■映画「Blue Jasmin」を見る、米国の近未来を暗示。救いはあるのでしょうか■
2014.7.8 中村洋子
★Woody Allennウッディ・アレンの新作映画
「 ブルージャスミン Blue Jasmin 」(2013年)を見ました。
悲しい映画です。「救い」がありません。
彼は絶望しているのでしょう、「アメリカ」という国に。
主人公のジャスミン Jasmin という女性を描くことで、
その国の近未来を暗示しています。
★「ミッドナイト・イン・パリ Midnight in Paris 」で、
Woody Allennは、“いつの時代でも、理想郷などありはしない”。
その時代の愚かさ、軽薄さを憎み、俗物と戦い、
日々、命を削る思いで創作している芸術家だけが、後世からみて、
その時代を輝かせている・・・というメッセージとともに、
主人公である、売れっ子の脚本家に、アメリカでの職業も、
リッチな婚約者もすべてを捨てさせ、パリを徘徊する生活を選択させました。
ここで既に 、Allennはアメリカの繁栄なるものへの疑いの「種火」を埋め込んでいました。そして、この「Blue Jasmin」です。
Fuga にも似て、 Jasmin という主人公(主題)に、妹 Ginger と彼、元夫。
Jasmin の夫、息子、新しい恋人という脇役(副主題)が、現在と過去とを経糸と横糸のように、絡ませ、縦横無尽、それぞれの生き方をさらすことで、アメリカの現在を暴きます。
★甘い香りを四方八方にまき散らす Jasmin の花。
しかし、この花の名前をもった主人公は、破産し、落ちぶれ、
行くあてもなし。
誰も救ってくれない。
路傍のベンチに座り込み、独り言をつぶやいている。
映画は、残酷にそこで終わらせています。
★NYに住み、アメリカという国を、
その落ち窪んだ目で、じっくり眺めてきた Woody Allenn が
「もう、救いようがない、アメリカという国は、
いずれ Jasmin のようになる」と、アメリカという国への訣別を、
この映画で表明しているのかもしれません。
★NYから、サンフランシスコへ飛ぶ機内、ファーストクラスの席です。
中年の女性が、隣席の上品な老女に、一方的に喋りつづけます。
「ボストン大学で人類学を学んでいた時、投資家の大金持ちに見初められ、中退したのよ」「夢のようなゴージャスな生活だったわ」「彼のセックステクニックは最高よ」「ある日、突然破産し、無一文になったの」
「いまから、サンフランシスコの妹の家に行くの、トランク一つで」
「安定剤やたくさんの薬を、カクテルのようにして飲んでいるのよ」
「ジャネットが本名だったけど、平凡だから神秘的なジャスミンに変えたの」。
40代後半に見えるこの女性が、主人公の Jasmin ジャスミン。
★純白の生地に黒い縁取り、みるからに高価そうな「 Chanel 」の上着、
バッグには、黄色い Hermès のスカーフが結わえられ、ヒラヒラなびきます。
しかし、このシャネルはどことなく、陳腐に見えます。
一方、隣の老女は上品、さりげなさを装いながらも高級さがにじみ出る服装。
★タクシーで到着する妹の家は、安っぽいカフェやレストランが並ぶ、下町の庶民街。妹は不在でした。
スーパーでレジ係として汗まみれになり、働いているのです。
日本人から見ますとかなり広く、整ったこぎれいな家ですが、典型的セレブだった Jasmin の、かつての宮廷のような邸宅とは比較になりません。
パソコンを開くのも、キッチンシンクの横。
★フラッシュバックのように、 Jasmin の過去の生活が、挿入されます。
これが、この映画の見事な技法です。
Jasmin の意識の中で、現実と過去の夢のような生活とが、混在しています、
その混在、混乱を、映像が描きます。
★ Jasmin の大邸宅は、優しそうなメードさん、豪華な家具の居間、
プール、広大な庭、山の中の美しい別荘。
★妹の名は、Ginger ジンジャー「生姜」、少々コケティッシュな名前。
Jasmin は、背も高く、歩き方も前方を見据え、胸を張って歩きます。
Ginger は、小柄、痩せています。見るからに貧相です。
化粧もほとんどしない。
一目で階級の違いが分かります。
