■インヴェンションは平均律1巻と2巻とをつなぐ「扇の要」■
~第15回金沢「Inventionアナリーゼ講座」は、15番 h-Moll~
2015.11.21 中村洋子
★18日は、金沢で第14回「Inventionアナリーゼ講座」でした。
「第14番 Invention」の冒頭第1小節目は、トニック(主和音)、
2小節目はサブドミナント(下属音)、3小節目はドミナント
(正確には、主音上の属七)、そして、4小節目冒頭で
トニック(主和音)に、回帰します。
★この和声進行で用いられている motif モティーフは、
「Wohltemperirte Clavier Ⅰ平均律クラヴィーア曲集 第1巻」 の
第1番 Prelude と、非常によく似ています。
1番 Prelude は、1小節目がトニック、2小節目がサブドミナント、
3小節目がドミナント、4小節目はトニックへと進行した後、
5小節目からは、ゼクエンツ(反復進行)が始まりますが、
この「Invention 14番」も、4小節目がトニックで始まり、そこから、
[Ⅰ Ⅳ]、[Ⅶ Ⅲ]、[Ⅳ Ⅱ] へと、ゼクエンツが続きます。
★平均律1巻1番は、
和声の種類が Invention14番とは異なりますが、
5小節目からゼクエンツが始まるという「構造」は、
同じです。
★前回のブログでは、
Invention14番と平均律2巻24番 Preludeとの関係を、
指摘いたしましたが、このように見てきますと、
この≪静かで穏やか、親しみやすい Invention14番≫が、
平均律1巻1番、平均律2巻24番を「つないでいる」という、
驚くべき構図が、浮かび上がってきます。
★講座でもお話いたしましたが、
それはすべて「 Invention 15番 h-Moll」へ、
滔々と流れ込むための、
Bachの大いなる構想に基づいている、といえます。
★まさしく、
「Inventionen und Sinfonien インヴェンションとシンフォニア」が、
「Wohltemperirte Clavier Ⅰ平均律クラヴィーア曲集 第1巻」と、
「Wohltemperirte Clavier Ⅱ 平均律クラヴィーア曲集 第2巻」
との、「扇の要」の役割を担っているのです。
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★次回の金沢第15回「 Inventionアナリーゼ講座」のお知らせです。
■日 時 : 2015年 12月16日(水) 午前 10時 ~ 12時 30分
■会 場 : カワイ金沢ショップ 金沢市南町5-9
( 尾山神社前 南町バス停より徒歩3分 )
■予 約 : Tel.076-262-8236 金沢ショップ
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★ Invention15曲と、Sinfonia 15曲の計30曲は、
Invention1番をThema 主題とする 29の変奏曲と、考えられます。
この 30曲から成る「Inventionen & Sinfonien」は1723年と序文に
記されています。「平均律クラヴィーア曲集 第1巻」は、1722年。
つまり、平均律第1巻のほうが、1年前なのです。
★相次いで成立した 「人類の宝」 ともいうべき二つの曲集は、
お互いが、深く、関連付けられています。
★Sinfonia15番のThema 主題は、 Invention15番を土台にして生まれ、
両者は一心同体であり、Invention & Sinfonia 全30曲の、Codaコーダ、
あるいは Kadenz カデンツ と見ることができます。
★逆に、この15番の高みから、1年前の平均律 第1巻全体を、
眺めることもできるのです。平均律 第1巻の最終曲24番が、
平均律第2巻を予兆しているのと、同じような関係です。
つまり、この三つの曲集が、縦横無尽に絡み合っているのです。
講座では、この大きな流れをお話するとともに、
15番の素晴らしい和声についても、詳しく解説いたします。
★また、 Invention & Sinfonia15番の記譜について、
ヨーロッパの有名なUrtext 原典版が、どうして各々異なっているか、
それをどのように取捨選択すべきか、具体的にお話いたします。
★さらに、15番の repeated notes 同音連奏と、Bachと同時代の
Scarlatti スカルラッティ(1685-1757)の repeated notes が
どう違うのかも、ご説明いたします。
これが、≪ Bach をどう弾くべきか ≫という問いへの、
回答になります。
★汲めども尽きない 15番の二曲から、exercise を抽出し、
etude とすることも出来ます。
Bach が、この作品により、息子やお弟子さんたちを、
いかに深く豊かな音楽世界へといざなったか、
目に浮かぶようです。
ご一緒に、探求いたしましょう。
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■講師 : 作曲家 中村 洋子 Yoko Nakamura
東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。
日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。
2003 ~ 05年:アリオン音楽財団 ≪東京の夏音楽祭≫で新作を発表。
07年:自作品 「 Suite Nr.1 für Violoncello
無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 などをチェロの巨匠
Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー氏が演奏した
CD 『 W.Boettcher Plays JAPAN
ヴォルフガング・ベッチャー日本を弾く 』 を発表。
08年: CD 『 龍笛 & ピアノのためのデュオ 』
CD 『 星の林に月の船 』 ( ソプラノとギター ) を発表。
08~09年: 「 Open seminar on Bach Inventionen und Sinfonien
Analysis インヴェンション・アナリーゼ講座 」
全 15回を、 KAWAI 表参道で開催。
09年: 「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」の楽譜を、
ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。
10~12年: 「 Open seminar on Bach Wohltemperirte Clavier Ⅰ
Analysis 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 アナリーゼ講座 」
全 24回を、 KAWAI 表参道で開催。
10年: CD 『 Suite Nr.3 & 2 für Violoncello
無伴奏チェロ組曲 第 3番、2番 』
Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。
「 Regenbogen-Cellotrios 虹のチェロ三重奏曲集 」の楽譜を、
ドイツ・ドルトムントのハウケハック社
Musikverlag Hauke Hack Dortmund から出版。
11年: 「 10 Duette für 2 Violoncelli
チェロ二重奏のための 10の曲集 」の楽譜を、
ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。
12年: 「 Zehn Phantasien für Celloquartett (Band 1,Nr.1-5)
チェロ四重奏のための 10のファンタジー (第 1巻、1~5番)」の楽譜を、
Musikverlag Hauke Hack Dortmund 社から出版。
13年: CD 『 Suite Nr.4 & 5 & 6 für Violoncello
無伴奏チェロ組曲 第 4、5、6番 』
Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。
「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」の楽譜を、
ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。
14年:「 Suite Nr.2、4、5、6 für Violoncello
無伴奏チェロ組曲 第 2、4、5、6番 」 の楽譜を、
ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。
SACD 『 Suite Nr.1、2、3、4、5、6 für Violoncello
無伴奏チェロ組曲 第 1, 2, 3, 4, 5, 6番 』 を、
「disk UNION 」社から、≪GOLDEN RULE≫ レーベルで発表。
スイス、ドイツ、トルコ、フランス、チリ、イタリアの音楽祭で、
自作品が演奏される。
★上記の 楽譜 & CDは、
「 カワイ・表参道 」 http://shop.kawai.co.jp/omotesando/
「アカデミア・ミュージック 」 https://www.academia-music.com/academia/s.php?mode=list&author=Nakamura,Y.&gname=%A5%C1%A5%A7%A5%ED
https://www.academia-music.com/ で販売中。
★私の作品の SACD 「 無伴奏チェロ組曲 第 1 ~ 6番 」
Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、
disk Union や全国のCDショップ、ネットショップで、購入できます。
http://blog-shinjuku-classic.diskunion.net/Entry/2208/
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