音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■私のギター作品CD「夏日星」が銀座・山野楽器の推薦盤に■

2016-04-21 23:58:57 | ■私の作品について■

■私のギター作品CD「夏日星」が銀座・山野楽器の推薦盤に■
           2016.4.21    中村洋子

 

 


★4月15日に発売されました私のギター作品CD「夏日星」は、

おかげさまで、好評です。

銀座・山野楽器のクラシックフロア・「スタッフ推薦盤」に選ばれ、

「今月の必聴傾聴盤」として、以下のように紹介されました。

 

 

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★注目の作曲家、中村洋子氏のギター作品集。

中村洋子:夏日星

斎藤明子&尾尻雅弘(ギター)
YOKO NAKAMURA / NYBACH07

 
『無伴奏チェロ組曲』のSACD盤でレコード芸術特選盤を獲得した
中村洋子氏による、ギター作品集。
情景描写に優れた『10のデュエット』から、
楽しく、のどかな愛らしさが香ってくる『チョコチップクッキー』、
風に乗って並んで走る様が爽快な『2台の自転車』と、

冒頭の2曲から引き込まれます。
原曲はチェロのために書かれた作品ですが、

爪弾くギターならではの音色がどの楽曲でも活かされています。
『暑くけだるいインドの午後』では、ゆったりとした舞踊を
想起させる世界観が
広がっている点も聴き所。

続いて、アルバムの題名にもなっている『夏日星』は10弦ギターのために
書かれた大作で、宮沢賢治の童話『双子の星』に触発されたもの。
全般的に1台のギターが紡ぐ壮大な宇宙のようでもあり、
“個”を見つめる厳粛さもあり、作曲者の『無伴奏チェロ組第5番』の
原曲でありながら、
また異なる魅力を放つ屹立した佳品。

斎藤明子氏のソロが光っていて、2回登場する『赤眼の蠍星』が印象深く、
この作品の核となっているような趣。
『最上川』では『10のデュエット』同様、2台のギターが醸す風合と
響きが心地良く、
川のうねりや囁きが聴き手の身体に浸透してきます!

また、ジャケットは斎藤明子氏の父でイラストレーターの斎藤融氏に
よるもの。
1台及び2台のギターが織り成す雄大で繊細な世界が、

この1枚に凝縮されています!!(佐藤)

http://www.yamano-music.co.jp/a/shops/ginza/2f/selection

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★山野楽器さんの推薦文は、私の意図を

よく汲んで下さっています。


★また、CD「夏日星」をお聴きになって下さった方から、

早速、嬉しいお便りを頂きました。


★≪作品を拝聴する時、いつも影絵のような優しい光の世界が

浮かんできます≫と、書かれていました。

なんと詩的で美しい言葉でしょう!


★聴いて下さった方の心の美しさが、逆に、偲ばれます。

このCDの最初の曲は、「10 Duette für 2 Violoncelli」が原曲です。


★作曲家はどの曲も全力投球ですが、

この曲は、Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー先生と

お孫さんのために作曲しました。

先生とお孫さんが、仲良く和気あいあいと、

弾くことを楽しみながら、一時を過ごして頂きたいと思い、

ふっと肩の力を抜いて作曲しました。

Robert Schumann  ロベルト・シューマン (1810~1856) の、

「Kinderszenen  子供の情景 Op.15」を目指して作曲しました。

 

 


★ヨーロッパの子供のためのチェロコンテストで、

よく弾かれる一方、

大人の立派なチェリストが、コンサートでも演奏して下さる

理由が分かる気がします。

子供も弾くことができる“大人の曲”と言えます。


★≪優しい光≫といいますと、フェルメールの

「Girl with a Pearl Earring」を思い出します。

上記の感想にあります「優しい光の世界」が、

それなのかもしれません。

私の著書≪クラシックの真実は大作曲家の自筆譜にあり!≫の

P93を、ご覧ください。


★「夏日星」のCDは、山野楽器2FクラシックCD売場だけでなく、

ギターや試聴機コーナーでも、

ほぼ同じ内容のキャプションを付けて、

展示されているそうです。

是非、お出掛けください。


★九州の大震災など、悲しく辛いニュースの多い毎日です。

どうぞ、この曲を聴いてください。

シューマンの音楽につきましては、

「クラシック音楽の真実は大作曲家の自筆譜にあり!」の、

chapter8(P256)に、詳しく書きましたので、

どうぞ、お読みください。


★なお、このCDは、diskUNION 御茶ノ水クラシック館や、

diskUNION 吉祥寺、新宿のクラシック館でも発売中です。

ネット販売はいたしておりませんので、地方でご希望の方は、

山野楽器やdiskUNION にご注文ください、

http://www.yamano-music.co.jp/a/shops/ginza/2f/selection

http://diskunion.net/shop/ct/ocha_classic

http://diskunion.net/shop/ct/shinjuku_classic

http://diskunion.net/shop/ct/kichijyouji_classic

送っていただけます。

 

 


★おかげさまで、

「クラシック音楽の真実は大作曲家の自筆譜にあり!」は、

増刷となり、第2刷が発行されました。

心より、感謝申し上げます。


★「10 Duette für 2 Violoncelli」は、

「6 Suiten für Violoncello solo 無伴奏チェロ組曲 全6曲」同様、

『Musikverlag  Ries & Erler  Berlin  リース&エアラー社』 から、

楽譜が出版されています。

それらは、「アカデミアミュージック」で購入することができます

https://www.academia-music.com/academia/search.php?mode=detail&id=1501678989

https://www.academia-music.com/academia/s.php?mode=list&author=Nakamura,Y.&gname=%A5%C1%A5%A7%A5%ED

