音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■「 第 1回インヴェンション 」 追加講座は、1月10日午後2時から■

2010-11-26 00:31:13 | ■私のアナリーゼ講座■

 「 シンフォニア 1番 」 は、本当に 「 3声 」 か?
「 第 1回インヴェンション 」 追加講座は、1月10日午後2時
               2010.11.26 中村洋子

 

 

★昨日は、横浜カワイ「みなとみらい」での、

「 第 1回インヴェンション講座 」 でした。

先ほどの APEC会場 にほど近く、手塚治虫の、

鉄腕アトムが、飛び回りそうな超高層ビルが立ち並び、

 “ 未来都市 ”に、迷い込んだような印象でした。

そのビルの一室で、280年以上前に作曲されました、

人類にとって不滅の宝のような、バッハの作品について、

お話をするのは、なかなか、感慨深いものがございました。


★バッハが、息子・フリーデマンのために作曲した、

「 フリーデマン・バッハのためのクラヴィーア小曲集 」 が、

1720年、

「 平均律クラヴィーア曲集 」 第 1巻が、1722年、

「 インヴェンション&シンフォニア 」 が、1723年と、

それぞれ、序文に記載されています。


★「 フリーデマン小曲集 」 の中には、

インヴェンションとシンフォニアのほとんどの初稿 、

さらに、平均律クラヴィーア曲集 1巻の、

1番から 12番まで ( 7番を除く ) の前奏曲、

計 11曲の初稿が、含まれています。


★作曲年は、上記の年より、さらに遡れるとしましても、

バッハが、ほとんど同時期に、これらの曲集を完成させたこと、

さらに、「 インヴェンション 」 の完成した年が、

「 平均律 1巻 」 より、1年遅い、

という事実は、重いと思います。

 


★本日の講座では、「 インヴェンション 1番ハ長調 」 の、

愛らしいほどシンプルな主題と対主題が、底知れない力をもち、

インヴェンションのみならず、シンフォニアと平均律の全曲を、

支配している、というお話を詳しくいたしました。


★それを理解しませんと、実際に、

どう弾いていいのかが、分からないと思います。

やみくもに、いろいろな人の校訂版を紐解き、

あれこれ、さまざまなピアニストの演奏を聴き、

その結果、つぎはぎだらけの演奏を、

することに、なってしまいます。


★「 みなとみらい 」 の超高層ビルのように、

その大元の、土台がしっかりしていませんと、

砂上の楼閣、例えますと、フリルだらけの、

実体のない “ ドレス ” となってしまうのです。


★その一例としまして、 「 シンフォニア 1番ハ長調 」 を、

「 3声 」 として、演奏するのは 「 安易 」 であると、思います。

この曲は 「 4声 」 、あるいは、

それ以上の多声部として、演奏すべきです

4声の場合、その声部がソプラノなのか、アルトなのか、

テノールか、あるいはバスなのか、

それを、見極めなければいけません。


★声部を確定することが、できますと、

「 シンフォニア 」 を、モノトーンの、音階だらけの、

潤いのない曲であると、とらえてしまう

 「 誤り 」 から、解放されるのです。


★このシンフォニアが、どんなにか 「 彩り豊か=colourfull 」

であり、バッハのオルガン曲や、オーケストラ曲すら連想させる、

豊かで、楽しい曲であるか、そういうことを、

実際に、ピアノで実証しながら、お話いたしました。

 