この姉妹は、ともに養女でしたが、Ginger は養い親と折り合いが悪く、
若くして家を出ていたことが分かってきます。
★「お金がないのに、どうしてファーストクラスなの」と妹。
「今までの癖でつい、頼んじゃったの・・・」
Ginger には、別れた夫との間に小さい男児が二人います。
その夫は家具修理工、東欧系の移民の様子。いまでも子供とは会っています。
元夫の家へ、子供を迎えに来たGinger が、 Jasmin が来たことを話します。
「あの女は全部知ってたんだ。絶対に許せない」と元夫。
「知らなかったのよ」とかばうGinger 。
彼はこの映画で、重要な役割をこれから演じていきます。
離婚の原因も、 Jasmin にあったことが次第に分かってきます。
★Ginger には、いま、新しい彼がいます。「食事をしよう」、彼とその友達と四人で街に出かけます。なだらかな坂のはるか下には美しい海が光ります、派手なネオンの中華街での散策、観光案内もたっぷりしてくれます。
★その彼も、やはり、肉体労働者でした。典型的なブルーカラー。
ジーンズに、薄汚れたセンスの悪いシャツ。
いろいろな血が混じり合ったような浅黒い風貌、いわゆる白人ではありません。
知性の香りは全くしません。
彼の体から発する、暑苦しい汗の臭いがスクリーンにまで漂ってきます。
彼らの話は徹頭徹尾、口に出すのも憚られるような、卑猥な話ばっかりです。
そして、 Jasmin への好奇に満ちた刺すような眼差し。
★Ginger の彼は、とことん Ginger に惚れ込んでいます。
「早く一緒になりたい、子供も引き取りたい」。
そんな思いがヒシヒシ伝わってきます。
嘘のない単純な人なのです。
★そんな男たちに、辟易する Jasmin 。
いままで自分を取り巻いていたアッパークラスとの乖離に、
絶望的な気持ちにとらわれています。
画面には、フラッシュバックのように、Jasmin のかつての優雅な生活が現れます。
誕生祝いに宝石のブレスレットを貰うシーン。
真っ白な泡がこんもりと盛り上がるバスタブで、入浴中のジャスミン、
夫が宝石の包みを開け、腕に嵌めます。
名画の王侯貴族のような食卓、誕生日のディナーです。
揺らめく蝋燭の灯り、まばゆいばかりの銀食器、虹色に輝くクリスタルグラス、
高価なワイン、かしずく給仕・・・。
★画面は過去に遡ります。別れる前の妹夫婦が突然、ニューヨークの豪邸を、
訪れます。「観光」でした。Jasmin は、高級リムジンを提供して市内観光をしてもらいます。超ブランド店で、妹が目を丸くするような素敵なバックなどを買い与え、それなりに歓待します。
観光も一段落、プールサイドでくつろいでいるシーン。
妹の夫、「実は、宝くじで2000万円当たった。これで自分の事業を始めたいが、どう思うか」。
Jasmin 「それを、夫に任せたら?。例のあのホテルの件に加えてあげたら」
Jasmin の夫「○○諸島のリゾートホテルへの投資の話だ。しかし、利子はあまりよくない、1、2割程度だが・・・」。 画面はそこで終わります。
★ここから、Jasmin の夫がどういう人物であるか、順々に解き明かしていきます。
山荘のテラスで、Jasmin 夫婦がくつろいでいます。夫の顧問弁護士が深刻な顔で、
なにやら、書類を持ってきました。「このままでは駄目だ。ヨーロッパの会社に付け替えろ。それなら大丈夫だ、違法にならないな」というようなことを指示しています。どうやら、危ない橋を渡っている人種のようです。
Jasmin はといえば、その危なさを知っているようでもあり、それ以上に、知りたくもない、いまのままでいい、という微妙な深層心理を覗かせています。Jasmin の親友は「会計は、夫と別にしておかないと駄目よ」と忠告しています。
★妹がリムジンでNY観光中のことですが、偶然に Jasmin の夫が美しいモデルのような女性とビルから出てくるところを目撃、別れ際、キッスを交わしました。
夫の複雑な女性関係を暗示します。
これが、この映画の Counter subject 対主題でもあります。
Jasmin の夫には、前妻との間の男の子がいます。
ハーバードの優秀な学生です。