 

 

※copyright © Yoko Nakamura    
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■私の作品を収録したCD「夏日星」が発売されました■

2016-04-16 23:53:55 | ■私の作品について■

■私の作品を収録したCD「夏日星」が発売されました■

              2016.4.16 中村洋子

 


★熊本でのM7.3の大地震、

そして止まることなく連続して、いまも絶えず起きている余震、

さぞかし地元の皆さまは、不安と恐怖の時間を、

過ごされていることでしょう。

中央構造線に沿って、震源が東に移り、

これ以上、被害が拡大していかないことを、

ひたすら願っております。


私の作品を録音いたしました「CD」が、本日発売となりました。

「夏日星」というタイトルで、ギターによる演奏です


★「夏日星」は火星の和名です。

宮沢賢治が最も好きだったといわれる童話「双子の星」の、

清らかで美しい小宇宙を思い描きながら、作曲いたしました。

そのほか、二曲が収録されています。




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■10のデュエット  10 Duette (デュオ)

10 Duette は、2007年にチェリスト Wolfgang Boettcher
ヴォルフガング・ベッチャー先生とお孫さんのAnton
アントン君のために作曲した≪チェロのための10の二重奏曲≫です。

ドイツやスペインなど世界各地で、チェロコンクール参加曲としても、
よく演奏されています。
今回は、ギター演奏版です。
楽譜は、Ries & Erler・Berlin ベルリンのリース&エアラ―社が
≪Yoko Nakamura  10 Duette für 2 Violoncelli≫として出版。


➀チョコチップクッキー: お母さんが焼いてます、とってもいい香り
     Choco Chip Cookie   Schokoplätzchen 

② 二台の自転車: 車輪がクルクル回ります、心地よい午後の青空
     Two Bicycles  Zwei Fahrräder

③ 雪に埋もれた小さな教会: 讃美歌がかすかに聞こえてきます
      A small church in the snow  Kleine Kirche im Schnee

④ スペインのお祭り: 大人も子供も軽快に足を踏み鳴らします
     Spanish Festival  Ein spanisches Fest

⑤ 暑くけだるいインドの午後: 蓮の花咲く池、孔雀がゆっくり舞います
      Peacock's Sarabande in Indian Lotos Garden
      Pfauen - Sarabande im indischen lotoshain

⑥二匹のコオロギ: 秋の庭の片隅でチェロを合奏しています
      A Cello Performance by Two Crickets
     Zwei Grillen beim Cellospiel       

⑦ 静夜: 星がキラキラと瞬きます
       Stars in a Calm Night  Sterne in ruhiger Nacht

⑧ 夏の夜明け: 海辺から太陽が昇り始め、浜辺には雄大な波
        Dawn by the Seashore in Summer 
        Sommerliche Morgendämmerung am Meer

⑨ 秋: 紅葉し始めた樹々の彼方から、狩りの角笛が聞こえます
        Autumn Dance  Herbsttanz
 
⑩ ドデカフォニックダンス:
       Dodecaphonic Dance Tanz in Dodecaphonie
   12音技法(Dodecaphonic)の曲です、
   1オクターブの中にあるすべての音が、分け隔てなく“スター”として
 活躍します


■夏日星 Mars

宮沢賢治の童話「双子の星」の、清らかで美しい小宇宙を思い描きながら
作曲いたしました。
「夏日星」とは、火星の和名です。
心が洗われるようなすがすがしさをもつ童話です。
あらすじは<スギナのような可愛い水晶のお宮で、“空の星めぐりの歌”
にあわせ、
一晩中、銀の笛を吹く双子の童子。

ある日、青石の泉に冒険に出掛けます。
蠍と大烏が醜い喧嘩をしてともに深い傷を負いますが、
童子の限りなく優しい献身によって救われます>。
賢治が最も好きだった童話だったともいわれます。
お金や権力の争いは、いつの世でも絶えないようですが、醜いですね。

この曲は、私≪無伴奏チェロ組第5番 Suite Nr.5 für Violoncello solo≫
(2011年作曲、2012年Wolfgang Boettcher
 ヴォルフガング・ベッチャーによりドイツWitten で初演)の原曲です。
2005年、10弦ギターのために作曲され、斎藤明子さんが初演しました。
チェロ版の≪無伴奏チェロ組第5番≫ は、Ries & Erler・Berlin 
ベルリンのリース&エアラ―社から楽譜が出版されています。
SACD ≪中村洋子「無伴奏チェロ組曲 第二巻」(GDRL-1002)
Wolfgang Boettcher演奏≫に、収録されています。

⑪ スギナのような二つ星 The Twins
⑫ 火取虫(燈蛾) A Moth Flattering around a Light
⑬ 天の河原 The Milky Way
⑭ スピカ Spica
⑮ 赤眼の蠍星 Antares
⑯ 夏の月 Mountains in Moonlight
⑰ 赤眼の蠍星 Antares  
⑱黄金日車(ひまわり) Sunflower



■最上川  The Mogami River (デュオ)

俳人松尾芭蕉(1644-1694)の「奥の細道」に触発され、
芭蕉の世界を縦横に構築しました。
テーマは、クラシックのバルカローレ(舟歌)の形式です。
波と舟の揺れを模した単純な伴奏を繰り返すのが特徴です。
最上川上流の繊細な流れが変奏によって勢いづき、
岩に当たって泡立ちます。
次に静かな「子守唄」、川のおおらかさ、懐の深さを表現します。
間断なく五月雨が降り、霧に煙った川が滔々と流れます。
芭蕉は夜の帳が下りた旅籠で、昼間の光景を行灯の下でしたためます。
ゆっくりとした音が時を刻みます。
最後の変奏は「暑き日を海に入たる(いれたる)最上川」。
盛暑の焦げるような暑さ、激しい動きの変拍子で
クライマックスを迎えます。