★5声以上というのは、テノールが、第 1、第 2テノールに、

分割されること、あるいは、

アルトが、第 1、第 2に分割されることです。

その見極め方についても、詳しく解説いたしました。


★バッハの音楽を弾くとき、テーマだけを際立たせたり、

テーマを浮き上がらせて演奏する、ということは、

バッハの意図に沿わないことは、言うまでもありません。

テーマをどのように弾くかを、決めた後、

全曲にわたって、その弾き方を画一的に、

繰り返していくのも、間違っています。


★エドウィン・フィッシャーの校訂版では、

シンフォニア1番の 1小節目の主題と、

2小節目のアンサー ( 応答 )と、

3小節目の主題は、それぞれ、異なった弾き方をするように、

フィンガリングで、見事に 「 指示 」 しています。


★それは、思いつきや、恣意的な考えから、

出てきたものではなく、

インヴェンション 1番を、徹底的に読み込んだことから、

導き出された結果、なのです。


★  「 インヴェンション&シンフォニア 1番 」 の講座は、

既に、カワイ・表参道と、カワイ・名古屋で開催しましたが、

その後、私のなかで、この曲にたいする見方が、

さらに発酵し、深まっていたのを、感じました。


★チェロのパブロ・カザルスが、一生涯毎日、

バッハの 「 無伴奏チェロ組曲 」 を、

飽くことなく、演奏し続けた、ということは、

日々、新たな発見が、あったからでしょう。

そういうことが、私もやっと、分かってきました。


★本日の講座は、満席となり参加できない方も、

たくさん、いらっしゃいましたので、

「 追加の第 1回講座 」 を、開催することになりました。


★日時:来年 2011年 1月 10日 ( 月 )、

午後 2時 ~ 4時 30分です。

この日は、祝日です。

平日に、ご都合がつかない方も、どうぞ、お出かけください。


第 2回・インヴェンション講座は、12月 20日 ( 月 )

 第 3回は、1月 28日  ( 金 )

 第 4回は、 3月 7日  ( 月 )、

いずれも、午前 10時 ~ 12時 30分です。  

ご予約は、カワイミュージックスクール横浜

     電話 045-261-7323 です。

 

 


           ( カラスウリ、黄千両、野生山吹の実、紅葉の蔦 )
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

 

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■■ 「 フィンガリング 」 は、 「 指使い 」 にあらず ■■

2010-11-23 19:20:47 | ■私のアナリーゼ講座■

 ■■ 「 フィンガリング 」 は、 「 指使い 」 にあらず ■■
  ~横浜「みなとみらい」のインヴェンション講座で、お話すること~                                             2010.11.23  中村洋子

 

 

★ 11月 25日に新開講します、横浜「 みなとみらい 」での、

「 インヴェンション・アナリーゼ講座 」 第 1回は、

満席と、なりました。

遠方から、お出でになる方も多く、なかには、

昨年から始めました 「 名古屋・インヴェンション講座 」 を、

『 聴き逃しました 』  と 、名古屋から、わざわざ、

おみえになります方も、いらっしゃいます。


★横浜での講座は、表参道や名古屋での講座を、

ただ、反復するだけではありません。

私が日々、バッハから学び、そして、発見します新鮮な驚き、

“ バッハの音楽が、どんなに豊かか ” 、ということ、

特に、インヴェンションが、一見、短くシンプルに見えますが、

「 平均律クラヴィーア曲集 」 に匹敵する、

奥深さをもった曲であることを、お伝えしたいと思います。


★二声のインヴェンション 1曲につき、

バッハは、それを、二ページで記しています。

各ページは、横長で、3段組みです。


★ 「 インヴェンション第 1番 」 を、みますと、

1ページ 1段目は、 4小節目 3拍目までが記譜され、

2段目は、4小節目の 4拍目から、始まっています。

バッハは、この曲集の最初から、

なぜ、このように、 「 変則的 」  に記譜したのか?


★1ページ 3段目も、11小節目 2拍目までで、終わっています。

2ページの冒頭は、 11小節目の 3拍目から、始まるということです。

2ページ目の 1段目は、14小節目の 3拍目まで、

2ページ目 2段目は、 14小節目の 4拍目から始まります。


★2ページ目の 2段目は、18小節目の 2拍目まで。

2ページ目の 3段目は、18小節目の 3拍目から、始まります。

 

 

★「 自筆譜のファクシミリ 」 を、お持ちでない方は、

是非、上記のレイアウトを、ご自分の楽譜に、メモをしてください。

この独特な区分にこそ、バッハの深い意図、

秘密が、隠されているのです。

≪ 「 インヴェンション1番 」 は、実に、複雑精緻に、

モティーフや伏線が、張り巡らされている曲である ≫、

ということを、詳しく、ご説明するとともに、

ただ、頭で理解するのではなく、どのように、

演奏に、それを活かしていくか・・・についても、お話いたします。


★それが、理解できますと、

つまらない校訂版をもつ必要は、なくなり、ご自身で、

素晴らしい演奏をすることが、可能となるでしょう。


★しかし、尊敬すべき、立派な校訂版は、

バッハが意図したのと、同じ深みに達した、

あっと驚くような、素晴らしい内容を、もっています。

ただし、演奏者が、その校訂版を読みこなす技量を、

持ちあわせませんと、“  猫に小判  ”  と、なります。

つまり、“  指使い通りでは、弾き難く、役に立たない  ”、

などという、偏見や無理解に、囚われることになり、

その楽譜を、放棄してしまう結果となります。


「 エドウィン・フィッシャー校訂版 」 は、残念ながら、

「 二声のインヴェンション 」は、絶版となっています。

「 シンフォニア 」 は、 「 三声のインヴェンション 」 、

というタイトルで、出版されており、

現在でも、何とか入手可能です。

 