父親が、大学に多大な寄付をしたことが知れ渡り、
彼も、パパを誇らしげに思っている様子。
★サンフランシスコのJasmin は、好きな室内装飾の資格を取り、
それで、生計を立てようと考えています。
PCで通信教育を受けたい。
そのためにはPCを勉強しなくてはいけない。
その費用稼ぎに、嫌々ながら、歯科医の受付アルバイトを始めます。
★インテリ風の歯科医は、Jasmin を一目見た時から惚れ込んだ様子です。
懲りずに何度も何度も迫ってきます。
歯科医の指には結婚リングがキラリと光ります。
Jasmin は頑なに拒み続け、遂に荒々しく床に突き倒し、「もう二度と来ない」。
この話は、本筋ではないサイドストーリーです。お金に本当に困っているJasmin にとって、歯科医の愛人となる選択肢も、現実には十分ありうる話です。
しかし、Woody Allennは、Jasmin に拒絶させます。
そのような妥協は、かつての誇り高きセレブにとって、
耐えがたい、許しがたい、という設定なのでしょう。こ
の挿入話は、 Fuga の中の「ディヴェルティメント 嬉遊部」にも似て、
物語を豊かにしてくれます。
★PC学校で知り合った女性からの誘い、「パーティーに行きましょう」。
Jasmin は妹と、久しぶりに華やかな宴会場に出かけます。
妹は、楽しく踊りまくり、中年の太った男と仲良くなってしまいます。
Jasmin は、自分が主催者、女王のように振る舞っていたことのあるNYのパーティーを思い出してか、独り言をぶつぶつ。周りから不審に思われます。
風を浴びようと、テラスに出ました。
寂しそうに一人で座っていた男性と、目が合います。
インテリ風で柔和な眼差し、優しそう。
★「私は外交官、近くオーストリアに赴任します。2、3年の任期が終わったら、下院議員選挙に出るつもりです」。
「亡くなった妻はファッション雑誌の編集をしていました。貴女もその関係のお仕事のようですね。とってもセンスがいい」。
初対面から、お互い引かれ合うものを感じています。
「私は インテリアデザイナー。脳外科医だった夫が急死しました。子供もいません」と、自己紹介をしてしまいます。
ここで本当のことは言えないでしょう。
それが普通の人間でしょう。
「海の見える高台にやっと、気に入る家が見つかったところです。家具はまだ入っていません。一緒に見に行ってくれませんか」
★妹は、オーディオ業界の中年男が「独身」というのを単純に信じ、浮気だけでおさまらず、いまの彼から乗り換え、一緒になる気になってしまいます。
だが、 Ginger の浮気を聴きつけた彼が、スーパーで働いている Ginger のもとに、血相を変え、乗り込んできます。「ダチ公がパーティーでバイトしていた。お前は男と楽しそうにしていたな。もう、夜も眠れないんだ。好きなんだよ、お前が」。買物客の驚いた顔も目に入らず、半狂乱で怒鳴る。よりを戻すよう迫ります。どうしても諦め切れないのです。
★彼は、さらに家にも押しかけ、復縁を迫ります。家具を倒す、電話を壊す、
当り散らします。
冷ややかな目で見ている Jasmin に、
「確かに、俺は貧乏だ。でもな、あんたたちのように、人を騙すようなことはしていないぜ」。
★しかし、 Ginger はまだ中年男に未練たっぷり。香水を浴びるように振りかけ、デートに出かけます。だが、男の職場に電話したことから、その中年が妻子持ち、騙されていたことに気付きます。
目が覚めたように、あっという間に元の鞘に収まってしまいます。
前より親密です。
なんともあっけらかんとした男女関係です。
★Jasmin は、外交官の両親にも会い、「趣味がいい、陶器や美術品の話もできる」と、大層気に入られます。
アンティーク家具のお店まで、黒の BMW でドライブ、
一緒に天蓋付きの大きなベッドを、楽しそうに選びます。
すべてが夢のよう。順調です。
「下院議員の選挙では、いつも僕の横で微笑んでいて欲しい」。
“ああ、元の生活に戻ることができる”。
★回想:Parisの高級ホテルから夫の忘れ物についての電話。
アメリカ国内の出張だったはずが・・・。
友人「今まで言わなかったけど、若い顧問弁護士、スポーツインストラクター、モデル、いろいろな人と彼がつき合っているのを知ってたわ。あえて、貴女には言わなかったけど」。