                                       

⑲主題: Theme 
     雄大な最上川が滔々と静かに流れます
⑳第1変奏曲: Variation 1 
     最上川の源流、湧水が集まり、やがて大河となり、
     水しぶきを上げて激しく河岸に打ち付けます
㉑主題: Theme 
     夜、漆黒の川面をさらさらと流れる川
㉒第2変奏曲: Variation 2  
     五月雨、さみだれを集めて早し最上川
㉓旅の夜に: Night on the journey
     芭蕉は旅の夜、筆を置き仄かな行灯の明かりを眺めます。
㉔第3変奏曲: Variation 3  
     静かな夜、最上川の流れが子守唄となります。
㉕暑き日: Torrid day 
     暑き日を海に入たる最上川、焦げるような炎暑、
     夕日を海に押し流すような最上川の威力。




--------------------------------------------
★演奏は、10弦ギター・斎藤明子さん(10 Duette、夏日星、最上川)、   
     7弦ギター・尾尻雅弘さん(10 Duette、最上川) 

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●斎藤明子
1967年東京に生まれ、4歳よりギターを始める。
慶應義塾中等部、女子高等学校卒業。在学中、
15才でデビューリサイタルを開催し、翌年スペイン
音楽を学ぶため1年間渡西。
一流の音楽家が直接生きた音楽を教えるカリキュラム
を提唱し注目された大東音楽アカデミーにて、ソルフェージュ、
和声学、アナリーゼを中村洋子氏に学ぶ。
スイス政府支給の留学金を得てバーゼル音楽院に学び
演奏家資格を取得。その間ヨーロッパ各地で音楽体験を積む。

 

第2回スペインギター音楽コンクール第1位、
第30回東京国際ギターコンクール第1位、
1989年ミュンヘン国際音楽コンクールギター部門ファイナリストとなり
奨学金を授与されるほか、国内外の数々のコンクールで優勝、入賞。
アイルランド、ギリシャ、ウィーン、ニューヨークなどでリサイタル、
国際的な評価を得る。1992年に帰国。独奏、オーケストラとの共演、
室内楽演奏、ラジオ、テレビ番組への出演などで活動するほか、
ソニーミュージックから3枚のCDを発表。
2005年から中村作品を収めたDVD「七星晶々」、
CD「星の林に月の船」に参加。
1997年から軽井沢に移住。そこでの生活や価値観の
変換を綴った「軽井沢 八風の里便り」を2010年に出版。
2011年、近隣在住のクラシックの演奏家5名でムージ
カ・エマセネポーを立ち上げ、信州からの独自の音楽
文化の発信に努めている。日本ジュニア・ギター・教育協会会長。
公式ホームページ:http://www.akikosaito.jp/

 


●尾尻雅弘
バークリー音楽院にてジャズ・ギターを学ぶ。
その後マンハッタン音楽学校にてクラシカル・ギターを
マヌエル・バルエコ氏に師事。

在学中、第29回パリ国際ギターコンクールにて第3位、
及びアンドレス・セゴヴィア賞を受賞。
1992年、日本フィルハーモニー管弦楽団との『アランフェス協奏曲』で
日本デビュー。

2004年、メキシコで行われたGFA・ギター・フェスティヴァルには
巨匠ジョン・ウィリアムスらと共に招待され演奏会、講習会を行う。
2007年軽井沢・大賀ホールにて20年ぶりの共演となるジャズ・ピアニスト
小曽根真とのデュオ・コンサートを行なう。
2012年メキシコ・サラマンカでのギター・フェスティヴァルにて演奏会、
マスタークラス、コンクール審査を行う。
2013年5月ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンに参加。
最新CD「ソロ・ギター・アドヴェンチャー JAZZ」をリリース、
レコード芸術誌、特選盤に選ばれる。
また国際映画祭での受賞作品、今村昌平監督「うなぎ」(1997)、
太宰治原作/根岸吉太郎監督「ヴィヨンの妻」(2009)、
田中光敏監督「利休にたずねよ」(2013)などの劇中音楽のギター演奏も担当する。
公式ホームページ:http://www.ojiri.com/

 

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★販売は、Disk UNION 御茶ノ水クラシック館、
       銀座「山野楽器」本店2FクラシックCD売場
       18日から、Disk UNION 新宿および
              吉祥寺のクラシック館でも販売。

★定価 ¥2000 + 税
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★同じ弦楽器でも、チェロは弓を擦る楽器、ギターは弾く楽器。

チェロは、音の持続ができ、その間に音色などの変化をつけることが

可能ですが、ギターは、弾いたらその後は音を加工できません。

ピアノに似ているともいえます。

同じ曲がチェロとギターでどう変化しているか、聴き比べることも

楽しいと思います。


★「10のデュエット」は、分かりやすく楽しめる曲集ですが、

最後の≪ドデカフォニックダンス≫は、12音技法の曲です。

実をいいますと、12音技法を使う、いわゆる現代音楽風に書くことは、

私にとって、大変に楽なのです。


調性で書くことは、ある意味“難易度”が高いのです。

調性で書くことは、何故、西洋楽器を使って作曲するか、

ということに直結するのです。


★ピアノなど鍵盤楽器は、西洋の音階システムによって作られた楽器です。

ギターにもフレットがあり、同様に西洋の音階システムに則っています。

楽器そのものの構造に則った音楽の形態であると、いえます。

そして、いかに調性を効果的に使うかということの為に、

≪和声、対位法≫が存在し、さらに、

和声、対位法の「禁じ手」も厳然として、存在してくるのです。


調性から離れた音楽技法、さらに、

“取締り“のない“無法地帯”の≪無調≫の世界に行きますと、

その自由度が大きいだけに、“自由を手なずける”技というものを、

獲得することは、至難の技ともいえます。

 