★「 三声のインヴェンション 」  ( シンフォニア1番 ) の、

1小節目 ソプラノ声部での冒頭

「 ソ ラ シ ド レ ミ ファ ソ 」 の、

「 ド 」 のフィンガリングは、 「 1 」 指、

「 ファ 」 が 、「 1 」 指、

最後の「 ソ 」 が 「 3 」 指と、なっています。


★「 指使い 」 という語を、使わずに、

「 フィンガリング 」 と、しましたのは、

日本では、「 フィンガリング 」 を、

「 弾き易くするための、便利な指使い 」  というように、

誤解をしている方が、呆れるほど多いからです。


「 アルトゥール・シュナーベル 」 や、

「 クラウディオ・アラウ 」 の、

「 ベートーヴェン・ピアノソナタ全集 」 を、

≪ 指使いが弾き難いから、価値が低い ≫ と、

主張するブログのサイトや、出版物まであることには、

開いた口が、塞がりません。


★先ほどの  「 1 」   「 1 」  「 3 」  という、

「 フィンガリング 」 が、

フィッシャーのどれだけ深い考察に、基づいて、

導き出されたものであるか・・・、

その熟慮の過程を辿りながら、演奏にどのように活かすか、

ご説明いたします。


★ 「 古い校訂版だから、価値が無い 」  と、考えるのは、

断じて、誤りです。

フィッシャーの校訂版は、普遍的価値があります。

細かく、細かく指示を書き込んだ校訂版は、

一見、親切にみえますが、実際は、演奏不可能です。

それは、お弾きになっている皆さまが、

実感されていることと、思います。

 


★横浜  「 みなとみらい 」 での、

第 2回インヴェンション講座は、 12月 20日 ( 月 )、

第 3回は、  2011年 1月 28日 ( 金 )。


★名古屋カワイでの、第 4回インヴェンション講座は、

 2月 23日 ( 水 )です。


★ 横浜 「 みなとみらい 」 での、

「 インヴェンション 1番の追加講座 」 は、

日程が決まりましたら、お知らせいたします。

 


                                                   

                      (  キノコ、ツワブキ、南天、三日月  )
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

 

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■中村洋子第 10回「バッハ 平均律 アナリーゼ講座」のご案内■

2010-11-19 00:27:51 | ■私のアナリーゼ講座■
 

中村洋子第 10回「バッハ 平均律 アナリーゼ講座」のご案内

                   2010.11.18  中村洋子

▼第 10回  平均律 第 1巻 第 10番  ホ短調 前奏曲&フーガ

≪ 平均律 10番を学ぶことで、

     モーツァルト・ピアノソナタ KV 310 が、一層深まります ≫

 

■ 日時: 2011年 1月 25日(火) 午前 10時 ~ 12時 30分
■ 会場: カワイ表参道  2F コンサートサロン・パウゼ
■ 会費: 3,000円  ( 要予約 )  Tel.03-3409-1958 

 

★平均律「第 10番 ホ短調 前奏曲 」の前半 22小節の初稿が、

「フリーデマン・バッハのためのクラヴィーア小曲集 」に、あります。

フリーデマンの楽譜は、右手 1拍目と 3拍目に、

8分音符の和音がポツポツと、奏されるだけです。

平均律では、その右手の和声音を、非和声音により、

縦横無尽に装飾し、溜息の出るような美しい旋律へと、

変化させています。

 
★バッハは、息子や弟子たちに、実際に、この両者を比較しながら、

「 旋律とはなにか 」を、手取り教えたのでしょう。

 

★この「 旋律とはなにか 」を、バッハから、深く学んだのは、

モーツァルトも、例外ではありません。

モーツァルトは、大バッハの息子・クリスチャンからのみならず、

大バッハからも、楽譜を通して、それを吸い取り、その結実が、

「 ピアノソナタ KV 310 イ短調 」となったのです。

 

★その「 モーツァルトのイ短調 」が、「 ショパン 」へと、

つながっていくのは、自明の理です。

★10番のフーガは、平均律の中で、唯一「 二声 」で、

書かれていますが、この短いフーガは、実は、

対位法の極致で、二声として演奏すると、本領は、発揮されません。

見かけ上の二声が、どのような「 多声部 」となっているか、

弾きやすくするにはどうしたらいいか、分かりやすく、お話します。

 

