音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■Chopin の演奏はこうであったろう、と思わせるハスキルの歴史的名演■

2013-11-25 22:24:32 | ■ 感動のCD、論文、追憶等■

■Chopin の演奏はこうであったろう、と思わせるハスキルの歴史的名演■
                2013.11.25   中村洋子

 


Frederic  Chopin ショパン (1810~1849)の 「 Piano Concerto No.2 」

「ピアノ協奏曲第 2番 Op.21」 f-Moll  を勉強しております。

 Chopin  が19歳の作品です。

現存する自筆譜は、ピアノソロの部分を Chopin  が書き、

オーケストラパートを、別の人が初期稿 ( 現在は紛失 ) を写した、

と言われています。


★しかし、 Chopin の書いたピアノソロ部分を見るだけでも、

 Chopin の作曲意図が、鋭敏に伝わってきます。

さらに、この曲を Chopin がどのように演奏したか、

ということまで、想像できるのです。


★なぜ、 Chopin  の演奏まで想像できるか、その第一の理由は、

Fingering の書き込みにあります。

第 2楽章の 77小節目 右手 3、 4拍目の下行音階、

第 3楽章の 5、 6、 7 小節目の 右手の下行半音階、

 
同 3楽章の 65小節目 両手のアルペジオなど数か所に、

彼自身の演奏用に、Fingering が、書き込まれています。

大変に独創的な Fingering です。


★これは、 Chopin が、

「 Wohltemperirte Clavier 平均律クラヴィーア曲集 」 に、

書き込んだ Fingering と、実は、全く同じ発想で書かれています。

現在、KAWAI横浜 「 みなとみらい 」 で開催中の、

「 Chopin  が見た平均律・アナリーゼ講座 」 で、勉強している最中でもあり、

そうであると、明確に判断できます。




★ということは、 「 Piano Concerto No.2 」 の Fingering が、

わずか、数か所であっても、

「 平均律 」 に、 Chopin が書き込みました Fingering から、

逆に、この 「 Piano Concerto No.2 」 を、

≪ Chopin がどう演奏したかったか ≫、について、

推測することが、可能なのです。


★第二の理由は、Pedal 記号です。

 「 Piano Concerto No.2 」 の自筆譜を、

Pedal ペダルについて、子細に見ますと、例えば、

 「 Etude Op.25-1 As-Dur 」 で、緻密に書き込まれた Pedal と、

発想が、同一なのです。


★これは、一般的な Chopin 像、つまり、

大雑把で雑なペダルにより、彼の和声や countepoint 対位法 が

曖昧にされた結果、ムードたっぷり、

甘いロマンチックな曲をつくった Chopin という像とは、

かけ離れた世界です。

 Chopin  の Pedal は、一点一画を揺るがすことのない、

清潔な Pedal です。


「 Etude Op.25-1 」 の Pedal を、自筆譜で勉強しますと、

和声の変化を Pedal で、どう表現するかを、

よく学ぶことができます。






★第三の理由は、 slur スラー の書き込みです。

フレージングを表す slur スラー は、とても繊細です

芳しい香りが、花びらから漂ってくるかのようです。

実用譜の、符頭から符頭へと、固く凍り付いたように、

官僚的に引かれた slur とは、全く異なり、

 slur が始まる場所と、終わる場所が変幻自在です。

本当に、弾きやすく感じます。


この自筆譜を見て、演奏しますと、 Chopin  先生から

直接、レッスンを受けているかのようです。


★一例として、第 1楽章の初めて、ピアノソロが演奏される、

71小節目以降の slur を見てみましょう。

見慣れた実用譜とは、180度違っています。


右手 74小節目から 78小節目 2拍目の終わるところまでを、

BREITKOPF のスコアでは、たった1本の大きな slur で、

括られていますが、自筆譜では、4つの slur スラー が、

描かれています。

試行錯誤した跡も自筆譜には残っており、5つの slur スラー と、

とることも、できるかもしれません。

どうぞ、ご自身でお確かめください。






★特に、顕著な例は、77小節目の 1拍目 ~ 3拍目の

4分音符 as1  ( 1点変イ音 ) は、その音が終わった後まで、

 slur が黒々と延び、4拍目の4分音符 f1  ( 1点へ音 ) の始まる前から、

また新しく、 slur が始まっています。


実用譜の編集者は、これを 1本の slur として、繋げてしまうのですが、

 Chopin自身は、4拍目の f1 音を 、78小節目の Auftakt アウフタクトと、

感じつつ、 77小節目全体を legatoで弾いていたことでしょう。

この場合の Fingering も、上記の勉強をしていましたならば、

ある程度、推測がつきます。


★このように、自筆譜を眺めながら、 Clara Haskil

クララ・ハスキル (1895年 - 1960) の CDで、