 


20~21世紀にかけ、それを本当に手なずけた作曲家は

ごく僅かで、恐らく、10人もいないでしょう。


★“無調を手なずけた本物の作曲家”以外の、

大多数の作曲家による無調の現代音楽を聴き、

“もう、現代音楽はゴリゴリだ”と、

現代音楽に嫌悪感を抱いたり、

クラシック音楽そのものさえ、敬遠するようになったり、

クラシック音楽から“逃亡”してしまった音楽愛好家が

いかに多いか、というお話になっていくでしょう。


調性の≪和声、対位法≫を厳密に習得した後、

無調の世界に入るのはいいのですが、

最初から、調性を使わずに作曲していきますと、

たとえ、もてはやされたとしても、その人の土台はどこにあるか、

ということになります。


★現代音楽の世界でも流行は厳然とあり、

小器用に模倣してある種の作風をつくっても、

その流行が終わった後、途方に暮れる、

ということになりかねません。

 

 

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■私の「無伴奏チェロ組曲第3番」がドイツWittenで全曲初演されました■

2016-04-14 18:33:24 | ■私の作品について■

■私の「無伴奏チェロ組曲第3番」がドイツWittenで全曲初演されました■
            2016.4.14  中村洋子

 

 


★以前お知らせいたしましたが、Bachの誕生日「3月21日」に、

Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー先生が、

私の「Suite für Violoncello solo Nr.3 無伴奏チェロ組曲 第3番」の

「全曲初演」をしてくださいました。


★ドイツ 「Witten ヴィッテン」の「Emmaus-Kirche」での

Cellokonzert チェロのソロコンサートでした。

先生から「プログラムなどを、直ぐに郵便で送りました」

という連絡があり、ジリジリと待っておりましたが、昨日やっと到着。

多分、ドイツ国内の事情と思われますが、3週間以上もかかりました。

 

 

 

  
★先生のお手紙に「私は、Mannheim マンハイム、 Berlin ベルリン、

Witten ヴィッテン、 Glambeck グランベックで、

あなたの無伴奏チェロ組曲をすべて、初演しました」と、

書かれていました。


★プログラムの裏の、プロフィール欄末尾に、

私のチェロ組曲3番、第1楽章最後のモティーフが、

先生の手書きで、描かれていました。

 

 

★ここは、チェロの最低音「C」を含む和音から、

非常に高い「cis³」までの4オクターブを一気に駆け上り、

もう一度 ff で最低音の「C」で終わるところです。

技巧的に、大変難しいところですが、

“僕は成し遂げたよ”という、喜びと高揚感が

漂ってくる手書き譜です。

 

 


★プロフィールは次のように、書かれています。

   Wolfgang Boettcherは、ドイツの非常に優れたチェリスト達の中での
長老です。彼は、Berliner Philharmonikerベルリンフィルハーモニーの
ソロチェリストでした。「12Cellisten der Berliner Philharmoniker
ベルリンフィル12人のチェリストたち」と「Brandis-Quartett
ブランディス・カルテット」の創設メンバーであり、さらに、「Hizacker Sommerlichen Musiktage ヒッツァッカー夏の音楽祭」(戦後ドイツ初の室内楽による音楽祭)の、芸術監督、ベルリン芸術大学の教授も務めました。彼のクラスから、名声あるチェリストがたぃさん輩出しています。
 著名な作曲家たちが、Boettcherのために作品を書きました。その作曲家たちは、Alibert Reimann アルベルト・ライマン、Giselher Klebe ギーセラー・クレーベ、Hans Vogt ハンス・フォークトなどです。
  また、たくさんの作品の初演もしています。それらは Klebeクレーベ、 
Reimann ライマン、Riehm リーム、Kichner キルヒナー、Dutilleux デュティーユ、
Nakamura 中村洋子の作品です。
  Boettcherは、バイエルン芸術院会員で、彼は全世界でコンサートや
マスタークラスを開き、たくさんの国際コンクールの審査員も積極的務めています。
 彼は近年、日本にもたびたび演奏に赴き、そこで中村の曲と出逢うだけでなく、天皇や、天皇とともにいらっしゃる美智子皇后と一緒に皇居で、音楽を楽しみます。中村は、たくさんの曲を Boettcherに献呈しています。

 

 

 

★プログラム


・Bach 「無伴奏チェロ組曲第2番」
・Yoko Nakamura 中村洋子「無伴奏チェロ組曲第3番」
・György Kurtág クルターク「四つの小品」
・Bach 「無伴奏チェロ組曲第3番」

 

 