★この講座は、音楽をバッハを、

心から愛している方々のためのものです。

難しいことはやさしく、分かりやすいことは、

さらに深くご説明いたします。

 

★ 今後のスケジュール
第 11回 2011年 2月 18日(金) 第 11番 へ長調 前奏曲&フーガ
第 12回         3月 30日(水) 第 12番 へ短調 前奏曲&フーガ

 午前10時~12時30分 会費:3,000円

■ 講師:作曲家 中村 洋子
東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。

日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。
2003年~ 05年:アリオン音楽財団《東京の夏音楽祭》で新作を発表。
07年:自作品「無伴奏チェロ組曲第 1番」などをチェロの巨匠W.ベッチャ    ー氏が演奏したCD『 W.ベッチャー日本を弾く 』を発表。
08年:CD「龍笛&ピアノのためのデュオ」、
      CD  ソプラノとギターの「 星の林に月の船 」を発表。
08~09年:「 バッハのインヴェンション・アナリーゼ講座 」全15回を開催。
09年10月:「 無伴奏チェロ組曲第 2番 」が、W.ベッチャー氏により、         ドイツ・マンハイムで初演される。
10年:「 無伴奏チェロ組曲第 1番 」が、ベルリンの
       リース&エルラー社 Ries &Erler Berlin から出版される。
     : CD『 無伴奏チェロ組曲第3番、2番 』 W.ベッチャー演奏を
        発表。
     :「 レーゲンボーゲン・チェロトリオス( 虹のチェロ三重奏曲集)」が、    ドイツ・ドルトムントのハウケハック社 Musikverlag Hauke Hack 社
        から出版される。
        スイス、ドイツ、トルコの音楽祭で、自作品が演奏される。
                               
*ブログ:「音楽の大福帳」 http:// blog.goo.ne.jp/nybach-yoko

■カワイ表参道

150-0001東京都渋谷区神宮前5-1 Tel.03-3409-1958

http://shop.kawai.co.jp/omotesando/ 

omotesando@music.kawai.co.jp

  

 

                                (サザンカ、月  )

 

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■バッハの 「 フーガのテーマ 」 は、完璧な形の苗木のように■