  「 Piano Concerto No.2 」 を、聴きますと、

Chopin  その人の演奏ではないか、と思われるほど、

同じ、発想で弾かれていることに、驚かされます。

真摯に勉強を続けた成果として、結果的に、

作曲家の発想に到達する、ということです。

これは、 Clara Haskil 最晩年の、

かけがえのない名演です。







★楽器店で、現代日本のピアニストのビデオが、

宣伝用に、よく放映されています。

ときどき、通りすがりに見てみますと、

音楽とは関係のない、大げさなジェスチャー、

うっとりと恍惚とした表情など、音楽そのものを聴かせるのではなく、

体の表現を見せる芸、であるかのように感じ、辟易します。

ハスキルの世界とは、対極的な世界でしょう。


★私が聴きましたClara Haskil の CDは、

Orchestre de la Société des Concerts du Conservatoire de Paris
conducted by Rafael Kubelik
Recorded live 31 January 1960  Paris 



★KAWAI横浜 「 みなとみらい 」 での

「 Chopin  が見た平均律・アナリーゼ講座」は、

12月9日 (月) 10時~12時30分

第 17回 平均律 第 1巻 第 17番 As - Dur 変イ長調です。
 
■予約:045ー261ー7323  KAWAI横浜


★私の作品の CD 「 無伴奏チェロ組曲 4、 5、 6番 」

Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、

 全国の主要CDショップや amazon でも、ご注文できます。


※copyright © Yoko Nakamura    
             All Rights Reserved
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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■Invention 、 Partita から 平均律 2巻10番への遠大な流れ■

2013-11-12 16:59:11 | ■私のアナリーゼ講座■

Invention 、Partita から 平均律 2巻10番への遠大な流れ■
 Bach  平均律クラヴィーア曲集   第2 巻・アナリーゼ講座
  第 8回「 第 10番 e-Moll BWV879 prelude & fuga 」

                                       2013. 11. 12    中村洋子




★全 108小節からなる長大な  第 10番  e-Moll  Prelude は、

ほぼ中央の 48小節の後に、反復記号が置かれる

「 Binary form 」 の曲です。

前半と後半に、2回ずつ奏される長いトリルは、

Invention 7番 e-Moll のトリルを彷彿とさせます。


Prelude の 8分の 3拍子は、

Partita パルティ―タ 3番 a-Moll の第 1曲 Fantasia と、

多くの共通点を、持っています。

堂々たる Fuga は、 Partita 3番の終曲 Gigue を勉強しますと、

この Fuga の counter subject 対主題がもっている、

「 Gigue 」 の性格を、十分に理解でき、

自ずと、 subject 主題 をどう弾くべきかと
いう、

解答が、導き出されます。







★  Inventionen und Sinfonien 

インヴェンション & シンフォニアは、
1723年に完成し、

Partita は1731年、Bach が Opus.1 として、

自ら、出版しています。


 Wohltemperirte Clavier Ⅱ

平均律クラヴィーア曲集 第 2巻は、


1739年頃の自筆譜がLondon Original Manuscript として、

現存しています。


Inventionと Partita の何が 2巻 10番に注ぎ込まれたかを、

詳しくお話しいたします。

さらに、Bartók Béla  バルトーク (1881~1945) 校訂版では、

平均律 1巻、2巻 全 48曲を、独自の配列で組み替えていますが、

この 2巻 10番は、Bartók 版 の 2巻 5曲目、通し番号 29番とされています。

そのBartók の意図をさぐることにより、

どのように演奏すべきかを考える手掛かりが、得られます。


★アナリーゼは、単なる机上の論理ではなく、

Bach の作品を愛情もって演奏するために、最も必要な準備であり、

逆に言いますと、一番の近道であるのです。





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■ 講   師   :     中村 洋子

■ 日  時 :  2013年  12月 12日(木) 午前 10時 ~ 12時 30分

■ 会  場 :  カワイ表参道  2F コンサートサロン・パウゼ
       ( 要予約 )   Tel.03-3409-1958

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■ 講師 :   作曲家  中村 洋子  Yoko Nakamura