★Yoko Nakamura「無伴奏チェロ組曲第3番」は、これまで、

各楽章が Boettcher ベッチャー先生により各地で演奏されてきましたが、

今回、満を持して全曲を初演されました。

「教会は満席で、とてもいい雰囲気に包まれて演奏できました」と、

書かれていました。


★間もなく、私の作品をGuitarで録音しました「CD」が発表になります。

「夏日星」という題名のCDですが、その中に、

「10 Duette für 2 Violoncelli チェロ二重奏のための10の曲集」 

が、収録されています。

この曲は、 Boettcher ベッチャー先生とお孫さんのために書きました。

「Musikverlag  Ries & Erler  Berlin  リース&エアラー社」から、

出版され、世界中で好評です。

特に、若いチェリストのためのコンクールなどでよく演奏されています。


★今回は、斎藤明子さんと尾尻雅弘さんによる二台ギターです。

Boettcher ベッチャー先生も「ギターで聴くのが楽しみ」と

おっしゃっています。


★また、CDのタイトルの「夏日星」は、「無伴奏チェロ組曲第5番」の

原曲となった曲で、斎藤明子さんが10弦ギターで独奏します。

 

 

 

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■第2回・Bach 「ゴルトベルク変奏曲」アナリーゼ講座■

2016-04-12 23:54:43 | ■私のアナリーゼ講座■

■第2回・Bach 「ゴルトベルク変奏曲」アナリーゼ講座■
~第4変奏:初めて四声が出揃う、第6変奏:「禁じ手」の和声が美しい~

             2016.4.12   中村洋子

 

 

★「ゴルトベルク変奏曲」第2回・アナリーゼ講座のご案内です。

・澄み切った大気に響きわたる鐘のような「第4変奏」
・蕾が一気に花開く「第5変奏」
・和声の禁じ手が得も言われぬ美しさを醸し出す「第6変奏」
                  を、掘り下げていきます。


★ゴルトベルク変奏曲は、三曲ずつのグループで構成されています。

今回は、その第二グループの第4、5、6変奏です。


第1変奏は二声 、第2、3変奏は三声でした。

第4変奏は、ソプラノ、アルト、テノール、バスが

初めて出揃う四声です。

澄み切った大気の街の上を、教会の鐘が鳴り響くような

清々しい音楽です。

曲の冒頭モティーフ「h¹-g¹」は、

次々と声部を替え、変化、模倣されます。

この「h¹-g¹」は、

主題(アリア)冒頭「g²-a²-h²」の「g²-h²」の反行形です。

 

 


第1~4変奏は、「一段鍵盤」と指定されているのに対し、

第5変奏は、初めて「一段か二段鍵盤で」と、

Bachが書き込んでいます。

ピアノで弾く場合、左手は右手と交差して

高音域にまで手を伸ばしたり、

またすぐに元の低い声部に戻ったり、

目まぐるしい動きを繰り返します。

楽譜は二声部で記譜されていますが、

実は、豊かで華やかな四声体の音楽なのです。

ここで、第1~4変奏までの蕾が一気に、花開くのです。

 

 


第6変奏は、2度のカノンです。

第3変奏曲は、1度のカノンでした。

冒頭「g²」で始まるモティーフを、2小節目の長2度上の「a²」で始まる

モティーフが追っていきます。


★非和声音である掛留音(suspension)が多用されます。

掛留音の真下に、その掛留音の解決音を配置するという

和声の「禁じ手」すら、Bachは使っています。

この「禁じ手」こそが、得も言われぬ美しさなのです。

 

 


★この講座は、初版譜ファクシミリ(Fuzeau出版社)を

基にして進めます。


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■日 時:2016年5月14日(土)14:00 ~ 16:30

■東京都・文京シビックホール、練習室1(地下1階)

■申し込み:アカデミアミュージック・企画部 
    電話:03-3813-6757 
          Email : fuse@academia-music.com>
-----------------------------------------------
●受付開始は4月13日です。

 定員になり次第、締め切らせていただきます。
-----------------------------------------------

 

 


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■私の著書が重版へ、夕刊フジと月刊Musicianが書評欄で紹介■

2016-04-11 02:35:16 | ■私の作品について■

■私の著書が重版へ、夕刊フジと月刊Musicianが書評欄で紹介■
~グレン・グールドのゴルトベルク変奏曲Fingeringについて~
          2016.4.11    中村洋子

 

 


私の著書≪クラシックの真実は大作曲家の自筆譜にあり!≫が、

重版されることになりました。

皆さまがこの本を、暖かく受け入れて下さったおかげと、

お礼申し上げます。


★また、3月23日の夕刊フジ書評欄に『自筆譜から楽曲分析』

という見出しの紹介記事が掲載されました。

月刊「Musician」4月号でも『自筆譜から真摯に学ぶために』と題して、

大きく紹介されました。

いずれも、大変好意的な評価を頂いております。


★夕刊フジ『自筆譜から楽曲分析』

≪作曲家である著者は現在、ピアノの先生やクラシック愛好家、音大生を
対象とした「アナリーゼ講座」を開催している。アナリーゼとは「楽曲の構造を
分析する」学問。本書は著者が自身のブログ「音楽の大福帳」の中から
より重要と思われるアナリーゼについての記事を抜き出し、加筆したもの。
  クラシックを知れば知るほど、どのような仕組みで素晴らしい音楽ができたか
知りたいと思うのは自然なこと。その構造を分析するのがアナリーゼ。本書には
手書きの譜面がふんだんに使われ、バッハやショパンが実際に弾いていた譜面
を通して、作者の意図、全体の構成、さらにはどう演奏すればいいかが説かれて
いる。音大生の多くが理解できていないといわれる「和声」や「対位法」も、本書を
読むことで分かりやすくなることだろう。
 歴史的名演奏を収録したCDの紹介なども掲載され、さらなるクラシックの楽しみ
が広がる一冊だ。 DU BOOKS 2500円+税≫

 

 