2010-11-18 01:55:44 | ■私のアナリーゼ講座■

■バッハの 「 フーガのテーマ 」 は、完璧な形の苗木のように■
                     2010.11.18  中村洋子


★11月 16日の、第 9回平均律アナリーゼ講座は、いつにもまして、

たくさんの音楽を愛する皆さまが、ご来場くださりました。

11月 25日の、横浜「みなとみらい」での

「 第 1回 インヴェンション・アナリーゼ講座 」 は、既に、

ご予約で満席となり、追加講座を予定しておりますので、

決まり次第、お知らせいたします。


★平均律 1巻 「 9番 ホ長調 」は、短く簡潔な曲であるがゆえに、

誤解されることも、多いようで す。

日本で有名な、箱入りの分厚い解説書では、前奏曲について、

『 インヴェンションふうな曲で、単純で幸福にあふれたハーモニー、

歌謡 3部形式による単純な構成は・・・』 と、記しています。


★この筆者は、インヴェンションを、平均律よりも、

「 短く、簡単で、難易度 が低い曲 」 と、

価値を低く、とらえているように、思われます。

私の考えでは、インヴェンションのほうが、ある意味では、

平均律より、演奏者にとって、はるかに手ごわく、

底知れぬ深さを、もっています。


★バッハは、平均律 「 8番 嬰ニ短調フーガ 」 を記譜するにあたり、

左右のページに、3分の1ずつ割り振り、

最後の 3分の1は、次の左ページに、記譜しています。

そして、その右側のページから、この 「 9番前奏曲 」 が始まります。

8番フーガ最後の 3分の1と、9番前奏曲を、

「 一体の音楽 」  として、捉えて欲しい、

というバッハの、シグナルなのでしょう。


★その理由の一つとして、「 8番フーガは 変ホ短調ではなく、

嬰ニ短調である 」 ことを、 講座でご説明いたしました。

それは、「 調号とは何か 」、「 調性とは何か 」 という

問いに対する、

≪ バッハの解答 ≫ である、ともいうことができます。


★この 「 前奏曲 9番 」 は、 「 フーガ8番 」 の、

エネルギーに匹敵するほどの、力をもった曲である、

と言えます。

「 前奏曲 9番 」 を演奏する際は、必ず背中に、

「 フーガ8番 」 のエネルギーを感じ、それを背負って、

弾き始めてください。

「 前奏曲 9番 」 は、その解説本で書かれるような、

「 単純なハーモニー、単純な構成 」 では、決してないのです。


★そこを、鋭く見抜いていたのが、あの 「 ショパン 」 です。

講座では、この前奏曲のある部分に、たった 「 1 声部 」 を、

私が追加して、実演しました。

そこで流れた曲は、なんと、ショパンの

「 別れの曲 」 そのものでした。


★「 前奏曲 9番 」 が、「 単純なハーモニー 」 ではないことが、

それで、お分かり頂けた、と思います。

モーツァルトも、この 9番の 「  構成  」 を学んで、

彼の傑作ピアノソナタを、生み出している、

ということも、お話ししました。

 1月 25日( 火 )の  「  第 10回 平均律講座  」 で、

それをさらに、深める予定にしております。


★モーツァルトやショパンなど大作曲家は、虎視耽々と、

この 「 前奏曲 9番  」 をみつめ、そのエキスを、

吸収していたのです。


★「 フーガ 」 について、上記解説本は、『 プレリュードの消極的、

享受的な態度に比べ、このフーガは、短い主題のもつ

エネルギッシュな活気と決断とで積極的な姿勢を示している・・・

主題の範囲決定について、いろいろ異なった意見の出る

フーガでもある。 』 と、記しています。


★私には、「 消極的、享受的 」 という形容詞の意味が、

全く、分かりません。

さらに、『 主題の範囲決定 』 として、「 主題 」 は、

『 内声 1小節目から、 2小節目冒頭 E音まで 』 、としています。


★主題を、上記としますと、円錐形に形の整った “ 苗木 ” の、

右半分が、ばっさりと切り取られているような、極めていびつな、

中途半端な、主題となってしまいます。

 

 

★フーガの主題で、最も大事なことは、

「 主題だけで、音楽的なまとまりができている 」 ということです。

声を出して、歌ってみて、完結した一つの歌となっているかどうか、

それが、最も基本的な見分け方です。


★さらに、この解説本は、どこを 「 主題 」 とするかについて、

その他に 3つの異なった意見がある、として、例記しています。

私が、主題と考えていますのは、

「 2小節目 3拍目 E音 」 までですが、それについては、

『 この主題範囲は、主題の和声基盤から

ーー終結的な後尾ではないーー 絶体に認められない。』

と、1行しか記されていません。


★理由らしい理由は、『 和声基盤 』としか書いていませんが、

和声基盤という語は、まず、意味不明です。

『  終結的な後尾  』 も、よく理解できない言葉です。

“  このような言葉の意味が、分からないのは、

自分の理解力が、足りないからではないかしら ? 

バッハは、やはり難しい過ぎるのだろうか ? ”  と、

真面目な方ほど、深刻に、お悩みになるかもしれません。

どうぞ、意味不明な衒学的用語に、惑わされ、

ご自分を、責めないでください。

分からないのが、真っ当なのです。

自信を、お持ち下さい。


★さらに、筆者が主張する、主題について 『  このもっとも短い

主題範囲は、第 2小節めで、男性終止し、和声的にも充実している。

簡潔で、先のプレリュードと対照的に、

短い主題のエネルギッシュな力性、決定的な意志を感じさせる。』

と記し、

自分で和声を付けた主題が、五線譜に掲載されています。

しかし、そこには 「 和音記号 」 は、書かれていません。


★私が、見ましたところ、

「 1小節目 2拍目は Ⅰ 、3拍目は Ⅱ₇ 、4拍目は Ⅴ₇ 、

2小節目 1拍目は Ⅰ 」 と、お考えのようです。

その 4つの和音が、トニック、サブドミナント、ドミナント、

トニック、という最も基本的な和音進行である、ということが、

「主題決定」の理由の 1つと、推測はできますが、

「 2小節目 3拍目 E音 」 までを、主題とすることが、

 なぜ 、“ 絶体に認められないか ” 、

その理由は、全く書いてありません。


★「 最も基本的な和音進行 」 とは、例えば、学校などで、

お辞儀をする際のピアノ伴奏  「 ド、 ド、 シ、 ド 」 で、

聴くことができます。

ド ( ドミソ = トニック )、

ド ( ファラド = サブドミナント )、

シ ( ソシレ = ドミナント )、

ド ( ドミソ = トニック ) です。


★ 「 ド、 ド、 シ、 ド 」 の、最も基本的和声進行に

一致することが、主題を決定する理由となるか、

バッハの主題は、そんなに「単純」なものなのでしょうか?