★帰宅した夫が唐突に、切り出します。
「今度は本気なのだ。もう愛し合っている。若いフランス人の学生だ。あなたと別れたい。暫くホテルに住む」そのまま、家を去る夫。
★半狂乱の Jasmin 、突如、 FBI に電話を掛けます。
なにやら、告白している様子。
街を歩いている夫が、いきなり警察官に取り囲まれました。
逮捕状を見せられ、
車に押し込み、連行されてしまいます。
★自宅から、バッグを背負って家を出て行く息子。
父が詐欺師だったとは、もう、大学も行けない。跡
を追わないでくれ。
問わず語りに、夫が留置場で首を吊って自殺したこと。
窒息ではなく、首の骨が折れて死んだこと。
ロープは自分で手に入れたそうだ。
★財産は全部、没収されてしまった。
かろうじて隠すことができた宝石などは、売り払ったの。
私の名前が刻まれたヴィトンのスーツケースはただ同然よ、売れないわよ。
ニューヨークで、高級靴店の店員もしたわ。お客に靴を出すの。
昔のお友達が店に入ってきたけど、私に気付くと、
さりげなく静かに出て行ったわ。
ここから映画は密度を増してきます。
ほんの一日の出来事でクライマックスを迎えさせます。
ギリシャ悲劇のようです。
★宝石店の前。
ショーウインドーには、大粒のダイアモンド指輪が輝いています。
まさに、店に入ろうとしている Jasmin と外交官。
男が声を掛けます。
「久しぶりだな。ここで会うとは。
この間偶然、息子さんと遭ったぜ。
場末のビルの地下で中古のギター屋をやっていた」。
妹の元夫でした。
★外交官の顔色が変わります。
Jasmin 「アラスカに仕事が見つかったんですって、よかったわね」
妹の元夫「誰が好きこのんで、そんな辺鄙なところへ行くか。
こうなったのもお前に金を全部取られ、無一文になったせいだぞ」。
「覚えておけ、人はな、許せないことは絶対に忘れないものだ」
★「息子?、どういうことだ」「婚約指輪、冗談じゃない」「説明してくれ」。
BMW の車内。厳しく詰問する外交官。
「そういうことじゃないの!」激しい口論。
車を急停車させ、飛び降りように出て行く Jasmin 。
★亡霊のように歩く Jasmin 。
地下への薄暗い階段を降り、中古ギター店に。
奥で息子が一人、パソコンに向かって仕事をしています。
「口止めしたのに、喋ってしまったのか」
「FBIに密告したのは、あんただったんだな」
「二度と顔を見せないでくれ。結婚した。
彼女と一緒になったおかげで、ドラッグを止めることができた」
Jasmin 「FBIに電話してすぐに、後悔したの、本当に後悔したの」
「私には、あなたが必要なのよ」
息子「出てってくれ」
★憔悴し切った Jasmin 、とぼとぼ妹の家に戻ります。
家中に、明るい笑い声が響いています。
妹と彼は、最後の一切れになったピザを取り合いっこ。
じゃれています。
澱を落とすかのように、シャワーを、いつまでも浴び続ける Jasmin 。
まだ、妹たちは戯れています。
★その声を聞きながら、
「That's why you have never better life
だから、あなたたちはいい生活ができないのよ」と、
呪詛のような言葉をつぶやき、家から出て行きます。
濡れ髪のままです。
亡霊のような顔。
白の Chanel スーツ。
冒頭の機内と同じ Chanel。
彼女のレゾンデトル、最後まで手放せないのです。
その白は気のせいか、くすんで見えます。
夢遊病者のよう。
道路際のベンチに腰を下ろす。
ブツブツ独り言。
隣に座っていた女性がさっと、逃げていきます。
映画は、ここで The END。
Woody Allennは、 Jasmin を見捨てたのです。
★以上は、シナリオ通りの、正確な筋、表現ではないかもしれませんが、
大筋では、あまり間違っていないと思います。
映画館で販売している「パンフレット」は、腹立たしいのですが、歯の浮いたような常套的形容詞のオンパレードで、その映画が本当に伝えたかったことを、解説しているものは、稀なような気がします。
しかも、「シナリオ」を添付しているものはほとんど皆無です。