 東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。
日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。

2003 ~ 05年:アリオン音楽財団 ≪東京の夏音楽祭≫で新作を発表。

07年:自作品 「 Suite Nr.1 für Violoncello
        無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 などをチェロの巨匠
        Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー氏が演奏した
     CD 『 W.Boettcher Plays JAPAN
                         ヴォルフガング・ベッチャー日本を弾く 』 を発表。

08年:CD 『 龍笛 & ピアノのためのデュオ 』
    CD 『 星の林に月の船 』 ( ソプラノとギター ) を発表。

08~09年: 「 Open seminar on Bach Inventionen und Sinfonien
                  Analysis  インヴェンション・アナリーゼ講座 」
                    全 15回を、 KAWAI 表参道で開催。

09年: 「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

        「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲第 3番 」が、
           W.Boettcher 氏により、Mannheim ドイツ・マンハイム で、
           初演される。

10~12年: 「 Open seminar on Bach Wohltemperirte Clavier Ⅰ
                  Analysis 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 アナリーゼ講座 」
                全 24回を、 KAWAI 表参道で開催。

10年: CD 『 Suite Nr.3 & 2 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 3番、2番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。

     「 Regenbogen-Cellotrios  虹のチェロ三重奏曲集 」 を、
             ドイツ・ドルトムントのハウケハック社
      Musikverlag Hauke Hack Dortmund から出版。

11年: 「 10 Duette für 2 Violoncelli
                         チェロ二重奏のための 10の曲集 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

12年: 「 Zehn Phantasien für Celloquartett (Band 1,Nr.1-5)
    チェロ四重奏のための 10のファンタジー (第 1巻、1~5番)」を、
      Musikverlag Hauke Hack  Dortmund 社から出版。

13年: CD 『 Suite Nr.4 & 5 & 6 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 4、5、6番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。

         「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

       スイス、ドイツ、トルコ、フランス、チリ、イタリアの音楽祭で、
    自作品が演奏される。

★上記の楽譜とCDは「 カワイ・表参道 」 http://shop.kawai.co.jp/omotesando/   「アカデミア・ミュージック 」 https://www.academia-music.com/ で販売中




★私の作品の CD 「 無伴奏チェロ組曲 4、 5、 6番 」

Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、

 全国の主要CDショップや amazon でも、ご注文できます。






※copyright © Yoko Nakamura    
             All Rights Reserved
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■Bach の Fuga を弦四に編曲した Mozart、その相違点から滲み出る両天才の個性■

2013-11-09 21:59:06 | ■私のアナリーゼ講座■

■Bach の Fuga を弦四に編曲した Mozart、その相違点から滲み出る両天才の個性■
         ~ 平均律 第 2巻 9番・アナリーゼ講座 ~
                                    2013.11.9   中村洋子




       

