≫で書かれています。

Henle ヘンレの古い版は、2分音符二つですが、それを≪タイ≫で結んでいます。

Henle ヘンレ新版(1997、2007年)では、なんと、

タイを≪括弧≫でくくっています。

まことに、不思議な記譜です。


Bärenreiter ベーレンライター版は、2分音符二つですが、

なんと、タイを≪点線≫で描いています。

これも、摩訶不思議な記譜です。


★Bach以降の写譜が、そうした記譜の根拠のようですが、

Bach本人と妻アンナ・マグダレーナ

Anna Magdalena Bach (1701~ 1760) の両者が「2分音符二つ」と、

記しているにもかかわらず、その通りには記譜していないのです。

 

 


2、4、6段目の小節の分断、即ち「不完全小節もどき」に戻りますが、

何故、Bachは小節の途中で、段落を変えることをしたのでしょうか?


★Henle ヘンレ、Wiener Urtext Edition ヴィーン原典版、

Bärenreiter ベーレンライターの実用譜が、

頑強に、Bach「Manuscript Autograph 自筆譜」までも否定し、

「2分音符二つ」で書かれたバス「C」音を≪全音符≫に、

あるいは、≪2分音符二つをタイで結んだ≫理由は、

実は、この「不完全小節もどき」と深く結びついているのです。


1巻1番に張り巡らされた、複雑な counterpoint

対位法の構造を分析できれば、

Bachが、あたかも『不完全小節』のように記した理由が、

明確に理解できます。

それを理解できれば、この「1番 Prelude」を、

美しく、説得力をもって演奏できることになるのです。


西洋クラシック音楽のすべての基盤が、この『平均律1巻1番』にある、

といっても過言ではありません。

講座ではそれらのことを、ピアノで音を出し、

分かりやすく解説いたします。

 

 

■バッハ 平均律 第1巻 1番 C-Dur Prelude& Fuga アナリーゼ講座

・日時 :  2015年 10月 28日(水) 10:00 ~ 12:30

・会場 :  カワイ名古屋2F コンサートサロン「ブーレ」

・予約: Tel 052-962-3939

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■講師 :   作曲家  中村 洋子  Yoko Nakamura

      東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。
     日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。

          2003 ~ 05年:アリオン音楽財団 ≪東京の夏音楽祭≫で新作を発表。

          07年:自作品 「 Suite Nr.1 für Violoncello
         無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 などをチェロの巨匠
         Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー氏が演奏した
    CD 『 W.Boettcher Plays JAPAN
                         ヴォルフガング・ベッチャー日本を弾く 』 を発表。

          08年: CD 『 龍笛 & ピアノのためのデュオ 』
        CD 『 星の林に月の船 』 ( ソプラノとギター ) を発表。

          08~09年: 「 Open seminar on Bach Inventionen und Sinfonien
                  Analysis  インヴェンション・アナリーゼ講座 」
                    全 15回を、 KAWAI 表参道で開催。

          09年: 「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」の楽譜を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」  から出版。
 
         10~12年: 「 Open seminar on Bach Wohltemperirte Clavier Ⅰ
                  Analysis 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 アナリーゼ講座 」
                    全 24回を、 KAWAI 表参道で開催。

          10年: CD 『 Suite Nr.3 & 2 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 3番、2番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。
       「 Regenbogen-Cellotrios  虹のチェロ三重奏曲集 」の楽譜を、
             ドイツ・ドルトムントのハウケハック社
       Musikverlag Hauke Hack Dortmund から出版。

          11年: 「 10 Duette für 2 Violoncelli
                         チェロ二重奏のための 10の曲集 」の楽譜を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

          12年: 「 Zehn Phantasien für Celloquartett (Band 1,Nr.1-5)
      チェロ四重奏のための 10のファンタジー (第 1巻、1~5番)」の楽譜を、
      Musikverlag Hauke Hack  Dortmund 社から出版。

          13年: CD 『 Suite Nr.4 & 5 & 6 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 4、5、6番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。
         「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」の楽譜を、
      ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

          14年:「 Suite Nr.2、4、5、6 für Violoncello
        無伴奏チェロ組曲 第 2、4、5、6番 」 の楽譜を、
       ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

           SACD 『 Suite Nr.1、2、3、4、5、6 für Violoncello
                            無伴奏チェロ組曲 第 1, 2, 3, 4, 5, 6番 』 を、
     「disk UNION 」社から、≪GOLDEN RULE≫ レーベルで発表。