★ バッハの 「 フーガの主題 」 は、小さいながらも、

美しい樹木の形をしている “ 苗木 ”です。

その苗木が、根を張り、枝を伸ばし、葉を繁らせ、

一つの立派な樹木 = 曲と、なるのです。

主題は、短いながらも、完成しており、

バッハの主題は、皆、そうです。

また、その苗木を見るだけで、将来、

どのような立派な樹木に育っていくか、それが

想像できるものなのです。
 


                 ( 野草の花、千両の実、櫨 )
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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■平均律 1巻 9番 ホ長調・パストラーレは、6番 ホ長調・シンフォニアが、源流■

2010-11-14 20:01:09 | ■私のアナリーゼ講座■

 ■平均律 1巻 9番 ホ長調・パストラーレは、6番 ホ長調・シンフォニアが、源流■
             2010.11.14 中村洋子

 


★11月16日の、カワイ表参道 「 平均律アナリーゼ講座 」 と、

11月25日の、横浜カワイ 「 みなとみらい 」 での、

「 インヴェンション・アナリーゼ講座 」 は、

たくさんの皆さまが、参加される予定です。

特に嬉しいのは、プロの音楽家だけではなく、

バッハを愛するアマチュアの、音楽愛好家の方々も、

増えていることです。


★バッハの、「 平均律 9番・前奏曲 」 は、

よく指摘されますように、パルトラーレの性格も、

宿していますが、さらに、

大ピアニスト 「 エドウィン・フィッシャー 」 が、

同じ ホ長調である、

≪ シンフォニア ( 3声のインヴェンション ) 6番 」 を、

 パストラーレ  -  Einfach 、fliessend 

( シンプルな、流れるような パルトラーレ )  で、

弾くように ≫  と、指示していることからも、

この二曲の、深い関連が、うかがわれます。


★この二曲だけではなく、 「 インヴェンション 6番 ホ長調  」 でも、

「 全音階進行の主題  」、「 半音階進行の対主題 」 の、

両方の要素が、上記の二曲に、深く、関わっています。

 


★この三者の関係は、講座で詳しくお話いたしますが、

実は、そのさらなる源流は、

カスパール・フィッシャー

( Johann Caspar Ferdinand Fischer ) の、

作品にまで、遡ることが、できます。


★カスパール・フィッシャーの豊かなアイデアを、

バッハが、取り入れ、それをどのように展開していったか、

それは、バッハの自筆譜により、容易に、確認することができます。


★平均律は、1ページに 6段のレイアウトで、記譜されています。

平均律 9番のフーガは、1ページ全 6段と、次のページの 2段、

計 8段で、すべてが、書き記されています。


★1段目は、アルトの主題に始まり、ソプラノの応答が続き、

バスの主題の途中までが、記譜されます。

ここが、3声フーガの 第 1提示部です。

1ページ目の最下段  ( 6段目 ) を、見ますと、

バスに、主題が提示され、それを、ソプラノの応答が追いかけ、

アルトの主題が、続きます。


★この部分は、主調の 「 ホ長調 」 ですので、

1段目の再現部分とみて、間違いありません。
    
1番目の主題は、1段目の左端にありますが、

その再現部は、左端を垂直に6段目まで、

降りてきた場所に、記されています。

同様に、 2番目応答の再現部も、

6段目まで、真下に降りた場所 ( 中央 )にあり、

 1段目の右端にある3番目主題の、再現も、

6段目の右端に、揃えられています。

心憎いまでの、レイアウトです。


★どんな初心者の方が、このフーガを弾いていも、

この 6段目 (  18小節 4拍目から 22小節 1拍目まで  ) を、

見ますと、 “ あ!! ここが、再現部だ ” と、

一目瞭然、分かります。

さらに、1段目 ( 1小節目から 4小節前半まで ) での、

主題の出現は、アルト、ソプラノ、バスの順番でしたが、

6段目では、バス、ソプラノ、アルトの順で、

全くの反復ではないことも、すぐに、分かります。

 

 