★「Musician」4月号『自筆譜から真摯に学ぶために』

≪バッハを根源とするクラシック音楽をより深く理解し、味わうために欠かせない
「和声」「対位法」。本書では、バッハ、モーツァルト、ショパンなど大作曲家が自らの
手で記した自筆譜の分析を通して、和声や対位法をどのように学ぶべきかを説く。
 主な内容は「『エリーゼのために』の手書き草稿は、声部ごとに符尾の方向を変えて
いる」「一生忘れない暗譜の方法」「バッハ・インヴェンション第1番の『3連符』がもつ
重い意味」「ChopinのPolonaise-Fantasie幻想ポロネーズを自筆譜から読み込む」
など、ピアノ曲を中心に手書きの譜例を豊富に交えながら、弾き方や解釈の違いに
ついて丁寧に解説。
 美しく浄書された出版楽譜からは伝わってこない「作曲家ならではの意図」を
自筆楽譜から読み取るべきと力説するだけに、特に演奏、指導する人にとっては
大いに参考になるだろう。作曲家である著者のブログ「音楽の大福帳」を書籍化
したものだが、時には、フィギュアスケートや映画鑑賞まで幅広く話題にしている
辺りにも著者の関心の広さ、教養の深さがにじみ出ている。
中村洋子著/DU BOOKS   2016年3月発行  2500円+税 ≫

 

 


★私の知り合いの方で、この本をお求めになり、

帰る途中の電車で、思わず読みふけってしまいました、

とおっしゃってくださった方もいます。


★また、一冊だけでなく二冊求め、一冊をピアノの譜面立てにいつも

置いている、という方もたくさんいらっしゃるようです。

最近の電車内は、若い人だけでなくお年を召された方までも

携帯やPCに食い入るように

見入っている方が本当に多いです。

以前は大人の方までが、漫画本を広げているのが一つの光景でしたが、

それも過去の風景となってしまいました。


★私は、このごろ紙の本を読むことが、ますますいとおしくなりました。

ネットで簡単に取り寄せるのではなく、大きな書店に出向き、

じっくり眺めるのが、大好きです。

紙に印刷された文字を目で追う喜びは、また格別です。

かつて、皇后の美智子様が

“一番なりたいのは透明人間です。

神田の古本屋さんを自由に歩いて見て回りたい”という趣旨のことを、

おっしゃっていたのが、心に残っています。

 

 


ピアノの譜面立てに置いて読んで下さる方のことを考えますと、

その行為は、私の本を素材として頭の中で長い時間かけて反芻し、

その結果、自分のものとしたうえで、

自分の思考をさらに、深められつつある過程であると思います。

私の考え方を出発点としているものの、

自ら湧き上がってくる、自らの音楽となっているはずです。

これこそが、私が望んでいることです。


★9日の Bach「Goldberg-Variationenゴルトベルク変奏曲」

アナリーゼ講座で、Glenn Gould グレン・グールドの

ゴルトベルク変奏曲のFingeringについても、

少し触れました。


GouldのFingeringは、ある意味とても正統的です。

Julius Röntgen ユリウス・レントゲン (1855-1932)や、

Edwin Fischer エドウィン・フィッシャー(1886-1960)、

Bartók Béla バルトーク(1881-1945)のBach作品に対する 、

さらには、Claude  Debussy  クロード・ドビュッシー (1862-1918)の

Chopin作品へのFingeringと異なることは、

全く、ありません。


GouldのFingeringも、またアナリーゼとなっています。

Debussy、Röntgen、Fischer、Bartókと連綿と続く

歴史の延長線上に、正統に位置します。

 

 


★私の講座に参加されている方が、

GouldグールドのFingeringを、ご覧になりますと、

ハタと、膝を打たれるのではないでしょうか。


★ゴルトベルク変奏曲アナリーゼ講座の2回目以降でも、

GouldグールドのFingeringについて、

少しずつその見方を、お話するつもりでおります。


要するに、西洋クラシック音楽は、音で思索する、

音の構造物なのです。

それは、一瞬の線香花火のように、

エクスタシーを呼び起こす感覚的なもの追い求めることとは、

異なります。


私の本をピアノの譜面立てに置かれて思索される方は、

私から離れ、自分の音楽を大きく発展させていると思います。

同様に、GouldのFingeringを学ぶことは、

Gouldと同じ演奏をすることではなく、

それを手掛かりとして、ご自分のゴルトベルク変奏曲を

創り出すべく、模索するのです。

 

 


現在の日本の音楽書は、ハウツーものがほとんどです。

こうすれば簡単に直ぐに、効果が現れるというものが、

求められているようです。

考えながら音楽を勉強するということとは、

随分、距離があるようです。


自分で苦労して、自分の音楽を創り上げることが、

「面倒でつらい」と思うか、あるいは、

考え、思索することこそが、「自分の音楽をする」、

「音楽生活」であるという態度を選択するかは、

ご自身なのです。


★本の重版のお話から脱線してしまいましたが、

「銀座ヤマハ店」でも、この本は、3月の音楽書ランキングで

第4位になったそうです。
http://www.yamahamusic.jp/shop/ginza/special/musicbook_ranking.html

≪前回より順位を上げてランクイン!≫と案内され、

新刊書、月間ランキング、音楽書のそれぞれの棚に

並べられています。


銀座「山野楽器」2Fの≪女性作曲家特集コーナ―≫と、

3Fの音楽書コーナーにも、この本が置いてあります。

また、近く発表します私の作品のCD「夏日星」を、

山野楽器さんも取り扱って頂くことになりました。


★私の大好きな銀座から、書店が次々と姿を消し、

とても寂しいのですが、

老舗の楽器店さんが頑張って、暖かい手を差し伸べて

くださっていることは、大変うれしく、

感謝の気持ちで、一杯です。

 