11月12日 ( 火 )は、KAWAI 表参道で、

「 平均律 2巻 アナリーゼ講座 」を、開催いたします。

今回は、9番 E-Dur ホ長調 です。

9番の Fuga を、 Mozart が、弦楽四重奏に編曲しています。

KV 405 nach Johann Sebastian Bach, BWV 878 です。


★Bach の原曲と、 Mozart の編曲を比べますと、

たくさんの相違点が、見出されます。

これには、三つの理由が考えられます。

① Mozart の見た 平均律楽譜に、誤りがあった

② 弦楽四重奏の楽器の制約から、音を変更した

③ Mozart 自身の考えで変更した


★ ③ の場合は、 Mozart が Bach の校訂者となっており、

その良し悪しは別として、 Mozart の個性が色濃く現れています。


★これは、10日にKAWAI 「横浜みなとみらい」 で開催します

「 Chopin の見た平均律・アナリーゼ講座 」 で、毎回お話していることと、

よく似ています。


★ Chopin の場合、①と同様、

彼が持っていた平均律の楽譜は、
非常にミスが多かったため、

彼がそれを、丹念に訂正しております。


★問題は③なのですが、Chopin は Bach の自筆譜を見ていないと,

思われますので、フライング気味に訂正し過ぎていることは、

時々、あります。

しかし、現代の校訂者のように、

自筆譜を、いくらでも見る機会がありながら、

勝手に、改竄しているのとは、根本的に異なります。


★もう一つ、興味深いのは、

Bach の平均律にどっぷりと浸かった Chopin が、

自分の歌を歌い出し、音を替えているところです。

ここに、 Chopin の本当の個性を見ることができます。






★同様に、 Mozart も、いかにも Mozart という和音変更があり、

思わず、微笑んでしまうところがあります。


★例えば、34小節目 バスの 2拍目は、Bach は eis ( 嬰ホ音 ) と

していましたが、 Mozart モーツァルト はこれを、♯ の付かない

e ( ホ音 )に替えています。

Bach の場合、この eis は、 gis-Moll の ドッペルドミナント の

属七
ais - ciscis - eis - gis   の第 5音に相当します。


★これを、 Mozart のように、♯ が付かない  e( ホ音 )にしますと、

ais - ciscis - e - gis  となり、

この e ( ホ音 ) は、
ドッペルドミナント の 属七の

第 5音下行変質音となります。


★文字で説明しますと、イメージが湧きにくいと思いますが、

これを、是非、ピアノで音にして弾き比べてください。

まず、 ais - ciscis - eis - gis   を弾き、

次に、 ais - ciscis - e - gis  を弾きます。

そして、 平均律 9番 の Fuga の 34小節目 を、

原曲通りに、弾きます。

さらに、 Mozart モーツァルト が変更したように、

eis( 嬰ホ音 ) を、 e ( ホ音 ) に替えて弾いてください。


★まぎれもない、 Mozart が、そこに微笑んでいます。

Mozart の愛した 増 6度音程が、この  e - ciscis1  です。 

 





もう一つの例は、32小節目 バスの 1拍目は、

原曲では e( ホ音 )ですが、

Mozart は  cis  ( 嬰ハ音 ) に、替えています。

これは、4声体和声で見た場合、 e ( ホ音 )にしますと、

三和音 cis - e - gis  の  第 1転回形 となります。

しかし、アルトの部分に e1 が配置されていますので、

第 3音重複となり、

ややこの  e音 が、突出して聞こえます。


★和声の教科書では、このような配置を嫌う傾向があります。

Bach はこの曲で、何ヶ所か、意図的に、

この第 1転回形 の 第 3音重複 をしているのですが、

Mozart は、この 32小節目で、バスを根音の Cis と替えることにより、

穏やかな調和のとれた響きに、しています。


★ このように、 Mozart の編曲を見ることにより、

何気なく見落としてしまう Bach の個性が、

色濃く浮かび上がってくるのも、事実です。







★講座では、このほか、J.C.F.Fischer ヨハン・カスパル・フィッシャー

から、Bach への流れも、ご説明いたします。

この 9番 Fuga の主題と 第 1提示部は、

J.C.F.Fischer の Ariadne Musica E-Dur の Fuga と、

瓜二つです。


★しかし、テーマの 4番目( gis )と 5番目( fis ) の音を、

Fischerは全音符にしていますが、

Bach は、2分音符に変更しています。

Fischer の曲は、素朴で明るく、

のどかな合唱曲のような曲想ですが、

Bach のこの 「 一筆 」 により、

この Fugaが、一変し、

力漲る Countepoint 対位法の世界へと、変貌したのです。

新しい命が吹き込まれたのです。



 

★私の作品の CD 「 無伴奏チェロ組曲 4、 5、 6番 」

Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、

 全国の主要CDショップや amazon でも、ご注文できます。



※copyright © Yoko Nakamura    
             All Rights Reserved
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■ 平均律 第 1巻 16番 が、 「 エリーゼのために 」 に与えた影響■

2013-11-08 19:52:58 | ■私のアナリーゼ講座■

■ 平均律 第 1巻 16番 が、 「 エリーゼのために 」 に与えた影響■
   ~  16番 前奏曲の抒情性と、緊密なフーガ  ~
             2013.11.8  中村洋子

 