            スイス、ドイツ、トルコ、フランス、チリ、イタリアの音楽祭で、
      自作品が演奏される。

         ★上記の 楽譜 & CDは、
「 カワイ・表参道 」 http://shop.kawai.co.jp/omotesando/ 
「アカデミア・ミュージック 」         https://www.academia-music.com/academia/s.php?mode=list&author=Nakamura,Y.&gname=%A5%C1%A5%A7%A5%ED
 https://www.academia-music.com/                           で販売中。

        ★私の作品の  SACD 「 無伴奏チェロ組曲 第 1 ~ 6番 」
   Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、
  disk Union や全国のCDショップ、ネットショップで、購入できます。
http://blog-shinjuku-classic.diskunion.net/Entry/2208/

 

 

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■ Debussy ベルガマスク組曲の和声は、インヴェンション14番から吸収■

2015-10-15 16:51:14 | ■私のアナリーゼ講座■

■ Debussy ベルガマスク組曲の和声は、インヴェンション14番から吸収■
   ~第14回 金沢「インヴェンション・アナリーゼ講座」~

             2015.10.15   中村洋子

 

★金沢での「 インヴェンション講座 」も、あと 2回となりました。

最終曲から一つ前の 14番は、インヴェンション全体を総括する、

とても重要な曲といえます。

★≪インヴェンション 14番 B-Dur ≫は、冒頭にある 3小節の長いテーマを、

どのように、緊張感を保ちながら演奏するか、それが 「 要 」 といえます。

この 3小節のテーマには、一体どのような和声が、

内包されているのでしょうか?


それを、解きほぐします。

★≪ シンフォニア 14番 ≫ は、Fuga フーガのエッセンスを学べる曲です。

前半は、フーガの提示部として、例えようもない美しさ。

半は、充実した「 ストレッタ 」 が、展開されます。


「 ストレッタ 」 は、 “ フーガの華 ” といえます。

この点についても、分かりやすくご説明いたします。

 

★他の曲と同様に、この14番も Invention と Sinfonia の両方で、

一曲とみることができます。

それを「 自筆譜 」 と 「 Edwin Fischer エドウィン・フィッシャー版 」

基に、どう演奏と結びつけるかを含めて、詳しくお話しします。

第14番は、豊かな和声の Sequenz ( 反復進行 ゼクエンツ )に、

満ちています。

音楽の表情や「頂点」 を形作っていくうえで、決定的役割を、

果たしています。

Bach の和音は、 Sequenzと結びついた時、

その類稀な美しさを、存分に発揮します。

それを、完全に自家薬籠中のものにしたうえで、

「 Suite bergamasque ベルガマスク組曲 」 などの作品に、

消化していったのが、Claude  Debussy  クロード・ドビュッシー 

(1862~1918)です。

ドビュッシー と インヴェンションは、全く、無関係のように思われますが、

ドビュッシー の特徴的な和音は、実は、Bach の和声に多くを負っています。

それを、 ≪ベルガマスク組曲 ≫ を例にシンフォニア 14番から、

何を学びとり、完成させたか、解き明かします。


同様のことは、モーリス・ラヴェルの和声についても、いえます。

フランス近代音楽の源泉も、

すべてBach による、と言ういうことができます


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■日  時 : 2015年 11月18日(水) 午前 10時 ~ 12時 30分
■会  場 : カワイ金沢ショップ 金沢市南町5-9 
           ( 尾山神社前 南町バス停より徒歩3分 )
■予  約 : Tel.076-262-8236 金沢ショップ

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■今後のスケジュール

・第15回 12月16日(水) Inventio & Sinfonia 第15番 h-Moll

・2016年1月20日(水) Beethoven PianoSonata Op.27-2 「月光」

・2016年2月17日(水) Beethoven PianoSonata Op.27-2 「月光」

 

 

※copyright © Yoko Nakamura    
             All Rights Reserved
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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■第13番Sinfonia 冒頭「a¹」に「1」のfingeringが意味すること■

2015-10-11 19:50:29 | ■ 感動のCD、論文、追憶等■

■第13番Sinfonia 冒頭「a¹」に「1」のfingeringが意味すること■
  ~モーリス・アンドレの CD「Trumpet Maestro」の魅力~
            2015.10.11       中村洋子

 