 

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             All Rights Reserved
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■私の訳と注が加わった Bärenreiter「ゴルトベルク変奏曲」が発売■

2016-04-06 23:55:32 | ■私の作品について■

■私の訳と注が加わった Bärenreiter「ゴルトベルク変奏曲」が発売■
          2016.4.6    中村洋子

 

 


★9日に開催します第1回「ゴルトベルク変奏曲・アナリーゼ講座」では、

曲の骨格を、和声、対位法に基いで分かりやすくご説明し、

弾くことが楽しくなるような講座にしたいと、思っております。


★新バッハ全集(NBA)の“抜き刷り”である Bärenreiter-Verlag

ベーレンライター出版社の Urtext der Neuen Bach-Ausgabe

Bach「Goldberg-Variationenゴルトベルク変奏曲」は、

従来からの「Cristoph Wolff による序文付き版」と、

「Ragna Schirmer ラグナ・シルマ による Fingering とその注付き版」

の二種類が存在しています。


★今回、私は「Cristoph Wolff による序文」と、

「Ragna Schirmer による Fingeringの注」を翻訳し、

さらに、「Cristoph Wolff 序文」 と

「Ragna Schirmer の Fingering注」 の各々に対する、

私の「注釈」を加えました。

 

 


★それは、ブックレットとして

Bärenreiter 「Goldberg-Variationen」 の楽譜に添付され、

発売されました。

https://www.academia-music.com/academia/m.php/20131120-15

https://www.academia-music.com/academia/search.php?mode=detail&id=1501733634

https://www.academia-music.com/academia/search.php?mode=detail&id=1501733635

 


Wolff と Schirmer の文章をそのまま訳しましても、

分かりづらい所が多々あるため、

どなたがお読みになっても理解できるよう、

細かく注釈を加えました。

 

 


★特に、この曲集の成立や背景について、

今回の訳と私の注によって、しっかりとした基礎知識を

おもちになることができると、思います。

その結果として、Bachの音楽そのものに専念できるよう、

願っております。


★ 「Fingering付き」と「Fingering無し」の二種類の

楽譜がありますが、

私の訳と注は、その両方の楽譜に差し込まれています。

しかし、どちらの楽譜を選ぶべきか、悩まれる方も

いらっしゃることでしょう。


★私の場合、このような時には可能でしたら、両方を求めます。

そうでない場合、 Fingering をご自分で探求したい方は

「Fingering無し」を、そうでない場合は「Fingering付き」を、

ということになります。

 

 


★Ragna Schirmer も「音楽家はそれぞれ自分の解釈をし、

その結果、その人に最も合ったフィンガリングを見いだすべき」と、

書いていますが、その通りであると思います。

絶対的なFingeringはありません。


★勉強の方法としましては、

残念なことに、Bachの自筆譜が失われていますので、

まず、Fuzeau出版社から出ています≪初版譜ファクシミリ≫を、

座右に置いてください。

この Fuzeau≪初版譜ファクシミリ≫は、

Bachが存命中に出版されたゴルトベルク変奏曲の楽譜に、

Bach自身が書き込みを加えたもののファクシミリです。


★それに加え、今回の Bärenreiter 「Goldberg-Variationen」 も、

一緒に紐解いてください。

それが、第一歩です。

 


 

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■ゴルトベルク変奏曲の演奏は≪四声体≫分析ができれば難しくない■

2016-04-04 18:04:39 | ■私のアナリーゼ講座■
■ゴルトベルク変奏曲の演奏は≪四声体≫分析ができれば難しくない■
   ~第1回ゴルトベルク変奏曲アナリーゼ講座4月9日~
             2016.4.4  中村洋子
 
 
 
 
 
 
★春分から半月、本日は「清明」。

しとしと雨が降っています。

命ある万物が清新の気を漲らせます。

桜の薄墨、海棠の赤、満天星躑躅(ドウダン)の白。

著莪(シャガ)の薄紫。
  
欅が一気に芽吹き、矢車草にもピンクの蕾。

舞い落ちた桜の花びらが、椿の緑葉に貼りついています。


★この四月は、中旬に新しいCD「夏日星(なつひぼし)」

発表します。

ギタリストの斎藤明子さんと尾尻雅弘さんに、

私の作品を演奏していただきました。


★また、私が翻訳しました
 
Bärenreiter-Verlag ベーレンライター出版社の 新バッハ全集原典版
 
Urtext der Neuen Bach-Ausgabe
 
Bach「Goldberg-Variationenゴルトベルク変奏曲」の序文と
 
訳者注のブックレットが、「Goldberg-Variationen」に差し込まれ、
 
新規発売となりました。
 
 
 
 
 

4月9日(土曜)は、Bach 「Goldberg-Variationen
 
ゴルトベルク変奏曲」第1回アナリーゼ講座を、開催いたします。
 
そのための勉強に集中しています。
 

★このゴルトベルク変奏曲の成り立ちは、
 
序文(Cristoph Wolff)と、その注(中村洋子)に
 
書いてありますので、
 
大きな歴史的背景は把握できると思います。
 

★この講座は前期と後期に分かれ、各5回で、
 
各回とも変奏曲を三曲ずつアナリーゼいたします。
 
第1回は主題である「Ariaアリア」と、1~3番変奏曲ですが、
 
「アリア」の分析を綿密にしたいと思います。
 
各回ともアリアは必ず、振り返ることになります。
 

★この講座では、
 
“Bachの音楽がはなぜ美しく、私たちの心をとらえて離さないのか”、
 
皆さまとともに考え、理解していただき、
 
実感していただきたいのです。
 
 
 