Chopin の見た 「平均律アナリーゼ講座 」  第 1巻 16番 を、

11月10日 (日)、 KAWAI横浜 「 ミュージックスクールみなとみらい」 で、

開催いたします。


★Chopin所持の平均律楽譜では、

16番 ト短調 g-Moll の Prelude については、

書き込みが、ありません。

Fuga は、 Subject 主題と Answer 応答 の冒頭に、

×印が記入されており、
その他、5か所ほど、

右手で弾くか、左手で弾くかを示す記号が、書かれているのみです。


★このため、今回は、 Chopin につきましては、あまり触れず、

16番 をアナリーゼしながら、

Beethoven ベートーヴェン(1770~ 1827) や、

Bartók Béla  バルトーク (1881~1945)  が、

この 曲をどう、吸収していったか、

詳しく、お話いたします。






第 1巻  「 16番 ト短調 g-Moll 」  のPrelude は、

Violin のトレモロのような、繊細なトリルから始まり、

綿々と、抒情的に歌い上げます。

溜息の出る美しさです。

このさざ波のようなトリルは、 3、 7、 11小節でも現れます。


Beethoven は、 「 Klavierstück  a-Moll  WoO 59 Für Elise

エリーゼのために 」  で、何度もスケッチを重ね、

1810年ごろに、完成させたようです。


この冒頭の有名な  ≪  e2 dis2  e2 dis2  ≫  については、

≪ トリルの一種 ≫ と、とらえることができます。

つまり、 Bach の 16番と、同じ発想で曲が始まるのです


Beethoven 「 Für Elise エリーゼのために 」  自筆譜は、

2ページ分しか残されていませんが、その断片を見ますと、

彼がこの発想をどのように、展開させていったかが、

よく分かります。


★さらに、Bartók 平均律校訂版を詳しく見ることにより、

16番だけではなく、 「 Für Elise エリーゼのために 」  をどう弾くかも、

見えてくるのです。








★一方、緊密に構成された 4声の Fuga フーガについて、

Bartók 版は、大譜表ではなく、カンタータの声楽パートのように、

「 4段譜 」 に、書き変えています。

その理由は、 Fuga のテーマが、Bachの Kantate カンタータ 106番

「 Gottes Zeit ist die allerbeste Zeit 神の時は、至上の時 」 の、

4声の声楽による Fuga の Thema テーマ に、

極めて、似ているいるからでしょう。


★この Kantate カンタータ の Subject 主題と Answer 応答が、

平均律 16番のそれと、酷似しており、歌詞は、

「 Es ist der alte Bund  これは古くからの契り 」  です。

この Kantate カンタータ  Counter subject 対主題の歌詞は、

「 Mensch, du mußt sterben  人は、必ず死ぬもの 」 

となっています。


★ この厳しい内容の  Fuga フーガの後に、

喜びではち切れんばかりの、次の 17番 Prelude As-Dur が続いてくるのは、

深く、納得できます。






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■日時:2013年11月10日 ( 日 ) 午後2時~4時30分

■会場: KAWAI横浜 「 ミュージックスクールみなとみらい」
  (みなとみらい駅『 出口 1番 』出て、目の前の高層ビル3F)

■予約:045 (261) 7323

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■ 講師 :   作曲家  中村 洋子 Yoko Nakamura

 東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。
 日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。

2003 ~ 05年:アリオン音楽財団 ≪東京の夏音楽祭≫で新作を発表。

07年:自作品 「 Suite Nr.1 für Violoncello
         無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 などをチェロの巨匠
         Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー氏が演奏した
     CD 『 W.Boettcher Plays JAPAN
                         ヴォルフガング・ベッチャー日本を弾く 』 を発表。

08年:CD 『 龍笛 & ピアノのためのデュオ 』
    CD 『 星の林に月の船 』 ( ソプラノとギター ) を発表。

08~09年: 「 Open seminar on Bach Inventionen und Sinfonien
                  Analysis  インヴェンション・アナリーゼ講座 」
                    全 15回を、 KAWAI 表参道で開催。

09年: 「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 を、
     ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

         「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲第 3番 」
              が、W.Boettcher 氏により、Mannheim ドイツ・マンハイ ム
              で、初演される。