★いつもながら、バッハの思いやり深い、親切な、

愛情に満ちた 「 配慮 」 が、にじみ出ています。

バッハは、「 決して、難しいのではないんだよ、

嫌いにならないで、楽しんでください 」 と、

語りかけているかのようです。


★この短いながらも、それは見事な平均律 9番は、

実は、インヴェンションやシンフォニアと、

密接な関係にあるのみならず、

平均律 7番、8番、10番 とも、

がっちりと、手を結びあっています。

それを、理解いたしますと、 ≪ 8番の前奏曲が変ホ短調で、

フーガが 嬰ニ短調である理由 ≫  も、

自ずと、分かってきます。


★このことを、講座でご説明すると同時に、

ショパンが、この平均律 9番から、何を汲み取り、

 「 別れの曲 」 を書いたか、それについても、お話します。


★ドビュッシーが、ショパンの 「 エチュード 」を、

校訂した楽譜は、現在でも、入手可能です。

カスパール・フィッシャーを、源流の一つとした、バッハの傑作は、

ドビュッシーにまで、滔々と、流れています。


★平均律は、バッハの生前には、出版されませんでした。

そのためか、バッハの記譜は、出版楽譜以上に、

彼の作曲意図を、正確に、伝えています。

きょうは、バッハの 「 フーガの技法 」 の、

自筆ファクシミリを、眺めていました。


★最晩年のバッハの、手書きですが、

出版されることを、予期していたようです。

「 フーガの技法 」 という、燦然と輝く音楽の内容とは別に、

バッハ自身の、体力の衰えもあり、

筆致が、壮年期のインヴェンションや平均律の手書譜と比べ、

筆圧がほんの少し、弱いようにも、感じられました。


★インヴェンションと平均律クラヴィーア曲集が、

バッハの生前に出版される予定が、なかったお陰で、

バッハが、手で、克明に詳細に、

作曲の意図を、書き残してくれたことに、

感謝したい気持ちで、一杯です。

 

 

                                  (  最後の : 白粉花、朝顔、紫式部、薄  )
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

 

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■エキエル校訂のショパン「別れの曲」は、原典といえるのか?■