 
 
 

Bachは作曲するに当たって、
 
必ず≪四声体和声≫を強固な≪地盤≫とし、
 
それに基づいて、作曲を進めていました。
 
主題のアリアは、上声がト音記号、下声がヘ音記号(バス記号)の
 
大譜表でかかれています。
 
例外は、19~20小節の4小節だけ、
 
下声がバス記号でなくアルト記号です

(これにつきましては、なぜそうなのか、講座でお話いたします)
 
 
★2段の大譜表から、≪四声体≫をどう読み取っていくか・・・
 
それこそが、演奏する上で、あるいは鑑賞し聴く楽しみを得る上で、
 
すべての基礎となります。
 
演奏が優れているか、そうでないかの判断基準の基礎となります。
 

★つまり、その演奏が≪四声体≫の解釈を、
 
十分に出来た上での演奏かどうかが、
 
いい演奏か、そうでないかの判断基準になります。
 
 
 
 
 

★かつては、ゴルトベルク変奏曲の録音は限られた名演以外は、
 
あまり存在していなかったのですが、
 
現在は、百花繚乱、ピアノ、チェンバロ、室内楽で
 
様々に録音され、CDショップの棚を賑わせています。
 

★私も20近くの録音を聴いてみました。
 
それらの解説ジャケットは、
 
例えば、チェンバロに関しては、演奏に使われた楽器への蘊蓄や、
 
どういう調律を採用したのか、が長々と書かれていたりします。
 
あるいは、奏者の美しい写真が貼られた、
 
豪華な装丁であったりしますが、
 
この曲の大きな構想と構造、対位法と和声の極地でありながら、
 
これだけ、美しく幸福感に満たされているのはなぜか・・・
 
に答えている解説文はほとんど、見受けられません。
 

Bachゴルトベルク変奏曲の「清澄な」世界を表す、
 
≪四声体≫に則った演奏は、意外に少ないのです。
 
バッハは、変奏曲の各曲に1段鍵盤か、2段鍵盤かを記入しています。
 
第1変奏曲は、右手と左手が交差しますが、
 
これをチェンバロの2段鍵盤で演奏しますと、
 
華麗で、腕の交差も容易になります。
 
 
★しかしバッハはこの第1変奏曲を、1段鍵盤で弾くように
 
指定しています。
 
これは、2段の華麗な効果でなく、もっと大切な「四声体」を
 
考えて欲しい、という示唆ともいえます。
 

★私の著書≪クラシックの真実は大作曲家の「自筆譜」にあり!≫で、
 
 Afanassievの著書からの引用で書いていますように、
 
「エクスタシーの連続が現代のクラシック音楽」に、
 
一脈通じる、派手な効果を狙った演奏も多いように感じます。
 
 
 
 
 
 

★このゴルトベルク変奏曲の「アリア」について、
 
私のもっていますイメージとは、
 
Vermeerフェルメールの「Woman with a Pearl Necklace
 
真珠の耳飾りの女性」の “光あれ” の世界です。
 
これにつきましては、私の著書のP95に詳しく書いております。
 
どうぞ、ご覧ください。
 

★≪四声体≫に話を戻しますと、それは、
 
バス、テノール、 アルト、ソプラノという人の声を基にしています。
 
「歌」というものは、楽器とは異なり、“別格”のものがあります。
 
心からの感動が、声となって発せられるのです。
 
私は、Bachの音楽はそのようなものであると、思います。
 

ゴルトベルク変奏曲の各曲は、すべてそうなのですが、
 
≪四声体≫といっても、各声部はほぼまた二分割(div.)されています。
 
実は、最低≪八声体≫でとらえるべきです。
 

★Edwin Fischer エドウィン・フィッシャー(1886-1960)が、
 
指摘していますように、
 
“その各々の声部は、それぞれ独自の音楽生命をもって”います。
 
それを、意味ありげに衒学的に説明したり、
 
もったいぶって難しそうにお話しすべきではないでしょう。
 
講座では、私が実際にピアノを弾きながら、分かりやすく
 
ご説明いたします。
 
 
 
 
 
 

CDを我慢して聴いているよりも、きっと、
 
ご自分で弾いてみたくなってしまうことでしょう。
 
意外に思われるかもしれませんが、
 
ゴルトベルク変奏曲は、構造をしっかり頭に入れますと、
 
演奏はさほど難しいものではありません。
 

私は、是非皆さまに自ら弾く楽しみを、
 
味わって欲しいのです。
 
鍵盤楽器を演奏なさらない方でも、全てのパートを頭に入れ、
 
ご自分の好きな声部を弾く、という楽しみ方があります。
 

★あるいは、ピアノの発表会で、気に入った一つの変奏曲だけ、
 
お子さんが弾くということも、立派な楽しみ方です。
 
 
★眉唾もののゴルトベルク変奏曲にまつわるエピソードにしましても、
 
カイザーリンク伯爵が寝入ってしまえば、
 
曲はそこで静かに終わります。
 
全曲演奏でなければ、この偉大な作品に手を触れてはいけない、
 
という強迫観念をもつ必要はありません。
 
どれか一つの変奏曲を、ゆっくり、じっくり演奏し、
 
楽しみましょう。
 
これが、バッハに近づく最短距離です。
 
 
 
 
 
 
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