★「Maurice André  Trumpet Maestro, Le Mâitre de la trompette

 モーリス・アンドレ トランペット マエストロ」

というCD(INDE075)を聴いています。

★オーケストラの華ともいえるトランペット。

Karl Richter カール・リヒター(1926-1981)指揮の

Bach「 Weihnachts-Oratorium クリスマスオラトリオ」の trumpetも

Maurice André(1933- 2012)モーリス・アンドレでした。

ソプラノ Gundula Janowitz グンドゥラ・ヤノヴィッツ(1937- )、

アルト Christa Ludwig クリスタ・ルートヴィヒ(1928 - )の、

譬えようもない Aria アリアと、アンドレのトランペットが、

クリスマスの喜びを、天も突き抜けんばかりに高らかに歌い上げます


★学校の卒業論文のような、現代のBach 演奏には、

触手が向きません。

Bachはそのような、しかめっ面をした演奏、

喜びや楽しみがこぼれてこない演奏を、望んでいたのでしょうか。


Bachは、当時の最先端を突っ走っていた作曲家です。

21世紀の現代音楽もまだ、彼には追い付いてはいないのです。

 

 


★アンドレに話を戻しますと、この二枚組のCDにはよく知られた名曲、

Hummel フンメル(1778 - 1837)、

Franz Joseph Haydnハイドン (1732~1809) 、

Albinoni アルビノーニ(1671- 1751)、

Torelli トレッリ(1658 - 1709)、

Antonio Vivaldi アントニオ・ヴィヴァルディ(1678~1741)などの、

Trumpet concertoトランペット協奏曲も収録されています。

溜息の出るような名演です。


★それらを堪能しました後は、 Bachの「Brandenburg Concerto

ブランデンブルグ協奏曲」Nr.2 第1、3楽章が、待っています。


★それだけでなく、いくつかの近代曲も含まれています。

これらの近代曲をお聴きになりますと、あらあら、

有名な日本の現代曲の“そっくりさん”が、

顔を覗かせていることに、驚かれることでしょう。

実は、日本の現代曲のほうが “そっくりさん” で、

こちらが、本家本元だったのです。

ばれてしまいますね。 

 

 


★やはり、どうしてもまた、Bach「Brandenburg Concerto」

に戻って、聴きたくなります。

このCDを聴きながら、夕食をとっていても、

Bach になりますと、箸が止まってしまいます。

“ながら”では、聞けないのです。


★話は飛びますが、Pascal パスカル(1623-1662)の

「Pensées パンセ」が、岩波文庫から新訳で出ました。

まだ、上巻だけですが、この訳は翻訳調でないため、

ストレスなしにスラスラと読めます。


★その中に、次のような言葉がありました。

≪自分の作品を眺めるのに、仕上げた直後だと、まだ、それで頭がいっぱいだ。

あまり時間を置くと、もはや作品の中に入っていけいない≫


★私は、これまで講座などで、作曲家と「Manuscript Autograph 自筆譜」

との関係や、作曲家がどのように、作品を演奏して欲しかったか、

作曲家が自分の作品をどのように弾いていたか・・・をずっと、

探求してきました。


★パスカルの言葉は、共感するところが多いのです。

例えば、一般的に作曲家は、出版譜の校訂については冷淡、あるいは、

きちんとしないことが、往々にしてよくあるのです。

これは、作曲家が曲を完成させると、次の構想に頭が移り、

校訂、校正をあまり、熱心にしなかったり、

お弟子さんに任せたりするのです。

私も、出版する際、作曲時の熱狂を忘れ去っており、

自分で考え込むことも、よくあります。

 

 


14日(水)は、KAWAI 金沢で Bach「Inventionインヴェンション」

アナリーゼ講座、第13番 Invention & Sinfonia を開催いたします。

そのため、Bach 「Manuscript Autograph  自筆譜」を読み、

Edwin Fischer エドウィン・フィッシャー(1886-1960)版を基に、

再度、解読しております。


★これまで、東京、横浜、名古屋で Invention analyze

アナリーゼ講座を、開いてきましたが、後になるほど、

それまでに発見できず、新たに理解したことが、

次々と出てきます。


★例えば、第13番 Sinfonia シンフォニアのFischer版では、

冒頭第1小節目1拍目「a¹」に、「1」の fingeringが付けられています。

何故、言わずもがなの「1」を付けたのでしょうか。

 

 