2010-11-09 17:57:08 | ■私のアナリーゼ講座■

■ エキエル校訂のショパン「別れの曲」は、原典といえるのか?■
                        2010.11.9 中村洋子


★近く、ドイツで出版されます、

私の3冊目の楽譜 「 チェロ 四重奏曲集 」 の、

校訂作業中で、忙しくしております。


★ドイツの出版社から 「 あなたの自筆原稿で、2小節ごとに、

3回フォルテが記譜されており、 2回目と 3回目は必要ないのでは、

あるいは、2回目、3回目は、アクセントを意味するのでしょうか 」

という、問い合わせがありました。


★確かに、1回 forte と記譜した以上、

それを解除する記譜が無い限り、その後も、

forte が続く、というのが、楽典の常識です。

しかし、作曲中の私の気持ちとしては、

「 2回目のフォルテの際、緩めることなく、そのまま、

フォルテで弾く、3回目も、どうぞ、そのまま、

フォルテで弾いて欲しい」 という、

願いから、出てきた記譜です。


★しかし、常識に沿った出版社の疑問も、当然ですので、

1回目を、piu forte  ( その前が、mf でしたので、

結果として forte を意味する ) 、2回目を forte、

3回目の forte 記号は削除、ということにしました。

演奏上は、私の最初の記譜と同じように、

 forte が、続くことになります。


★この私の楽譜は、作曲家の ≪ 生前出版 ≫ となり、

出版楽譜の記譜は、≪ 作曲家自身の校閲を経ている ≫ ため、

≪ 自筆譜より、正しい記譜である ≫ ということに、

一般的には、なります。


★しかし、このように、作曲家が意図した音楽が、

最も、生々しく流れているのは、≪ 出版楽譜 ≫ より、

≪ 自筆譜 ≫ である、ということは、論を待ちません。


★このことは、ベートーヴェン、モーツァルト、シューマン、

ドビュッシーなどの、大作曲家の遺した自筆譜と、出版楽譜との

関係と、全く同じです。


★ショパンの「 Etude in E major Op.10 no.3 」

通称 「 別れの曲 」 についても、同様です。

この曲については、ショパンが、極めて丁寧に清書した

「 自筆譜 」 が、残されています。


★この自筆譜を見ますと、ショパンが、

バッハの 「 平均律クラヴィーア曲集 1巻 9番 ホ長調 」や、

モーツァルトの作品を、完全に自分の血肉としたうえで、

自らの 「 Etude 」 を、創作したということが、よく分かります。


★いま話題の 「 エキエル版 」 を、見ますと、

この版は、「 自筆譜を見比べつつ、

『 初版楽譜の第 2刷 』 を底本とし、さらに、

ショパンの弟子カミ―ユ・デュボアなど、

三人のお弟子さんの楽譜に、ショパンが残した書き込みも、

考慮した 」 とあります。


★結論から言いますと、これは、

ショパンの 「 原典 Urtext 」 ではなく、

エキエルが、さまざまなソースを自分の主観により、

取捨選択して作り上げた、「 エキエルの ショパン楽譜 」

ということが、できます。


★この楽譜の欠点は、次のような点です。

「 底本としている 『 初版楽譜の第 2刷 』

エキエルの判断で、自筆譜の表記を加えている

ところが見受けられるが、それについては、

全く、注釈していない。

つまり、どこが自筆譜のままなのか、

どこが 『 初版楽譜の第 2刷 』 の表記なのかは、

不明である 」

もう一点、 「 ショパンの自筆譜と、

 『 初版楽譜の第 2刷 』 とは、表記が顕著に、

異なっているところがありますが、

それが、どこであり、どのように異なっているか、

エキエル版には、その説明が、なされていない 」

という点です。

 

★具体的な例を、一つ挙げますと、

2小節目の  ≪ 1拍目 ソプラノ ≫  は、

16分音符 4つ ( Fis,  Gis,  Gis,  Fis ) から、出来ています。

自筆譜では、3番目、4番目の ( Fis,  Gis ) に、スラーが掛り、

この Gis の少し前から、 ≪ ディミヌエンド ≫ が、始まります。

ただし、この ≪ ディミヌエンド ≫ は、

≪ アクセント ≫ のようにも、

見えるように、書き込まれています。

この個所が、9小節目で反復されるときは、

明らかに ≪ アクセント ≫ のように、記譜されています。


★エキエル版は、ショパン初版楽譜をそのまま、踏襲して、

16分音符 4つ (  Fis,  Gis,  Gis,  Fis  ) の音を、

一つのスラーで括り、

1番目の Fis 、 2番目の Gis に、クレッシェンドを、

3番目の Gis、 4番目の Fis に、ディミヌエンドを、

付しています。


★さらに、理解しにくいことは、

2拍目の ≪ ソプラノ 4分音符 Gis ≫に、

意味不明の、 ≪ ディミヌエンド記号のようなもの ≫ が、

記されています。

この不明の記号を、「 アクセント 」 ととることは、

非音楽的ですし、4分音符の長い音 1音を、

一体どうやって、ディミヌエンド できるのでしょうか。


★この個所での、記譜の違いは一見、

些細で、 “ つまらないことに目くじらを立てている ” 、

と、受け取られるかもしれません。

しかし、ここにこそ、ショパン音楽の本質が、現れ出ている、

といってもいいほど、極めて、重要な箇所です


★ショパンが、自らの手で、この場所を書いたその瞬間、

彼の頭の中で、バッハを源とするハイドン、モーツァルト、

ベートーヴェンなどの音楽が、滔々と流れていたことが、

逆に、見事に証明できるのです。

そこを、11月 16日の 「 第 9回平均律・アナリーゼ講座 」 で、

「 バッハの平均律  1巻  9番 ホ長調 」 と、比較しながら、

詳しく、ご説明いたします。


★「 別れの曲 」 初版楽譜や、エキエル版に見られる、

上記の記譜法は、「甘く、ロマンティック 」 に、

聴こえるかもしれません。

しかし、ショパンの、元々の発想を知ることにより、

たとえ、エキエル版のままで弾くにしても、

そのクレッシェンド、ディミヌエンドを、

どのように弾いたらよいかが、分かってきます。

それにより、本物のショパンに迫ることができるのです。


★エキエル版は、数多く存在する 「 ショパン校訂楽譜 」 の、

One of Them です。

「 別れの曲 」 の自筆譜ファクシミリを、見ることは、

現在、難しくはありません。

まず、それをご覧になり、ご自身の目で、

ショパンの作曲時の発想を、確認することが、

大切であるように、思います。


★自筆譜も、実は 2種類あり、

最初のものは、「 Vivace = 生き生きと速く、アレグロより速く 」 、

その後に書かれた、 2回目の自筆譜は、

「 Vivace ma non troppo = Vivace よりは遅く 」、

そして、パリの 「 Schlesinger 」 により、出版された

「 初版楽譜 」 には、「 Lento ma non troppo =

 ゆっくりと、しかし、それほど遅くはなく 」 と記され、

それぞれ、テンポが変更されています。


★なぜ、ショパンが段々と、遅くしていったか、

これについても、 16日のアナリーゼ講座で、解説いたします。

  

                                    (  名古屋・亀末広、茶三昧、寒具  )
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

 

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