「自筆譜」と同様、「シナリオ」は映画理解のためには、必要なのです。
残念です。
パンフは、この映画について
≪虚栄とプライドで塗り固められたジャスミン≫と解説しています。
はたして、そうなのでしょうか。
★ Jasmin が、夫の投資詐欺を知っていたかどうか、
それはこの映画の重大なカギです。
プールサイドで、心地よい安楽椅子に座りながら、リゾートホテルへの投資を勧誘する手口を見て、「サブプライムローン」という言葉を思い出しました。
アメリカで、お金持ちではない、その下の階層の人々に、マイホーム建設を薦めたあの「投資」です。失業者でも、あまり英語もできない移民の労働者にまで、このローンを組ませ、膨大な数の住宅を建てさせたのです。最初の数年間は、金利も安いのですが、その後、うんと高くなります。住宅の時価が上昇中は、それでも支払いは可能ですが、いったん時価が下落し始めますと、たちまち、ローンを払えなくなります。そして、その住宅は取り上げられてしまいます。
その「サブプライムローン」を証券化して、高金利をうたい文句に、世界中に売ったのが、アメリカという国なのです。日本国もさぞかし、いい“カモ”だったことでしょう。プールサイドでの、リゾートホテルへの投資勧誘とそっくりです。
★しかし、「サブプライムローン」などの金融商品の結末がどうなったか、実は、分かっていない、といえそうです。それらの証券を売りまくった巨大な投資銀行などに対し、「 too big to fail 」 として、アメリカ政府は 「QE 金融緩和」 という分かったようで分からない用語を使い、膨大な資金供与、340兆円ものお札を刷り、延命措置、 “点滴“ を続けています。うやむやになっているだけかもしれません。そうした不良債権は、一説によれば、2000兆円ともいわれます。しかし、いずれ、清算の時がやってくるでしょう。逮捕された Jasmin の夫のように、その日は、突然訪れるかもしれません。
★不平等社会のアメリカは、最も豊かな1%の世帯が、国の金融資産の3分の1を所有し、上位20%の世帯が、95%を所有している歪な国です。「サブプライムローン」が、かなり詐欺っぽいものであったことは、富裕層のみならず、アメリカ全体がうすうす感づいていたかもしれません。 Jasmin の心理のように。何か変である、しかし、この甘い果実は捨てたくはない、本当はどうなっているか知りたくもない、知ると怖い。そうやって、ズルズルと流されてきた、というのが真相かもしれません。
★Woody Allennは、憐れな Jasmin の生き方を通して、
アメリカの実態を描いたのでしょう。
いずれ清算の時が来る。
その時、アメリカという国は、ジャスミンのようになる・・・。
★案外、この映画の主人公は、「妹 Ginger とその彼」かもしれません。
姉を批判しない、かばう。この優しさは、虐げられてきた者がもつ、優しさかもしれません。浮気しても直ぐに回復。新しいキャラクターです。
≪確かに、俺は貧乏だ。でもな、あんたたちのように、人を騙すようなことはしていないぜ≫という Ginger の彼の言葉。
これが、この映画の「核」であり、「救い」でしょう。
野卑でもいい、ジーンズで汗を流して働く人間のほうが、
Chanel を纏い、紳士やセレブのお面をかぶった詐欺師より、誠実である。
よほど、人間臭い。
こういう人たちが、アメリカを再建していく、と Allenn は言いたいのでしょう。
★Woody Allennは、決してアメリカを、見捨てはしていなかったのです。
「救い」はあったのです。
そういえば、 Allenn はいつも「コットンパンツ」ですね。
「Chanel」より「Blue jeans」です。
★Woody Allennの映画手法は、作曲技法によく似ています。
Subject 主題と Answer 応答、ディヴェルティメント 嬉遊部、
頂点の作り方・・・。
彼は、相当、クラシック音楽にも精通しているように見えます。
■ Woody Allenn ウッディ・アレンの映画「 Midnight in Paris 」を見る
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