★この「1」により、楽譜を見ている人は、「a¹」からの motif

モティーフを、非常に強く印象付けられます。

それが、4小節目下声2拍目の「a」から始まる16分音符

「a - h - c¹」が、1小節目の≪縮小形カノン≫であることが、

分かります。


★このように fingering を頼りに、この曲全体を見渡していきますと、

例えば、18小節目の上声「a¹ - g¹ - a¹ - h¹ - c² - d²」に、

「3  2  1  2  3  4 」という fingering を付けていますが、

これは、「 1  2  3  4 」を辿っていけば、1~2小節目の

a¹ - h¹ - c² - d²」の motif モティーフの、

これまた≪縮小形カノン≫であることが、判明してきます。


★ Bachの「Manuscript Autograph  自筆譜 」は、

この全64小節からなる曲を、左3段、右3段の見開きで、

記譜しています。


左ページの2段目(12小節から22小節まで書かれている)の、

ほぼ真ん中に、この「18小節目」が位置しています。

つまり、左ページのど真ん中に据えているのです。


★このことからも、この18小節目の motif モティーフ が、

いかに重要であるか、 fingering から読み取れるのです。

 

 

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■日  時 : 2015年 10月14日(水) 午前 10時 ~ 12時 30分
■会  場 : カワイ金沢ショップ 金沢市南町5-9 
           ( 尾山神社前 南町バス停より徒歩3分 )
■予  約 : Tel.076-262-8236 金沢ショップ

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 ■講師 :   作曲家  中村 洋子  Yoko Nakamura

      東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。
     日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。

          2003 ~ 05年:アリオン音楽財団 ≪東京の夏音楽祭≫で新作を発表。

          07年:自作品 「 Suite Nr.1 für Violoncello
         無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 などをチェロの巨匠
         Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー氏が演奏した
    CD 『 W.Boettcher Plays JAPAN
                         ヴォルフガング・ベッチャー日本を弾く 』 を発表。

          08年: CD 『 龍笛 & ピアノのためのデュオ 』
        CD 『 星の林に月の船 』 ( ソプラノとギター ) を発表。

          08~09年: 「 Open seminar on Bach Inventionen und Sinfonien
                  Analysis  インヴェンション・アナリーゼ講座 」
                    全 15回を、 KAWAI 表参道で開催。

          09年: 「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」の楽譜を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」  から出版。
 
         10~12年: 「 Open seminar on Bach Wohltemperirte Clavier Ⅰ
                  Analysis 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 アナリーゼ講座 」
                    全 24回を、 KAWAI 表参道で開催。

          10年: CD 『 Suite Nr.3 & 2 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 3番、2番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。
       「 Regenbogen-Cellotrios  虹のチェロ三重奏曲集 」の楽譜を、
             ドイツ・ドルトムントのハウケハック社
       Musikverlag Hauke Hack Dortmund から出版。

          11年: 「 10 Duette für 2 Violoncelli
                         チェロ二重奏のための 10の曲集 」の楽譜を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

          12年: 「 Zehn Phantasien für Celloquartett (Band 1,Nr.1-5)
      チェロ四重奏のための 10のファンタジー (第 1巻、1~5番)」の楽譜を、
      Musikverlag Hauke Hack  Dortmund 社から出版。

          13年: CD 『 Suite Nr.4 & 5 & 6 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 4、5、6番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。
         「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」の楽譜を、
      ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

          14年:「 Suite Nr.2、4、5、6 für Violoncello
        無伴奏チェロ組曲 第 2、4、5、6番 」 の楽譜を、
       ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

           SACD 『 Suite Nr.1、2、3、4、5、6 für Violoncello
                            無伴奏チェロ組曲 第 1, 2, 3, 4, 5, 6番 』 を、
     「disk UNION 」社から、≪GOLDEN RULE≫ レーベルで発表。

            スイス、ドイツ、トルコ、フランス、チリ、イタリアの音楽祭で、
      自作品が演奏される。

 

        ★上記の 楽譜 & CDは、
「 カワイ・表参道 」 http://shop.kawai.co.jp/omotesando/ 
「アカデミア・ミュージック 」         https://www.academia-music.com/academia/s.php?mode=list&author=Nakamura,Y.&gname=%A5%C1%A5%A7%A5%ED
 https://www.academia-music.com/                           で販売中。

        ★私の作品の  SACD 「 無伴奏チェロ組曲 第 1 ~ 6番 」
   Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、
  disk Union や全国のCDショップ、ネットショップで、購入できます。
http://blog-shinjuku-classic.diskunion.net/Entry/2208/


 

 


※copyright © Yoko Nakamura    
             All Rights Reserved
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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