10~12年: 「 Open seminar on Bach Wohltemperirte Clavier Ⅰ
                  Analysis 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 アナリーゼ講座 」
                全 24回を、 KAWAI 表参道で開催。

10年: CD 『 Suite Nr.3 & 2 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 3番、2番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。

     「 Regenbogen-Cellotrios  虹のチェロ三重奏曲集 」 を、
             ドイツ・ドルトムントのハウケハック社
      Musikverlag Hauke Hack Dortmund から出版。

11年: 「 10 Duette für 2 Violoncelli
                         チェロ二重奏のための 10の曲集 」 を、
     ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

12年: 「 Zehn Phantasien für Celloquartett (Band 1,Nr.1-5)
     チェロ四重奏のための 10のファンタジー (第 1巻、1~5番)」 を、
      Musikverlag Hauke Hack  Dortmund 社から出版。

13年: CD 『 Suite Nr.4 & 5 & 6 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 4、5、6番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。

         「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」 を、
     ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

     スイス、ドイツ、トルコ、フランス、チリ、イタリアの音楽祭で、
     自作品が演奏される。

★上記の楽譜とCDは、「 カワイ・表参道 」  
http://shop.kawai.co.jp/omotesando/
「アカデミア・ミュージック 」 
https://www.academia-music.com/ で、販売中。





★私の作品の CD 「 無伴奏チェロ組曲 4、 5、 6番 」

Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、

全国の主要CDショップや amazon でも、ご注文できます。


※copyright © Yoko Nakamura    
             All Rights Reserved
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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■私の CD 「無伴奏チェロ組曲4、5、6番 」 への感想とお便り■

2013-11-06 18:13:13 | ■私の作品について■

■ 私の CD 「 無伴奏チェロ組曲 4、5、6番 」 への感想とお便り ■
                                     2013.11.6  中村洋子

 

★私の CD 「無伴奏チェロ組曲4、5、6番 」(NYBACH06) について、

うれしいお便りを、たくさん、いただきました。


★米国・Seattle シアトルで活躍されている

Prof. Corderia Wikarski-Miedel 

コーデリア ウィカルスキー = ミーデル 先生から、

「・・・I found your music of high interest and  it seems

to me they have a slight melancholic character.

Beautiful. ・・・

Wolfgang Boettcher a friend since childhood 

did a wonderful interpretation of your work.

Congratulation.・・・」 という、お便りです。


★Boettcher 先生は  Wikarski-Miedel 先生について、

「 A very good cellist, old friend of mine 」 と、紹介されています。

ベルリン芸大で、Boettcher 先生と同じく Prof. Klemm に学びました。


★Boettcher 先生は、お父様をベルリン空襲で亡くされましたが、

Wikarski-Miedel 先生も、終戦直前にロシア人将校により、

目の前で、当時ベルリン芸大のピアノ教授でしたお父様が、

射殺されています。

ともに、戦争の悲惨すぎる犠牲者です。

http://www.cello.org/Newsletter/Articles/cmiedel.html に、
Wikarski - Miedel 先生のお話が載っています。

 



★  My father was professor of piano at the "Hochschule fur Musik" in Berlin, the equivalent of the Juilliard School in New York. He taught from 1927 to 1945, when he was killed by Russians who had invaded Berlin in the last days of the war. My mother was a fine pianist, and was able to play the major piano literature. My parents often played together, sometimes she accompanied him at the second piano with the orchestral parts from scores of concertos my father wrote. We grew up with music in the house six to eight hours per day, mostly piano music.

TJ: Was your father killed for any particular reason?

CWM: No, he was just one of the many innocent victims of war. I remember clearly, it was a sunny and peaceful Sunday afternoon on April 29, 1945, when two Russian officers came into our house and took my father by the collar of his suit and shot him ten seconds later in front of his six children. I was only six years old. Our mother was 37 years old and suddenly alone with six children to take care of.



Köln ケルン の Johannes Nauber ヨハンネス・ナウバーさん、 

Berliner Philharmoniker ベルリンフィルを経て、

現在、Gürzenich-Orchesters Köln の

cellist チェリストです。

彼からは、
★Dearest Mrs.Yoko san,
 dooooomo arigato gozaimasu for your brand new CDs with your marvelous compositions,performed by wonderful cellist and friend Wolfgang and your nice pictures of ・・・
 I will present the CD s to my friends as soon as possible!!

now i wish you a plenty good fall with a lot of inspiration from the colours of beautiful japanese nature and ・・・

the news are full of daily articles about Fukushima even here.
What a cruel situation for the entire country and its people!!
( ドイツでさえ毎日、FUKUSHIMA原発の記事を見ます。
日本全体と日本国民は、なんと残酷な状況に置かれている
ことでしょう!!) と、
自分たちのことのように、気遣ってくださいます。

For now i wish you all the best,health and creativity
for more cello music ( Suite 7, 8, 9, 10, 11 and 12 ??? )

yours
Johannes







★Berlin ベルリンのチェリスト Susanne Meves-Rößeler

ズザンネ メーフェス = レーセラー さんからも、

Dear Yoko Nakamura,
  thank you so much for the new Cd´s・・・
 I played your first Suite for Cello-Solo a few times in some concerts. The people loved it. Now I am happy to hear the next.
 I am teaching a lot. Four children are playing your wonderful Celloquartett 1 Altertümlicher Tanz and 2 Pferdeschlitten.
We have a lot of fun with this.
 Thank you !!





Boettcher 先生のお姉様で、チェロとピアノのデュオリサイタルを

なさっている、オルガニスト兼ピアニストの

Ursula Trade-Boettcher ウルズラ トレーデ=ベッチャーさんからも、

It is a great joy・・・
I love to perform your Duo.
Often listeners in the concerts said
" Yoko Nakamura for me was the best music
in your program! "
I feel fascinated by your combination of Japanese meditation
and the western way of composing in your works.
I was deeply impressed by the culture of your country.
Our daughter Melanee studied four years in Tokio and
is now professor for Japanese history of art -
so I am always in contact with Japan - especially
by your music.
All the best for creativity and health.



★私の作品の CD 「 無伴奏チェロ組曲 4、 5、 6番 」

Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、

全国の主要CDショップや amazon で、ご注文できます。






※copyright © Yoko Nakamura    
             All Rights Reserved
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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■私のCD「無伴奏チェロ組曲4、5、6番」が、全国のCDショップでお求めできます■

2013-11-03 18:37:12 | ■私の作品について■

■私のCD「無伴奏チェロ組曲4、5、6番」が、全国のCDショップでお求めできます■

                 2013.11.3   中村洋子

 


★11月に入りました。

ツワブキの花が、陽光を浴び、黄金のように輝いています。

美しい秋です。


★10月 30日に、名古屋KAWAIで開催いたしました、

「 インヴェンション・アナリーゼ講座 」 には、

大阪や神戸など、
遠隔地からもたくさんの皆さまが、

ご参加くださいました。

Invention & Sinfonia 12番を基に、

フィンガリングと暗譜との関係を、

具体的にピアノを弾きながら、

お話いたしました。



★次回 2014年 2月 26日 ( 水 )の 名古屋 講座 でも、 

Invention & Sinfonia 13番 a-Moll を基に、

「 心に刻みつける暗譜 」 の方法を、

さらに、深めます。


★また、Bach の ≪ counterpoint 対位法 ≫ に親しみ、

自然に、 ≪ counterpoint 対位法 ≫ が、

身につく勉強法も、

お話しいたします。

 





★先日、ご紹介いたしました私の作品、

「 無伴奏チェロ組曲4、5、6番 」 を録音しました CDが、

HMV、タワーレコード、山野楽器など、

全国の主要な CDショップや、

Amazon で、入手できるようになりました。


CDショップに ≪ 中村洋子作曲 「 無伴奏チェロ組曲 4、5、6番 」

Wolfgang  Boettcher  ヴォルフガング・ベッチャー演奏

Yoko レーベル NYBACH 06 ≫ と、

ご注文していただきますと、

取り寄せて頂けます。







★Amazon も

≪ Amazon 中村洋子、無伴奏チェロ組曲 4、5、6番  ≫ と、

検索していただきますと、

ご注文できます。



★私の作品で、Wolfgang  Boettcher

ヴォルフガング・ベッチャー先生の、

素晴らしい演奏を、

どうぞ、お楽しみください。







※copyright © Yoko Nakamura    
             All Rights Reserved
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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